「石油文明が終る、日本はどう備える」
|「石油文明が終る、日本はどう備える」
2010/11/21鎌倉雪ノ下教会(友愛会)にて講演
2006年が石油ピークであった、IEAが2010 WEOレポートで公認
石油ピークは石油文明の変革を意味する、何かを本気で変える時である、そして世界的な経済不況の深層には石油ピークがあると理解すべき、人は自然の恵みで生かされているからである。
地球は有限、資源は質が全て、特にエネルギーは文明のかたちを決める、それはエネルギー無しには、何も動かせず何も作れないからである。日本は経済浮揚、温暖化一辺倒のようだが、「石油ピーク」の意味を理解し、基本戦略を構築する必要がある。
歴史的には、森が古代からの人類のエネルギー源であった。19世紀からの産業革命は石炭が支えた。人類はこの化石燃料によって、それまでの森林不足による慢性的なエネルギー不足から解放されたのである。そして20世紀は石油の世紀、特にこの半世紀の指数関数的な消費拡大は激しかった。
だが地球が有限である以上、全ての資源は有限、石油は減耗し人類は長いエネルギーの下り坂を経験しよう。ここで改めて念を押すが、石油ピークは枯渇ではないのである。安く豊かな石油時代は終ったのである。だが余りにも優れた石油の代りはない。
石油の究極的可採埋蔵量は2兆バレル程と地質学的に見積られている。それは富士山を升として20%程度、人類はもうその半分使った、そして条件の悪いものを後に残した。
エコノミストは市場が解決する、技術者は技術が進歩すれば、と思うようだが、それは「資源の質」を知らない、熱力学のエントロピー則を理解しない議論である。
人類の生存基盤が崩壊、石油ピークはその象徴、成長至上主義はもう時代遅れに
石油ピーク後、生産は年率数%で減退するとみられる。短期的な価格、生産量はその時々の経済動向に左右されて変動しようが、それに惑わされないこと、長期的な石油に依存する現代文明の衰退を意味する。
地球資源の減耗は石油に限らない。世界の森林面積はすでに半減、漁獲量ピークは前から知られていた。地下水の危機的な減退もある、飲料水、農業の未来が危ぶまれる。
流体燃料の石油ピークは、内燃機関で動く運輸システムを直撃する。現代農業に必要な肥料、農薬、農耕機械も石油・天然ガスが頼りである。化学工業の主要な原材料も石油であるから、石油ピークは文明ピークである。
最近の膨大な財政投入による経済浮揚策は一時凌ぎでしかない。地球温暖化対策も、脱炭素より「低エネルギー社会」の視点で論理構築すべきである。排出権取引、二酸化炭素の地中、海洋投棄などは政策として賢明とは言えない。
話題の様々な新エネルギーも、どれが本命かわからない。原子力もウラン資源は有限、放射性廃棄物の処理は未だに不透明である。太陽、風力エネルギーは無限と人は言うが、エネルギー密度が低いのが難点、しかも間欠的で不安定である。これからはEPR(Energy Profit Ratio、エネルギー入出力比)で判断すべきである。
電気自動車が未来のホープのように喧伝されるが、リチウム・イオン電池用のリチウム資源ははチリなどの塩湖で採掘されるが、その資源量は有限であり、やっかいな公害問題がある。そして電気自動車の電気は、何で手当するかである。
提言、「日本のプランB」
自然との共存が未来戦略の要となる。それには先ず自国の地勢、自然をよく理解することである。日本は大陸でない、山岳70%の列島、海岸線は世界第6位と長いのである。さらに多様性は豊か、画一思考しないことである。
未来は「もったいない」の心、人の絆、多様な持続地域社会を目指すこと、それには科学合理性、リアリズムが大事。
以上要するに「地球は有限、資源は質が全て」と、日本の自然、地勢を理解した Relocalization、その10カ条が、
1)海岸線長は世界6位、山岳75%、自然と共存する、浪費・無駄ない立体農業・新文明
2)石油ピーク:脱欧入亜、アメリカ主導のグローバリズムの凋落、マネー主義の終焉
3)低エネルギー社会:1970年頃エネルギー消費は今の半分、食料自給率60%の心豊か社会
4)少子化:民族生存のチャンス、人口少ないほど有利、年長者も働ける社会の構築
5)石油ピークは流体燃料危機、脱車社会の鉄路、公共運輸の重視、自転車の利用
6)集中から地域分散、低密度の自然エネルギーは分散利用、評価はEPRで「量より質」
7)石油依存農業の見直し、日本列島の有効活用、分散社会への技術、地産地消の立体農業
8)先ず減量、循環社会3R;Reduce(減量)Reuse(再利用)Recycle(リサイクル)の最初のR
9)効率優先の見直し、集中から地域分散、自然と共存をはかる、これは60倍の雇用を
10)GDP成長より心豊かに、もったいない、ほどほどに、人の絆を重ずる「幸福度、GDH」
以上