エントロピーの法則と永久機関、そして地球の資源

「エントロピーの法則を理解すると、現代文明の限界とその本質が理解され、未来への理念すら見えてくる」

 自然現象では、物質は常に拡散、分散する。その方が起こりやすいからで、赤インク一滴をコップの水に落とせば、拡散して赤からピンク色へ薄くなる。これは水分子が振動しているからだが、拡散したインクが自然に一箇所に集まる、元の一滴になることは絶対に無い。これは経験からわかること、我々は常識として知っている。

この濃縮された状態を、エントロピーが低いと言う。その逆の分散した状態をエントロピーが高いという。つまり自然現象は常にエントロピーが高い方向へと進む、その一方向性は絶対であり、それをエントロピーが増大する、という。エントロピーとは、状態を指す言葉である、このあたり前を、難しそうにエントロピーの法則というのだが、これが経験則であると理解することが大切である。

このように自然現象は、常に起こりやすい方向に進むが、それは確率が高い方向に進むということで、たとえば細かく千切った紙を手元から落とすと、床に散らばる。その形はいつも違うが、それも確率的である。一箇所に集中する確率は、完全にはゼロでない。しかし奇跡的に起こりうるが、それを「奇跡」というのであろう。

このエントロピーの法則は熱力学で教わる。それは熱が拡散し平均化、環境温度になる現象にふかく関連するからで、熱力学の第二法則と言われている。これに対し、第一法則とは、エネルギーの保存則で、これは量に関する法則なのである。つまり第一法則が量、第二法則が質についての法則である。

 このエントロピーは自然現象の状態を表すもので、自然の拡散、質の劣化を表している。エントロピーの法則がかって永久機関論を完全否定したのである。むしろ、そのために考えられた原理と言ってもよい。

海水の低温の熱を集め濃縮することができれば、その高温の熱で蒸気機関を運転できる、熱源は海だから永久運転が可能となる、そのような技術があれば、船を永久に運転出来る、そのような永久機関の幻想を最終的に葬り去ったのがエントロピーの法則、熱力学の第二法則である。

繰り返すが、これは経験則、人間が自然を観測することによって知った知識である。数学で証明することではない。 原理的にとても簡単なことなのである。

だが、それを理解しない人が最近多いようである。 新エネルギー技術と称して、分散したエネルギーを濃縮する技術開発、イノベーションなど、たとえば太陽エネルギーは膨大、人類が使う全エネルギーの一万倍も降りそそいでいる、そのための太陽発電、メガソーラシステムなどだが、これは量の話、濃縮のためのエネルギーを忘れないことである。海流エネルギー、海水温度差発電などもそうである。

これらは高エントロピーを低エントロピーにする話、技術であるが、それには質の良いエネルギー投入が必須である。 技術でエネルギーは創造されないのである。

 ここで大事なのは、投入エネルギーと出力エネルギーの比である。以前から、EPR(Energy Profit Ratio)と呼ばれてきた。これが1.0以上でなければならない。文明維持には10は必要とされる。

石油、天然ガス、石炭などの炭化水素資源は、自然の濃縮の営みの結果、恵みである。最近話題のメタンハイドレートなどはそうではない。金属資源も地殻に大量にあるだけでは資源といえない。 金、銀、鉄などの有用資源とは、自然に濃縮された状態であり、それを鉱脈、鉱床などという。今地球規模で、そのような濃縮された良い資源が減耗している。

地球は有限、資源は質が全て、
http://www1.kamakuranet.ne.jp/oilpeak/oil_depletion/netenergy.html



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