資本主義は成功するがゆえに自壊する

田村八洲夫 

テーマの言葉は、経済学者シュンペーターの著書(1942)にある名言である。21世紀の今日、現実的な意味を持つ。

 一般論的に言えば、資本主義経済は、累積的成長によって成功する。しかし、地球が有限な資源と環境収容力が有限であるがゆえに、資本主義経済は「成長の限界」に至り、それ以上に成長できず、自滅していく宿命にある。資本主義の「遺伝子」のように譬えられよう。

文明史が語るように、豪華を極めた者には滅びる道しかない。「勝者必衰の理」(平家物語)である。

資本主義の盛衰を振り返ってみる

資本主義は石炭によって18世紀末に勃興し、20世紀になって、石油によって高度成長して豊かな社会生活の実現に成功した。ともに潤沢(EPRが高く、限界コストが殆どゼロ)で安価なエネルギーによるもの。ところが、「石油の有限・稀少が分かり,EPRが低下し、価格が上昇すると、資本主義の経済成長は安定から低迷するに至った。1970年以降である。

資本主義とは、資本が資源エネルギーと労働を支配し、利潤累積と拡大再投資/生産するシステム。この原理は経済が低迷しても変わらず、資本主義延命のために、エネルギーは石油代替と原発に求め、労働搾取の強化によって利潤累積に走る。しかし増大する資本の投資先が縮小し、資本主義の実体は景気好循環の軌道から外れていく。労働者を低賃金に抑え込むが、消費者として購買依存するという矛盾がつねにつきまとう。それゆえマネーゲームに走る。こうして資本主義の健全な生命力が衰退していく。

その上、環境破壊による砂漠化、中間層の没落、地方疲弊、人心荒廃が蔓延し、そして世界的に貧困格差と憎悪の深刻化、海外市場の衝突・戦争危機を拡大している。資本主義の存立条件を自ら狭めている。

こうして、石油ピークの現在、資本主義経済は、新たなシステム「シェアリングエコノミー」を孕みながら、自壊の道を下っている。

 

シェアリングエコノミーの出現

冷戦後、インターネットの出現により、シェアリングエコノミー(共有経済)という新たな経済システムが広がっている。

資本主義の原理は、利潤の最大化のため、資本による資源エネルギーと労働の、高効率の垂直統合支配である。

それに対してシェアリングエコノミーは、インターネットが進化した今日、中央管理(サーバ)必要としないで、人々がパソコン端末で直接に結び付く、「共感・協働によるグローバルな水平連携」を原理とする経済システムを可能にしている。AI、ブロックチェーンを駆使したIoTはその強力なツールとして技術成長している。資本主義で定着してきた、もの作りの方法から銀行機能までが、ガラッと変わる。生産者と労働者の関係もガラッと変わる。

シェアリングエコノミーの機能とビジネスモデルを、資本主義の枠内に閉じ込めて企業の収益事業にしようとする大企業の動きが起こっている。「共有」を「私有独占」に閉じ込めて利益を得ようとする。グローバル水平連携のビジネスを、排他的な垂直統合支配に組み込もうとする。相矛盾することをいつまでも内包できるわけがない。

P2P(pear to pear)の総合知は、私欲の知恵を必ず凌駕する。

 

シェアリングエコノミーで豊潤な日本をとりもどす

 近い将来訪れるシェアリングエコノミー時代は、我が国でエネルギーと食料の自給を取り戻せる機会である。アンケート調査によると4割以上の都市サラリーマンが折あれば地方に戻りたいようだし、ロボットAIの普及で技術的失業者が50%になるとの予測がある。

これら、大都市から地方へ専門的な知識・技量を有する人々の労働移動が進むと、地方地域再生の力となるのは自明である。

沈みゆく石油文明を地域自然エネルギーで乗り越え、地方と都市の共存共栄、風土を生かした環境整備と、国民生活の豊かな日本社会を取り戻す。

・脊梁山地から海浜に至る流域に、バイオリージョンとして風水と地力、生態の循環を取り戻す。

・地域自然エネルギ-を創意的に開発し、エネルギーの地域自給を実現する。

・食料自給を達成する。立体農業、田園都市農業、救荒栽培を普及させる。

・IoTにより、プロシューマ―による生産様式に、大量生産方式から、3Dプリンターによる小規模生産方式に転換する。

 

詳細は、筆者が出版の「シェアリングエコノミー」(幻冬舎の新書版、3月13日発売)を参照いただきたい。 人類史全体を俯瞰し、「技術とエネルギーと経済システム」の一体的な動向予測に基づいた「未来社会論」である。

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