石炭火力より発電コストの高い再エネ電力がいますぐ用いなければならないとされています。これは、科学技術の矛盾以外の何ものでもありません
|東京工業大学名誉教授 久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎
(要約);
現代文明生活を支えている化石燃料資源は、いずれ枯渇します。この化石燃料資源枯渇後、その代替となるエネルギー源は、再生可能エネルギー電力(以下、再エネと略記)と考えられます。しかし、この再エネ電力の利用が実用化されるのは、現在、最も安価に利用されている石炭火力電力の発電コストより安価になってからでなければなりません。にも拘らず、現状で、石炭火力より発電コストの高い再エネ電力を、いますぐ用いなければならないとされています。これは、科学技術の矛盾以外の何ものでもありません。
中国の独裁政治の指導者習近平氏が提案する世界政治のエネルギー政策を考慮した世界のエネルギー消費の現状および将来のあるべき方策を考慮した正しい消費政策を実行した場合の、世界のエネルギー消費政策の実行では、世界のエネルギー消費量の最小化が求められています。
(解説本文);
世界の2018年の電源構成を表1 に示しました(文献 1 参照)。
表1 電源構成(世界2018年)
この表1に示すように、電源構成のなかの石炭火力発電の比率が38.2%と最も大きな値を示すのは、その発電コストが最も安価だからと考えるべきです。化石燃料資源の枯渇が迫り、その代替として再生可能エネルギーを用いた電力が用いられようとしている現在、また、このようなエネルギー政策が利用されようとしている今後も、同様のエネルギー政策が実行されようとしている現状が、今後も継続すると考えると、この傾向は、将来も続くと考えられるべきです。すなわち、世界の政治が主張しているようにIPCCの主張に従って、再生可能エネルギー電力を今すぐに、また今後とも使用する必要は存在しないと考えるべきです。にも拘わらず、政治のエネルギー政策は、科学的に起こり得ない地球温暖化の脅威を、科学の真理だとして、この科学の真理に基づいて、温暖化の脅威が必ず起こるとする国連の下部機構であるIPCCの主張に従って、化石燃料の枯渇が迫ろうとしているいま、そして、将来も、政治のエネルギー政策を、安価な石炭火力に頼らない方法、即ち電力生産コストの高い、経済的に不利な方法に依存しようとしています。このエネルギー政策の経済政策上の問題点についてもきちんと整理しておく必要があると私どもは考えます。、
現代文明生活を支えている化石燃料資源は、いずれ枯渇します。この化石燃料資源枯渇後、その代替となるエネルギー源は、再エネ電力と考えられます。しかし、この再エネ電力の利用が実用化されるのは、現在、最も安価に利用されている石炭火力電力の発電コストより安価になってからでなければなりません。にも拘らず、現状で、石炭火力より発電コストの高い再エネ電力を、いますぐ用いなければならないとされています。これは、科学技術の矛盾以外の何ものでもありません。有限の化石燃料資源として石炭の採掘コストが高くなり、再エネ電力の発電コストが、石炭火力発電のコストを上回るようになって初めて、再エネ電力が使用されるべきなのです。
<引用文献>
- エネルギー・経済統計要覧(日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編)2021版、省エネルギーセンター2021年
ABOUT THE AUTHOR
久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。
著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
E-mail:biokubota@nifty.com
平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
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