「コロナ禍」で、人類が生存の危機を迎えるなかでも、地球温暖化の脅威を引き起こすとされる「日本の石炭火力発電技術の開発・利用」は排斥されなければならないでしょうか?

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ 「コロナ禍」で、世界経済の成長が抑制され、「地球温暖化」の原因物質とされるCO2の排出量が大幅に削減されるなかで、日本の石炭火力発電技術の開発・利用が、人類生存の危機をもたらすとして国際的な非難を浴びています

⓶ 日本の石炭火力発電所の新設計画が、「地球温暖化の脅威」を引き起こすとされる世界のCO2排出量を増やすことはありません。にもかかわらず、上記(⓵)の「グレタ世代」の活動を支持する新聞は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)がつくり出した温暖化がCO2に起因するとの科学の仮説を鵜呑みにしている非科学的な「グレタ世代」を含む環境保護NGOなどの脱石炭活動を支持する報道をしています

⓷ 日本の石炭火力発電技術の輸出は、もし、IPCCが主張する温暖化のCO2原因説が正しかったと仮定しても、世界のCO2の排出削減に貢献していますから、温暖化を促進するとして、「グレタ世代」に非難される理由はありません

⓸ 温暖化の原因とされるCO2を大量に排出するとIPCCが訴える石炭を含む化石燃料を、私どもが主張するように(私どもの近刊(文献 2 参照))、世界各国が協力して、公平に分け合って大事に使えば、温暖化の脅威は起こりません。温暖化より怖い貧富の格差を解消するために、日本の石炭火力発電技術を有効に使いましょう

 

(解説本文);

⓵ 「コロナ禍」で、世界経済の成長が抑制され、「地球温暖化」の原因物質とされるCO2の排出量が大幅に削減されるなかで、日本の石炭火力発電技術の開発・利用が、人類生存の危機をもたらすとして国際的な非難を浴びています

 ここで、「コロナ禍」とは、いま、人類の生存を脅かしている「新型コロナウイルス問題」が一向に収束しない厳しい現実を指すものです。この厳しい現実のなかで、朝日新聞(2020/4/20)の夕刊の第一面で、久しぶりに、グレタさんの顔写真入りで、

“ コロナ禍でも 私たちは動く 「グレタ世代」ネットも駆使し訴え”

と報道しました。一昨年、地球温暖化問題で世界を騒がせたグレタ・トウンベリーさんに洗脳された日本の若い活動家が、電力生産での日本の石炭火力発電の開発・利用廃止を訴えていると報じたのです。具体的には、建設中の横須賀石炭火力発電所の建設の中止を訴えて、いま、政府が、「新型コロナウイルス問題、以下「コロナ禍問題」と略記」」の発生により、3密(密集、密閉、密接)の回避のために自粛を要請されているデモ活動を、規模を縮小して行うとともに、ネットを使った地球温暖化を防止するための日本での石炭火力発電の開発・利用の廃止を訴えていることを報道しています。

しかし、この石炭火力の廃止と、「コロナ禍問題」とは、本来、何の関係もありません。それどころか、この「コロナ禍問題」の発生による世界経済成長の抑制で、温暖化の原因物質とされるCO2の排出量が大幅に削減されています。したがって、今年は、温暖化が進行しないことが期待されます。もし、それでも、温暖化が進行したとすれば、温暖化の原因がCO2に起因するとのIPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)の主張が否定されることになります。そうなれば、「グレタ世代」の活動家の皆さんには、温暖化防止対策としてのCO2の排出削減の活動は当分見合わせて、そのエネルギーを、この恐ろしい「コロナ禍問題」の収束のために使うことを考えて頂いた方がよいのではないでしょうか?

例えば、いま、「コロナ禍問題」の解決を目的とした3 蜜を回避するための休校の問題にどう対処したらよいかについて考え、具体策を提案して頂くのはどうでしょうか?グレタさんらは、温暖化対策の実行を迫るために、学校を休んで、外に出てCO2 排出削減を政治に訴えたのです。「コロナ禍問題」での3密回避のために求められている休校が実施されるなかで、必要な教育を行う方法を、教育を受ける立場から提案し、実行して頂くことです。ただし、ここで言う教育とは、自分の頭で考える能力を養うことです。大人の、特に、権力者の言うことを、そのまま受け入れる能力を養うことではありません。いま、グレタさんらの活動の根拠となっている「地球温暖化防止のためのCO2排出削減対策」についても、それは、IPCCが主張する科学の仮説なのです。世界各国がお金をかけて、CO2排出削減努力をしてもIPCCが主張する温暖化の脅威を防止できるとの保証はどこにもないのです。もし、IPCCの主張が正しかったとしても、お金を使わないで、CO2の排出を削減させる方法は、私どもが提案している、化石燃料消費を節減すること、すなわち、世界経済の成長を抑制することで、それ以外にないのです。

いま、たまたま起こった「コロナ禍問題」が、世界経済をマイナス成長に導いていますから、IPCCが温暖化の原因になると主張しているCO2の排出量は大幅に減少しています。すなわち、温暖化の防止のためにCO2排出削減にお金を使う必要はないのです。そんなお金があるなら、いま、「コロナ禍問題」で大きな足かせになっている医療崩壊を防ぐために使うことで、一刻も早くこの問題の収束を図るべきです。人類の生存にとって本当に怖いのは「コロナ禍問題」です。取り敢えず、「コロナ禍問題」の収束に、全力を傾けるべきです。

 

⓶ 日本の石炭火力発電所の新設計画が、「地球温暖化の脅威」を引き起こすとされる世界のCO2排出量を増やすことはありません。にもかかわらず、上記 (⓵) の「グレタ世代」の活動を支持する新聞は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)がつくり出した温暖化がCO2に起因するとの科学の仮説を鵜呑みにしている非科学的な「グレタ世代」を含む環境保護NGOなどの脱石炭活動を支持する報道をしています

 日本の石炭火力発電所の新設計画が国際環境NGOなどからパッシングを受けるようになったのは。一昨年(2018年)の暮れの[パリ協定のCO2排出削減目標を協議するCOP 25(第25回気候変動枠組締約国会議)]の時からです。

日本エネルギー経済研究所編のEDMCエネルギー・経済統計要覧(以下、エネ研データ(文献 1 )と略記)に記載のIEA(国際エネルギー機関)の世界の電源構成の発電量ベースのデータから求めた各国の「発電量(合計)のなかの石炭火力発電量の比率」を示した表 1 に見られるように、日本の2009年の値が、最近(2017年)の世界平均34.5 % に近い33.2 % にまで上昇しました。これは、先進諸国が、温暖化対策として、電源構成のなかの石炭火力の比率を低下させる努力をしてきたのに対し、日本は2011年の福島原発事故で失われた原発電力の代わりとして、発電コストの安価な石炭火力への依存率を増加させたためです。西欧先進諸国が、温暖化対策として、石炭火力の代わりに単位発電量当たりのCO2排出量が石炭火力の6割程度の天然ガスの利用を増加することができたのに対して、日本では、天然ガスを高価な液化天然ガス(LNG)として輸入しなければならない事情があって、それができませんでした。

 

表 1 世界および各国の発電量合計のなかの石炭火力発電量の比率、2009 年、2017 年、%

(エネ研データ(文献 1 )に記載のIEAによる世界の電源構成(発電量ベース)の

データを用いて計算しました。)

それにしても、表1 の2017年の日本の電力構成のなかの石炭火力の比率は、世界平均を僅かに上回る程度ですし、省エネ努力の結果として、日本で、温暖化の原因とされるCO2排出総量の世界合計に対する比率が、エネ研データ(文献 1 )に記載のIEA データに示される2009年の3.71%から、2017年には3.48 %に減っていることを考慮すると、日本が温暖化対策に熱心でないとして非難される理由を見出すことができません。

にもかかわらず、この「グレタ世代」の日本の石炭火力利用の非難に賛同の意を表す朝日新聞(2020/4/20)は、同じ日の朝刊で、その見出しを

日本の石炭火力輸出 岐路  ベトナムの計画 海外勢撤退「生活脅かす」現地でも 投資の石炭離れ加速

とする記事を載せていました。

日本が中心となって進められているベトナムの石炭火力発電事業に参加予定の海外の企業や金融機関が、昨年の暮れに、相次いで手を引くと発表したのです。これは、温暖化問題で石炭火力離れが進んでいる欧米各国政府の意向を反映したものです。国内においても、上記 ⓵ の「グレタ世代」を支持する地球環境NGOや、環境省のお役人までが、「脱石炭」で足並みをそろえて、日本の石炭火力発電技術の途上国支援に反対するようになり、その投資での「石炭離れ」が起こっているようです。また、この日本の石炭火力が輸出された現地での反対運動についても報じていますが、それは、発電所の建設立地による、生活基盤の農地を奪われた住民の反対運動を支援する国際環境NGOなどの主張をそのまま報じたものと考えられます。さらには、石炭火力による大気汚染まで報じられていますが、少なくとも日本の新鋭火力発電技術であれば、石炭火力の排ガスは、水洗処理されていて、大気汚染問題は存在しません。

いま、世界中から反対されている日本の石炭火力技術の開発・利用の現状を報じているこの新聞記事は、IPCCの主張を鵜呑みにして、同日に報道した「グレタ世代」の「脱石炭」活動を無批判に支持するものと言ってよいでしょう。

 

⓷ 日本の石炭火力発電技術の輸出は、もし、IPCCが主張する温暖化のCO2原因説が正しかったと仮定しても、世界のCO2の排出削減に貢献していますから、温暖化を促進するとして、「グレタ世代」に非難される理由はありません

ところで、上記(⓵,⓶)したように、地球温暖化を促進するとして、海外の地球環境NGOからだけでなく、国内の「グレタ世代」からも攻撃されているのが日本の石炭火力発電技術の輸出です。しかし、この日本の石炭火力発電技術の海外への輸出は、もし、地球温暖化がCO2に起因するとのIPCCの主張が正しかったと仮定して、世界のCO2排出削減に、したがって、地球温暖化の防止に貢献するとの、あまり知られていない事実をお知らせしなければなりません。それは、日本の石炭火力の超臨界発電技術が、いま、世界一高い発電効率を持っているからです。

エネ研データ(文献1 )に記載の世界の電源構成のデータから次式で計算される2017年の

(発電効率)=(発電量)×(860 kcal/kWh)/ (燃料投入量(一次エネルギー換算値))  ( 1 )

の値を表 2 に示しました。

 

表 2 世界および各国の石炭火力発電での発電効率の値、2017年、%

(エネ研データ(文献 1 )に記載のIEAによる世界の電源構成のデータをもとに、本文中の ( 1 ) 式を用いて計算しました)

この表 2 に見られるように、日本での値が、世界一高い発電効率の値を示します。すなわち、この発電効率の高い日本の優れた火力発電の技術を世界各国、特に、発電効率の低い途上国に移転することで、CO2の排出量が大幅に削減できるのです。

したがって、もし、IPCCが主張する温暖化のCO2原因説が正しかったと仮定しても、温暖化の進行を防止できますから、「グレタ世代」に、温暖化を促進するとして非難される理由はありません。それどころか、むしろ、その開発・利用が推奨されるべきだと私どもは考えます。

 

⓸ 温暖化の原因とされるCO2を大量に排出するとIPCCが訴える石炭を含む化石燃料を、私どもが主張するように(私どもの近刊(文献 2 参照))、世界各国が協力して、公平に分け合って大事に使えば、温暖化の脅威は起こりません。温暖化より怖い貧富の格差を解消するために、日本の石炭火力発電技術を有効に使いましょう

いま、「コロナ禍問題」で、世界経済の成長が大きく抑制されるなかで、成長のエネルギー源としての化石燃料消費を節減すれば、結果として、IPCCが温暖化の原因だとしているCO2の排出を削減することができます。したがって、温暖化の脅威とされるCO2の排出削減に貢献する日本の火力発電技術の海外輸出を批判する活動も不必要となるのです。

いま、人類にとって最も大事なことは、人類の生存を脅かしている「コロナ禍問題」の収束に全力を尽くすことですから、取り敢えず、感染防止の3 蜜の回避により経済活動が大幅に減退するなかで、究極的な感染防止のためのワクチンの開発と製造、および、コロナウイルス退治の医療活動に全力を尽くしている現状では、温暖化対策としてのCO2排出削減をしている余裕はないはずです。もし、そんな活動が必要だとしたら、それは、「コロナ禍問題」の収束後の経済の回復が要請される時でしょう。

しかし、現代文明社会を支えていたエネルギー源としての化石燃料の枯渇が迫るなかで起こった「コロナ禍問題」が収束しても、安倍首相が言う経済のV字回復は起こらないのです。無理に経済を成長させようとして、赤字国債を発行すれば、基礎的財政収支(プライマリーバランス)がとれなくなり、日本経済の破綻を招くことになります。

化石燃料資源の枯渇が迫り、世界経済の成長が抑制されるなかでは、世界の全ての国が協力して化石燃料消費量を2012年の値以下に抑えるとする私どもが提案する「化石燃料消費節減対策」を実行すれば、IPCCが主張するような温暖化の脅威は起こらないのです。いま、「グレタ世代」を含む緩急保護派に排斥されている日本の石炭火力発電は、現状で、最もコストの低い発電方式です。その燃料石炭は、化石燃料のなかで最も確認可採埋蔵量の大きい資源です。当分の間、電力の生産を、石炭火力に頼り、この石炭火力の発電コストより安価になった再エネ電力の種類を選択して、それのみに依存する世界にソフトランデイングすればよいのです。詳細は、私どもの近刊(文献 2 )をご参照下さい。

 

<引用文献>

  1. 日本エネルギー経済研究所 計量分析ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧、2019、省エネルギーセンター、2019年
  2. 久保田 宏、平田賢太郎;温暖化物語が終焉します いや終わらせなければなりません 化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります 電子出版 Amazon Kindle 版 2019 年、9 月

 

ABOUT  THE  AUTHOR

久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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