「PCR検査の徹底」による「新型コロナウイルス問題(以下「コロナ問題」と略記)」の速やかな収束こそが、この「コロナ問題」で、経済活動の再生を優先させて、財政赤字を積み増している日本経済を破滅の淵から救う唯一の道です
|東京工業大学名誉教授 久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎
(要約);
⓵「新型コロナウイルス問題(以下「コロナ問題」と略記)」が、何時、収束するか判らない、感染の第二波とよばれる深刻な状態に入りました
⓶「コロナ問題」で落ち込んだ日本経済の再生のためには、「コロナ問題」を速やかに収束させるための「PCR検査の徹底」以外に方法がありません
⓷いま、安倍政権は、「コロナ問題」で落ち込んだ日本経済を再生しようとして、国家財政の破綻を招こうとしています。「PCR検査の徹底」による「コロナ問題」の速やかな収束を図ることが、この国の財政破綻のリスクを救う唯一の道です
(解説本文);
⓵「新型コロナウイルス問題(以下「コロナ問題」と略記)」が、何時、収束するか判らない深刻な状態に入りました
「新型コロナウイルス問題(以下「コロナ問題」と略記)」について、日本は、EU諸国に較べて、やや遅れてやってきた、いわゆる第一波の襲来では、3密回避の対策として、EUや中国におけるようなロックダウン(都市封鎖)の方式によらずに、政府による全国一斉の緊急事態宣言(2020年4月7日)の下での「外出自粛の8 割減」の要請に対する国民の忠実な協力によって、感染者数の顕著な減少に成功しました。この結果に安心した政府は、各都道府県別の一日当たりの感染者の増加数が、東京都などでゼロが達成できない条件下で、緊急事態宣言を全国一斉に解除(5月27日)するとともに、「外出自粛制限」の条件を緩和しました。その途端に起こったのが、東京都を中心としたキャバクラなどでのクラスター(集団感染)の発生による感染者数の急増でした。東京都では、このクラスターの発生場所を主体に、感染の有無を調べる「PCR検査」の数を増加しました。しかし、その結果が、「PCR検査」数を増加すればするほど、却って、感染者数の増加が続いています。やがて、この感染者数の増加は、東京以外の大都市にも広がり、さらに、全国にも移行して、感染拡大に歯止めがかからなくなりました。より、問題なのは、感染が、キャバクラなどと関連のない、感染経路の判らない年齢層にまで広がり、さらに、最近は、重症者数が増加しているようです。この現状を捉えて、すでに、何時、パンデミック(感染爆発)が起こってもおかしくない「コロナ問題」の第二波に入ったと言わざるを得ない深刻な状態に陥ったと警告する感染症の専門家も居られます。
⓶「コロナ問題」で落ち込んだ日本経済の再生のためには、「コロナ問題」を速やかに収束させるための「PCR検査の徹底」以外に方法がありません
いま、政府は、「コロナ問題」で落ち込んだ日本経済を何とか回復させようと躍起になっています。具体的には、「コロナ問題」で減少した消費を回復させようとしています。景気の回復です。「コロナ問題」で、進まなくなったアベノミクスのさらなる経済成長戦略を元に戻すことです。具体的には、「コロナ問題」を収束させるための3密回避の「外出自粛要請」の緩和です。飲食業等の休業や営業時間の短縮要請などの撤回です。この3密回避要請の結果として、廃業や失業を余儀なくされる人々に対する国費による経済的な補償のためだけてなく、「コロナ問題」発生以前の営業利益を国が保障するとして、「コロナ問題」で落ち込んだ景気を回復させるために、欠陥品を含むアベノマスクとともに緊急に全国民に配布された一人一律十万円を含めた「コロナ問題」の対策費として、50 兆円を超す金額が今年度の補正予算として計上されました。
この「コロナ問題」の完全な収束のためには、コロナウイルスのワクチンと治療薬の開発が必要だとされ、各国が、「コロナ問題」の発生の直後から、その開発とその使用での安全性を含めた実用化の努力を行っています。しかし、その実用化までには、2、3年はかかるとされています。すなわち、上記の「コロナ問題」での経済の落ち込みを回復させるための対策費は、この「コロナ問題」を収束するために必要な年数に比例して高くなるはずです。
これに対して、日本での「コロナ問題」が、上記(⓵)したように、その第一波で収束していたら、国民への補償金額としての「コロナ問題」の対策費は、殆ど使わないで済んだはずです。しかし、すでに第二波に入った現状で、この国の補償金額を極力少なくするには、何とかして「コロナ問題」を速やかに収束する方法を用いる以外にありません。その方法として唯一考えられれるのが、私どもが提案する「PCR検査の徹底」です。具体的には、コロナウイルスへの感染の有無を調べる「PCR検査」を国民の全てに対して実施することです。
いま、安倍首相は、「PCR検査」の数を2万件/日まで増やすとしています。しかし、これを1.25億の全国民に実施するには、
( 1.25×108 )/(2×104)/(365 日/年)=17.1 年
もかかります。したがって、この「PCR検査」を速やかに、例えば、2カ月以内に実施するとすると、国内の「PCR検査」の能力を、現在の目標値の
( 17.1×12 月)/(2 月)=42.6倍
の約80万件/日に増やす必要があります。これではとても実行不可能に見えるかもしれませんが、先ず、感染者が発生している地域を中心に、緊急事態宣言の発令の下での3密回避のための「外出自粛要請」などとともに実施すれば、必要な「PCR検査」数を何分の一かに減らすことができるでしょう。
この「PCR検査の徹底」の方法は、イタリアなどのEU諸国で、「コロナ問題」の第一波の襲来時に用いて、少なくも一時的に速やかに収束することに成功を収めました。ただし、この「PCR検査」での感染の有無の判定の精度が70 %程度とされています。すなわち、この検査で陰性と判定された無症状の感染者が新たな感染源になって、感染者数を増加させる可能性があるのです。実際にこの「PCR検査の徹底」の方法を用いて、一時的な収束に成功した西欧諸国などでも、経済の再生を図るためのロックダウンの解除により、感染者数の再度の増加による「コロナ問題」の第二波の襲来を招いています。しかし、この第二波での感染者数の増加は、さほど大きくないようで、感染発症地域に限定したロックダウンを含む、再度の「PCR検査の徹底」の実施で解決できると考えてよいでしょう。
ところで、いま、この「PCR検査の徹底」を非現実的だと訴える人々は、では、どうすれば「コロナ問題」を収束するかの代案を示していません。それは、感染者数の削減を図る方法は、この「PCR検査の徹底」以外にないからだと考えるべきです。したがって、この「PCR検査」の精度が’ 70 % 程度であることを承知の上で、この「PCR検査の徹底」の実施を、できるだけ効率的に実施して、「コロナ問題」の収束を図る以外に方法が無いと考えるべきです。
⓷いま、安倍政権は、「コロナ問題」で落ち込んだ日本経済を再生しようとして、国家財政の破綻を招こうとしています。「PCR検査の徹底」による「コロナ問題」の速やかな収束を図ることが、この国の財政破綻のリスクを救う唯一の道です
いま、この「コロナ問題」の収束を図るための「PCR検査の徹底」を、非現実的だと訴える人々のなかには、その理由として、この「PCR検査の徹底」の実施上のコストを問題にされる方が居られます。確かに、「コロナ問題」に対して何もしない場合に較べれば、この「PCR検査」の実施には費用が掛かります。しかし、それが問題になるのは、この「検査」の費用を個人が負担する場合です。この「PCR検査の徹底」の方法を用いて、見事な成功を収めているニューヨーク市におけるように、この費用を、全額、国(または地方自治体)が負担すれば、個人負担はゼロになります。
日本の場合、この「コロナ問題」による経済の落ち込みを防ぐためとして、上記(⓶)したように、政府は。50兆円以上もの国費(国民のお金)を、赤字財政のなかから支出しようとしています。これに対して、もし、「コロナ問題」の完全収束のための「PCR検査の徹底」の費用を1 件当たり3万円として、人口1.25 億の全員が2回「検査」を受けるとしても、合計金額は 7.5 兆円程度で済むのです。上記の「コロナ問題」による経済の落ち込みを防ぐための消費を煽る赤字財政の支出額 50 兆円の15 % 程度で済むのです。
いま、「コロナ問題」で、日本経済は、GDPを指標として、戦後最大の落ち込みを記録したとされいます。政府は、この経済の落ち込みを防ぐための失業、休業、さらには廃業の補償のために、上記したように、今年度だけで、50兆円以上もの国の財政支出を、赤字国債の発行で賄おうとしています。もともと安倍政権は、政治権力を維持するためのアベノミクスのさらなる成長戦略による国内景気を煽るインフレ対策として、多額の赤字国債を発行してきました。今回の「コロナ問題」による経済の落ち込みを防ぐための補正予算の支出予定金額50兆円超を含めて、今年度の赤字国債の発行額は90 兆円超にもなるようです。いままで、日本経済の成長を支えてきた化石燃料資源の枯渇が迫り、経済成長の抑制が要求される次世代に、このような赤字国債が積み増されれば、日本経済が大変なことになるリスクがあることを政府だけでなく、国民の多くも心配していないようです。
最近の朝日新聞(2020/8/19)に、同紙(文献1 )の編集委員の原真人氏は、この赤字国債の発行に関連して、 “ この赤字国債を裏付けるために際限なく発行される紙幣は、いずれ信用されなくなり、紙くずとなる。そして、財政は破綻に至る。率直に言って、この国のマクロ経済政策はいまや制御不能の状態である。国際通貨基金財政健全度指数ランキングで日本は188カ国ワーストワン。近い将来の財政健全化はどう見ても不可能だ。” と警告しています。
このような深刻な経済破綻のリスクは、「コロナ問題」が完全に収束されない限り続くのです。この状態を速やかに解消する方法は、「コロナ問題」の収束を図る「PCR検査の徹底」以外にないのです。すなわち、「コロナ問題」の収束を実現可能とする「PCR検査の徹底」が行われれば、「コロナ問題」による経済活動を再生するために必要な赤字国債の発行は必要がなくなり、上記の原真人氏が主張するような、日本経済を破綻の淵に導くリスクは無くなるのです。
いま、「コロナ問題」の収束のために有効な、この「PCR検査の徹底」の実施を阻んでいるもう一つの要因は、「PCR検査」を急速に増やした場合、この検査で感染者と判断された人の数が急激に増えて、それを受け入れる医療施設や医療スタッフの数が間に合わなくなるとの懸念です。しかし、かといって、国(政府)は、これを「PCR検査」数を増加させない理由にすべきでありません。医療設備の受け入れ態勢の整備ができる範囲で、検査数増加の計画を立てればよいのです。また、上記(⓵)したように、いま感染が全国に広がったと言っても、地域ごとに大きな違いがありますから、医療スタッフの数を全国規模で融通し合う余地が残っているのではないでしょうか?
したがって、いまの第二波の感染拡大が全国規模に拡大する前に、一刻も速く、この「PCR検査の徹底」の実施を進めるべきです。問題は、これをリードすべき政治の姿勢です。政治がその気になって最善の対策を急がない限り、「コロナ問題」の迅速な収束はできません。安倍政権は、医療現場から訴えられている「PCR検査の徹底」の実施も含めた「非常事態宣言」を各自治体からの要望も受け入れて、速やかに実施すべきです。また、「コロナ問題」が収束されれば不要となる経済活動の再生のためとして実施されているGo to トラベルなど、訳の判らない、「コロナ問題」経済活動の再生対策は即時廃止すべきです。
これができなければ、安倍首相の悲願でもあったはずの東京オリンピックの開催もできないだけなく、上記したように、日本経済を破綻の淵に追い込むのです。詳細は、私どもの主張(文献2 )をご参照下さい。
いま、安倍政権は、「コロナ問題」で落ち込んだ日本経済を再生しようとして、国家財政の破綻を招こうとしています。「PCR検査の徹底」による「コロナ問題」の速やかな収束を図ることが、この国の財政破綻のリスクを救う唯一の道です。これ(「PCR検査の徹底」)を実施しようとせず、日本経済を破綻の淵に陥れようとしている安倍政権には速やかに退いて頂く以外にありません。
<引用文献>
- 原 真人:「禁じ手」国債買い支え リスク直視せぬ 黒田日銀の罪、朝日新聞(2020/08/8/19),多事奏論
- 「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」に関する緊急のお願いです。この「コロナ問題」で延期された東京オリンピックの開催を決めるためには、全ての国民への「PCR検査」を実施して、ワクチンの完成を待たずに、速やかに、この「コロナ問題」を完全収束させなければなりません、シフトムコラム、22/07/06
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久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。
著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
E-mail:biokubota@nifty.com
平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
E-mail: kentaro.hirata@processint.com