COP 25 で2度の化石賞を授与された日本。 「パリ協定」でのCO2排出削減目標を化石燃料消費節減目標に替える提案を行うことで、化石燃料枯渇後の世界に、人類が生き残る道を示すべきです

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ COP 25 の協議の場で、2度の化石賞を授与された日本の「石炭火力の新増設計画」でのCO2排出量増加は、最大でも、現在の世界の温室効果ガス(CO2)排出量の0.286 % にしかなりませんから、化石賞を頂く資格はありません

⓶ 現代文明生活を支えてきた化石燃料の枯渇が迫り、世界経済の成長が抑制されるなかで、その「化石燃料消費の節減」によって実行可能となるCO2の排出削減が、温暖化対策のための世界のCO2の排出削減として求められています

⓷ 温暖化対策のCO2の排出削減のためとして、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)により推奨されている「CCS 技術」ですが、化石燃料資源の枯渇が迫り、世界経済の成長が抑制されるなかでの、その実用化は不可能と考えるべきです

⓸ 化石燃料の枯渇が迫り、経済成長が抑制されるなかでは、温暖化を防ぐためにCO2排出削減が必要だとしても、電力の生産では、化石燃料消費を節減するなかで、現在、最も安価な石炭火力の発電コストよりも安くなった再エネ電力の種類を選んで利用する以外に方法がありません

⓹ パリ協定のCO2排出削減目標を化石燃料消費節減目標に替えることが、化石燃料枯渇後の貧富の格差の無い平和な世界に人類が生き延びる唯一の道です

 

(解説本文);

⓵ COP 25 の協議の場で、2度の化石賞を授与された日本の「石炭火力の新増設計画」でのCO2排出量増加は、最大でも、現在の世界の温室効果ガス(CO2)排出量の0.286 % にしかなりませんから、化石賞を頂く資格はありません

いま、16歳の少女グレタ・トウーンベリさんが、地球温暖化を促進しないためとして、大西洋をヨットで横断して駆けつけたことで有名になったスペインのマドリードで開かれれたCOP 25(第25回国連気候変動枠組み条約締結国会議)で、石炭火力発電所の新増設計画を持つ日本が、連日厳しい批判にさらされたことが、国内でも広く報道されました。

12月15 日の朝日新聞朝刊は、その第3面で、このCOP 25について 「石炭火力批判浴びる日本」との見出しで、この件を大きく報じています。この記事によれば、“ COPの期間中、日本は環境NGOの国際ネットワーク「気候行動ネットワーク(CAN)」から2 回、温暖化対策に後ろ向きな国だとして、「化石賞」を贈られました。2回目の化石賞授与の理由は、この会議に出席した日本政府代表の小泉新次郎環境相がCOPで行った演説が対象で、「国際社会が求める脱石炭や温室効果ガス(CO2)排出削減目標の意思を示さなかった」こととされました。。

しかし、この同じ朝日新聞(2019/12/15)の記事によれば、「日本の石炭火力の新増設計画」によって排出されるCO2の総量は 年9,256 万㌧と推定さていますから、その量は、2016年の日本のCO2 排出量 1,147百万㌧の8.07 %で、いま世界の3.55%しかCO2を排出していない日本の世界に対するCO2排出増加量比率は、僅か0.286 % にしかなりません。このCO2排出量は、3.11 福島事故後失われている原発電力の代替としての新増設、および、同じ3.11 以後使われてきた老朽化した発電効率の低い石油火力発電の代替としての石炭火力の新増設が主体であることを考えると、実質的なCO2排出量の増加はほとんど無いと考えることができます。それだけでなく、下記(⓹)するように、私どもが提案する「化石燃料消費の節減提案」が実行されれば、容易に、COP 25が要求するCO2の排出削減が実現可能となるはずです。

したがって、今回のCOP 25 での日本の石炭火力の新増設計画に対する非難に対して、政府は、堂々と、上記の事実を訴えて反論すればよかったのです。それが、できなかったのは、今回の日本の石炭火力の新増設計画のなかには、政権維持の国内の景気回復のためのアベノミクスのさらなる成長のためのエネルギー源としての石炭火力の使用の目的があることを示さなければならない国内事情があったからではないでしょうか。

 

⓶ 現代文明生活を支えてきた化石燃料の枯渇が迫り、世界経済の成長が抑制されるなかで、その「化石燃料消費の節減」によって実行可能となるCO2の排出削減が、温暖化対策のための世界のCO2の排出削減として求められています

いま、世界の全ての国が経済成長を願って、その指標である国内総生産(GDP)の値を上昇させようと努力していると言ってよいでしょう。このGDPを経済成長の指標とするには問題がありますが、現状では、これ以外の指標が公表されていませんので、ここでは、IEA(国際エネルギー機関)が用いている2010年の米㌦価格を基準とした実質GDPの値を用いて、国際間の比較を行いました。

日本エネルギー政策研究所 計量分析ユニット編;エネルギー経済統計要覧(以下エネ研データ(文献1 )と略記)に記載のIEAのエネルギー統計データに記載された世界および各国の実質GDP当たりのCO2排出量の年次変化を図1 に示しました。この図 1 に見られるように、世界各国が、温暖化対策として、単位GDP当たりのCO2排出量の値を、年次減少させる努力をしていることが判ります。なお、このGDP当たりのCO2排出量の値に大きな違いがあるのは、いま、国際通貨の基準になっている米ドルとの為替レートに国別の違いがあるためでしょう。特に、現在、大きな経済成長を続けている中国とインドでのGDP当たりのCO2排出量の大きな値が目立ちます。

日本における、このCO2排出削減努力は、温暖化の脅威が言われるようになるずっと前の石油危機 (1973年から1978 年代にかけて) により、化石燃料の国際市場価格が高騰してからぐ始まったとみてよいでしょう。現代文明社会のエネルギー源である化石燃料のほぼ全量を輸入に依存する日本では、一気に10倍以上も高くなった原油価格に連動して高くなった化石燃料の国際市場価格に対処するための、その消費の節減努力が、結果として、CO2の排出削減になりました。これを言い換えれば、温暖化対策として確実にCO2の排出を削減するためには、「化石燃料消費の節減」が必要になることを示しています。

図 1 世界および各国の実質GDP当たりのCO2排出量の年次変化

(エネ研データ (文献 1) に記載のIEA統計データをもとに作成しました)

 

一方、化石燃料資源の枯渇が迫るなかでの経済成長を支えている[化石燃料消費の節減]は、経済成長の抑制をもたらすことになりますから、いま、温暖化対策として求められているCO2の排出削減は、世界の、特に先進国おける大幅な経済成長の抑制を必要とするとの厳しい現実が認識されなければなりません。

 

⓷ 温暖化対策のCO2の排出削減のためとして、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)により推奨されている「CCS 技術」ですが、化石燃料資源の枯渇が迫り、世界経済の成長が抑制されるなかでの、その実用化は不可能と考えるべきです

上記(⓶)したように、化石燃料の枯渇が迫り、その国際市場価格が高騰した化石燃料の消費を節減するための結果としてのCO2の排出削減が、温暖化対策としてのCO2の排出削減に利用されるように上がらなかったのは、1990年代の後半頃からです。しかし、図 1に示すように、その効果が思うようにならないなかで、てっとり早いCO2排出の削減方策として求められたのが、今回のCOP 25 の協議で、グテーレス国連事務総長が訴えた「石炭火力発電の段階的な廃止」でした。このCOP 25での「日本での石炭火力新増設計画」の批判を報じた上記(⓵)の朝日新聞 (2019/12/15) の記事で、さらに効率の良いCO2排出削減対策が必要だとして、” CO2回収する戦略 課題 “の小見出しで取り上げられたのが「CCS 技術」です。化石燃料(石炭)を用いる火力発電所の燃焼排ガス中からCO2を抽出、分離して、地中深く埋立てるこの技術は、確実にCO2の排出削減が実現できるとして、温暖化対策の必要を主張するIPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構) が早くから推奨していた方法です。

しかし、この「CCS技術」によるCO2の排出削減の実行にはお金がかかります。と言うことは、この方法は、世界の経済成長が継続する条件下でしか利用できないことになります。それだけではありません、いま、IPCCが地球温暖化対策として主張している2050年までにCO2排出量の実質ゼロを実現するためには、「CCS技術」が主な対象としている石炭燃焼排ガスだけでなく、全ての化石燃料の燃焼排ガスに対する「CCS技術」の適用が求められることになります。もちろん。科学技術の進歩で、CO2の抽出・分離による回収までのコストの低廉化目標は達成できるかもしれません、しかし、回収されたCO2の全量を、地下深く埋立てることは、とても大変で、経済的にも不可能と考えるべきではないでしょうか? 結局は、私どもが主張するように、当面は、CO2の排出源であ「化石燃料の消費の節減」に最大限の努力をするとともに、この化石燃料を代替する再生可能とよばれる自然エネルギーを利用することでCO2の排出削減を実行する以外ないのではないかと私どもは考えます。その詳細については、私どもによる著書(文献 2 )をご参照下さい。

今回のCOP 25は、成果の取り纏めに手間どって。会期を2日延長して、12月15日に閉幕しました。しかし、成果文書には、「パリ協定」のCO2の排出削減目標が強くうたえなかったと報じられています(朝日新聞2019/12/16)。さらにこの報道によると、図2 に示すCO2排出大国の中国、米国、インドなどが、具体的な大幅な排出削減目標を提示しなかったとされています。世界第2位の米国では、周知のように、トランプ大統領がパリ協定からの離脱を表明しています。第1位の中国は、第3 位のインドと、ブラジルや南アとともに、“我々は国情に基づいて野心的な気候対策を行っており、大きな進展をしている”として、さらなる目標の引き上げを否定したとされています。さらに、長期戦略を今年つくったばかりの同第 5 位の日本の政府は、引き上げの検討すらしていないとされています。

注;各国の数値の単位は、CO2 百万㌧、カッコ内数値は、それぞれの国の世界のCO2の排出量に対する比率 % です。

図 2 世界各国のCO2排出量

(エネ研データ(文献1 )に記載のIEA統計データをもとに作成しました)

 

しかし、この「パリ協定」でのCO2排出削減比率の引き上げに後ろ向きともみられる排出大国の態度を一概に非難できない事情があります。それは、いま、各国のCO2 削減目標が、それぞれの国の自主的な申告に任されていて、それぞれの国がどれだけCO2を削減すれば、目的とする温暖化の防止が実現できるかの具体的な方法が示されていないことです。本来であれば、いま起こっている温暖化がCO2に起因するとして、その対策を世界各国の政策担当者に訴えているIPCCが、実行可能なCO2排出削減の具体的な方法と、その目標数値を提示すべきなのに、それがなされていません。上記したように、実行の可能性の乏しい「CCS技術」の使用を推奨した上で、全ての国に、2050 年にCO2排出ゼロの野心的な目標を提示しろと訴えているだけです。

 

⓸ 化石燃料の枯渇が迫り、経済成長が抑制されるなかでは、温暖化を防ぐためにCO2排出削減が必要だとしても、電力の生産では、化石燃料消費を節減するなかで、現在、最も安価な石炭火力の発電コストよりも安くなった再エネ電力の種類を選んで利用する以外に方法がありません

いま、IPCCが推奨している温暖化対策としての「CCS技術」とは異なり、お金をかけないでCO2排出削減を実行可能にする方法は、私ども(文献 2 )が提案する「化石燃料消費の節減」以外にありません。しかし、現代文明社会の経済を支えてきたエネルギー源の「化石燃料消費の節減」では、上記(➂)したように、世界経済の成長が抑制されることになります。この成長の抑制を何とかして少なくするための電力の生産で、現在、最も発電コストの安い石炭火力発電の代わりに、いずれ、化石燃料の枯渇後にその実用化・利用が図られなければならないとされている自然エネルギーともよばれている再エネ電力のいますぐの利用が進められています。しかし、現状では、この再エネ電力の発電コストが高いとして、「再生可能エネルギー固定価格買取(FIT)制度」の適用の下での再エネ電力の利用・拡大が、国民のお金を使って進められているのです。

この「FIT制度」の適用による再エネ電力の生産では、生産電力の配送事業者(現在では旧電力会社)による買取金額分が、市販電力料金の値上として消費者から徴収される仕組みになっています。したがって、国内の供給電力合計のなかの再エネ電力の比率が高くなるにつれて、消費者の市販電力料金が、現状の石炭火力を主体とする市販電力料金に較べて高くなって行きます。

いま、この「FIT制度」を先行導入して、温暖化対策としての再エネ電力の生産増を図ってきたEU諸国では、この市販電力料金の値上に反撥する市民の力で、この「FIT制度」が廃止されました。日本でも、いま、その見直しとして、「FIT制度」での「再エネ電力」の買取価格の値下げが行われました。この「FIT制度」での再エネ電力の買取価格は、「FIT制度」適用の認定を受けた時の価格が維持されますから、すでに認定を受けた再エネ電力生産事業者は損をしないですむはずですが、これから新しく事業に参入する事業者は増えないことになり、再エネ電力の利用・拡大が進まなくなります。

これに対して、温暖化対策としてではなく、やがてその枯渇が近づき、その国際市場価格が上昇する化石燃料(石炭)を用いる火力発電の代替としての再エネ電力の利用であれば、その発電コストがより安価な再エネ電力を、その種類を選んで、「FIT制度」の適用無しで、順次、利用することを考えるべきです。

エネ研データ(文献 1 )に記載のBP (British Petroleum )社の「世界の新エネルギー供給」のデータには、世界および各国の風力、太陽光、地熱の各発電の設備容量の値の年次変化が記されています。この設備容量の値に、各発電種類別の設備稼働率の値を、風力で25 %、太陽光で11 %、地熱で70 % として乗じて、各再エネ電力について、

(再エネ電力の発電量 kWh)

=(発電設備容量 kW)×(8,760 h/年)×(設備稼働率 %)        ( 1 )

の値を求めて、世界および日本の再エネ電力の発電量の概算推定値を求め、それぞれ 図3 および 図 4 に示しました。

この図 3を見ると、いま、世界では、風力発電が、再エネ電力合計量の70 % 程度を占めていることが判ります。理由は、風力発電のコストが、現用の再エネ電力のなかで最も低いためです。これに対して、日本では、図 4に見られるように。発電コストが高いために、再エネ電力なかで最も高い買取価格がつけられた太陽光発電が、FIT制度の適用の下での利用・拡大が進められて、2017年の日本国内再エネ電力合計のなかの約80 % 近くを占めています。

図 3 世界の新エネルギー発電量(年間推定値)の年次変化

(エネ研データ(文献1 )に記載のBP社の世界の「新エネルギー供給」データをもとに作成しました)

図 4 日本の新エネルギー発電量(年間推定値)の年次変化

(エネ研データ(文献 1 )に記載のBP社の「新エネルギー供給」データをもとに作成)

 

さらに、この「FIT制度」に関連して、指摘されなければならない重要な問題があります。それは、この「FIT制度」の導入以前に、各再エネ電力種類別の導入ポテンシャル(可能量)を調査した環境省の報告書(文献3 )のデータから、私どもが上記の ( 1 ) 式を用いて推算した国内における太陽光発電の導入可能発電量の当時(2009年度)の国内総発電量に占める比率が、僅か13 % 程度に過ぎないことでした。「FIT制度」導入の直後、その導入の不当、不要を訴えた私ども(当時、そのような態度を公式に表明していたのは私どもだけでした)が、資源エネルギー庁のFIT制度の担当者に、この環境省の調査報告書 (文献3 ) の存在について尋ねたところ、知らないと言われて耳を疑いました。すなわち、地球温暖化対策としてのCO2排出削減のために進められている再エネ電力の利用・拡大の国策を担当していたお役人が、この国策の推進による再エネ電力の利用可能量に無関心に事業を進めているためです。

結果として、図4に見られるように、いま、再エネ電力の発電量のなかの80 % 近くを占めている太陽光発電のなかの家庭用以外の発電(メガソーラー)を利用・拡大するためとして、地域の環境保護ためにも、また、温暖化対策としてのCO2の吸収源としても貴重な役割を果たしている森林の破壊が全国各地で起こっているのです。つい最近、政府は。このメガソーラーへの「FIT制度」の適用除外を決めました。ところが、このメガソーラーの「FIT制度」の適用除外と同時に、その理由の説明がないままに、風力発電についても、「FIT制度」の適用が除外されました。上記したように、もともと、この「FIT制度」の不当・不用から、その廃止を訴えてきた私どもですから、この風力発電への「FIT制度」除外についても異を唱えるものではありません。とにかく、全ての再エネ電力の利用・拡大に対して不要な「FIT制度」は、即時、廃止されるべきです。ところが、この「FIT制度」見直しのなかで、海外からの輸入原料に依存するバイオマス発電へのその適用が継続されたままになっているのです。理由は、このバイオマス発電への「FIT制度」の適用による利用・拡大は、農水省の主導で進められてきたためではないかと考えられます。

なお、今後、「FIT制度」の適用無しでも、化石燃料枯渇後の再エネ電力の主役として使われるべき風力発電ですが、環境省の調査報告書(文献 3 )では、その導入ポテンシャル(可能量)が、洋上風力を含めると現在の国内総発電量の4.7 倍もあります。いま、この風力発電が、国内ではその適地が僻地にあり、送電線がないとの理由で、日本では、その利用・拡大が遅れています。しかし、原発の適地が、風力発電の適地と重なり、海岸にありますから、風力発電の新設で、原発電力の発電量を賄うことができます。すなわち、いま、政府と旧電力会社により進められている原発の再稼動が、市民の反対で断念されれば、その原発電力に相当する風力電力を既存の送電線を使って需要地に送ることが可能となるのです。

 

⓹ パリ協定のCO2排出削減目標を化石燃料消費節減目標に替えることが、化石燃料枯渇後の貧富の格差の無い平和な世界に人類が生き延びる唯一の道です

化石燃料の枯渇後、その代替となる再エネ電力の利用では、「FIT制度」の適用を廃止したうえで、現在の石炭火力発電より安価な発電コストになった再エネ電力を選択し、市場メカニズムで利用して、順次、その利用を拡大して行けばよいのです。

なお、この市場メカニズムによる再エネ電力の導入の課題として、上記(⓵)の朝日新聞(2019/12/16)に、途上国と先進国との間のCO2の排出権取引の問題が、来年のCOP 26 の協議課題として先送りされたと報じられています。もともと途上国と先進国の利害が対立する温暖化対策としてのCO2排出権取引は、市場メカニズムによって解決できない問題です。トランプ米大統領が「パリ協定」からの離脱を表明したのも、経済大国としての米国への途上国からの要求金額に科学的な根拠がなく、不当に高い支援金額が押し付けられようとしているからだとされています。米国内には、このトランプ大統領の対応を支持している科学者も多いと聞いています。同じような問題は、温暖化による海面上昇の問題にも現れています。スバル国に代表される住宅地域の海水面に対する相対的な沈下は、温暖化による海水面の上昇ではなく、都市人口の増加による地盤沈下の影響が主体ではないかと考えられます。東京都江東区の海抜ゼロ地帯の出現は、戦後の高度経済成長の初期、工場地帯であった同地域が、盛んに地下水を汲み上げた結果の地盤沈下によって生じたとされています。一度沈下した地盤は元に戻らないのです。すなわち、このスバル国の水没の問題は、「パリ協定」で要求されている世界のCO2の排出削減で問題が解決できるとの科学的な保証は存在しません。しかし、その原因はどうであれ、これらの国の住宅地に水没の危機が迫っているとしたら、その対策は、温暖化対策とは離れて、人道的な経済支援の問題として、先進国からの、技術的、経済的な支援で、政治的な解決が図られるべきだと私どもは考えます。

いま、地球上の人類の生存にとって、本当に怖いのは、世界中の気象学者が科学の真理だと主張しているするCO(温室効果ガス)排出量の増加によって起こるとされる地球温暖化ではなく、このCO2排出の原因となっている化石燃料消費の不均衡によって生じる貧富の格差です。この国際的な、あるいは国内での大きな貧富の格差が、宗教と結びついて、貧困国の内戦や、国際テロ戦争を引き起こしているのです。

現代文明社会を支えているエネルギー源の化石燃料の枯渇が、世界経済成長の抑制と、それに伴う貧富の格差をもたらす世界で、人類が生き延びるためには、世界の全ての国が協力して、残された化石燃料資源の消費量を均等に配分して大事に使いながら、その代替としての自然エネルギーに依存する、経済成長は抑制されますが、エネルギー資源を奪い合うことのない理想の平和な社会を創る以外にないのです。その具体的な方策として、私どもは、世界中の全ての国の一人当たりの化石燃料の年間消費量の2050年の値を、2012 年の世界平均の化石燃料の年間消費量 1.45㌧/人とすることを提案しています。この「化石燃料消費の節減対策」は、いま、トランプ大統領を除く全ての国の合意の下で進められている「パリ協定のCO2排出削減目標を、私どもが主張する「化石燃料消費の節減」目標に置き換える替えることと一致します。詳細は、私どもの近刊;「温暖化物語が終焉します。いや終わらせなければなりません(文献 4 )をご参照して頂きますが、この方法であれば、米国もお金を使う必要がありませんから、トランプ大統領も賛成して下さるはずです。これが、化石燃料の枯渇後の経済成長が抑制される世界で、人類が、貧富の格差のない理想の平和な世界に生き延びる唯一の道です。

温暖化対策としての各国のCO2排出削減目標の引き上げを、成果文書の中で強くうたえず、多くの協議課題を来年の英国のグラスゴーで開かれる予定のCOP 26に積み残したとされるCOP 25で、2度の化石賞授与の栄誉(?)に輝いた小泉環境相が、再び、日本政府の代表として、COP 26の協議の場に出席の機会が与えられることを前提としてのお願いです。どうか、この私どもの提案する「化石燃料の節減対策」を、米国のトランプ大統領を含む世界の全ての国に訴えることで、新しく改訂された「パリ協定」を成功に導き、世界の恒久平和への道を拓いて、いわれなき化石賞授与の栄誉(?)を挽回して頂くことを強く、強くお願い致します。

 

<引用文献>

  1. 日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧、2017 ~ 2019、省エネセンター、2017~ 2019年
  2. 久保田 宏、平田賢太郎、松田 智;改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉――科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する――
  3. 平成22年度環境省委託事業;平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書、平成23年3月、株式会社エックス都市研究所他
  4. 久保田 宏、平田賢太郎;温暖化物語が終焉します いや終わらせなければなりません、化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります、 電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月

 

ABOUT THE AUTHER

久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他

平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。

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