化石燃料枯渇後の正しいエネルギー政策立案のための一次エネルギー消費の概念に基づく「再エネ電力の(みかけの発電効率)」の求め方について提案します

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);     

⓵ やがてやってくる化石燃料資源の枯渇後、現代文明社会を担うと期待されている化石燃料代替の再生可能エネルギー(再エネ)電力の効用を表す、正しい一次エネルギー消費の概念とその表示の方法についての重要な提案です

⓶ (再エネ電力の一次エネルギー消費)の値を求めるための火力発電相当の(みかけの発電効率)の値を求める方法を提案します

⓷ 火力発電以外の再エネ電力の「一次エネルギー消費量」を求めるための火力発電相当の(みかけの発電効率)の値を決める「発電量の一次エネルギー消費量への換算方法」を提案します

⓸ 再エネ電力の正しい一次エネルギー換算の方法が確立して初めて、化石燃料枯渇後に用いられる経済的に有利な再エネ電力の選択・利用の方法が、すなわち、正しいエネルギー政策の推進が可能となるのです

 

(解説本文);

⓵ やがてやってくる化石燃料資源の枯渇後、現代文明社会を担うと期待されている化石燃料代替の再生可能エネルギー(再エネ)電力の効用を表す、正しい一次エネルギー消費の概念とその表示の方法についての重要な提案です

私どもの近刊(文献 1 )に記したように、現代文明社会における経済成長を担っているエネルギー資源としての化石燃料は、やがて、確実に枯渇の時を迎えます。この化石燃料資源の枯渇に備えて、エネルギー消費量の値を化石燃料(石油)消費量の値に換算して表すことが行われています。これが、いま、日本のエネルギー政策をつくる目的で編集されているはずの日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;エネルギー・経済統計要覧(以下エネ研データ(文献2 )と略記します)の書頭の「解説」に記載されているIEA(国際エネルギー機関)の統計データで用いられている「一次エネルギー消費」の概念(考え方とその使い方)です。

ところが、この「一次エネルギー消費」の概念が、エネ研データ(文献 2 )には明確に記述されないままに、この「一次エネルギー消費」量の算出の方法に、国内では、IEAが用いている国際的な方法とは異なった方法が使われています。

いま、産業革命以来、資本主義経済の成長を支えてきたエネルギー源としての化石燃料資源の使用の方法として、その便利さから、エネルギー形態の電力への変換と利用が進められています。この「一次エネルギー」の対語とされている「二次エネルギー」としての電力の生産に使われている火力発電用の化石燃料の持つエネルギー、すなわち、化石燃料の代表としての石油の消費量(トン数)に発熱量を乗じた値が「一次エネルギー消費(電力)」とされています。

具体的には、

(一次エネルギー消費(電力)kcal)

=(発電量kWh)×(単位発電量当たりの一次エネルギー消費量への換算係数 kcal/kWh)

( 1 )

として、

(発電効率)

=(860 kcal/kWh)

/(単位発電量当たりの一次エネルギー消費量への換算係数 kcal/kWh)    ( 2 )

で表される値が用いられています。ここで、860 kcal/kWhは電力の最終エネルギー(通常、計測可能なエネルギーの単位として用いられる)の値です。

ただし、エネ研データ(文献2 )の「解説」では、

(単位発電量当たりの一次エネルギー消費量への換算係数kcal/kWh)=(発熱量)      (3)

と記されています。

このエネ研データ(文献2 )に記載の国内における「一次エネルギー消費(電力)」の値を求める際の ( 2 ) 式の(発電効率)の値としては、2016年度は火力発電の発電効率の値として、41.46 % が用いられ、( 3 )式で(発熱量)とされている(単位発電量の一次エネルギー消費量への換算係数)の値が、2,074 (=860/0.4146)  kcal/kWh とされています。ただし、火力発電の発電効率の値は、発電用の燃料の種類(石炭、石油、天然ガス)により変わりますので、ここで用いられたのは、これらの燃料種類別の平均値と考えられます。しかし、正しい「一次エネルギー消費の値」を求めるには、電力種類別の値を計算して、合計する必要があります。

さらに問題になるのは、エネ研データ(文献 2 )に記載の国内統計データでは、火力発電以外の発電方式に対しても。この火力発電の発電効率の値が用いられるとしていることです。したがって、化石燃料が枯渇して、その代替として用いられる火力発電以外の発電方式の使用比率が大きくなる将来では、火力発電での(発電効率)をそのまま一次エネルギー消費換係数(=発熱量)として用いることには大きな問題があると考えるべきです。

これに対して、同じエネ研データ(文献 2 )に記載のIEA(国際エネルギー機関)の統計データでは、火力発電以外の電力の種類別に、(発電量の一次エネルギー消費への換算係数)=(発熱量)の値を、 原子力で 0.26 Mtoe/TWh(発電効率33 %)、水力他で 0.0286Mtoe/TWh(同100 %)、地熱は実効率に基づいた値もしくは、0.086 Mtoe/TWh (同10 %)を用いるとしています。ただし、エネ研データ(文献 2 )の 14年版以降で、地熱について、0.0286 Mtoe/kWhとありますが。これは明らかなミスプリントです。同じエネ研データの2013年版以前の0.086Mtoe/kWhとすべきです。また、このIEAによる「一次エネルギー(電力)の変換方法」では、火力発電以外の電力の種類別に異なった一次エネルギーへの変換係数を与える、(みかけの発電効率)の値が用いられていますが、これらの火力発電以外の(みかけの発電効率)の値がどのようにして求められたのかについては記述されていません。

それはともかく、化石燃料枯渇後の世界経済を支えると期待されている再エネ電力や原発電力に依存する社会での「一次エネルギー消費(電力)」の値を、正確に現在の化石燃料を用いる火力発電を主体とする世界の電力と比較するためには、ここで定義される世界の「一次エネルギー消費(電力)」の値を正確に算出する必要があります。そのためには、世界共通の指標としての(発電量の一次エネルギー消費換算係数)、すなわち、(みかけの発電効率の値)を決める方法が確立されなければなりません。これはまた、現在の経済を支える化石燃料のほぼ量を輸入に依存しなければならない日本における今後のエネルギー政策の立案のための重要な課題でもあります。

本稿では、先ず、私どもによる「一次エネルギー消費の概念」を明確に示すとともに、今後の日本のそして世界のエネルギー政策に大きな影響を与える「一次エネルギー消費量」の値を正しく算出する方法についての重要な提案を行います。

 

⓶ (再エネ電力の一次エネルギー消費)の値を求めるための火力発電相当の(みかけの発電効率)の値を求める方法を提案します

エネ研データ(文献 2 )に記載のIEA統計データには、世界および各国の電力種類別の(発電量)の値が、「世界の電源構成」の(発電量ベースTWh)の値として。また、その値に対応する(一次エネルギー消費量)の値が(投入量ベースMtoe)の値として記載されています。これらのデータから世界および各国の電力種類別の(発熱量(kcal/kWh)の値、および(みかけの発電効率)の値を、上記 (⓵) の ( 2 ) 式から導かれる次式で試算して、その結果を表 1 に示しました。

(発熱量 Mtoe/TWh )=(投入量 Mtoe )/(発電量 TWh)        ( 4 )

(みかけの発電効率 % )=(860 kcal/kWh )/ (発熱量 kcal /kWh)            ( 5 )

ただし、エネ研データ(文献 2 )より、 Mtoe (石油換算百万㌧)=1013 kcal、TWh= 109 kWhです。

 

表 1 世界および各国の電力種類別の(発電量)、(一次エネルギー消費(投入量)Mtoe )、および、これらの値から計算される(一次エネルギー消費換算係数)=(発熱量 kcal/kWh)、および(みかけの発電効率)% )の値、2016年 

(エネ研データ(文献 2 )に記載の1EA統計データをもとに計算して作成しました)

注; *1 ;本文中 ( 4 )式を用いて計算しました *2; 本文中 ( 5 ) 式を用いて計算しました

 

この表 1 に示す(発電量)の値は、全ての電力種類についての実績値ですが、(投入量)=(一次エネルギー消費量)の値は、上記(⓵)した、それぞれの電力種類別のIEA統計データーで決められた(見かけの発電効率)の値から上記 ( 4 ) および ( 5 ) 式を用いて逆算した値です。と言うことは、日本でも、火力発電以外の「一次エネルギー消費(投入量)」の値のIEAへの報告値は、IEAが決めた(みかけの発電効率)を用いて計算した値であることが判ります。

すなわち、現在、火力発電に次いで、世界の総発電量に対して一定の比率を占めている原子力、水力については、表1 で求められた各国の(みかけの発電効率)の値は、エネ研データ(文献 2 )の「解説」に記されてたIEAが決めた値、原子力 33 %、水力 100  % が用いられています。ところが、いま、地球温暖化対策のために、その原因になるとされる温室効果ガス(その主体は、二酸化炭素CO2)を排出しないとして、最近、その消費量を急速に増加させている新エネルギー(新エネ)とよばれる電力を表すとみられる地熱・風力他の(みかけの発電効率)の値が、IEAが新エネの代表としている地熱の(みかけの発電効率)10 % とは大きく離れた100 % 程度の値が示されています。

この表1の地熱・風力他は、新エネとよばれている再エネ電力の合計に対する値と考えられますが、最近利用されるようになった新エネ電力には太陽光、風力、地熱など種々あって、それぞれの(みかけの発電効率)に違いがあるはずです。しかも、この新エネ電力合計の発電量のなかの種類別発電量の比率が、年次、また、国により変化しています。エネ研データ(文献 2 )の「解説」には、IEAが決めた地熱の(みかけの発電効率)の値として、「地熱は実効率の基づいた値、もしくは10 % 」と、非常に低い値が示されていますが、地熱以外の新エネ電力の値は示されていません。ところで、、同じエネ研データ(文献2 )に記載のBP (British Petroleum ) 社の「世界の新エネルギー供給」のデータから私どもが推定した、2017年の世界の新エネ電力の発電量の合計値のなかの地熱発電量が占める比率は、8 % 程度と僅かで、世界の現状では、この新エネ総発電量の70 % 程度が風力発電、20% 程度が太陽光発電と推定されます。一方、日本では、太陽光発電が70 % 程度と主力を占めます。したがって、ここに示した地熱・風力他としての新エネの(みかけの発電効率)の値は、世界では、風力発電の値に、日本では、太陽光発電に近い値と考えられます。

そこで、表1と同じIEA統計データに与えられている地熱・風力他の一次エネルギー投入量と発電量のデータから、国別の(みかけ発電効率)の年次変化の値を表2 に示してみました。

 

表 2 世界および各国の地熱・風力他の(発電量TWh)、(一次エネルギー消費(投入量)Mtoe )、および、これらの値から計算される(みかけの発電効率 % )の値の年次変化 (エネ研データ(文献 2 )に記載の1EA統計データをもとに計算して作成しました)

この表 2 に見られるように、新エネ電力としての地熱・風力他の(みかけの発電効率の値)は、IEAが地熱の値としている 10 % に較べて、はるかに大きい値をとり、しかも、それが、国別に余り変わらないだけでなく、年次増加し、2015年以降は100 % 程度の値になっています。

いずれにしろ、この地熱・風力他の(みかけの発電効率)の値が、IEAの決めた値でないことは明らかですが、エネ研データ(文献 2 )の「解説」にあるように、各国の実態(新エネ電力の総発電量に対する比率)に合うように決めたとしても納得がゆきません。例えば、風力発電の総発電量に対する比率が圧倒的に大きいと推定されるドイツと中国の(みかけの発電効率)の値が、IEAが決めた水力発電の値100%程度と大きな値をとるとは、到底考えられません。むしろ、新エネ電力の(みかけの発電効率)の値は、下記(⓷)に示す私どもの推定値に見られるようにIEAが地熱発電に対して推定している10 % 程度に近い値を取ると想定されます。

それは、ともかく、やがて、火力発電用の化石燃料が枯渇して、その代替として新エネ電力が用いられるようになる時には、その石油換算㌧当たりで評価される一次エネルギー消費量のできるだけ正確な値が求められなければなりません。そのためにも、本稿で下記(⓷)するような、新エネ種類別の(みかけの発電効率)の値を推定することが必要になるのです。

 

⓷ 火力発電以外の再エネ電力の「一次エネルギー消費量」を求めるための火力発電相当の(みかけの発電効率)の値を決める「発電量の一次エネルギー消費量への換算方法」を提案します

ところで、火力発電の(発電効率)の値は、( 2 )から、

(単位発電量当たりの一次エネルギー消費量への換算係数 kcal/kWh )

=(単位発電量当たりの投入量化石燃料 ㌧/kWh)×(投入化石燃料の発熱量 kcal/㌧)

( 6 )と計算されます。

一方、(再エネ電力や原発電力などの火力発電以外の電力の火力発電相当の (みかけの発電効率)についても、( 2 ) 式同様に、

(火力発電以外の再エネ電力などの (みかけの発電効率))

= (860 kcal /kWh)

/(単位発電量kWh 当たりの人件費を含む一次エネルギー消費への換算係数kcal/kWh)

( 7 )

が成り立つとします。

ここて、火力発電以外での再エネ電力や原発電力の生産では、発電コストの主体は発電設備の製造費になります。ということは、人件費を含むこれらの経費を一次エネルギー消費量に換算した値が、電力の生産に必要になるとして、これを(みかけの発電効率)を求めるための一次エネルギー換算係数の値としました。

さらに、私どもの著書「化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉(文献 3 )」で提案しましたように、それぞれの国において、

(単位発電量当たりの人件費を含む一次エネルギー消費量への換算係数 kcal/kWh )

= (発電コスト円/kWh)×{(国内一次エネルギー消費 kcal)/ ( 国内総生産GDP 円))

( 8 )

と概算値が計算されますから、再エネ電力および原発電力などの火力発電以外の電力の (みかけの発電効率)の概算値が、次式で求めることが可能になります。

(再エネ電力や原発電力の火力発電以外の電力の(みかけの発電効率))

= (火力発電の発電効率)

×(火力発電の発電コスト円/kWh)/ (火力発電以外の再エネ電力や原発電力の発電

コスト円/kWh)                           ( 9 )

この( 9 )式に見られるように、再エネ電力や原発など、火力発電以外の電力の(みかけの発電効率の値は、発電コストの値を知ることにより、概算することができます。

なお、燃料費が主体を占める火力発電の発電コストは、次式で.その概算値を求めることができます。

(火力発電の発電コスト円/kWh)

=(単位発電量当たりの化石燃料使用量 ㌧/kWh)×(燃料価格 円/㌧)

×{ 1 +(単位発電用燃料当たりの発電設設備費の運転費に対する比率)}                                                                                                                                                      ( 10 )

一方、設備コスト主体の発電の場合、

(再エネ電力および原発などの設備コストが主体の電力の発電コスト)

={(発電設備価格)/(発電設備使用期間中の発電量)}

×{1+(単位発電量当たり発電設備コストに対する設備維持管理コストの比率)}

( 11 )

いずれにしろ、

この電力種類別の発電コストの値が求められれば、それぞれの電力生産種類別の化石燃料を用いる火力発電相当の(みかけの発電効率)の値が、したがって、(一次エネルギー消費の換算係数)の値が概算できるのです。

エネ研データ(文献 2 )の2017年版の電力需給のデータから、一般電気事業(旧電力会社)用の石炭火力発電での発電量 とそれに対する石炭(褐炭)使用量のでータを用いて、上記(⓵)の(2)式および上記(⓷)の ( 6 ) 式から、2015年度の石炭火力発電の(発電効率)の値を求めてみると、

(石炭火力発電の発電効率)

=(発電量:{(176,127 百万 kWh) ×(860 kcal/kWh)=151.47×1012 kcal }

/{(一次エネルギー消費(電力):(石炭消費量58,717 千㌧)

×(輸入一般炭発熱量 6,203 千kcal/㌧)}=364.2×1012 kcal)}

= 0.416 = 41.6 %

と得られます。

次いで、同じエネ研データ(文献2 )を用いて、2015年度の石炭火力の(発電コスト)は、( 10 ) 式から、

(単位発電量当たりの燃料費 円/kWh )

= {(単位発電量当たりの石炭使用量 58,717 千㌧)

/(発電量176,127 百万kWh ) =0.333×10-3 ㌧/kWh)}

×(一般炭輸入CIF価格 9,095 円/㌧)=3.02 円/kWh

に(発電用燃料コストの発電設備コストに対する比率)を 0.3 倍と仮定して、

(火力発電のコスト)= 3.92 { = 3.02×(1+0.3)} 円/kWh と計算されます。

一方、再エネ電力としての家庭用以外の太陽光発電(メガソーラー)の発電コストは、(11) 式において、

(単位発電設備容量当たりの設備費)=25万円/kW-設備、(設備使用年数)= 20 年、(メガソーラーの設備稼働率)=11 % = 0.11 とすると

(単位発電量あたりの発電設備コスト)

=(単位発電設備容量当たりの発電設備費 25 万円/kW-設備)

/ {(使用期間中の発電量) = ( 1 kW)×(8,760 h/年)×(設備稼)}働率 0.11)×(20年)

=1.927 kWh ) = 13.0 円/kWh

と計算されます。

しかし、実際には、

(単位発電量当たりの設備維持管理費)の推定は、実績がないので難しいようで、高いFIT制度での買取価格で認定を受けたメガソーラー(家庭用以外の太陽光発電)事業が、この設備維持管理費の見積もりを誤ったために、投資金額を回収できずに、倒産に追い込まれている例が多いようです。ここでは、(単位発電量当たりの設備維持管理費)を、(単位発電量当たりの設備費)と同等と仮定しました。結局、

(メガソーラーの発電コスト)=26.0 (=13.0× 2 ) kWh

と推定できます。

このメガソーラーを収益事業とするために、この発電コストを1.3倍した33.8(=26.0×1.3 )円/kWhが、現在のメガソーラーのFIT制度適用での買取価格に近い値になります。

以上から、上記した、

(石炭火力の発電効率)= 41.6 %、その(発電コスト)= 3.92 円/kWh、

(メガソーラーの発電コスト)= 33.8 円/kWh

を( 9 )式に代入することによって、再エネ電力としての

(メガソーラーの(みかけの発電効率))=0.416 × 3.92 / 33.8 = 0.048=4.8 %

と非常に小さい値が概算されます。

いま、化石燃料の枯渇後、その代替の再エネ電力が、「FIT制度」の適用で、その利用の拡大が図られています。しかしこの「FIT制度」での電力の買取価格が最も高価なのが太陽光発電です。これに対して、いま、世界で最も普及している再エネ電力は風力発電ですが、日本におけるその「FIT制度」での買取価格は、太陽光発電の約1/2です。すなわち、風力発電の発電コストが、現在、太陽光の1/2程度で、その(みかけの発電効率)が太陽光の約2倍になります。これが、いま、世界で温暖化対策としてのCO2の排出削減に、風力発電が優先的に用いられている理由です。

 

⓸ 再エネ電力の正しい一次エネルギー換算の方法が確立して初めて、化石燃料枯渇後に用いられる経済的に有利な再エネ電力の選択・利用の方法が、すなわち、正しいエネルギー政策の推進が可能となるのです

いま、日本では、発電コストの高い、したがって、(みかけの発電効率)の低い太陽光発電が、既成の設備を買ってきて組み立てれば、いますぐ発電できるとして、広く利用されているのです。しかし、再エネ電力の利用が、温暖化対策としてのCO2の排出削減ではなく、化石燃料の枯渇後の代替であれば、いますぐの再エネ電力の利用でなくともよいのです。化石燃料資源の枯渇が迫り、その国際市場価格が高騰して、現用の石炭火力発電の発電コストより安くなってから、より安価な再エネ電力の種類を選んで利用すればよいのです。

その時に、利用される再エネ電力は、太陽光発電ではなく、世界におけると同様、風力発電だと考えられます。すなわち、石炭火力の発電効率より(みかけの発電効率)が低い太陽光発電(メガソーラ―)を火力発電の代わりに用いることは、経済的マイナスをもたらすだけでなく、化石燃料換算の一次エネルギー消費量を却って増やすことになるのです。

太陽光発電では、既成の発電素子を買ってきて、組み立てれば、短期間に、容易に、発電事業が開始できます。実際には、この再エネ発電事業のブームに乗って大量に生産された中国製の太陽光発電素子が、EUでの輸出禁止措置により、行き場を失って、日本のメガソーラー用に利用されていると聞きます。しかし、人口当たりの国土面積の小さい日本では、太陽光発電の利用可能(ポテンシャル)量は、家庭用と家庭以外用(メガソーラー)を合わせても、現在の国内総発電量の20 % にも満たないと推定されています(環境省の調査報告書(文献4 )にした私どもの推定結果です)。このような導入可能量の存在を無視して、再エネ電力の導入しやすいものであれば、何でも良いとして、その利用拡大のために市販電力料金の値上で国民の経済的な負担を強いるFIT制度の適用で、やみくもに進められているのが、この国のエネルギー政策の恐るべき実態です。

発電コストの安い電力と言えば、電力生産に古くから使われてきた水力発電があります。表1 に見られるように、IEAは、発電コストから推定したと思われるこの水力の(みかけの発電効率)の値が100 %とされています。もちろん、この値、100 % には何の科学的な根拠もありません。例えば、水力発電以外にも用いられる多目的ダムでの発電コストは、計算のしようがありませんから、みかけの発電効率の値も推定できません。また、開発の遅れた途上国には、発電効率100 % 以上もの値が期待できる水力発電所の建設できるところがあるかもしれません。

いずれにしろ、私どもが本稿に示した各発電方式別の発電コストの推定値から(みかけの発電効率)を求める方法が確立すれば、化石燃料枯渇後、その代替としての再エネ電力の正しい選択・利用が可能となるのです。化石燃料の枯渇が迫るいま、将来の再エネ電力のみに依存する社会での正しいエネルギー政策を創るためにも、本稿に私どもが提案する、再エネ電力種類別の正しい「一次エネルギー消費への変換方式」が確立、利用されることを心から願っています。

 

<引用文献>

1.久保田 宏、平田 賢太郎 ; シェール革命は幻想に終わり、現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます、Amazon 電子出版、Kindle、2019年11月

2.日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧、2017 ~ 2019、省エネセンター、2017~ 2019年

3.久保田 宏、平田賢太郎、松田 智;改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉―科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月

4.環境省(2011)平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書、平成23年3月

 

ABOUT THE AUTHER

久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他

平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。

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