菅義偉新首相が宣言した「温室効果ガス2050年ゼロ」により、世界の流れになっている地球温暖化か防げないだけでなく、日本の重要な製造業が国際的な競争力を失います。今後の日本のエネルギー政策は、化石燃料の枯渇に備えて、残された化石燃料を全ての国で分け合って大事に使うことを世界に訴えることでなければなりません

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約):

⓵ 菅首相による「温室効果ガス2050年ゼロ」宣言の実行では、日本の製造業に必要なエネルギーコストが高くなり、製造業界の国際競争力が失われるとの業界トップから、産業   

育成のエネルギー政策が求められてます

⓶ 日本では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の訴える温暖化のCO2原因説には科学的根拠がないことが次第に明らかになってきています

⓷ 今後の日本のエネルギー政策は、いま世界の流れになっている温暖化対策のためのCO2排出削減政策に代えて、化石燃料の枯渇に備えて、地球上に残された化石燃料を全ての国で分け合って大事に使うことを世界に訴えることでなければなりません

 

(解説本文);

⓵ 菅首相による「温室効果ガス2050年ゼロ」宣言の実行では、日本の製造業に必要なエネルギーコストが高くなり、製造業界の国際競争力が失われるとの業界トップから、産業育成のエネルギー政策が求められてます

12 月17日の朝日新聞の記事です。

“ 脱炭素「エネ政策の変革を」製造業界、政府に注文 “

とありました。

いま、世界の流れになっている「温室効果ガス2050年ゼロ」を日本でも実行すると菅首相が宣言しました。しかし、どうやってそれを実現するか具体的なエネルギー政策が示されていません。これに対して、製造業界を代表する鉄鋼産業と自動車産業のトップが、これでは、いままで日本経済を支えてきた製造業界の国際競争力が失われるとして、今後の日本のエネルギー政策に変革を行うことを政府に要望しているのです。以下、先ず、その内容について要約します。

日本鉄鋼連盟の橋本英二会長は、「安定性とコストの観点から電源構成を考えて欲しい」と政府に訴えています。日本の温室効果ガス(その主体は二酸化ガス(CO2)の14 % を排出している鉄鋼産業は、「温室効果ガス2050年ゼロ」が実行されれば、製鉄用のコーク製造の石炭の使用と、鉄スクラップの電炉用電力が主体の現状で安価な石炭火力の利用が制限され、経営上大きな問題を生じるとして、「原子力の有効利用をお願いしたい」と踏み込んだと記しています。

もう一つ、自工会の豊田章男会長は、日本の輸出産業の主役を担い、自動車の国内使用でCO2排出量で15% を占める自動車産業でも、いま、世界の流れにしたがって、菅首相が決めた「2030年半ばにガソリン車の製造・販売の禁止」が行われれば、国際競争力が失われ、雇用が失なわれるとして.国のエネルギー政策での政府の配慮を求めています。

 

⓶ 日本では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の訴える温暖化のCO2原因説には科学的根拠がないことが次第に明らかになってきています

以上、日本の製造産業のトップリーダーのお二人が訴えておられるように、いま、世界の流れになっていると言ってよい「温室効果ガス2050年ゼロ」には、日本経済だけでなく、世界の、人類の生存にとっても大きな影響を与える大きな問題を抱えています。

それは、いま、2007年に米国のゴア元米国副大統領と同時にノーベル賞を授与されたIPCC (気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構) が訴えるこの「温室効果ガス2050年ゼロ」の実行には、現状では、多額のお金がかかるうえに、いま、この「CO2排出ゼロ」を実行しても、地球温暖化が防げるとの科学的な保証がないのです。すなわち、使ったお金が無駄に浪費されるだけです。

もし、IPCCが訴える温暖化のCO2原因説が正しかったとして、温暖化による経済的な損失額が、温暖化を防ぐためのCO2排出削減対策に必要な金額を上回れば、そんな方法の適用は断念して、実現可能な他の方法を考えるべきです。詳細は、本稿と同じシフトムコラムの私ども最近の論考(文献1 )をご参照頂きます。

もともと、IPCCが訴える温暖化のCO2原因説に対しては、これを科学的な根拠がないとして否定する方が沢山居られました。最近、この問題について、私どもの考えを支持するとして、私信を頂いた木本協司氏(気候研究者、「CO2温暖化論は数学的誤りか、楽天ブックス、2010年」などの著者)は、IPCCの地球温暖化の説CO2原因説は、科学的に誤った気候変動のシミュレーションの解析結果から導かれかもので、正確なシミュレーションモデルによる解析結果では、いま、IPCCが主張しているような温暖化は起こらないとする  “ 温暖化のCO2原因説は1979年に終わった ” との同氏の最新の論考(文献 2 )を紹介して頂きました。

しかし、これらIPCCの主張を批判する人々は、温暖化のCO2原因説に対する「懐疑論者」とされて、IPCCに所属している気象学の専門家と称する先生方から遠ざけられ、結果として、世界の政治が温暖化対策のためのCO2ゼロに統一されています。

 

⓷ 今後の日本のエネルギー政策は、いま世界の流れになっている温暖化対策のためのCO2排出削減政策に代えて、化石燃料の枯渇に備えて、地球上に残された化石燃料を全ての国で分け合って大事に使うことを世界に訴えることでなければなりません

IPCCによる温暖化のCO2原因説が正しいとの世界の流れをつくっているのは、上記したように、国連の機関として米国の元副大統領のゴア氏とともにノーベル平和賞(物理学賞ではありません)を授与されており、国連事務総長がその実行の旗振り役をしているからと考えてよいでしょう。

これに対して、IPCCの国内委員の一人でありながら、IPCCによる温暖化のCO2原因説を否定しておられる杉山太志氏によれば、IPCCに所属する気象学者が、科学的に根拠のない温暖化のCO2原因説を主張して、それを世界の政治に訴えるのは、気候変動のシミュレーションモデルの解析計算に必要な多額の研究費を獲得するためで、これは、科学に対する犯罪行為だと断じています(文献 3 )。

このように、いま、IPCCが主張する温暖化を防止するための「温室効果ガス2050年ゼロ」が世界政治の流れになっているからとして、日本政府(菅首相)が盲目的に、この同じCO2排出削減目標を達成するためのエネル―政策を実行すれば、上記(⓵)したように、国内の製造業からの反撥を受けることは当然だと私どもは考えます。すなわち、やがて、IPCCが訴える地球温暖化のCO2原因説が科学的な根拠を持たないと判断され、政治の場から退けられますから、今後の日本のエネルギー政策はいま世界の流れになっている温暖化対策のためのCO2排出削減対策に代って、私どもが訴える(文献 1 )、現在の消費量を継続すれば、今世紀中に、確実にやって来る化石燃料資源の枯渇に備えて、残された化石燃料を全ての国で分け合って大事に使うことを世界に訴えることでなければなりません

 

<引用文献>

  1. 久保田 宏、平田賢太郎; 科学の非常識としか言いようがない国際政治が求める脱炭素社会の要請は人類の生き残りのための条件でありません、シフトムコラム 2020, 10, 3
  2. 木本協司;CO2温暖化説は1979年に終わっていた、ieei  2020,12,23
  3. 杉山太志;「温暖化物語」を修正すべし、ieei、2019,07,01

 

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久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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