たった一人の「学校スト」で地球を救おうと世界の若者に訴えたグレタ・トウンベリーさんの怒りに応える道、それは、私どもが主張する「世界の化石燃料消費を節減する方策」の実行に世界の協力を訴えることです

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ 世界の若者が気候危機で一斉デモを起こしました。これが、 “「地球を守る」学校スト 響かぬ日本” と報道されました

⓶ いますぐ温暖化対策をとらないと、温暖化で地球が大変なことになることはありません。このまま化石燃料の消費の増加を続けると、世界の貧富の格差が増大し、テロ戦争により世界平和が侵害されます。この貧富の格差を解消こそが求められなければなりません

⓷ CO2の排出削減で温暖化を防げるとの科学的な保証は得られていませんから、お金をかけないで、CO2の排出を防ぐ方法として、私どもが訴える「世界の化石燃料を節減する方策」がある以上、温暖化防止のためのCO2の排出削減にお金を使う必要はありません

⓸ 今回の気候行動サミットで、気候危機対策の強化のために求められているCO2排出削減目標や石炭火力発電の廃止では、その実行を促すための政策的な行動の具体策が示されていません

⓹ 化石燃料資源の枯渇が迫る地球上では、化石燃料消費の節減による世界経済の抑制を図ることが、世界平和を維持し、化石燃料枯渇後の世界に人類が生き残る唯一の道です。これが、今回の国連気候行動サミットの前の世界一斉デモに集まった若者たちの熱い願いに応える道です

 

(解説本文):

⓵ 世界の若者が気候危機で一斉デモを起こしました。これが、 “「地球を守る」学校スト 響かぬ日本” と報道されました

9月23日、ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットを前に、若者たちが政治家に「気候危機」への対応を迫る一斉デモが、9月20日、163ケ国・地域で行われたと報道されました。この一斉デモの先駆けとなったのが、昨夏、スウエーデンの16才の少女グレタ・トウンベリーさんのたった一人の「学校ストライキ」でした。この運動が欧米に広がり、さらに、今回の世界一斉のデモになったのです。しかし、この運動は、余り日本の若者の間には、広がりを見せていないようで、今回の世界一斉デモを報じる朝日新聞(2019/9/21夕刊)では、この日本の若者の対応を、”呼びかけに「何も思わない」大学教員にも「理解してもらえず」と報じられています。なお、この新聞の記事では、それが、困ったことだとは言っていませんが、この運動を呼びかける日本の若者達の悩みを紹介しています。

ここで、「気候危機」とは、いま、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)が訴えている地球温暖化の脅威です。若者たちは、IPCCが訴えるこの温暖化の脅威を防ぐために、世界の政治を動かそうとして、23日の国連気候行動サミットの前の世界一斉デモに参加したのです。

ところで、国連事務総長の主催で開かれた、この気候行動サミットでは、日本の温暖化対策が消極的だったと報じられました(朝日新聞2019/9/24)。上記した、9月20日の「世界一斉デモ」への参加者が少なかったこと、サミットへ安倍晋三首相の参加が遅れ、代理の小泉新次郎環境相にも登壇発言の機会が与えられなかったことを指しているようです。

では、今回の気候変動サミットで、「気候危機」を解決するために実行可能な有効な対策が決められたかと言うと、下記するように、それは、何もないとするのが現実の姿です。この世界一斉デモの火付け役のグレタ・トウンベリーさんも、省エネのためにヨットで大西洋を横断して参加し、「未来の世界はあなた方をみている。私たちを裏切ることは許さない。」と、涙を流して、怒りを爆発させたと報じられました(朝日新聞2019/9/25)

 

⓶ いますぐ温暖化対策をとらないと、温暖化で地球が大変なことになることはありません。このまま化石燃料の消費の増加を続けると、世界の貧富の格差が増大し、テロ戦争により世界平和が侵害されます。この貧富の格差を解消こそが求められなければなりません

「気候危機」の問題は、いま、温暖化の脅威を防止するためとして、その具体的な方策も示さずに、IPCCが主張する温室効果ガス(その主体は二酸化炭素で、以下CO2と略記)の排出削減が世界の政治に求められていることです。しかし、このIPCCが訴えるいますぐの温暖化防止のためのCO2の排出削減にはお金がかかるために、その実行が難しくなっていることが一般には知らされていません。例えば、いま、世界の全ての国の合意の下で進められている「パリ協定」の実行では、途上国が、CO2排出削減に必要なお金を、先進国に要求しましたから、「パリ協定」の各国のCO2排出削減目標値を決めるCOP 21の国際協議の場が、先進国と途上国の間の金銭取引の場にされてしまいました。結果として、そんなお金は出せないとして、アメリカ第一を唱えるトランプ米大統領が、「パリ協定」を離脱することを表明したのです。世界第2のCO2排出大国の米国が離脱したのでは、温暖化対策としての世界のCO2排出削減を目的とした「パリ協定」は成立しません。

では、何故、いま、IPCCが、このお金のかかるCO2の排出削減による温暖化対策を政治に訴えているのでしょうか? この疑問に対して、最近、IPCCの国内メンバーの一人である杉山太志氏が注目すべき下記の論考を発表しています。

杉山太志;「温暖化物語」は修正すべし、ieei、2019/07/01

その内容については、先に私どもが、本シフトムコラムに、

「温暖化物語」が終焉します。いや終わらせなければなりません。エネルギー政策のなかに入り込んだ温暖化対策が日本を、そして人類を生存の危機に陥れようとしています (久保田 宏 平田 賢太郎)、シフトムコラム、 2019/7/24

として、紹介しています。

ここで、「温暖化物語」とは、IPCCが訴えている、お金をかけて、温暖化対策としてのCO2の排出を削減することですが、杉山氏は、地球上の気候変動の歴史を調査した結果から、IPCCが主張する温暖化の脅威には科学的な根拠がないとした上で、“ 政府は、この「温暖化物語」に沿って予算を獲得するとともに、温暖化問題を専門とする研究者が必要な予算を獲得する、政府と研究者の利権構造ができている。この「物語」が反復して強化されると、この「物語」に疑いを持つ人も、信じたふりをして、この「物語」を再生産するようになる。この「物語」は、科学的な真偽を問うことなくつくられたもので、科学のモラルに反する犯罪行為だ。“ と、「温暖化物語」を厳しく批判しています。IPCCは、自分たちが主張する温暖化のCO2原因説を実証するために、気候変動のシミュレーションモデル解析に必要なスーパーコンピューターの使用料をはじめ、世界中の多数に気象学者の研究費を調達しなければならないので、何としても温暖化が起こって貰わないと困るのです。先ず、頻繁に起こるようになった異常気象が温暖化のせいにされました。また、温暖化の脅威が起こる大気温度の上昇幅が、現在からの(だったと私どもは記憶しますが)2 ℃が、何時の間にか、産業革命から1.5 ℃ にされてしまいました。さらには、いますぐ気温上昇を抑えないと、気温上昇は止まらなくなり、地球は灼熱地獄になるとか、氷河が溶けて海水面が1 m上昇し、島国のスバルが沈没するなどと、まことしやかに言われています。

 IPCCに所属する杉山氏の内部告発とも言えるこの論考に示されるように、人類が、このまま化石燃料の消費の増加を続けると、怖いのは、IPCCが訴える温暖化の脅威ではなく、化石燃料の枯渇が迫り、その国際市場価格が上昇して、それを使える人と使えない人との間の貧富の格差が拡大することです。この国際的な貧富の格差がもたらしているテロ戦争による、世界平和の侵害を防ぐことこそが、人類が化石燃料の枯渇後の世界に生き残る途でなければならないと私どもは考えます。

 

⓷ CO2の排出削減で温暖化を防げるとの科学的な保証は得られていませんから、お金をかけないで、CO2の排出を防ぐ方法として、私どもが訴える「世界の化石燃料を節減する方策」がある以上、温暖化防止のためのCO2の排出削減にお金を使う必要はありません

国連に所属するIPCCは、自分たちが主張する温暖化のCO2原因説を、科学の原理だと主張してきました。しかし、この主張に対し、地球温暖化の原因には、CO2以外にも、太陽活動の変化などのいくつかの原因があるから、このCO2原因説は科学的に受け入れられないとする、いわゆる懐疑論があります。この懐疑論に従えば、前世紀の後半に起こった温暖化は、やがて終了し、寒冷化が起こらなければならないはずなのに、その気配が見られないなかで、IPCCは、最近頻発している異常気象を温暖化のせいだとして、この懐疑論を退けるとともに、温暖化対策としてのCO2の排出削減を世界の政治に訴えています。

これに対し、私どもは、IPCCの第5次評価報告書(2014年)に記載された、前世紀末の累積CO2排出量と、地球気温上昇幅の観測データから、IPCCのCO2原因説が科学的に正しかっと仮定したときの、累積CO2排出量Ct(兆㌧)と気温上昇幅t(℃)の相関を次式で表していなす。

t(℃)= 0.48 Ct(兆㌧)                        ( 1 )

この ( 1 ) 式の関係は、IPCCが気候変動のシミュレーションモデルをスーパーコンピューターを用いて、高いお金をかけて解いた温度上昇幅の計算結果の最大値と最小値の中間値とほぼ一致しますから、この ( 1 ) 式での計算値を、IPCCのCO2原因説が正しいと仮定した時の気温上昇幅だとしました。。

ところで、CO2の排出源である地球上の化石燃料の資源量は有限です。この資源量として、日本エネルギー経済研究所編;エネルギー・経済統計要覧(以下、エネ研データ(文献 1 )と略記)に記載の、科学的信頼度が高いとされるBP(British Petroleum )社による化石燃料資源の確認可採埋蔵量(現在の科学技術の力で経済的に採掘可能な資源量)の値を用いて、これを全量使い切ったときの累積CO2排出量の値を試算した結果、3.23兆㌧と求められました。この値を ( 1 ) 式に代入した時の気温上昇幅は t = 1.55 ℃となり、IPCCが温暖化の脅威に何とか耐え得るとしている2 ℃以内に収まります。しかし、確認可採埋蔵量の値は、今後の科学技術の進歩により増加することがあるので、より確実なGO2の排出量を増加させない方法として、私どもは、化石燃料消費量を、今世紀いっぱい、現在(2012年)の値に保つことを考えました。この時の今世紀末の累積CO2排出量は、2.87兆㌧となり、( 1 ) 式から計算される気温上昇幅は、1.38 ℃ に止まります。

すなわち、この私どもの「世界の化石燃料消費を節減する方策」を用いれば、お金をかけないでも、CO2の排出を削減できるのです。具体的には、世界の全ての国が、今世紀いっぱいの国民一人当たりの化石燃料消費量の値を、2012年の世界平均の一人当たりの化石燃料消費量の値1.52㌧/年/人に等しくなるようにすればよいのです。

この化石燃料消費量の節減目標の達成は、先進諸国には、大幅な削減が要求されますが、中国を除く途上国には、当分は、CO2排出の増加が許されます。ただし、人口の年次増加の比率の大きい途上国で、化石燃料消費量の増加の余地を伸ばすためには、人口増加の抑制が求められなければなりません。

なお、このCO2の排出削減にお金をかけない方法を実行するためには、いま、世界の全ての国の合意の下で進められている「パリ協定」の各国のCO2排出削減目標を、化石燃料消費の節減目標に代えることが求められます。以上、計算数値等の詳細は、私どもの近刊(文献2)をご参照下さい。

 

⓸ 今回の気候行動サミットで、気候危機対策の強化のために求められているCO2排出削減目標や石炭火力発電の廃止では、その実行を促すための政策的な行動の具体策が示されていません

今回の気候行動サミットを主導した国連事務総長グテーレス氏は、気候危機対策の強化の方法として、 ・2050年までの温室効果ガス実質排出ゼロ、 ・ 30年までに同40 %削減、

・ 20年以降の石炭火力発電の新設中止などを各国に求めていました。

しかし、このなかの「パリ協定」のCO2排出削減は、その目標値が示されただけで、どのような方法が用いられるべきかの具体的な指摘はありませんでした。CO2を排出する化石燃料代替のエネルギー源として、CO2を排出しないとされる再エネ電力を用いる方法がありますが、現状では、それは、大変お金のかかる方法です。例えば、日本の場合、既存の水力発電に新エネルギーとよばれる太陽光や風力発電などの再エネ電力を加えた化石燃料換算の一次エネルギー消費量の、国内一次エネルギー消費(合計)に占める比率は、現在、僅か16 %程度に過ぎません。一方で、この再エネ電力の利用・拡大のために導入された「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)」での電力料金の値上げによる国民の負担金額が3兆円を超しています。したがって、グテ―レス氏が求める2050年のCO2排出の実質セロの達成は、日本だけでなく、世界でも、非常に困難なことだと言わざるを得ないのです。

これが、今回の気候行動サミットに日本が、在来のCO2排出削減目標に上乗せを発表できなかった理由と考えることができます。さらに言えば、この再エネ電力を用いて、どうしても、2050年のCO2排出の実質ゼロを達成しなければならないのであれば、その、最も確実に、お金をかけないでCO2を減らすためには、上記(⓷)した、私どもが提案する「世界の化石燃料消費を節減する方策」の実行以外にありません。すなわち、私どもが、パリ協定のCO2排出削減の目標値を決めるCOP 21の協議に際して、日本の代表団にお願いしていた、この「化石燃料の節減対策」こそが、今回の気候行動サミットに世界をリードする日本側の提案とされるべきでした。

このグテーレス氏のCO2の排出削減対策の提言に関連して、日本にとってより大きな問題になるのは、「石炭火力新設の中止の要請」です。いま、日本では、石炭火力発電所の50基の新設が計画されていることが、国際的な非難の対象とされているようです。しかし、この日本の石炭火力発電所の新設計画は、3.11福島原発事故後、原発の再稼動が遅れているので、その代替としての電力の供給のための新設計画とみてよいので、非難される理由はありません。

この石炭火力の新設中止の、より大きな問題点は、中国以外の途上国における経済発展のための電力供給には、現状でも、さらに、当分の間は、単位発電量当たりの発電コストが最も安い石炭火力発電所の新設あるいは、発電効率の悪い老朽発電設備の更新が必要です。世界の化石燃料消費の節減を求めるなかで、途上国の経済発展により、再エネ電力が用いられるようになるまで、当分の間、この途上国での石炭火力発電所の新設を認めないのは、先進国の無見識を表す以外の何物でもありません。

また、途上国の今後の石炭火力発電の設備には、世界一発電効率の高い日本の超臨界発電技術を、さらに将来的には、石炭ガス化コンバインドサイクル発電の新技術が利用されることが望まれます。発電効率が高くなれば、それだけ、省エネルギーになり、世界の化石燃料消費の節減に貢献できるのです。これこそが、日本の科学技術力に課せられた、地球を救う方策なのです。

 

⓹ 化石燃料資源の枯渇が迫る地球上では、化石燃料消費の節減による世界経済の抑制を図ることが、世界平和を維持し、化石燃料枯渇後の世界に人類が生き残る唯一の道です。これが、今回の国連気候行動サミットの前の世界一斉デモに集まった若者たちの熱い願いに応える道です

いま、温暖化の脅威を訴える「地球守る」たった一人の「学校スト」を始めたグレタ・トウンベリーさんに共鳴して、世界一斉デモに参加した若者達、および、この行動を勇気ある行動だとして、これを支持する大人たちの多くは、IPCCが主張する温暖化のCO2原因説を科学の原理だとして、CO2の排出削減にお金をかける温暖化対策を、すなわち「温暖化物語」を実行しようしています。メデイアもこれを大々的に煽っています。結果として、グレタさんにノーベル平和賞をとの話も出ているようです。

しかし、世界の経済成長を支えてきた化石燃料の枯渇が迫るなかでは、CO2の排出削減にお金をかける温暖化対策は、絶対に成果を上げることはできません。これが、私どもが訴える「温暖化物語」の終焉です。

では。この「温暖化物語」が失敗に終わったとき、その責任は、世界一斉デモに参加した若者達も負わなければならないのでしょうか? そんなことはありません。

確かに、グレタさんのこれまでの発言はIPCCの主張を無批判に支持しているようです。すなわち、「科学が危機を伝えてくれたのに、政策を決める権力者が見て見ぬふりをしていた」と訴えているようです。ここで、「科学」とは、自分達の主張を科学の原理だとしているIPCCのようです。そして、見て見ぬふりをしている権力者とは、パリ協定からの離脱を宣言して、このサミットにちょこっと顔を出した後、すぐいなくなったトランプ米大統領を指しているように報じられています(朝日新聞2019/9/24の夕刊)。しかし、もし、そうだとしても、私どもは、グレタさんを責められないと考えます。いま、トランプ大統領を除く、世界中の大人の大部分が、IPCCの主張する「温暖化物語」を科学の真理だと思い込まされているからです。

今回の気候行動サミットでのグレタさんらの行動を称賛しているNHKも、9月26日の「クローズアップ現代」で、国内の「温暖化物語」の宣伝役を務めているIPCCメンバの一人を引っ張り出して、温暖化対策としてのCO2排出削減にお金をかける必要性を訴えさせました。いま、IPCCのメンバーが、温暖化対策としてのCO2の排出削減を訴えなければならないのは。上記(⓶)で、IPCCに所属する杉山太志氏の指摘として記したように、温暖化のCO2原因説を科学的に実証するために、IPCCが多額の研究費を必要とするからです。

いま、地球気候変動の科学に関連して注意すべきこと、それは、現代文明社会の経済成長を支えてきた化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、その配分の不均衡による貧富の格差が異常に拡大していることです。時の人になったグレタさんがつくった動画のなかで、グレタさんは、「わずかな人々のぜいたくを支えているのは多くの人の苦しみだ。私たちのような豊かな国々に暮らす人々は行動を変える必要がある」と訴えていると報じられています。すなわち、グレタさんは、いま問題になっている温暖化の脅威が起こったら、最初に被害を受けるのは、貧しい国の人々だとして、この貧富の格差の解消を目的として、大人たちの具体的な行動を求めていると考えることができます。

グレタさんら若者は、今回、大人たちがニューヨークで開いた「国連気候行動サミット」で、このような、世界の貧富の格差の解消のための具体的な行動計画が示されることを期待したのではないでしょうか? しかし、この期待は裏切られました。このサミットを主催した国連事務総長グテ―レス氏が求める具体的な実行の方策を示されないままの、実現可能の保証のない、「2050年のCO2排出実質ゼロ」などの議論では、温暖化の脅威を防ぐためのCO2の排出削減が実現できないだけでなく、いま、人類社会が直面している貧富の格差の解消につながらないことを知ったのではないでしょうか? このような現状が続くなら、その結果、苦しむことになるのは次世代を担うべき子供たちだと、感性の鋭いグレタさんは見抜いたのではないでしょうか? この悲しい現実に対して、グレタさんは、「子どもたちを見捨てる道 選ぶなら許されない(朝日新聞2019/09/24 夕刊)」と、涙ながらに、大人たちへの怒りをぶつけているのではないでしょうか?

やがて確実に枯渇する化石燃料エネルギーの消費の無節操な消費・拡大により小さくなってしまった地球上で、人類が生き残るためには、上記(⓷)したように、いま、トランプ米大統領を除く、世界各国政府の合意を得て進められている「パリ協定」での各国民に経済的な負担を強いるCO2の排出の削減目標を、世界の全ての国の協力を得て、私どもが訴える、お金をかけないで実行できる「世界の化石燃料消費の節減対策」の目標値に替えることが、世界の貧富の格差を解消でき、世界平和の維持を可能とする唯一の途なのです。この方策であれば、温暖化対策にお金を使うことを嫌って「パリ協定」からの離脱を宣言しているトランプ大統領を「パリ協定」の中に引き戻すことが可能になります。

この私どもが訴える「世界の全ての国の一人当たりの化石燃料消費を等しくする方策」実行」は。今回の世界一斉デモを成功させたグレタさんが訴える現代社会の貧富の格差を解消し、やがて、確実にやってくる化石燃料枯渇後の、世界経済が抑制される世界に、全ての国が協力して創り上げなければならない平和な世界が実現するのです。

 

<引用文献>

  1. 日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;エネルギー・経済統計要覧、省エネルギーセンター、2008 ~2019年
  2. 久保田 宏、平田賢太郎、松田 智;改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月

 

ABOUT THE AUTHER

久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他

平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。

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