石油ピーク2006年に通過!<文明転換処方箋(案)>

先進28カ国で構成する国際エネルギー機関(IEA)が2010年報告で、「2006年に石油ピークに至っていた」と公式に認めた。11月12日のルモンド紙、14日のニューヨークタイムズ紙に続き、日本でも17日の毎日新聞(東京版、朝刊)で最初に報道された。
安い原油の生産量ピークは日量7,000万バーレルで、今後これを超えることはないだろうとの認識である。しかし、中国等による石油需要増の傾向はつづく。それを満たすには、IEAはイラクでの3倍増の原油生産、サウジアラビアでの新規発見に期待するが、非現実的な話。さらに期待される非在来型炭化水素資源のオイルサンド(カナダ)、オイルシェール(ベネズエラ)、シェールガス(米国など)は、生産性(エネルギー利益収支比率:EPR)が悪い上、広範に環境破壊する代物である。どちらにしても日本には存在しない資源であって、中国のレアアース禁輸と同様、日本が依存できる、金で買える炭化水素資源だと期待すべきでない。
石油ピークの話をすると、多くの人は嫌がる。「今の生活が維持できない」と、直感的に恐怖を覚えるのだと思う。そのはずで、日本には50万品目に及ぶ石油由来製品があるとのこと。輸送燃料、生産火力、建築資材、日用品、食品加工、衣料品、化粧品、医薬品、農薬殺虫剤、そして話題のレアメタルを含む資源の開発・精錬の隅々まで、石油漬けである。
以下、荒削りであるが、処方箋案の初版である。

 処方箋の第一

 それは、石油ピーク、そして文明転換せざるを得ないことを受け入れる、心の沈着を維持することである。怖れても仕方ないし、何とかなるさの脳天気も駄目である。
脳天気の代表格は、先端技術開発で何とかなるさ、メタンハイドレートと原子力発電で何とかなるさである。どれも、石油依存であることを忘れている、その部分しか見ない、全体健忘症を治療せねばとならない。心が冷静になると、アタマが回転して洞察が深まり、知恵と工夫が湧きでてくるのが人間のすばらしさである。
 処方箋の第二

それは、生活スタイルの切り替えである。「資源には限りある」と心に銘じて、ひとつひとつの物を大切にし、行動を大切にする、「ほどほどに、もったいない」の心にである。地場ものを楽しむ生活、スローライフは健康な長寿の基本である。

 処方箋の第三

それは、50万品目の石油由来製品の順序立てた切り替えである。石油由来製品といっていろいろなタイプがある。①「社会・経済のかたち」の転換に関わる製品、②もともと石油を使わなくても済んだ製品、③石油原料として初めて生まれた製品、④石油の燃焼力が必要な製品の4タイプであろうか。

  ①については、移動距離の短縮と、移動手段の低エネルギー化である。中央集中集権から、地域自立分権である。すでに平成22年度から総務省が「緑の分権改革」推進事業を進めており、成功するしかない。手段として、バス、自転車、リヤカーか。さらに牛馬も慣れれば親しめるものである。
②については、製造法の回帰である。もったいない心で、消費者は受け入れるはず。その先進は農業であって、石油栽培から自然栽培への転換が雑草のように広がっている。このような農業は、石油ピーク後の国民の安全と安心を支える基盤産業である。都市での工業関連の縮小にあわせて、3Kを超えた喜びある農村への労働力移動が必要である。
③石油を原料、資材として使わなくても良い代替品の開発を進めることである。
④石油の燃焼力に勝るものはない。しかし、いつまでも強請っていられない。化石資源、ウランがピークが生産過ぎる、多分、孫の代には、薪・木炭を含めて、手に入る燃焼力の範囲で、工業生産するしかない。紀元前から金属精錬、鉄工ができたのだから、そんなに深刻になることはあるまい。

処方箋の第四

それは、家族、隣人、コミュニティの絆、つながりを回復する行動をすること。
人間だれしも、恐怖や不安を覚えると、先ず、自分だけの世界や保身に逃げ込み勝ちである。しかし、それは意味のないこと。文明転換は、個人の力ではできないことだから。

文明転換の軟着陸に必要な要件は、政治・行政、そして「知の殿堂」と自認する  
 大学・大学人を動かすことである。

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