信州便りー3 この10年ほど地球気温は劇的に下がっている

昨年の夏は暑かった。地球温暖化が進んでいるからだ、といった見解もマスコミ界を飛び回りました。では今年の冬の寒さは? 信州の地元の新聞では地球温暖化はこうした気温の大きな変化を生じさせるのだと言う牽強付会とも思える専門家(?)の論調が掲載されていました。寒くなる場所もあれば暑くなる場所もある。寒い年もあれば暑い年もある。地球の気候は極めて複雑です。地球温暖化を論じるには地球規模での精密な長期的気温変化を調べる必要があります。私達の暑い寒いと言う感覚では論じられません。これは科学の問題なのです。
 
私達のグループではこれを科学として研究を進めて来ました。その一部は昨年1月のもったいない学会例会でお話しさせていただきました。その後研究が進み、1700年頃から現在までの地球気温の変遷を温暖化ガスだけでなく太陽ー地球系の現象を加えて解析してきました。特に最近は、2000年以降の気温変化について詳細な解析を進めてきました。なぜなら、この期間は私達のモデルの大変重要な期間となるからです。その結果、2002年以降地球の平均気温が著しく下降していることを突き止めました。これは昨年の講演でもお話ししたことですが、今回はより鮮明な計算結果が得られましたのでご紹介いたします。図を見てください。
 
この図は1882-2009(世界規模で気温観測が始まったのは1882)の地球気温と大気中の二酸化炭素濃度の変化を示します。地球気温変化に与える影響(この場合はノイズ)が大きい都市ヒートアイランド効果を取り除く為に、人口1000人以下の452観測点(NASA/GISS気温データベース全体7292観測点の内)しか使っておりません。二酸化炭素が継続的に上昇しているにも関わらず、2002年以降著しい気温下降が見られることに注目して下さい。この気温下降が続くと、20世紀後半(1970年頃以降)の気温上昇(巷で言われているいわゆる地球温暖化)のストックは今後数年で使い果たすでしょう。もし更にこのまま下降が続けば、19世紀の寒冷な時代に逆戻りする可能性があることをこの解析結果は物語っています。
 
何故このような気温下降が起こっているかについても私達は詳細に追求しておりますが、ここでは紙面の都合上説明は致しません。ただ、私達の解析では、地球気温の変化は大気二酸化炭素の増加によるものよりも(それも確かにありますが)他の要因、例えば太陽ー地球系、により多くの原因があると言わざるを得ないのということを申しあげておきます。このことは図の二つの曲線を見ていただければ容易にお解り頂けるのではないでしょうか。
 
 昨今のTV、新聞、雑誌では今も二酸化炭素の排出は続き(これは正しい)、その結果地球気温がどんどん上昇し続けていると、専門家でさえご自分で検証したかのように、言っています。このような誤った思い込みは是非正したいと思います。本年5月の地球惑星合同学会でこれまでの研究結果を全て話すつもりです。
 
 こうした世間の思い込みは日本の経済社会を誤った方向に誘導すると懸念します。21世紀の日本では地球温暖化ではなく石油文明の終焉こそが非常に大きな問題であることを日本の指導者層に是非理解していただく必要があると思います。本質から物事を考えるもったいない学会の私達も頑張って行きたいものです。
 
蓼科には、もう渡り鳥の初陣が やって来ました。朝、その囀りを聴きながら、八ヶ岳の向側から澄み渡った大空に昇ってきた太陽に向って「君、この頃元気ないね。もっと元気出してよ」と呼びかけています。
 

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