政治権力の保持のために、経済成長の維持を図るアベノミクスは、「新型コロナウイルス問題」の出現で、その崩壊の時を早めようとしています。「この問題」解決の成功のみが、化石燃料の枯渇が迫り、世界の経済成長の抑制が求められるなかで人類が生き残る道を創ります

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ 世界の経済成長を支えてきた化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、その代替としてのいますぐの再生可能エネルギー(再エネ)電力への依存では、政治が要請する経済成長を維持することはできません

⓶  やがて枯渇する化石燃料の代替として、世界の経済成長を継続できると期待された原子力エネルギーへの依存の夢は幻に終わりました

⓷ 化石燃料の枯渇が迫り、経済成長の抑制が求められるなかで発生した「新型コロナウイルス問題」の解決の成功のみが、世界経済のマイナス成長のなかで人類が生き残るための道をつくります

 

(解説本文);

⓵ 世界の経済成長を支えてきた化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、その代替としてのいますぐの再生可能エネルギー(再エネ)電力への依存では、政治が要請する経済成長を維持することはできません

いま、政治の要請から、化石燃料無しでも、経済成長ができるとされています。その典型例がアベノミクスのさらなる成長です。すなわち、政治が、その権力を維持するために、財政出動により、景気を煽っているのです。

世界の経済成長を支えてきた化石燃料資源の枯渇が迫るなかでは、経済成長はできないはずです。それを、本来、政治から独立であるべき日銀の黒田総裁と一緒になって、異次元の低金利政策によって、物価の2 % アップのインフレ目標を設定し、景気回復のために。大量の国債を発行して、消費を煽り、みかけの景気を回復させようとしているのです。しかし、このような財政出動の結果は、世界最悪と言われる国家財政の赤字を積み増すことになり、やがて、日本経済を破綻の淵に陥れるのです。

この、超低金利政策、或いはマイナス金利政策は、日本だけではありません。世界の先進諸国の多くが、化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、資本主義経済が要請する成長を維持するために、同様な金融政策をとってきたのです。何故、世界の政治が、このような政策によって、世界経済の成長を維持しようとするのでしょうか?それは、上記した日本のアベノミクスにおけるように、いま、経済の成長、すなわち国内景気の停滞からの回復が、政治権力の維持にとって必須の条件になっているからです。

しかし、この世界政治の姿勢のなかで見落とされている大事なことがあります。それは、経済の成長のためにはエネルギーが必要ですが、化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、この成長のために必要なエネルギーがもはや存在しなくなっているからです。さらに言えば、いま、後述(➂)するように、新型コロナウイルス問題の発生で、世界経済の大幅な減退が予想され、株価の急落による世界経済の恐慌を招いているのです。

 

⓶  やがて枯渇する化石燃料の代替として、世界の経済成長を継続できると期待された原子力エネルギーへの依存の夢は幻に終わりました

いま、化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、経済成長を継続しようとしたら、原子力エネルギーに依存する以外にありません。第2次大戦を終結させるために使われた原爆(原子力爆弾)用の原子力エネルギーの平和利用として実用化されてきた原子力発電(原発)の電力(エネルギー)が、やがて確実に枯渇する化石燃料の代替として、大きな期待が寄せられてきました。これが、いま、政府が、3.11福島の過酷事故で稼働を停止している原発の再稼動を含めた原発電力の利用を訴える理由です。

やがて枯渇する化石燃料の代替として大きな期待を集め、その実用化が進められた原発電力ですが、その実用化では、当初の期待通りの進捗が見られませんでした。すなわち、原発用のウラン燃料の持つエネルギーを100 % 近く利用するためとして、その開発が進められた高速増殖炉の実用化が、熱媒体としてナトリウムの溶融塩を用いなければならないなどの技術的な困難から、その実用化の目途が立っていません。したがって、現状で実用化されている軽水炉で用いられるウラン燃料が所有するエネルギーのごく一部しか利用できないために、ウラン燃料の確認可採埋蔵量と可採年数から計算される使用可能期間が70 年程度と推定される「軽水炉のみの時代にある」と言わざるを得ません(久保田 宏 編『選択のエネルギー』(文献 1 )をご参照下さい)。

そのなかで起こったのが、東日本大震災による福島第一原発の過酷事故でした。この原発の過酷事故を経験した日本で、原発に依存するエネルギー政策を継続することは、下記するように、その安全性の面からだけでなく、経済性の見地からも難しいと考えるべきです。すなわち、この過酷事故後に新しく作られた安全対策基準が守れれば、福島第一のような過酷事故は起こらないとされています。しかし、この新安全対策基準のなかには、万が一の事故の際の避難訓練や、テロ対策のための多額の投資を必要とする設備建設の要請が入っています。と言うことは、原発を稼働する限り、福島第一と同様な過酷事故が起こり得ることが想定されていることになります。また、使用済み核燃料の処理・処分の費用が、その適地を国内に持つことができない日本では、計算のしようがないとして、発電コストのなかに含まれないままに、原発電力が火力発電よりも発電コストが安価だと宣伝されてきたのです。

以上から判るように、安全対策としても、また、経済性の面からも、日本においては、化石燃料(石炭)を用いる火力発電の代替としての原発電力の使用はあり得ないのです。

では、日本以外の諸国においては、世界経済の再生のために、原発電力の利用は有効なのでしょうか? しかし、経済発展が遅れている途上国での原発の利用では、それが、事故による安全面から大きな懸念があるだけでなく、この原発の利用が、原爆につながるとの懸念からも大きな制約があります。したがって、世界全体において、経済成長のための原発電力の利用は考えるべきではありません。詳細については私どもの近刊(文献 2 )をご参照下さい。

 

⓷ 化石燃料の枯渇が迫り、経済成長の抑制が求められるなかで発生した「新型コロナウイルス問題」の解決の成功のみが、世界経済のマイナス成長のなかで人類が生き残るための道をつくります

いま、新型コロナウイルス問題(以下、「この問題」と略記)が、世界の経済成長をマイナスに導こうとしています。これに対して、安倍首相は、現時点では、日本は、「この問題」で緊急事態を宣言する段階ではないとしています。とは言え、「この問題」により市民の生活や産業に大きなマイナスの影響が出ることは確かです。これを、日本の安倍首相は、景気の後退と捉え、この景気の後退を防ぐために、アベノミクスが進めてきた超低金利政策を一層強化して、赤字国債を発行する財政出動を行おうとしています。政府だけではありません。野党もこの経済再生のための財政出導には賛成のようです。

しかし、この景気回復のための財政出動は、国家財政の赤字を積み増し、基本的財政収支(プライマリーバランス)の破綻をもたらすことになります。確かに、「この問題」で大きな経済的な被害を受けるのは、観光事業や飲食店などの中小企業者ですが、この経済的な被害は、金額にしてさほど大きくなく、「この問題」が解決されれば終わることで、政府による財政支援で何とかなるはずです。

なお、「この問題」は、日本だけでなく、世界の経済が大きな打撃を受けるとされ、「この問題」が、発生地の中国からイタリアを始めとして、西欧の先進諸国に及ぶに至って、一国主義を掲げるトランプ米大統領は、緊急事態宣言を発表して、イギリスを除くヨーロッパからの一時的な入国制限を発表しました。これにより、株価の急落を伴う世界経済の大恐慌が起こったのです。すなわち、「この問題」が解決しない限り、世界各国の政治権力者が望んでいる経済成長の継続が絶望的になったのです。そのなかで、世界の金融市場を支配している米国のトランプ大統領が、マイナス金利政策を発表すると、一時的に株価の反撥を招くなど、世界の金融恐慌が、世界経済の行方を混迷に陥れています。

ところで、「この問題」の発生地中国から、ウイルスがクルーズ船で持ち込まれて日本にやってきたときには、日本政府は、「この問題」を余り深刻な問題として考えなかったようです。しかし、「この問題」の発生地が、世界の工場になっている中国で、その影響が、日本経済に大きく影響することが明らかにされて、はじめて国内でも大騒ぎされるようになりました。その後、さらに最近、この中国との経済的な、したがって、人的な交流を強めていたイタリアをはじめ、ヨーロッパで、その初期対応の遅れが、すでに、中国での感染の拡大が収束に向かい出したなかで、急速に感染が拡大して、その収束の目途が立たなくなって、各国の非常事態にまで発展してしまったのです。

いま、「この問題」について注意すべきことは、大変なのは世界的な感染の拡大で、「この問題」による、世界経済の後退ではないことです。「この問題」が起こる以前から、経済成長のエネルギー源である化石燃料資源の枯渇に伴う世界経済の後退は始まっていたのです。それが、たまたま、「この問題」の発生により、この世界経済の後退が加速されると大騒ぎになったのです。さらに言えば、いま大騒ぎしているのは、政治権力を維持するために、消費を増やすことで景気を煽ってきた各国政府です。

いま、人類の生存をも左右しかねない「この問題」の発生のなかで、安倍首相は、選挙の票を稼ぐために、アベノミクスの超低金利政策をさらに強化することで、日本経済を成長軌道に引き戻すと宣言しています。しかし、世界経済の成長のエネルギー源の化石燃料資源の枯渇が迫るなかでは、「この問題」が起こらなくとも、化石燃料代替の再エネ電力のいますぐの利用でも(上記 ⓵ )、また原発電力の利用でも(上記 ⓶ )、日本の、そして世界の経済を成長軌道に引き戻すことができないことは明らかなのです。「この問題」の発生は、それをさらに困難にしているのです。

したがって、いま、先ず、私どもがどうしてもやらなければならないことは、世界の全ての国が協力して、人類の生存を脅かしている「この問題」、すなわち、世界規模の感染症を完全に制御する方法を創ることでなければなりません。さらに、「この問題」の完全な解決の方法が確立されることを前提として、世界の全ての国が地球上に残された化石燃料を公平に分け合って大事に使う、私どもが提案する「化石燃料の節減対策」を実行しながら、やがて確実にやって来る、化石燃料枯渇後のエネルギーを、再生可能エネルギー(再エネ)に依存する以外にありません。

しかし、この再エネ電力のみに依存する世界は、経済成長の抑制を受け入れる社会です。すなわち、成長のためのエネルギー資源の奪い合いのない平和な世界なのですが、世界全体が、いますぐこの再エネ電力のみに依存する社会に移行するにはお金がかかります。問題はどのように、この「平和が期待できるが、お金がかかる世界」に移行できるかです。いま、人類が、世界が、この平和な世界に移行するには、私どもが提案する化石燃料の節減対策を実行する以外にありません。世界各国の政治権力が要求する、政治権力維持のための日本経済を成長軌道に引き戻すことではありません。詳細は、私どもの近刊(文献 3 )をご参照下さい。

 

<引用文献>

  1. 久保田 宏編;選択のエネルギー、日刊工業新聞社、1987年
  2. 久保田 宏、平田 賢太郎; 原発ゼロ実現の道―アベノミクスのさらなる成長の政治目的のための原発維持政策の終焉が求められます。アマゾン電子出版、Kindle 版、2019 年、11 月
  3. 久保田 宏、平田賢太郎;温暖化物語が終焉します いや終わらせなければなりません 化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります 電子出版 Amazon Kindle 版 2019 年、9 月

 

ABOUT  THE  AUTHER

久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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