地球温暖化対策のためのカーボンニュートラルの実現は妄想に過ぎません。経済最適のエネルギー政策の実行による国際的な経済格差の解消による世界平和の創設こそが人類の生き残りの唯一の道です

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ 産業革命以来、増え続けるようになった世界人口に対する食料供給の危機の問題は、1913年、工業化に成功した空中窒素の固定による化学肥料の合成で解決されたと見てよいでしょう

⓶ 世界各国が協力して、現代文明社会を支えている化石燃料を節減して大事に使えば、いま、IPCCが世界の政治に訴えている地球温暖化の脅威は起こりませんから、地球温暖化対策としてのCO2排出ゼロ、すなわちカーボンニュートラルの実行の必要はありません

⓷ カーボンニュートラルの妄想から脱却して、地球上に残された化石燃料資源を、世界各国が協力して、公平に分け合って大事に使うことが、現存する貧富の格差を解消して、平和な世界に人類が生き残る唯一の道を創ります

 

(解説本文);

⓵ 産業革命以来、増え続けるようになった世界人口に対する食料供給の危機の問題は、1913年、工業化に成功した空中窒素の固定による化学肥料の合成で解決されたと見てよいでしょう

化石燃料としての石炭がエネルギー源として使われるようになった産業革命以降、世界の人口は急速に増加し始めました。18世紀の末、この増え続ける人口を支える食料の供給が大きな社会問題になりました。この問題を解決したのが、1913年に、その工業化生産に成功した空中窒素の固定により造られたアンモニア(NH3)を用いる窒素肥料の化学合成でした(私どもの一人久保田らの著書 (文献1 )参照)。農業における穀物の生産における、この窒素肥料の利用で、穀物生産の反収が数倍に上昇しましたから、化学窒素肥料が供給できれば、世界の食料供給危機の問題は解決できる目途が立ったと言ってよいでしょう。詳細については、農業経済の専門家の川島博之氏の著書(文献 2 )をご参照下さい。

化学窒素肥料の主成分のアンモニアの製造コストを支配する原料の水素(H2)は、当初、石炭のエネルギーを用いて造られましたが、やがで、石油から、さらに現在では、メタン(CH4)を主成分とする天然ガスから造られています。それが、最も安価にアンモニアの製造原料の水素を造る方法だからです。

しかし、現代文明社会のエネルギー源としての天然ガスを含む化石燃料資源は、やがて枯渇しますから、化石燃料資源枯渇後の水素は、再生可能エネルギー(再エネ電力)を用いて、水(H2O)を電気分解することにより造られることになると考えられます。したがって、化石燃料枯渇後の世界においては、人類の生存に影響を与える食料危機の問題が最優先され、化石燃料代替の再エネ電力から造られる水素が、今後とも、化学肥料用のアンモニアの製造に用いられることはあっても、文明社会を支えるエネルギー源として用いられることはないと考えるべきです。

これを言い換えれば、再エネ電力は、それが生産される地において、直接、電力として利用すべきと考えるべきです。具体的には、再エネ電力を直接利用した電気自動車がガソリンやジーゼル油を用いた内燃機自動車に代わって用いられることになりますが、それは、地球温暖化対策のためのいますぐの再エネ電力の利用ではなくて、より安価に自動車を走らせる方法としての電気自動車の利用でなければなりません。

 

⓶ 世界各国が協力して、現代文明社会を支えている化石燃料を節減して大事に使えば、いま、IPCCが世界の政治に訴えている地球温暖化の脅威は起こりませんから、地球温暖化対策としてのCO2排出ゼロ、すなわちカーボンニュートラルの実行の必要はありません

世界の経済成長を維持するためとして、地球上の化石燃料資源の消費を、現状のように継続すれば、すでに、その兆候が見られるように、その資源量は枯渇が近づき、その国際市場価格は、確実に上昇します。したがって、人類が現在の文明社会を継続するためには、使用するエネルギーを、現在、エネルギー源として使われている化石燃料を、風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ電力)に変換する必要があります。しかし、それは、いますぐの利用である必要はありません。化石燃料(石炭)資源が枯渇に近づき、その国際市場価格が、再エネ電力の生産コストより高くなってからの再エネ電力の利用でよいのです。

先に、私どもが訴えているように、世界各国が協力して、現代文明社会を支えている化石燃料を節減して大事に使えば、いま、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)が世界の政治に訴えている地球温暖化の脅威は起こりませんから、地球温暖化対策としてのCO2排出ゼロ、すなわちカーボンニュートラルの実行の必要はありません。IPCCが主張するカーボンニュートラルの実行は、起こるはずのない地球温暖化を防ぐために、カーボンゼロの実行を政治に要請して、国民に無駄な財政支出を要請しています。この無駄な財政支出に対して、IPCCの国内委員をなさっておられる杉山大志氏は、「亡国の危機をもたらす」として、厳しく批判しています。詳細については最近の杉山氏の論考(文献4 )をご参照下さい。

 

⓷ カーボンニュートラルの妄想から脱却して、地球上に残された化石燃料資源を、世界各国が協力して、公平に分け合って大事に使うことが、現存する貧富の格差を解消して、平和な世界に人類が生き残る唯一の道を創ります

いま、地球上において、人類の生存にとって本当に怖いのは、確実に起こるとの科学的な根拠が得られない地球温暖化ではありません。温暖化の脅威が起こらない地球上で、人類にとって怖いのは、上記(⓶)した、杉山氏が訴える「亡国の危機」をもたらすカーボンニュートラルの実行によって生じる国際的な貧富の格差の拡大に起因する世界平和の侵害と考えるべきです。

いま、地球上に生息する人類にとって、最も必要なことは、IPCCが地球温暖化対策のために必要だと訴えるカーボンニュートラルの妄想から脱却して、地球上に残された化石燃料資源を、世界各国が協力して、公平に分け合って大事に使うことで、現存する貧富の格差を解消して、平和な世界に人類が生き残る唯一の道を創ることです。

具体的には、「コロナ問題」で、一年延期されたCOP 26(国連気候変動枠組み条約第6回締約国会議)の再エネ電力の利用による各国の「パリ協定」のCO2排出量の申告要請の代わりに、各国に、可能な限りの化石燃料消費の節減の要請を訴えることを呼びかけることです。これが、科学技術力で世界をリードする役割を自任している日本のあるべき姿と考えるべきです。

いままで世界経済の成長を支えてきた化石燃料資源が枯渇のときを迎え、米国をリーダーとしてきた資本主義社会は終焉のときを迎えています。人種問題の解決と民主主義社会の創設を訴えてきた米国と、近年、急速な経済成長によって、世界経済に大きな影響力を持つようになった中国の海洋進出問題と中国国内の人権問題で、お互いの政府が非難の応酬を強めています。日本政府は、国家安全保障の立場から、米国政府を支持する立場を維持しています。

これは、難しい問題でしょうが、人類生存を保証する、軍事力のバランスによる世界平和の維持に代わって、国際的な貧富の格差の解消による恒久的な世界平和の創設を、具体的には、実現の不可能なカーボンニュートラルの妄想を廃棄して、当分の間、地球上に残された化石燃料を世界各国が公平に分け合って、大事に使いながら、最も安価なエネルギー源として、再エネ電力に依存すべきとする、私どもの提案を世界に訴えて、それを、実行に移して頂きたいと考えています。これが、平和な世界に人類が生き残ることができる唯一の道だと私どもは信じています。

 

<引用文献>

  1. 久保田 宏、伊香輪恒男;ルブランの末裔―明日の科学技術と環境のために、東海大学出版会、1978年
  2. 川島博之:世界の食料生産とバイオマスエネルギー 2050年の展望、東京大学出版会、2008 年
  3. 久保田 宏、平田賢太郎;地球温暖化対策のための再生可能エネルギーとしての燃料用のアンモニアの輸入は、亡国の危機をもたらす「カ―ボンニュートラルの妄想」の典型例です。平和な世界に人類が生き残るためのエネルギーは、当分の間、消費の節減を前提とした化石燃料(石炭)の利用でなければなりません、シフトム・コラム、2021,7,21
  4. 杉山大志;「CO2ゼロ」は亡国の危機だ、ieei (国際環境経済研究所のウエブサイト)、2021,1,27

 

ABOUT  THE  AUTHOR

久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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