科学的な根拠のないIPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)が訴えるCO2原因説による地球温暖化の脅威は起こりません。したがって、IPCCが訴える脱炭素化のために国民のお金を使う必要はありませんし、2050年までの「CO2(温室効果ガス)ゼロ」の実行は必要ありません
|東京工業大学名誉教授 久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎
(要約);
⓵ IPCCが訴える地球温暖化のCO2原因説には科学的な根拠はありません
⓶ IPCCによる地球温暖化のCO2原因説が正しかったとしても、地球上に存在する化石燃料資源量の制約から、地球温暖化の脅威は起こりません
⓷ IPCCの国内委員の杉山太志氏は、「CO2ゼロ」の実行は 亡国の危機をもたらすと訴えます
⓸ 新型コロナウイルス問題で一年遅れて開催されるCOP 26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に向けての日本政府の誤った対応は、日本経済を破綻の淵に追いやるでしょう
(解説本文);
⓵ IPCCが訴える地球温暖化のCO2原因説には科学的な根拠はありません
いま、世界中が、一昨年(2019年)の暮れのスウエーデンの少女グレタ・トウンベリーさんの国際的な地球温暖化防止対策運動に触発されて、現代文明社会のエネルギー源の主役を担っている化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の消費(燃焼)によって大気中に排出される二酸化炭素(CO2)の大気中濃度の増加により、地球温暖化が起こると思い込まされています。
ところで、いま、このIPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)による地球温暖化のCO2原因の仮説が、広く世界中で信じ込まれているのは、この科学の仮説を主張するIPCCが、2007年、ノーベル平和賞を授与されたからではないでしょうか?しかし、このノーベル賞は平和賞であって、科学賞ではないのです。
また、この世界中の気象学者が集まったIPCCによる地球温暖化のCO2原因の仮説は、彼らがつくった気候変動のシミュレーションモデルをスーパーコンピューターを用いて解いた結果であって、その結果を実証する実際の観測データとの比較による計算結果の実証が行われていないのです。すなわち、長い気候変動の歴史のなかで、地球大気の平均温度として実際の観測データが用いられているのは、ごく最近のことです。
IPCCの第5次評価報告書(2013年、2014年)に記載されている、IPCCが科学的に信頼できるとしている、米国と英国の3観測機関の地球大気温度の変動幅と大気中CO2濃度の推定値の関係を含む、最近の地球大気温度と大気中CO2濃度の相関関係を図1 に示しました。
注; IPCCの第5次評価報告書に記載されている英国、米国の3観測機関のデータから、10年ごとの平均値を目視により求めて図示しました。
図 1 世界の平均気温上昇幅の年次変化の観測値
(IPCCの第5次評価報告書のデータをもとに作成しました)
この図1から、温暖化の進行が顕著に認められるようになった1970年~2000年の間の地球地上気温の上昇幅の値 0.5 ℃ と、この30年間の累積CO2排出量の推定値Ct =1.05兆㌧とから、両者の比例関係は、私どもが求めた次式で表すことができます。
t (℃)= (0.5 ℃)/( 1.05兆㌧)=0.48 Ct(℃/兆㌧) ( 1 )
この ( 1 ) 式で表される地球気温上昇幅の観測結果と、その同じ期間のCO2の累積排出量の相関関係は、IPCCが、信頼性が高いと保証している実際の観測データに基づいて、私どもが紙の上で、手計算で求めたものですが、私どもの近刊(文献 1 )に記したように、IPCCが気候変動のシミュレーションモデルをスパコンを用いて、多額の費用をかけて計算した結果よりは信頼性が高いと私どもは考えました。
すなわち、下記(⓶)するように、今後、CO2の排出量の増加が継続するとしても、この19世紀後半のような地球気温の上昇が継続すると仮定したときの地球大気温度の上昇幅の大よその値は、CO2の累積排出量の値から推定できるはずで、少なくとも、それは、観測データによる裏付けの無いIPCCのシミュレーションモデルによる推定結果よりは信頼度があると私どもは考えています。
⓶ IPCCによる地球温暖化のCO2原因説が正しかったとしても、地球上に存在する化石燃料資源量の制約から、地球温暖化の脅威は起こりません
いま、もし、IPCCが主張する地球温暖化のCO2原因説が、科学的に正しかったと仮定します。この場合、地球上の化石燃料の確認可採埋蔵量の全てを消費尽くした時に排出されるCO2の総量は、化石燃料の種類別に、
(確認可採埋蔵量)×(CO2排出原単位)=(CO2排出量) ( 2 )
と計算されます。化石燃料の種類(石炭、石油、天然ガス)別に、( 2 )式で求めたCO2排出量の合計値Ct (兆㌧)を ( 1 ) 式に代入して求められる現状からの気温上昇幅t (℃)が、地球上の化石燃料の確認可採埋蔵量の全てを使い尽くしたときのIPCCによる地球温暖化のCO2原因の仮説が正しかったと仮定した時の値です。
ところで、化石燃料の確認可採埋蔵量の値は、その値を推定した時点の科学技術力を用い、経済的に採掘可能な化石燃料資源量の値で、その値は、科学技術の進歩と経済力によって変化します。したがって、将来的な正確な値の推定は困難ですが、化石燃料資源の枯渇が迫っているいま、最新の確認可採埋蔵量の値を用いて、それが、消費尽くされた場合のCO2排出量を( 2 )式から求めることにします。このようにして、私どもの近刊(文献 1 )に記した方法を用いて、日本エネルギー経済研究所(以下、エネ研データ(文献 2 )と略記)に記載の確認可採埋蔵量についての最近(2017年末)の(CO2排出量)から計算される化石燃料資源枯渇後のCO2の累積排出量はCt = 3.73兆㌧となり、現状(2017年末)からの気温上昇幅 t(℃)は、( 1 )式から1.76 ℃と計算されます。この値であれば、IPCCが地球環境の歴史から、人類が温暖化の脅威に何とか耐え得るとされている気温上昇幅 2 ℃ 以下に止まり、IPCCが訴えているような地球温暖化の脅威は起こりません。
しかしながら、上記したように、この確認可採埋蔵量の値は、科学技術の進歩により、今後の増加が予想されますので、私どもは、さらに、世界の化石燃料消費の増加を抑制した場合のCO2の累積排出量を試算してみました。具体的には、世界の化石燃料の年間消費量を、今世紀いっぱい(2017~2100年=83年)、2017年の値、32,840百万㌧に保つことができたとして計算されるCO2の累積排出量の値 Ct = 27.2兆㌧を ( 1 ) 式に代入して得られる気温上昇幅は t = 1.31 ℃となります。
すなわち、この私どもが提案する「世界の化石燃料消費を節減する方法」によって、より確実に、しかも、お金を使わないで、温暖化の脅威を防ぐことができるのです。
⓷ IPCCの国内委員の杉山太志氏は、「CO2ゼロ」の実行は 亡国の危機をもたらすと訴えます
IPCCの国内委員のお一人である杉山太志氏は、いま、日米欧の連帯で進められている地球温暖化の脅威を防ぐための脱炭素化のエネルギー政策の実行は、日米欧の経済を破綻の淵に追いやると警告しています。さらに、杉山氏は、「CO2ゼロ」は亡国の危機だとさえ訴えています(杉山太志(文献 2 )参照)。すなわち、いま、同じく、日米欧等の連帯で進められている「パリ協定」の「CO2ゼロ」の目標を達成するために、化石燃料の代替として、いますぐ、発電コストの高い再生可能エネルギー電力(再エネ電力)を用いるべきとされていますが、結局は、再エネ電力の発電コストとの違いをカバーするために、EU諸国で用いられるようになった「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)」を適用して、国内の市販電力料金を値上げせざるを得なくなるからなのです。これは、いま、人権問題で日米欧と対立している中国による陰謀だとしています。
とにかく、IPCCの国内委員のお一人でありながら、IPCCが主張する地球温暖化の脅威を防ぐためのCO2排出削減を訴えることを科学に対する犯罪行為だと厳しく批判しておられる杉山太志氏の訴えに耳を傾けることが、日本経済を亡国の危機から救う唯一の道でなければなりません。これを言い換えれば、上記(⓶)したように、科学の常識から考えて、起こるはずのない地球温暖化の脅威を防ぐためのIPCCによる2050年までのCO2ゼロの訴えを実行する必要はありません。
⓸ 新型コロナウイルス問題で一年遅れて開催されるCOP 26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に向けての日本政府の誤った対応は、日本経済を破綻の淵に追いやるでしょう
新型コロナウイルス問題の発生で、昨年の暮れに予定されていた、IPCCが主張する、地球温暖化対策の「パリ協定」における各国のCO2排出削減目標値を決めるCOP 26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)の協議日程が、丸一年遅れの今年暮れの11月に延期されました。実は、いま、この、日程の延期で、一息ついているのが、このCOP担当の環境相をしている小泉新次郎環境相ではないでしょうか?一昨年暮れのCOP 25 で、安倍晋三元首相によって環境相に任命されたたばかりの小泉氏は、当時の日本政府のCO2排出削減案を披露しましたが、そのなかの石炭火力の利用計画の数値を国際地球環境問題団体から取り上げられ、「化石賞」を授与されて、何の反論もできずにいました。これに懲りた小泉氏は、菅義偉新内閣の下でも、環境相を引き継ぐとともに、日本の石炭火力発電計画についても、EU諸国の言いなりの新計画を作成し、これを昨年暮れに、菅新内閣が作成したグリーンエネルギー戦略のなかに盛り込むとともに、COP 26のなかのCO2排出削減目標に反映させようとしています。
菅首相は、小泉環境相の大衆的な人気を利用して、気候変動対策の担当相として、温暖化問題に関する国際会議や、国内の関係閣僚との調整、さらには、当初、地球環境問題にお金を投じることに消極的な産業界の協力を得ようとしているようです。しかし、先日、民放のテレビ番組で、小泉環境相が、地球温暖化対策に産業界をはじめ国民から資金を調達するための「カーボンプライシング」について話しているのを聞いてあきれました。こんな方に日本のエネルギー政策のリードをとってもらって、日本は大丈夫なのかと恐ろしくなりました。
<引用文献>
- 久保田 宏、平田賢太郎;温暖化物語りが終焉します。いや、終わらせねばなりません。化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります、アマゾン電子版 Kindle、2019年、11月
- 日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;エネルギー・経済統計要覧(以下、エネ研データ(文献 2 )と略記)、省エネルギーセンター、2020年
- 杉山太志;「CO2ゼロ」は亡国の危機だ、ieei、2021,02,15
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久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。
著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
E-mail:biokubota@nifty.com
平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
E-mail: kentaro.hirata@processint.com