4月1日から発送電分離が実施されました。これを機に、世界のエネルギー政策に迷い込んだ「地球温暖化対策の要請」を排除し、日本経済が生き延びるためのエネルギー政策についての正しい在り方を考え直して下さい

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ いま、「新型コロナウイルス問題」で大変ななかで、4月1日から、「発送電分離」が実施され、「電力の自由化」が完了します

⓶ 「発送電分離」の実施による「電力自由化」の目的は、国民の生活と産業用に安定で安価な電力の選択を可能にすることです。化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、いますぐ、その利用の拡大が求められている原発電力と、現状で石炭火力より発電コストの高い再エネ電力は、選択の対象になりません

⓷ この「発送電分離」の実施を機に、いま、世界のエネルギー政策のなかに迷い込んだとしか言いようのない「地球温暖化対策の要請」を排除し、世界経済が抑制されるなかで、全ての国が協力して実行しようとしている「パリ協定」のCO2排出削減目標を、私どもが提案する「化石燃料消費の節減対策目標」の値に換えることが求められます

 

(解説本文);

⓵ いま、「新型コロナウイルス問題」で大変ななかで、4月1日から、「発送電分離」が実施され、「電力の自由化」が完了します

いま、「新型コロナウイルス問題」で、世界の、そして日本の経済が崩壊の危機に追い込まれていると言われています。日本では、この経済危機のなかで、この4月1日から「発送電分離」が実施されました。

3月31日の朝日新聞(2020/3/31)に、発送電分離 問われる実効性 の見出しで、この「発送電分離」の内容と実施上の問題点の概要が次のように記されていました。

今回の「発送電分離」は、2015年の「電気事業法改正」により決められました。この「電気事業法改正」以前の旧電力会社のなかの東京電力と沖縄電力を除く、旧8電力会社の送配電事業部門が独立した別会社にされました。その目的は、近年、頻発している気候変動や地震等の災害による停電などの緊急時の電力の需給を、全国規模で調整できるようにするとともに、家庭向けを含む電力小売りの全面自由化を実現するためとされています。この発送電分離の実施に際しては、新しくできた送配電会社が、親会社との利害関係に関わる中立性が保たれることが重視されるべきとされています。

確かにその通りですが、いま、私ども日本国民にとって、より重要な問題として、私どもが指摘したいのは、この「発送電分離」の実施が、いま、「新型コロナウイルス問題」の発生によって苦境にある日本経済にとって、どのような影響を与えるかついて解析・検討を加えることの必要性です。

さらには、この解析・検討結果として得られた知見が、やがて確実にやって来る化石燃料枯渇後の経済成長の抑制が求められる世界に、日本経済が生き延びるための日本のエネルギー政策の見直しに生かされるべきとして、その具体的な方法を提案させて頂きます。

 

⓶ 「発送電分離」の実施による「電力自由化」の目的は、国民の生活と産業用に安定で安価な電力の選択を可能にすることです。化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、いますぐ、その利用の拡大が求められている原発電力と、現状で石炭火力より発電コストの高い再エネ電力は、選択の対象になりません

上記(⓵)したように、今回の「発送電分離」の実施を必要としている「電気事業法改正」での「電力自由化」の目的は、国民の生活と産業用に、自由主義経済の競争原理を利用して、安価な電力の種類を選択可能にする自由を与えることのはずです。この「自由化目的の電力」として対象になっている電力の種類には、在来の火力発電と原発電力とともに、化石燃料の枯渇後に、その利用が期待されている再生可能エネルギー(再エネ)電力が加わりました。

このうち原発電力と再エネ電力には、いま、世界中で大きな問題になっている地球温暖化対策としての、いますぐの利用が要請されています。しかし、この両者のなかで、先ず、原発電力は、3.11 福島の過酷事故に見られるように、その利用自体が大きな災害をもたらすリスクが大きいことから、地球温暖化対策としても、また、化石燃料の枯渇後の、その代替としても、利用の対象とされるべきではありません。

一方で、再エネ電力は、やがて確実に枯渇する化石燃料の代替としては利用されなければなりませんが、安価な石炭火力が使える現状では、いますぐの利用の対象にはなりません。すなわち、化石燃料のなかで、現在、最も安価な石炭の枯渇が迫り、その国際市場価格が高くなってから、それを用いる火力発電のコストより安価になった、再エネ電力の種類を選んで、順次、利用すればよいのです。

ところで、現在、世界で、再エネ電力として、最も利用が多いのは風力発電です。日本エネルギー経済研究所編;EDMCエネルギー・経済統計要覧(以下、エネ研データ(文献 1 )と略記)に記載のBP (British Petroleum) 社の「世界の新エネルギー供給」のデータから私どもが推定した世界の再エネ電力種類別の発電量の値を示す 図1 に見られるように、2017年の世界の風力発電量の再エネ発電量合計(推定値)に占める比率は、約70 % です。

注; 再エネ電力の年間平均設備稼働率の値を風力;0.25、太陽光;0.11、地熱;0.70 と仮定して発電量の値を計算しました

図1 世界における再エネ電力種類別発電量の年次変化

(エネ研データ(文献 1 )に記載のBP社による新エネ電力の設備容量のデータをもとに計算して作成しました)

 

これに対して、同じエネ研データ(文献 1 )に記載の「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)」を適用して導入された国内の再エネ電力の発電量では、図2 に示すように、家庭用以外の太陽光発電(メガソーラー)が主体で、風力発電の発電量は、再エネ(新エネルギー)発電量合計の10 % 以下に過ぎません。その理由は、風力発電の生産可能の適地が北海道の西北部や九州南部の海岸・洋上に限られ、それを、需用量の多い都市部に輸送するための送電線を新設しなければならないためとされています。したがって、この問題の解決に対して、今回の「発送電分離」の実施が、どれだけ貢献するかが、定量的に解析・検討されなければなりません。なお、2011年に環境省により発表された「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書(文献 2 )」をもとに私どもが試算した再エネ電力の導入ポテンシャルの推定値では、風力発電の値が2010年度の国内総発電量の約4.7 倍となるのに対し、家庭用も含めた太陽光発電の導入ポテンシャルは、同じ総発電量の13 %程度にしかなりません。また、現在、すでに、家庭用以外の太陽光発電と風力発電については、再エネ電力の利用・拡大を目的として設けられた、「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)」の適用の除外が決められましたが、再エネ電力の発電コストに比例すると考えてよい、このFIT制度での買取価格が、最近まで、風力発電は、太陽光発電の2/3程度とされていました。すなわち、日本でも、風力発電が。太陽光発電より安価の電力を供給できるとされていたのです。したがって、化石燃料枯渇後に選択されるべき再エネ電力の主体は、日本においても、世界におけると同様、風力発電になると考えるべきです。

注; 再エネ電力の年間平均設備稼働率の値を風力;0.25、太陽光;0.11、地熱;0.70 と仮定して発電量を計算しました

図2 日本における再エネ電力種類別発電量の年次変化

(エネ研データ(文献 1 )に記載のBP社による新エネ電力の設備容量のデータをもとに計算、作成しました)

 

⓷ この「発送電分離」の実施を機に、いま、世界のエネルギー政策のなかに迷い込んだとしか言いようのない「地球温暖化対策の要請」を排除し、世界経済が抑制されるなかで、全ての国が協力して実行しようとしている「パリ協定」のCO2排出削減目標を、私どもが提案する「化石燃料消費の節減対策目標」の値に換えることが求められます

 いま、日本のエネルギー政策を混迷の淵に陥れているのは、IPCC (気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構) が主張している化石燃料の消費により発生する温室効果ガス(その主体は二酸化炭素(CO2))に起因するとされる地球気温の上昇、すなわち、地球温暖化の脅威です。世界各国が、経済のさらなる成長を目的として、現在の化石燃料の消費に伴うCO2の排出増加を継続すれば、地球気温が生態系の破壊をもたらすような値にまで上昇し、人類の生存の継続を脅かしかねないとするものです。この地球気温の上昇幅と、CO2の排出量の関係は、これを主張する、世界中の気象学者によって構成されるIPCCがつくった「気候変動シミュレーションモデル」を用いた計算結果から導かれたものです。

しかし、IPCCが科学の原理だとする、このシミュレーションモデル計算の結果には大きな問題があることを私どもは指摘しています。それは、エネ研データ(文献 1 )に記載のBP社が公表している化石燃料資源の確認可採埋蔵量の値から、その全量が消費されたとして排出されるCO2の累積排出量の計算値 Ct = 3.23兆㌧から、1900年代後半から2000年代はじめ(1971~2010年)の地球気温上昇の実績データをもとに、私どもが推定したCO2の累積排出量 Ct(兆㌧)と気温上昇幅 t(℃)の相関式

t = 0.48 Ct(兆㌧)                     ( 1 )

を用いて、IPCCの地球温暖化のCO2原因説が正しかったと仮定して計算される現状(2012年)からの地球温度の上昇幅は t (=0.48×3.23) = 1.6 ℃ 程度に止まると推定され、IPCCが気候変動の歴史から、何とか人類が耐えることができる気温上昇幅の2 ℃ 以内に止まり、IPCCが訴える地球温暖化の脅威が起こらないことになります。

すなわち、IPCCが温暖化の脅威が起こるとしているのは、地球上には、化石燃料がいくらでもあると仮定しているからです。しかし、化石燃料の確認可採埋蔵量の値は、現在の技術力の範囲で、経済的に採掘可能な資源量ですから、金持ちの先進諸国が、経済性を無視して、採掘コストの高いシェールオイルなどを多量に採掘すれば、IPCCが訴える温暖化の脅威が起こる可能性があります。

そこで、私どもは、世界の全ての国が協力して、化石燃料の消費に伴うCO2の排出量を、今世紀いっぱい、現在(2012年)の世界のCO2の排出量 325.62億㌧に抑えた場合を考えてみました。この場合の今世紀末までの89年間に排出されるCO2の累積排出量の計算値は Ct = 28.980 (=325.62 ×89 ) = 2.90 兆㌧となり、この値を上記の( 1 )式に代入して得られる気温上昇幅の予測値は、t = 1.4 ℃ となりますから、IPCCが主張する温暖化の脅威は起こらないことになります。

さらに、今世紀中の各国の一人当たりの化石燃料消費量を2012年の世界平均の値に等しくする具体的な方法として、私どもは、2050年の各国の化石燃料消費量を、2012年の世界平均の値にする方法を提案しています。ただし、今後の各国の人口の増減に対する補正を行います。すなわち、人口が増加する国には、化石燃料消費量を減らしてもらいます。

この「私どもの化石燃料消費の節減対策」の実行方法の詳細は、私どもの近刊(文献3 )をご参照頂くとして、その図解を図3に示しました。

注; 2050年の世界および各国の一人当たりの化石燃料消費量の目標値は、2010年までの世界および各国の人口の変動データ(エネ研データ(文献 1 )に記載)に基づいた、世界および各国の2050年の対2010年の人口増減比率の推定値による補正を行った値です。

図3  世界および各国の一人当たりの化石燃料消費量の年次変化と、私どもが提案する「世界の化石燃料消費の節減対策」の今後(2050年)の目標値

 (エネ研データ(文献 1 )に記載のIEAのエネルギー統計データをもとに作成しました)

 

この「私どもの化石燃料消費の節減対策」の実行では、この図3に見られるように、2050年の各国の化石燃料消費量が、全ての国で公平に、等しくすることになります(ただし、各国の人口の増減予測による補正は行いました)。したがって、いま、一人当たりの化石燃料消費量の大きい先進諸国の多くでは、大幅な化石燃料消費の節減が、したがって、経済成長の抑制が求められます。このような、成長の抑制が嫌だと言う、お金持ちの国では、CO2の排出削減にお金のかかる再エネ電力を利用すればよいのです。一方で、中国を除く、現在の化石燃料消費が、2012年の世界平均の値より低い貧しい途上国では、化石燃料消費の増加が許されます。

すなわち、この「私どもの化石燃料消費の節減の方法」は、特に、先進諸国の合意を得ることが難しく、一見、実行困難な方法のようにみえます。しかし、これが、化石燃料資源量の枯渇が迫るなかで、残された化石燃料資源量を、公平に分け合って大事に使いながら、やがて確実にやって来る化石燃料代替の再生可能エネルギーのみに依存する、エネルギー資源を奪い合うことのない、平和な世界を実現する唯一の方法なのです。

さらに注意して頂きたいことは、この「私どもの化石燃料消費の節減対策」の実行は、いま、世界の全ての国の合意で進められている「パリ協定」でのCO2排出量を化石燃料の消費量に置き換えることと等しくなることです。地球温暖化を防止するためのCO2の排出削減を目的とした、現行の「パリ協定」での各国のCO2排出削減目標値は、各国の自主的な申告にまかされています。例えば、IPCCは、地球温暖化を防止するために、2050年の世界のCO2排出量がゼロになるように、各国の2030年のCO2排出量を、現在(2013年)の何 % 減とするとの自主的な目標値を設定するように各国に求めています。すなわち、今後の実際のCO2の排出削減量の実績値を参考にして、5年ごとに、この各国の目標値の改正を求めるとしています。しかし、その際にも、求められるCO2排出削減量は、各国の自主的な申告に任されることになります。すなわち、この現行のいわば試行錯誤方式による「パリ協定」のCO2排出削減の方法は、全くの非科学的な方法と言わざるを得ないのです。

これに対し、「私どもの化石燃料消費節減対策」の方法の実行では、各国の化石燃料消費量は、図3 に示すように、あらかじめ明瞭に決められていますから、それが守られたかどうかは、毎年の「パリ協定」のための「気候変動枠組み締約国会議(COP)」の場で検証されればよいことになります。

 

<引用文献>

  1. 日本エネルギー経済研究所 計量分析ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧、2019、省エネルギーセンター、2019年
  2. 平成22 年環境省委託事業;平成22年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書、平成23年 3月
  3. 久保田 宏、平田賢太郎;温暖化物語が終焉します いや終わらせなければなりません 化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります 電子出版 Amazon Kindle 版 2019 年、9 月

 

ABOUT  THE  AUTHER

久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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