世界経済の成長を支えてきた化石燃料の枯渇が迫るなかでの「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」の発生で、世界経済のマイナス成長の継続が決定的になりました。このコロナ問題の収束後の日本経済の再生のための脱炭素社会への投資を訴えることは、日本経済を崩壊に導くリスクを増やすだけの科学の非常識です

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ 「コロナ問題」の影響で、日本経済が大幅な落ち込みを示し、地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(その主体は二酸化炭素CO2で、以下、CO2と略記)の排出量が削減されましたが、これを機に、脱炭素社会のための投資を促進せよとの非科学的な主張がなされています

⓶ 「コロナ問題」発生以後の経済成長が抑制される社会では、化石燃料の消費が節減されなければなりませんから、温暖化対策として要求されるCO2の排出は削減され、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)が主張する温暖化の脅威は起こりません

⓷ 貧富の格差のない世界で、全ての国が協力して、「コロナ問題」を完全収束させることこそが、化石燃料の枯渇が迫り、世界経済の成長が抑制される世界に、人類が生き残る唯一の道だと考えます

 

(解説本文);

⓵ 「コロナ問題」の影響で、日本経済が大幅な落ち込みを示し、地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(その主体は二酸化炭素CO2で、以下、CO2と略記)の排出量が削減されましたが、これを機に、脱炭素社会のための投資を促進せよとの非科学的な主張がなされています

朝日新聞(2020/6/8)の記者解説(Commentary)として、

CO2削減 今を好機に コロナ前/コロナ後

とあり、小見出しに、

脱炭素への投資 経済回復策で示して

として、さらに、要約文が、

新型コロナの影響による経済活動縮小で温室効果ガスの排出は減ったが、戻る兆しも。 各国による巨額の経済対策が打ち出される中で、環境政策の視点が求められている。 コロナ前の日常に戻るのではなく、低炭素の新しい生活に転換する機会にしたい。

と記されていました。

要するに、今回の「新型コロナウイルス問題(以下「コロナ問題」と略記)」で、温暖化の原因とされるCO2の排出が削減されているのを好機として、脱炭素への投資で、経済を再生すべきだとしているようです。

しかし、はっきり言って、私ども科学技術者には、そんなことできるのかとの疑問の前に、そんなことをやる必要があるのかとの素朴な疑問も出てきます。それは、この朝日新聞(2020/6/8)の記者解説の記事では、「コロナ問題」で落ち込んだ日本経済を再生するには、日本経済を支えている企業にとっても多額のお金(コスト)が必要だとしたうえで、その対応策として、この新聞が、つねづねその政治姿勢を厳しく批判している安倍晋三首相が18年6月の未来投資会議で発言した「もはや温暖化対策は企業にとってはコストではない。競争力の源泉だ。環境対策と成長の好循環を目指すべきだ。」との言葉を引用して、コロナ後の経済成長を今こそ打ち出す必要があるとのアベノミクスのさらなる成長戦略を全面的に肯定しているからです。

それはともかくとして、この新聞記事の初めにもあるように、温暖化対策としてのCO2の排出削減は、「コロナ問題」による経済成長の抑制で実現されることが明らかになったのです。すなわち、いま、世界で化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、世界の経済成長が抑制されるのは必然です。その結果として、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)が主張する温暖化の原因とされるCO2の排出増加は起こらないのです。これは、誰も否定できない科学の原理なのです。この「記者解説」の内容は、この科学の原理を無視して、「コロナ問題」の発生を好機として、温暖化対策としてのCO2の排出削減のために投資をせよと国民に迫っているのです。まさに、非科学的で理不尽な論考と言わざるを得ません。

 

⓶ 「コロナ問題」発生以後の経済成長が抑制される社会では、化石燃料の消費が節減されなければなりませんから、温暖化対策として要求されるCO2の排出は削減され、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)が主張する温暖化の脅威は起こりません

いま、世界経済のマイナス成長が言われていますが、これも、「コロナ問題」が起こる前から言われてきたことで、現代文明社会を支えてきたエネルギー源としての化石燃料の枯渇が迫るなかでの必然的な科学の原理なのです。シェールオイルやシェールガス、さらには、石炭など化石燃料は無限に近い量があるから、経済成長のエネルギー供給には問題がないと考えている方が多数居るようです。しかしながら、これらの化石燃料を使うために掘り出すにはお金がかかりますから、現在の世界の科学技術の力と経済力で採掘可能な化石燃料の量には制限があります。これを数値としてしめすのが、化石燃料の種類別に与えられている「確認可採埋蔵量」です。日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧(以下、エネ研デーデータ(文献1)と略記)に記載の2011年末のBP(British Petroleum )社の化石燃料種類(石炭、石油、天然ガス)別の「確認可採埋蔵量」の値に、化石燃料それそれのCO2排出量原単位(単位化石燃料消費量当たりのCO2排出量)の値を乗じて計算される地球上のCO2排出総量の値は3.23 兆CO2㌧と与えられます(計算経過は省略しますが、下記に引用の私どもの(文献3 )をご参照下さい)。

一方で、上記(⓵)したIPCCが主張する地球温暖化のCO2原因説に従って、温暖化が急速に進んだ前世紀後半の気象データから、CO2の累積排出量(現状からの)Ct(兆㌧)と気温上昇幅(現状からの)t(℃)の関係を示す私どもが提案する相関式は、

t (℃) = 0.48 Ct (兆㌧)                        ( 1 )

と与えられます。

したがって、上記の化石燃料の「確認可採埋蔵量」の値から試算されるCO2の累積排出総量Ct = 3.23 兆㌧を ( 1 ) 式に代入して得られる気温上昇幅は、 t = 1.55 ℃ と与えられ、IPCCの国内委員の杉山太志氏が、その著書(文献2 )で主張している、気象学の歴史から人類が大気温度の上昇に耐え得るとした2 ℃ 以内に収まります。すなわち、地球上には、IPCCが主張する温暖化の脅威をもたらすほど多量のCO2を排出する化石燃料は存在しないことになります。

もちろん、「確認可採内臓量」の値は、将来的な科学技術の進歩と、経済大国が財力に任せて採掘量を増加させることにより増加する余地が残っています。しかし、そんなことをすれば、化石燃料価格が高騰し、世界の貧富の格差がさらに拡大して、国際的なテロ戦争が誘発されるなどで、世界が大変なことになります。この世界が大変になるのを防ぐ方法として、私どもは、今世紀いっぱいの世界の年間平均の化石燃料の消費量を、したがって、CO2の排出量を2012年の値325.6億㌧に止めることを提案しています。この2012年のCO2排出量を現在(2012年)から今世紀いっぱい88(=100-12)年間継続すると仮定すると、CO2の累積排出量は 2.90 兆㌧(=325.6億㌧/年)×(89年))となります。この値を、上記の ( 1 ) 式に代入すると、気温上昇幅(現状からの)は、t= 1.39 ℃となり、IPCCが主張するような温暖化の脅威は起こらないことになります。

本稿では、温暖化の防止を目的とする気温上昇幅として、上記のように、(現状からの)として2012年頃の値を用いています。これに対して、IPCCは、最近、産業革命以降の値を使っていますが、以前(IPCCの第5次報告書の発表時の2014年)は、(現状からの)値を使っていたはずです。温暖化の脅威を厳しく訴えるために、意図的な変更を行ったのではないかと考えられます。人類が気温上昇に耐えられるとするのは、上記したように、IPCCの国内委員の杉山太志氏の著書(文献 2 )にあるように、(現状からの)気温上昇幅2 ℃ でしたから、ここでは、この(現状からの)2 ℃を用いることにします。なお、産業革命時と現状の気温上の違いは約 0.5 ℃ です。

 

⓷ 貧富の格差のない世界で、全ての国が協力して、「コロナ問題」を完全収束させることこそが、化石燃料の枯渇が迫り、世界経済の成長が抑制される世界に、人類が生き残る唯一の道だと考えます

いま、地球温暖化が人類にとっての脅威だとするのが世界の常識とされているようです。しかし、これは、IPCCが創り出した科学の仮説に過ぎません。特に問題なのは、温暖化の原因が大気中のCO2濃度の増加だとする「温暖化のCO2原因の仮説」です。これは、IPCCに所属する世界中の気象学者がつくった地球上の気候変動のシミュレーションモデルをスーパーコンピューターを用いて得られた結果です。たまたま、この計算結果が、前世紀末の世界経済の成長による化石燃料消費の増加に伴う大気中のCO2排出量の増加と地球気温の上昇幅の観測結果と一致したことで、この「温暖化のCO2原因の仮説」が科学の原理とされてしまいました。しかし、地球の長い気候変動の歴史からみると、CO2の排出量を人為的に減らすことで温暖化が防止できるとの科学的な証拠が得られたことにはなりません。それよりもなによりも、上記(⓶)に、私どもが主張しているように、「世界経済の成長の抑制を前提とした化石燃料消費の節減」によって、地球温暖化を防止できるのです。詳細は私どもの近著(文献3 )をご参照ください。

このように、化石燃料の枯渇が迫るなかでは、世界経済のマイナス成長が起こることは、科学技術的な必然であることを教えてくれたのが、今回の「コロナ問題」の出現だったのです。すなわち、世界の全ての国が協力して、この世界の「コロナ問題」を収束することこそが、人類が持続可能な世界に生き残る唯一道と考えるべきです。

今回の「コロナ問題」で落ち込んだ世界のそして日本の経済成長が抑制されるなかで、温暖化の防止のためとして、なけなしのお金を使って、上記 ⓵ の朝日新聞(2020/6/8)のCommentaryが主張するような日本経済にマイナスの影響しか与えない脱炭素社会のための投資を行う必要性は何処にも存在しないことを改めて訴えさせて頂きます。

 

<引用文献>

  1. 日本エネルギー経済研究所 計量分析ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧、2019、省エネルギーセンター、2015 ~2019年
  2. 杉山太志;環境史から学ぶ地球温暖化、エネルギーフォーラム新書、2012年
  3. 久保田 宏、平田賢太郎;温暖化物語が終焉します いや終わらせなければなりません 化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります 電子出版 Amazon Kindle 版 2019 年、12月

 

ABOUT  THE  AUTHOR

久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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