地球温暖化対策を協議するCOP 24への提言; 人類の生存にとっての本当の脅威は、地球温暖化ではありません。化石燃料の枯渇による、その配分の違いによる貧富の格差の拡大です。全ての国が協力して、残された化石燃料を、公平に大事に使って、貧富の格差の無い、再エネ電力に依存する平和な世界に、ゆっくりと移行しましょう

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 事務局長 平田 賢太郎

(要約):

① いま、地球温暖化の進行が、人類生存の危機を招くとして、この温暖化の原因物質とされる温室効果ガス(CO2)の排出削減が全ての国の国民に求められています。しかし、CO2の排出削減で地球温暖化が防げるとする科学的な根拠はありません。そこで、異常気象を温暖化のせいだとすることで、CO2の排出削減の必要性が訴えられています

② 温暖化を防止するためのCO2の排出削減にCCS技術(温暖化をもたらすとされる化石燃料の燃焼排ガスからCO2を抽出、分離、回収して、地中に埋め立てる技術)を用いようとしています。しかし、化石燃料の枯渇が迫る現状では、化石燃料使用の継続を前提としたこのCCS技術の適用でCO2の排出削減を図る必要はありません。人類の生存にとって、温暖化より怖いのは、その原因とされているCO2を排出する化石燃料の枯渇です。この化石燃料資源の枯渇をできるだけ先送りするためには、世界の全ての国が、残された化石燃料を公平に分け合って大事に使えばよいのです

③ 私どもは、残された化石燃料を公平に分け合って大事に使う方法として、世界の全ての国の協力による「化石燃料消費の節減対策」を提案しています。この私どもの化石燃料の節減対策を実行可能にするには、いま、トランプ米大統領以外の全ての国の協力が約束されている「パリ協定」のCO2排出削減目標を、化石燃料消費の節減に代えればよいのです。しかし、いま、この「パリ協定」での各国のCO2排出削減目標を決めるCOP(地球温暖化対策の締約国会議)の場が、途上国のCO2排出削減に必要なお金を先進国が負担すべきだとする金銭取引の場にされています

④ 人類にとっての本当の脅威が、いま、地球温暖化をもたらしているとされるCO2の排出源である化石燃料枯渇よる脅威だとしたら、「パリ協定」の目的として、COP 24の場で協議しなければならないことは、温暖化対策としてのCO2排出削減の目標値ではなくて、化石燃料資源枯渇の対策としての化石燃料消費の節減の費用対効果でなければなりません。しかし、この化石燃料の節減の費用対効用の定量的な評価がなされていません

⑤ COP 24 に果たすべき日本の役割;それは、化石燃料枯渇後の世界に人類が生き残るには、「パリ協定」のCO2の排出削減を、化石燃料消費の節減に代えて、自然エネルギー(再エネ電力)に依存する、成長は抑制されるが、エネルギー資源の配分の違いによる貧富の格差が緩和される平和な理想の社会に緩やかに移行することを世界に訴えることです 

 

 (解説本文);

① いま、地球温暖化の進行が、人類生存の危機を招くとして、この温暖化の原因物質とされる温室効果ガス(CO2)の排出削減が全ての国の国民に求められています。しかし、CO2の排出削減で地球温暖化が防げるとする科学的な根拠はありません。そこで、異常気象を温暖化のせいだとすることで、CO2の排出削減の必要性が訴えられています

地球温暖化対策としての温室効果ガス(CO2)の排出削減の要請は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)に所属する気象学専門の先生方が、地球気象のシミュレーションモデルをスーパーコンピューターを使って解いて導いた、温暖化のCO2原因説を科学の真理だとして、温暖化対策としてのCO2の排出削減を各国のエネルギー政策の担当者に訴えているものです。しかし、このモデルシミュレーション計算の結果が、科学の真理となるためには、これを実証する観測結果が存在しなければなりませんが、そのような観測結果は、まだ、存在しません。

そこで、IPCCは、いま、頻発している異常気象を温暖化のせいだとしています。確かに、温暖化は異常気象の原因になるかも知れません。しかし、IPCCが、異常気象を温暖化のせいだとするのは、これから起こる温暖化では、その被害額が推算できませんが、いま起こっている異常気象では、その被害額の推定が可能となるからです。一方、温暖化の防止では、例えば、IPCCが推奨するCCS技術(CO2発生の原因となる化石燃料の燃焼排ガス中のCO2を抽出、分離、回収して地中深く埋め立てる技術)の適用ではお金が必要になります。この必要なお金を国民から徴収するために、異常気象による被害額の推定値が使われることになっていると言ってよいでしょう。すなわち、地球温暖化を防止しないと、大変なことになるのだと、それを、金額で表わすために、異常気象が温暖化のせいとされ、この異常気象の被害金額の推定値が使われていると考えられます。

 

② 温暖化を防止するためのCO2の排出削減にCCS技術(温暖化をもたらすとされる化石燃料の燃焼排ガスからCO2を抽出、分離、回収して、地中に埋め立てる技術)を用いようとしています。しかし、化石燃料の枯渇が迫る現状では、化石燃料使用の継続を前提としたこのCCS技術の適用でCO2の排出削減を図る必要はありません。人類の生存にとって、温暖化より怖いのは、その原因とされているCO2を排出する化石燃料の枯渇です。この化石燃料資源の枯渇をできるだけ先送りするためには、世界の全ての国が、残された化石燃料を公平に分け合って大事に使えばよいのです

ところで、いま、地球温暖化を防止するためのCO2の排出削減に、最もお金のかからない方法が、CCS技術だとされています。そのために、日本政府は、地中に埋めたCO2が、地震などによる地殻変動で、漏れ出さないような安定な地層のある立地を選び出して、このCCS技術適用の実証試験を行って、この技術の安全性の確認などを行っています。この実証試験の結果に基づいたCCS技術によるCO2の排出削減コストは未だ発表されていませんが、先にRITE((財)地球環境産業技術研究機構)により推定された値、7,300円/CO2トンが、このCCS技術の実用化の一応の目安になっているようです。(財)日本エネルギー経済研究所編;EDMCエネルギー・経済統計要覧(以下、エネ研データ(文獻1 )と略記)によると、2015年の世界CO2排出量は、32,910百万CO2トンとありますから、この値に上記のCO2排出削減のコストを乗じたCCS技術による地球温暖化対策の費用は、為替レートを110円/ドルとして1.97兆ドルと計算されます。これに対し、同年度の世界の実質GDPの値は75.3兆ドルですから、温暖化対策費のGDPに対する比率は2.7 %(=1.97/73.5)となります。温暖化を防ぐためのこの金額が妥当かどうかは別として、問題は、上記(①)したように、このCO2の排出削減により温暖化を防ぐことができるとの保証が無いことです。より問題になるのは、いま、人類の生存の危機を、経済成長を支えている化石燃料資源の枯渇として、それを防ぐために化石燃料消費の節減が必要だとするならば、経済成長のための化石燃料消費の継続を前提とした、このCCS技術の使用によるCO2排出の削減は意味を持たないことになるのです。すなわち、いますぐのCO2排出削減のためのコストが最も安いとされるCCS技術を用いる必要はありません。

人類の生存にとっての本当の脅威が、温暖化でなくて、化石燃料資源の枯渇だとすれば、この化石燃料を用いた火力発電の代替には、核燃料廃棄物や廃炉のコストを次世代送りする原発電力でなくて、現状では化石燃料を用いた火力発電よりコスト高になる、再エネ電力を使用する以外に方法はないのです。ただし、この再エネ電力の利用では、いま、その適用で市販電力料金の引き上げで国民に経済的な負担をかけているFIT制度を除外すべきです。すなわち、化石燃料を用いる火力発電のコストと比較して、このFIT制度の適用を除外した再エネ電力の発電コストが、より安価になった時点で、化石燃料を用いる火力発電から、順次、再エネ電力の利用へと切り替えて行けばよいのです。

繰り返しになりますが、人類の生存にとって、温暖化より怖いのは、その原因となっているCO2を排出する化石燃料の枯渇なのです。温暖化防止対策として、温暖化の原因とされているCO2を排出する化石燃料の消費を節減すれば、お金を使わないでもCO2の排出を削減できるのです。すなわち、いま、地球上の化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、全ての国が協力して、残された化石燃料資源を、公平に分け合って、大事に使って、その使用量を節減すれば、IPCCが主張するように、地球温暖化が、CO2の大気中への排出に起因するとしても、それを最小限に止めることができるのです。

 

③ 私どもは、残された化石燃料を公平に分け合って大事に使う方法として、世界の全ての国の協力による「化石燃料消費の節減対策」を提案しています。この私どもの「化石燃料の節減対策」を実行可能にするには、いま、トランプ米大統領以外の全ての国の協力が約束されている「パリ協定」のCO2排出削減目標を、化石消費の節減に代えればよいのです。しかし、いま、この「パリ協定」での各国のCO2排出削減目標を決めるCOP(地球温暖化対策の締約国会議)の場が、途上国のCO2排出削減に必要なお金を先進国が負担すべきだとする途上国と先進国の間の金銭取引の場にされています

私どもは、残された化石燃料を公平に分け合って大事に使う方法として、世界の全ての国の協力による「化石燃料消費の節減対策案」を提案しています。具体的には、2050年を目標に、先進国も途上国も共通に、全ての国が、一人当たりの化石燃料野消費量を現在(2012年)の世界平均の化石燃料消費量1.54 石油換算トン/人/年にすべきとしています。さらに、この私どもの「化石燃料消費の節減対策」は、いま、トランプ米大統領以外の全ての国が協力を約束している「パリ協定」のCO2排出削減目標を、化石燃料消費の節減に代えることで、実行可能になるとしています。その詳細については私どもの近刊(文獻2 )を参照して下さい。

地球温暖化対策としてのCO2の排出削減にしても、化石燃料資源の保全を目的とした、その消費の節減にしても、この「パリ協定」の実行を可能にするのは、現在、成長のエネルギー源として、大量に化石燃料を消費してCO2を排出している経済大国の協力が必要です。特に、人口が多く、いま(2015年)世界のCO2排出量19.2%を排出している中国と、15.0 % を排出している米国の協力は欠かせません。ところが、この米国のトランプ大統領が、CO2の排出削減にはお金がかかるとして「パリ協定」からの離脱を宣言しています。また、高度の経済成長の結果、2005年以降、世界一のCO2排出国となった中国も、「パリ協定」に協力するとはしていますが、豊かさの指標を表わす一人当たりの国内総生産(実質GDP)の値が世界平均の63.4%(2015年)で、さらなる成長を求めているなかで、化石燃料消費の節減でCO2の排出を削減するのには大きな困難が予想されます。

さらに問題になるのは、いま、世界のCO2の排出量の61 %を占める途上国(非OECD諸国)の協力です。しかし、一人当たりの実質GDPが世界平均の42.9 %の非OECD諸国に、お金のかかるCO2の排出削減を要請するのは、難しいことで、これが、いま、「パリ協定」でのCO2の排出削減目標を決めるCOPの協議での主要な議題となっています。具体的には、世界のCO2の排出削減のために必要な途上国(非OECD諸国)のお金を いままで、大量にCO2を排出してきた先進諸国(OECD 35)が負担すべきだとして、COP 21(第21回締約国会議)が、途上国と先進国の間の金銭取引の場にされました。そんなお金を出すのは、理屈に合わないとしたのがトランプ大統領の「パリ協定」離脱なのです。すなわち、本来、全ての国のCO2排出削減目標が、科学的な根拠もった値として決められるべきCOP 21では、各国の自主的なCO2削減目標値とされた上で、途上国による先進国への拠出金額の多寡が、協議の主体となったまま、「パリ協定」が成立したのです。これでは、「パリ協定」が、地球温暖化対策として実効を上げることは困難となるだけでなく、トランプ大統領の協定離脱宣言を非難することもできません。

したがって、「パリ協定」を、本来のあるべき姿に変えることが求められているのがこの年末に開かれたCOP 24なのですが、報道によれば、相変わらず、CO2排出削減に必要なお金を誰が払うかとの途上国と先進国の金銭取引が協議の対象になっているようです。

 

④ 人類にとっての本当の脅威が、いま、地球温暖化をもたらしているとされるCO2の排出源である化石燃料枯渇よる脅威だとしたら、「パリ協定」の目的として、COP 24の場で協議しなければならないことは、温暖化対策としてのCO2排出削減の目標値ではなくて、化石燃料資源枯渇の対策としての化石燃料消費の節減の費用対効果でなければなりません。しかし、この化石燃料の節減の費用対効用の定量的な評価がなされていません

いま、「パリ協定」のCO2の排出削減目標を決めるCOPの協議の場を混迷に陥れているのは、温暖化の脅威が、化石燃料資源枯渇の脅威より優先されているからだと言ってよいでしょう。しかし、上記(②)したように、人類の生存に脅威を与えるのは、温暖化より、化石燃料資源の枯渇なのです。であれば、「パリ協定」での温暖化対策としてのCO2の排出削減を、化石燃料資源の保全対策としての化石燃料消費の節減に変える必要があります。その上で、化石燃料消費節減の費用対効果が、温暖化対策としてのCO2排出削減の効果と比較して、定量的に評価されなければなりません。

このような評価で、先ず、第一に否定されなければならないのが、CO2の排出削減に最も安価だとして、その採用が検討されている上記のCCS技術です。その理由については、すでに、上記(②)しました。

もう一つ、前回のCOP 21で問題になっているのが、成長のエネルギー源としての石炭火力発電の利用です。いま、政府が、開発途上国への援助の一環として行っているのが、日本の優れた石炭火力発電技術の途上国移転です。COP 21 では、この問題が、地球環境保護団体などによって槍玉に上げられ、日本政府の代表団に対して、これらの団体から「化石賞」が贈られたと報じられました。国内においても、石炭火力発電設備の増設が、環境保護団体やメデアからだけでなく、環境省からも反対されています。ところで、この火力発電での石炭の利用ですが、この石炭火力発電の日本の技術は、世界一高い発電効率を持っています。エネ研データ(文獻1 )に記載されている世界の電力生産量のデータを用いて私どもが試算した結果では、日本の石炭火力発電の発電効率は、42.4%と、世界平均の値36.8%を大きく上回りますから、いま(2015年)、世界の総発電量のなかの59.4%を占めている石炭火力発電に、この日本の優れた技術を移転することは、世界の化石燃料費の節減に大きく貢献します。すなわち、世界の石炭の消費量が約13.7 %(= 1 – 0.368 / 0.424 )も減るのです。さらに、将来的には、現在、実用化の実証試験が行われている、石炭のガス化・コンバインドサイクル技術を用いられれば、石炭火力発電の効率は、65 % 以上になることが予想されています。石炭の可採年数(確認可採埋蔵量を、その年の生産量の値で割って求められる値)が石油や天然ガスの3倍程度あることから、人類にとっての電力の生産の主力は、当分は、可能な限りの節電対策を講じた上での石炭火力の利用となるはずです。石炭火力発電が問題にされるもう一つの理由として、その燃焼排ガスによる大気汚染の問題があります。しかし、この問題についても、日本の石炭火力発電技術は完全にクリアした上での上記の高い発電効率を持っていますから、この石炭火力発電技術の海外技術移転が責められる理由は何処にもありません。また、いま、国内で石炭火力の利用が進められているのは、石油危機以前の石油が石炭より安かった時につくられた発電効率の悪い旧式の石油火力から、新しい技術の石炭火力への変換のためなのです。因みに、石油危機以前の原油の輸入CIF価格は、単位発熱量当たりで、当時の国内炭の価格の約1/4でしたが、現在(2016年度)の原油の輸入CIF価格は、輸入一般炭の2.7倍もしています。なお、私どもの試算では、2015年の日本の石油火力発電の発電効率は37.5 % と、石炭火力に較べて低いので、この石油から石炭への切り替えでは、1割以上の節電効果が期待できます。

さらに、もう一つ、温暖化防止のためのCO2排出削減を主張する国内の地球環境問題のNGOなどは、国民のお金を使っても、いますぐの自然エネルギーの利用の促進を図るべきだと訴えています。ここで、自然エネルギーとは、昔から使われているダム式の水力発電を除く、新エネルギー(新エネ)とも呼ばれる、太陽光、風力、中小水力、地熱発電などの国産の再生可能エネルギーです。化石燃料資源の枯渇後、その代替として期待されていた原子力エネルギー(原発電力)が、3.11福島の事故で、その利用への期待の夢が断たれてから、日本では、新エネ電力がないと原発を再稼働しなければならないとされ、いますぐの新エネ電力の利用が訴えられています。しかし、3.11以降、原発電力が殆ど使われなくなった現状でも、国民は電力に不自由していません。また、自然エネルギーと言っても、いま、日本では、その大部分が太陽光発電です。一頃の、新エネブームによる過剰生産で安価になった太陽光発電素子を据えつけるだけで、直ちに発電できる、この太陽光発電の電力が、「再エネ電力固定価格買取(FIT)制度」の適用で、最も高い値段で電力会社に買い取って貰えます。そのお金は、電力料金の値上で、広く全ての国民から徴収されています。この再エネ電力の生産事業が新しいビジネスになると囃し立てていた、エネルギーの専門家と称する先生方も居られました。しかし、出力変動が大きくて、質の悪い電力を、高い値段で買取って、それを電力料金に反映させる、このFIT制度を先行実施していたEUで、その廃止が言われています。私どもが、この制度が制定される前から訴えていたように、このFIT制度は見直しではなく、速やかに廃止すべきです。

やがて、化石燃料が枯渇に近付き、いま、最も安価だとの理由で多用されている石炭火力の代替として利用される再エネ電力は、その出力変動を平滑化するための蓄電設備のコストを加えても、太陽光発電に較べれば、はるかに安価な風力発電がFIT制度の適用無に利用されるようになるでしょう。しかも、この風力発電の利用での経済性まで考慮した「導入ポテンシャル(導入可能量)」につての環境省の調査報告書(2011年3月)の導入可能設備容量のデータを発電量に直して、私どもが計算した、風力発電の(導入可能発電量)の値は2010年の国内総発電量の4.7倍もあることが誰にも知られていないのです。

 

⑤ COP 24 に果たすべき日本の役割;それは、化石燃料枯渇後の世界に人類が生き残るには、「パリ協定」のCO2の排出削減を、化石燃料消費の節減に代えて、自然エネルギー(再エネ電力)に依存する、成長は抑制されるが、エネルギー資源の配分の違いによる貧富の格差が緩和される平和な理想の社会に緩やかに移行することを世界に訴えることです 

何故、地球温暖化の問題に関連した日本の、いや世界のエネルギー政策で、このような混迷が起こるのでしょうか? それは、これまで、資本主義経済を支えてきた化石燃料資源が枯渇に近付いているいまでも、この枯渇する化石燃料の代替として、再エネ電力に依存すれば、いままで通りの経済成長が継続できるとの幻想が、広く現代人の脳裏を支配しているからではないでしょうか。そのなかで、出てきたのが、IPCCが訴える人類生存の危機をもたらすとの地球温暖化の脅威です。これを防ぐためのCO2の排出削減が「パリ協定」として、世界の全ての国の政治に要請され、このCO2の排出削減のルールを決めることがCOP 24の場で協議されています。

しかし、本稿で上記しましたように、世界の全ての国が協力して、地球上の有限資源である化石燃料の消費を節減すれば、IPCCが訴えるような地球温暖化をもたらすCO2の排出削減は実行可能です。逆に、この化石燃料消費の節減を行わなければ、経済成長のエネルギー源としての化石燃料資源の配分の不均衡による貧富の格差が拡大し、さらには、この貧富の格差の拡大による国際テロ戦争による世界平和の侵害が起こるのです。いや、すでに起こっています。

このように考えると、地球温暖化対策としての「パリ協定」のCO2排出削減のルールを決めるとされているCOP 24の協議の場で、日本が果たすべき役割は、いま、地球上に残された化石燃料を、公平に分け合って大事に使いながら、やがて、確実にやって来る化石燃料枯渇後の再エネ電力に依存する、経済成長は抑制されるが、エネルギー資資を奪い合うことの無い、理想の平和社会への移行の道を世界に指し示すことです。これが、第2次大戦後、平和憲法に守られて、中東地域を含む国際的な軍事紛争に巻き込まれないで経済成長を続けてきた日本国の責務だと私どもは信じます。

この「パリ協定」でのCO2排出削減の目標を、化石燃料消費の節減に代える私どもの提案が実行されれば、エネルギー資源の配分の違いによる貧富の格差が緩和されて、理想の平和社会への緩やかな移行の道を拓くことになります。すなわち、IPCCが主張する地球温暖化対策としての「パリ協定」の実行が、世界平和の維持に貢献することになりますから、IPCCにとっては、先に、「地球温暖化対策」の提言によって授与されたノーベル平和賞に報いることにもなります。

 

(補遺);COP 24の協議が終わりましたが

本稿の執筆中に、パリ協定のルールを創ることを目的としたCOP 24の協議が終わりました。報道によると、参加国が、温暖化への危機感を共有することで合意が得られましたが、途上国と先進諸国との間の対立点が来年に持ち越されたとあります。しかし、その協議での合意内容は、私どもが本稿で提案した問題点の解決にはほど遠いものと言わざるを得ません。人類の生存にとっての本当の脅威を防ぐために、今回のCOP 24の協議内容で、何が問題になるか、どう解決すればよいのかについて、改めて考察させて頂きます。

 

<引用文献>

1.日本エネルギー・経済研究所計量分析ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧、2018年版、省エネセンター、2018年

2.久保田 宏、平田賢太郎、松田 智;改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉――科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する――電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月

 

ABOUT THE AUTHER

久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他

平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。

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