電気自動車と未来像

大久保泰邦
もったいない学会会長

電気自動車時代へ?

先日NHKで世界の自動車業界が次々と電気自動車への転換を計画しているとの報道があった。下図は動力別の自動車販売シェア予測図である。

動力別でみる自動車販売シェア予測(AERA 2017年3月6日号より)
https://dot.asahi.com/aera/2017030100036.html?page=2

 ガソリン車のシェアピークは2020年頃となっている。その減少をカバーするのが、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)と、そして電気自動車である。つまり石油から電気への転換である。
自動車の命はエンジンである。一方電気自動車の命はモータである。この違いは非常に大きい。なぜなら自動車業界はエンジンの研究と技術開発を長年行ってきた。しかしモータについてはハイブリッド車のモータなど本格的な開発の歴史は浅い。これからエンジンを捨てて、モータを主体にするということは、自動車業界にとっては大変革なはずである。それをあえてするということは何を意味しているか。
下図は、石油の可採年数を2013年時点で40年とした時の著者が予測した石油ピークである。

エネルギーとコストのからくり(大久保、2014)より。

著者は、石油ピークは2020年頃と予測した。これはガソリン車のシェアピークと良く一致する。これから考えられることは、自動車業界は石油ピークをかなり認識しており、それを見越して電化への大変革をしようとしていると解釈できる。

 

電化された輸送のイメージ

電気自動車の世界では、充電する施設がガソリンスタンドに代わって設置されることになる。都市における大気汚染は軽減されるが、バッテリーの性能が飛躍的に進歩しない限り、電気自動車の航続距離はガソリン車より短い。
それを考えると、電気自動車を中心とした輸送システムはどのようなものになるか思い浮かぶ。それは電気自動車と乗客を積んだ、町と町を結ぶ長距離列車であり、町に着くとその列車から降りて、町を走り回る電気自動車である。長距離列車はフェリーボートのような役割をする。
このような未来像はあり得るかもしれない。

しかし肝心なことを忘れていた。石油が無くなるということは、その分社会全体が使うエネルギー量が減少するということである。
石油は19世紀に暖房や灯りの燃料として使われていた。しかしその消費量は多くはなく、社会において重要な位置にはなかった。電灯が発明されると逆に消費量が減少したほどである。
ところが、19世紀後半に自動車が発明されると石油の消費量は飛躍的に伸びた。そしてあっという間に石油は我々社会において無くてはならない存在となった。この歴史を振り返っても分かるが、石油が無くなることは、輸送に大打撃を与えることなのである。
自動車を電気で動かすとすると、その場合その電気をどこからか持ってこなければならないということである。
すなわち未来像は、電気をどのように生産するか、どのように節約するかの姿である。この議論を抜きに電気自動車の未来は無い。

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