「エネルギーの安全保障」には、国際的貧富の格差の解消による世界平和の確立が前提となります(その2) アベノミクスのさらなる成長戦略を支えるための「エネルギーの安全保障」が、日米軍事同盟の強化により、日本のエネルギー政策を混迷に陥れています
|東京工業大学名誉教授 久保田 宏
日本技術士会中部本部 事務局長 平田 賢太郎
(要約):
① 第2次大戦後の日本の復興・高度経済成長を支えた中東石油の供給が、いま、日本における「エネルギーの安全保障」に関わる化石燃料(石油)の安定供給の問題として、この原油の供給地の中東の軍事紛争と、この軍事紛争の原因をつくっていると言ってよい米国の軍事力に依存する日米同盟が密接に関っています。
② 米国が、世界経済の支配を維持するために起こしたイラク戦争に自衛隊を派遣して、戦後、歴代内閣が築いてきた中東諸国との友好関係を失ってしまった日本政府が、「エネルギーの安全保障」のための中東原油の確保を目的として、日米軍事同盟の強化を図っています
③ 「日米同盟の強化」のためとして、シェールガス起源の米国産の天然ガスの輸入が計画されました。しかし、その輸入先の多様化が十分確保されているなかで、「エネルギーの安全保障」のためとして、この米国の天然ガスを輸入する必要はどこにもありません
④ 米国におけるシェール革命は、どうやら幻想に終わりました。この幻想のシェールオイルを、日米軍事同盟の強化のために輸入することは、軍事力の強化のための米国製の武器を買わされるのと同じことです
⑤ アベノミクスのさらなる成長戦略のための石油資源確保のための日米軍事同盟強化に狂奔する安倍政権の「エネルギーの安全保障」政策は、石油資源の配分の不均衡により生じた国際的な貧富の格差による世界平和の侵害を助長するだけです。中東を含む全ての地域の恒久平和を築く唯一の方法として、「残された化石燃料を再配分するための「パリ協定」のCO2の排出削減を化石燃料消費の節減に代える私どもの提案」を敢えて訴えさせて頂きます
(解説本文):
① 第2次大戦後の日本の復興・高度経済成長を支えた中東石油の供給が、いま、日本における「エネルギーの安全保障」に関わる化石燃料(石油)の安定供給の問題として、この原油の供給地の中東の軍事紛争と、この軍事紛争の原因をつくっていると言ってよい米国の軍事力に依存する日米同盟が密接に関っています。
かつて、欧米列強に真似て、東アジアに大東亜共栄圏をつくるとの美名のもとで、中国への侵略を始めた日本が、その軍事的手段の必需品である石油の輸入を止められて、欧州で、同じ目的で戦争を始めたナチスドイツと結託して起こしたのが第二次世界大戦でした。この無謀な戦争に敗れ、その後の苦難のなかから、日本経済を復興し、さらには、高度経済成長によって、つい最近、中国に追い抜かれるまで、米国に次いで世界第二の経済大国にのし上がる原動力となったのが、戦後、輸入できるようになった安価な中東の石油でした。
この、一時、水よりも安いと言われた中東原油の国際市場価格を一気に一桁以上引き上げたのが、本稿(その1)で述べた1973年代の2度にわたって起こった中東の産油地域での軍事紛争(中東戦争)による「石油危機」でした。しかし、この石油危機をもたらした中東原油を大量に輸入している日本にとって、「エネルギーの安全保障」が問題になるのは、この原油の国際市場価格の高騰ではありませんでした。すなわち、石油危機の後、原油価格がバレル20ドル台に落ち着いた後も、この原油価格の値上がりを理由に、その供給が阻害されることがない状況が続いています。
問題は、この石油供給の一時的な中断が起こって世界中を大騒ぎさせた中東で、いまも、軍事紛争が続いていることです。日本にとって困ることは、この石油を中心とする化石燃料についての「エネルギーの安全保障」の問題を考える時、この中東における軍事紛争が、何時、どのような影響を与えるかの予想がつかないことです。こような、不安定な状況のなかで、当面のエネルギー資源の石油の供給を、日本は、中東に依存しなければならない厳しい現実があるのです。
日本エネルギー経済研究所編;EDMCエネルギー・経済統計要覧(以下エネ研データ(文献 1 )と略記)に記載の石油需給のデータから、日本における石油供給の中東への依存度比率の年次変化を 図1に示しました。この 図 1 に見られるように輸入石油の中東への依存度は、中東における軍事紛争と密接に関係しています。すなわち、1973年から1980年代の初めまで続いた石油危機の後、原油供給地の多様化を図って、1980年代の後半に70 % 程度まで低下した中東原油への依存度が、再び2000年代には、90 %近くに回復したものが、9.11( 2001年9月11 日)のアルカイダによる米国での同時多発テロに誘発された「イラク戦争」によって、再び低下しています。このように見て来ると、日本における「エネルギーの安全保障」に関わる化石燃料(石油)の安定供給の問題には、この原油の供給地の中東の軍事紛争と、この軍事紛争の原因をつくっていると言ってよい米国の軍事力に依存している日米同盟が密接に関っていることが判って頂けると思います。
図 1 日本における輸入原油の中東原油への依存比率の年次変化
(エネ研データ(文献1 )に記載の日本の石油需給のデータをもとに作成)
② 米国が、世界経済の支配を維持するために起こしたイラク戦争に自衛隊を派遣して、戦後、歴代内閣が築いてきた中東諸国との友好関係を失ってしまった日本政府が、「エネルギーの安全保障」のための中東原油の確保を目的として、日米軍事同盟の強化を図っています
中東諸国のイスラム原理主義者にとっては、西欧の現代石油文明は、神の教えに背く敵とされているようです。自国で採掘される石油がこれらの敵(西欧先進諸国)の手に渡るなかで、自分たちと敵との間の貧富の格差がどんどん広がって行くことに対する不満から起こったのが、9.11(2001年9月11日 )のアルカイダによる米同時多発テロです。世界の警察官を任ずる米国は、国連の名を借りて、このアルカイダを撲滅するとして、アフガニスタンに兵を進めました。さらには、イラクのフセイン大統領がアルカイダと通じているとして、化学兵器を大量に開発しているとの誤報を根拠にイラク戦争を仕掛けました。その結果、イスラム教徒の宗派間の争いのIS(イスラム国)の台頭による国際テロ戦争を招くことになりました。イラクは、サウジ、イランに次いで、中東で第3位の石油の確認可採埋蔵量をもつことから考えると、イラク戦争は、この中東原油の利権を確保するために、米国が起こした戦争であったことは間違いありません。
この米国との間の軍事同盟の強化を訴える安倍首相は、2015年9月、憲法学者をはじめとする多くの国民の強い反対を退けて、同盟国米国の起こした戦争に自衛隊を派遣できるようにする「集団的自衛権」の行使を可能とする「安全保障法案」を、国会で強行採決しました。この安保法制の成立に際して、安倍首相が特にこだわったのが、国家の存立が脅かされ、国民の生命と財産を守る中東からの石油を確保するためのホルムズ海峡での機雷除去に自衛隊を派遣できるようにすることでした。
しかし、一体、誰が、何のために、このホルムズ海峡に機雷を設置するのでしょうか?この海峡は、ペルシャ湾の出口の狭い所で30 km 幅の部分です。サウジアラビアをはじめ中東の石油の7 ~ 8割がここを通って輸出されていますが、この海域は、オマーンとイランの領海ですから、機雷を敷設するとしたら、国際タンカーが主に通行しているオマーンの領海にイランが機雷を設置することになります。しかし、何でイランがこんな国際法無視の行為をする必要があるのでしょうか? イランは、核開発問題で米国との間に紛争を起こし、西側諸国の経済制裁を受けていました。このイランの石油は、かつて、日本の石油輸入総量の約15 % を占めていましたが、現在は、往時の1/3以下に減っています。つい最近、米国のトランプ政権によるイランの核開発問題による経済封鎖が再開されようとしていますが、もし、そうなったとしても、イランが、それに反発して、西側諸国との軍事紛争にも発展しかねない、ホルムズ海峡の機雷封鎖のような暴挙に出ることは考えられません。
安倍首相がホルムズ海峡の機雷除去にこだわったのは、同盟国の米国の要請に従って、集団的自衛権の行使による自衛隊を、世界中にどこにでも派遣することができるようにするための理由を、日本経済の死命に関わる中東の石油の確保であるとの間違った考えを国民に訴えることで、日米軍事同盟の強化を図る安保法制を成立させるためだったのです。
③ 「日米同盟の強化」のためとして、シェールガス起源の米国産の天然ガスの輸入が計画されました。しかし、その輸入先の多様化が十分確保されているなかで、「エネルギーの安全保障」のためとして、この米国の天然ガスを輸入する必要はどこにもありません
(財)日本エネルギー経済研究所(法人化される前は、通産省の下部機構で、上記でエネ研と略記)による「日米エネルギー安全保障調査報告書 2014年 3 月」(文献2 )が、米国におけるシェール革命の結果、生産量が消費量を上回るようになったとされている米国産の天然ガスについて、その日本への輸入の可能性について調べています。この調査報告書(文献2 )を作成した同じエネ研のデータ(文献1 )に記載されているBP(British Petroleum)社データとして与えられている米国の天然ガスの生産量と、IEA(国際エネルギー機関)データの消費量の最近の年次変化を比較して 図2に示しました。この 図2に見られるように、米国では、2010年頃から、その生産量が消費量を上回るようになっています。この増加の傾向が今後も続くとして、余剰の天然ガスがヨーロッパに輸出されるようになったとも報じられましたから、さらに、日本への輸出の計画も日米政府間で進められたようです。
注;生産量はBP社のデータから、消費量はIEAのデータからで出所が異なります
図 2 米国における天然ガスの生産量と消費量の年次変化
(エネ研データ(文献 1 )に記載のBP社データ(生産量)とIEAデータ(消費量)をもとに作成)
しかし、日本が天然ガスを輸入する場合、これを、その産出国において液化天然ガス(LNG)にする必要があります。したがって、日本が、新しく、米国からLNGを輸入するためには、天然ガスの液化設備の建設費と液化の費用を負担しなければなりません。ところが、シェール革命と大騒ぎされた米国のシェールガスは、いざ掘ってみると、その生産コストが予想以上に高くつくことが判ってきました。 図2 に見られるように、このエネ研の調査報告書(文献 2 )が発表された2年後の2016年の生産量が前年を下まわるようになったのは、そのためと考えられます。
ところで、エネ研データ(文献1)で調べてみると、実は、日本にとっての最初のLNGの輸入先は米国だったようで、1969年度から1,000千トン前後の輸入量が維持されてきました。しかし、1970年代以降、米国以外のLNGの輸入量が急速に増える中で、輸入量合計(輸入計)に対する米国からの輸入量の比率は 図3に示すように、急速に減少し、2014 年には輸入計に対する米国からの比率は、僅か0.29%にまで落ち込んでいます。 現在の米国からのLNGの輸入は、日本にとって、一度、つくった液化設備の使用に関係するLNGの売買契約上の理由での購入ではないかと考えられます。
また、LNGの場合、エネ研データ(文献1 )から、2014年度の日本にとってのその輸入先国は、輸入量の多い順に(括弧内に輸入計に対する比率を示します)、オーストラリア(22.0 %)、カタール(18.5 %)、マレーシア(17.2 %)、ロシア(9.6%)、UAE(5.0%)、インドネシア(6.4 %)等20ヶ国以上にも及び、中東への依存度が82.7 %と高い石油とは異なり、その輸入先の多様化が十分確保されています。したがって、日本にとって、中東における石油生産の随伴ガスなどに較べて、はるかに生産コストが高くつく米国のシェールガスに液化の費用を加えたLNGを、エネルギーの安全保障のためとして、今後、その輸入量を増加させる必要は全くないと考えるべきです。
図 3 日本におけるLNG輸入量合計(輸入計)のなかの米国からの比率の年次変化
(エネ研データ(文献1 )をもとに作成)
④ 米国におけるシェール革命は、どうやら幻想に終わりました。この幻想のシェールオイルを、日米軍事同盟の強化のために輸入することは、軍事力の強化のための米国製の武器を買わされるのと同じことです
上記(③)した、「日米エネルギー安全保障調査報告書、2014年3月(文献2 )」では、さらに、現在、化石燃料のほぼ全量を輸入している日本にとって、米国産の石油や石炭についても、その輸入量の確保が、エネルギーの安全保障のための日米同盟の強化に貢献するとしています。
石油については、つい最近まで、米国ではシェールオイルが生産されるようになって、石油の輸出国に転じたと報道されていましたが、エネ研データ(文献1 )に記載のBP社の生産量データとIEAの消費量データの年次変化を示した 図4に見られるように、生産量が消費量を上回ることはなかったと見てよいでしょう。上記(③)のシェールガスの場合と同様、シェールオイルの場合でも、その採掘コストが予想をはるかに超えて高くついて、この生産事業に参入した幾つもの企業が倒産したとも聞いています。実際に、この 図4 にも見られるように、2016年の生産量は明らかに前年より低下しています。さらには、エネ研データ(文献1 )に記載されているBP社データの確認可採埋蔵量の値の年次変化を示す 図5に見られるように、2016年度の確認可採埋蔵量の推定値も、明らかな減少を示しています。なお、この米国の石油の確認可採埋蔵量の値R=5.8十億トンを図4 の国内消費量(2015年)の値Pc=0.636十億トンで割って求められる、私どもの定義による米国産の原油の「自給可採年数R/Pc」の値は9.1 ( = 5.8/0.636 ) 年で、世界の可採年数50.6年(BP社による2016年の値)に較べてはるかに小さな値です。米国のシェールオイルのブームは、どうやら幻想に終わったことは間違いがないと私どもは判断しています。
注; 生産量についてはBP社の原油生産量データから、バレル/ 日(b/d) の値を51.5石油換算 トン / 年とし、消費量については、IEAデータの一次エネルギー消費(石油)の石油換算トンの値を示しました。
図 4 米国における石油の生産量と消費量の年次変化 (エネ研データ(文献1)に記載のBP社データ(生産量)およびIEAデータ(消費量)を用いて作成)
図 5 米国における石油の確認可採埋蔵量の年次変化 (エネ研データ(文献 1 )記載のBP社データから)
なお、エネ研データ(文献1 )には、現在、石油についての日本の米国からの輸入量は記載されていません。ところが、昨年の朝日新聞(2017/2/24)に、私どもの目を疑う次のような記事がありました。
「政府 米国原油に熱視線 トランプ氏パイプライン建設許可受け」
の表題に「調達 脱中東へ戦略」の副題をつけています。トランプ政権の発足で、政府は、米国のエネルギー事業へ本格的な関与を検討するとして、2月23日まで開かれていた外務省の「エネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議」の内容が報道されていました。 「技術革新の結果、劇的な供給増を可能にしたシェール革命で増産された米国の原油が、トランプ氏の大統領就任で、原油輸入量の8割を中東に依存する日本の原油調達先を広げる好機が到来した」とするものです。その上、この中東依存からの脱却がエネルギーの安全保障に貢献し、米国の原油パイプラインの建設や原油の輸入量の拡大が、エネルギー分野における日米同盟の強化に繋がるとしています。
しかし、上記したような米国における石油の生産事業の実態を知るならば、外務省官僚主導のこのようなエネルギー関連の外交戦略は、全くの的外れの構想に過ぎないことが容易に判るはずです。まさに、この国の混迷するエネルギー政策を象徴するものと言ってよいでしょう。
⑤ アベノミクスのさらなる成長戦略のための石油資源確保のための日米軍事同盟強化に狂奔する安倍政権の「エネルギーの安全保障」政策は、石油資源の配分の不均衡により生じた国際的な貧富の格差による世界平和の侵害を助長するだけです。中東を含む全ての地域の恒久平和を築く唯一の方法として、「残された化石燃料を再配分するための「パリ協定」のCO2の排出削減を化石燃料消費の節減に代える私どもの提案」を敢えて訴えさせて頂きます
はじめ(①)に述べたように、第二次大戦の敗戦国の日本が、奇跡とも言われた高度経済成長を遂げることができたのは、戦後の冷戦構造のなかで、米国と安保条約を結んで、自衛のための軍事力を最小限に止めるとともに、経済成長のエネルギー源として、ふんだんに使うことができた安価な中東の石油があったからです。
しかし、いま、この世界の経済成長を支えてきた中東の石油を含む地球上の化石燃料資源の消費が増大を続けるなかで、その枯渇の懸念を払しょくできると期待されたシェール革命も、上記(③,④)したように、幻想に終わることが明らかになりました。すなわち、化石燃料に支えられてきた資本主義社会の経済成長は、いま、終焉を迎えようとしているのです (水野和夫(文獻3 )などをご参照下さい)。そのなかで、この化石燃料エネルギーを利用できる人と、できない人との貧富の格差に不満を抱く人々が、国際テロ戦争によって世界の平和を侵害しています。
この化石燃料消費の配分の不均衡に起因する世界平和の侵害を防ぐには、地球上に残された化石燃料資源の消費の再配分以外に方法がありません。具体策として私どもは、「世界の全ての国が、それぞれの国の一人当たりの化石燃料消費量を現在(2012年)の値、石油換算1.54トン/人/年 を、今世紀いっぱい続けることを目標とすべき」と提案しています。ただし、この目標値は、「今後の国別の人口の増減に応じて補正する」としています。この私どもの提言に対し、これは、実現不可能な理想論に過ぎないと言われる方がおられるかと思います。しかし、実は、これと同じことが、いま、国際的な合意を得て進められているのです。それは、地球温暖化対策としてのCO2の排出削減のための「パリ協定」の実行です。いま、起こっているとされる地球気温の上昇による生態系の不可逆的な変化への脅威を防止するためとして、その実行によって地球温暖化が防げるとの科学的な保証が得られていない「パリ協定」のCO2の排出削減が目標とされています。しかし、このCO2の排出削減の目標の達成を、お金をかけないでも確実に実行できる方法は、この「パリ協定」のCO2の排出削減を化石燃料消費の節減に代えるとする私どもの提案を実行する以外にありません。その詳細については、私どもの近刊(文献4 )をご参照下さい。
いま、安倍政権は、アベノミクスのさらなる成長のためのエネルギー源としての化石燃料を確保するために、集団的自衛権を行使できる安保法案を成立させるとともに、米国の要請に応じて、自衛隊を世界の何処にでも派遣できるようにするための「平和憲法の改正」、すなわち、「憲法九条のなかに、集団的自衛権を行使できる自衛隊の役割を位置づける改正」を行おうとしています。その理由として、日本の安全保障を巡る世界情勢が変わったとしていますが、この日本の安全保障を巡る国際情勢を勝手に変えているのが、安倍首相自身なのです。安倍首相が仮想敵国をつくり出しさえしなければ、かつて、生存のための石油資源を求めるとして侵略戦争を始めた資源小国日本にミサイルを撃ち込もうとする国など出てこないはずです。
すなわち、日本にとっての「エネルギーの安全保障」は、中東の原油の輸入の確保を守るための日米軍事同盟の強化ではありません。中東を含む世界中の全ての地域の恒久の平和を守るための貧富の格差の解消なのです。
自国の安全保障だけでなく、世界の安全保障のためにも、私どもの提案する「「パリ協定」のCO2排出削減を化石燃料消費の節減に代える」ことを、敢えて訴えさせていただきます。
<引用文献>
1.日本エネルギー経済研究所編:EDMCエネルギー・経済統計要覧2018、省エネセンター、2018年
2、日本エネルギー経済研究所;日本エネルギー安全保障調査報告書、2014年3月
3.水野和夫;閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済、集英社新書、2017年
4.久保田 宏、平田賢太郎、松田 智;改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉――科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する――
電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月5日
ABOUT THE AUTHER
久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他
平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。