Ugo Bardi氏の『やけに巨大複雑怪奇な機構である大学』

 本稿は、ローマ・クラブおよびASPO(association for the study of peak oil)のメンバーで、フィレンツェ大学地球科学学部の物理化学の教授であるウーゴ・バルディ氏のブログRESOURCE CRISIS 2015年6月8日付けの記事”The University as a Giant Rube Goldberg Machine”を訳したものである。大学を取り巻く状況について、バルディ教授の嘆きとジョセフ・テインター流の歴史認識が示される。

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  私は(最近選ばれたような)「崩壊の専門家」と思われたいわけではない。けれども、たしかに、時々私は私の周りですべてが壊れているような恐ろしい感覚を抱いてしまう。そのすべての始まりにおいて、世界中の大学が格好の例になるかもしれない。大学は頭でっかちでやけに巨大複雑怪奇な機構になっていて、役に立たない論文と途方に暮れた学生を量産しているからだ。(上の画像の出典: Wikipedia

 先週、天然ガスパイプラインに付随する地政学的な事柄について話してもらおうと、私はモスクワ大学に在籍する研究者仲間を私の大学に招いたのです。大勢が集まるとは期待していませんでしたが、結果は私が予想していた以上に惨憺たるものでした。その講演の聴衆は総計4人だったのです。しかも私自身を含めて、です。

 人々は忙しく、学生たちは試験期間だったし、講演はさほど周知されなかったし、他にも理由があったのだろうと、理解しています。ですが、この出来事によって私は寒い感覚に襲われてしまったのです。数千人の学生、数十人の教員がいて、ニュースなどでも活発に議論される題目なのですから、教育研究活動の目的に「国際協力」を掲げている学部において、少なくとも何らかの関心を惹くはずだと思うでしょう。ですが、小一時間ほどの講演に時間を割ける人がほとんどいなかったわけです。

 私はこのことについてじっくり考え、そして、私の友人であり研究者仲間であるジョージ・モーバスが彼のブログ”Question Everything”につい数日前に投稿していた記事を読んだのです。彼は正しく問題をすっぱ抜いていました。その記事を読んでみてください、あなたは大学の現状を理解することでしょう。おそらく、どこかで少しばかりよいことが起これば、他のどこかでは事態がより悪くなるものです。ですが、大学は至る所で、やけに巨大複雑怪奇な機構に成り下がっているように思われます。私たちは研究したり、教授したり、学生に試験を課したり、入力フォームに書き込んだり、論文を公表したりしていますが、すべてをひっくるめるならば、ますます非現実のオーラを放つようになっています。本当のところ、ここで何をやっているのでしょうかね?  

 ジョージがブログで取り組んだ既に素晴らしいまとめに私が付け加えたいことは、大学をも含む文明全体の小規模モデルとして大学それ自体が考えられ得るということです。つまり、大学は同じ問題に苦しんでいるのです。資源が減っているだけでなく、同時に、大学の構造が頭でっかちになって、官僚機構的な重層性によって悩まされているわけです。

 まさにジョセフ・テインターが今では古典となった彼の研究『複雑な社会の崩壊』の中で「複雑性の見返りの減少」と呼んだ事態なのです。(註:テインターの崩壊論の要約の邦訳社会の崩壊の原因は、資源不足だけでなく、社会にとって負担となる寄生虫が宿る構造の発生にもあるのです。そのような寄生虫が宿る構造を「セネカ効果(註:「セネカ効果」についての邦訳と名付けた私の説明の中では、あなたは「官僚機構」を汚染の一つの形式として考えることになるかもしれません。その結果は下の古典的な曲線であり、テインター氏の著書にある当のものです。

 あなたがこれをどのように呼ぶかはともかく、これはまさに大学に起こっていることなのです。多分に、それは自ら招いた災いなのですが、けれども、不可避的なことでもあります。

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