日本版FITの問題点(1)

 先日、経済産業省から、再生可能エネルギー発電設備の導入状況が公表された。それによると、設備認定(建設計画)は約1300万kWと順調に伸びているが、運転開始したものは166万kWに留まっており、とてもバブルと言える状況ではない事がわかる。メガソーラーや風力発電など大型のもの程、工事が進んでいない。

 電中研の研究者が日本版FITの問題点について指摘しているが、事業者側から眺めた場合、公平な議論でないように感じられるので、事業者側から見た日本版FITの問題点について簡単にまとめておきたい。
www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/legal.html

ドイツ版FITの評価について
 
果たしてドイツ版FITは失敗したのだろうか? 太陽光と風力による電力は、既に化石燃料に匹敵する規模に成長している。負荷曲線を見ても、太陽光発電により昼間ピークが効果的に抑制されていることが分かる。
 
 電力会社はこれまでピーク電力を抑制するため、蓄熱式冷暖房の普及など、負荷率改善に多大なコストと人材を投入してきたが、太陽光発電によりそれが達成される可能性が高い。
 
太陽光発電の多量導入は原発停止に伴う節電や計画停電の回避に極めて有効である。本来、太陽光発電事業者と電力会社は、制度設計さえ上手くやれば、Win-Winの関係を築けるはずなのである。
 
なぜ発電所建設が進まないのか?
 
もし電中研の研究者が指摘するように、日本版FITの買取価格が高すぎるのであれば、速やかに発電所を建設し、売電事業を開始した方が有利であろう。即時償却ができる「グリーン投資減税」も、設備取得後1年以内の売電開始が条件となっている。
 
ではなぜ、事業者は速やかに発電所を建設しない(できない)のであろうか? 円安が進む状況で、輸入パネル価格のさらなる低下を指をくわえて待っているのであろうか? 先の論文では、発電所建設が進まない本当の理由が隠蔽されている。
 
発電事業者は、金融機関や国内外のファンドから資金提供を受けて、発電所建設を進めるのであるが、「日本版FITでは資金が提供できない」、と指摘されているのである。以下、その理由について検討してみよう。
 

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