2050年までの未来予測とWebセミナーのテーマ提案
|田村八洲夫
1)「脱コロナと情報文明の成立・成熟の今後30年」の未来社会を予測
2020年代は、グローバルにみて、脱コロナ禍のニューノーマルの状態に続いて、情報技術の破壊的イノベーションが本格的に始まって、新たな社会的価値が創造され「情報文明」が形成されていく。そして、2030年に、SDGsの目標である「地球環境と人類社会を持続可能なモノに戻す」ことの実現を目指す。さらに起こりうる偶発的な核戦争など様々な破滅的な災禍(カタストロフィー)を克服して、2050年には、限りある地球資源を「もったいない、ほどほどに」有効活用して、「誰も置き去りにしない」平和で愉しい「ドラえもん風社会」を永続的に築く。
シンクタンク「ローマ・クラブ」発行の「人類の危機レポート『成長の限界』」では、持続可能な地球社会の実現は、2050年の30年後だろうとみている。現状のこのままの日本では「持続可能でない国」になってしまうし、世界もそうだと危惧する。その根拠は、第四章第一節で示したデータが語っている。
進化生物学者のジョルダン・ダイヤモンドは、著書「文明崩壊」で、「文明の崩壊の恐れに早く気付かなかったり、気付いていても対策が誤っていると、文明は崩壊する」と警鐘している。
アインシュタインは、社会的価値の創造に際して、思考様式・価値観のようなマインドセットの切り替えが必要だと示唆した。
フランスの未来予測家ジャック・アタリ氏は、コロナ禍の現在に対して、「他国の人々がコロナに感染しないよう互いに協力することこそ、パンデミックを克服する唯一の道である。このような『利他主義』こそ、最善の『合理的利己主義』に他ならない」と主張している。
文明の崩壊は一言でいうと、社会と自然が「持続可能な条件」を失ったからである。逆にいうと、社会と自然の持続可能な条件を維持すれば、文明は、そのタイプが変わっても、地域にも国にも存続する。持続可能な条件の問答が肝要である。そして、持続可能な条件を奪う者は誰か。
2)日本の実力(世界の貧困格差・自然破壊の状況は省略)
最近の世界ランキング等から見た相対的な「日本の実力」は、以下のとおり。
- 人口 人口増加率 ―0.06(120位)、 世界平均は+1.18
- 人口予測 2050年:1億人以下、2100年 :5千万人以下、2200年:ゼロ0人
- 貧困問題 相対的貧困率 :27位、16.1%、年収122万円。子ども貧困率 16,7%
- 公的支出のGDP比の少なさ 教育費の比率40位 、障害者への比率32位、 失業への比率31位
- 労働条件 平均賃金:18位、労働生産性:30位
ひとり当たり年労働時間の多さ:17位 、 ひとり当たり可処分所得の多さ:16位 - 貯蓄・年金 一世帯当たり貯蓄23位 、年金の所得代替率:41位
- GDP 日本3位・5兆ドル、米国1位・18兆ドル、中国2位・12兆ドル
- ひとり当たりGDP 日本26位、米国 9位、韓国30位 、中国70位
- 輸出の世界シェア2018年:日本 3.8%(81.7兆円)、独7.7%、米10.2%
- 自給率 食糧自給率:日本38%、米 127%、仏 129%、独92%
エネルギー自給率:日本1%以下、米 100 %、仏 54 % 独38%
現在の地球社会では、1%の富裕層が富の半分以上を占めている。飢餓が8億人以上と貧困が8億人近くも、いぜん広範にある一方で、30%以上ある食品ロスが多すぎる。不潔な飲用水とトイレで生活している者が、それぞれ21.6憶人と45億人、児童労働者が1.5億人と多く、人間としての保健と尊厳が、如何に失われているかである。総じて、貧困格差が拡大し、尊厳が蔑ろのままで、人間社会全体が不安定になってきている。
以上のランキングを俯瞰して日本の実力の程度を概説し、日本の現状について評価し、対策を考察する。
- 日本の人口減少は、少子化と高齢化が進み、生産労働人口の年齢構成がますます「長円型」に細って減少している。そして、2030年頃には成人3人で2人の老人を支える、すなわち老齢の両親を子供夫婦だけでは支えられないという異常な人口構成になる。
- その人口減少に食糧自給率の低下が重なって、先祖代々が造り上げた豊穣な国土が、加速的に荒廃し、野生動物は住民との棲み分けエリアを侵してきている。
- 日本の技術水準は、AIやICTの技術分野、そして社会を変える破壊的イノベーションが非常に遅れており、情報文明社会で自律できる現況でない。世界でリードする先端的な工業立国ではないし、優れた貿易輸出立国でもない。
- そして、勤労者の貧困格差が進んで、平均賃金、労働生産性、ひとり当たりのGDP、貯蓄率は、どれも先進国の中で中くらいのランクである。教育費、失業対策費、ケアワークに対する公的資金の投入が少ないのは、新自由主義的な自助努力を強いていることの表れである。このままでは人口も国土も、さらに産業と教育、文化でも先細りして、「持続可能でない国」になることを恐れる。科学技術のイノベーションが遅れで、世界に注目されるプラットフォーマーも、焦眉のコロナワクチンも海外依存である。
3)ニューノーマルとイノベーションの関係
ニューノーマルとは、新たな社会の変化に対応した状態、「新たな当たり前の状態」のことで、私的な生活や社会生活が変わり、新たな常識・知識・価値観や、新たな常態・モラルに変わっている状態をいう。
イノベーションとは、社会的価値のあることの創造である。
イノベーションは、社会の常識・常態を変える創造する力、あるいは改良するがある。
例えば、こんな力である。
- 技術革新の力、
- 恐慌や貧困格差による経済の変化に伴う力、
- エネルギー転換や環境変化に伴う力、
- 国民の置かれている常識や常態が急に変化が求められることによる力、
等がある。
次に、ニューノーマルとイノベーションには、次のような関係が考えられる。
- 働く力のタイプが異なると、創造される社会の価値、社会変革の内容が変わる。
- イノベーションが起ると「オールドノーマル」から「ニューノーマル」の状態に変わる。
- 「オールドノーマル」から「ニューノーマル」の状態に変わってもイノベ―ションが伴わないで、「オールドノーマル」に戻ることがあり、逆は真であらず。
- イノベーションには、持続的イノベーションと破壊的イノベーションに大きく区分できる。破壊的イノベーションが、文明の4つ社会インフラの要件を変えるほどに、規模が大きい場合は文明自身が転換する。現在は、コロナ禍によってニューノーマルの状態が続いている。それと重なって、①の情報の技術革新の力で、イノベーションが破壊的に進んでいる。物質文明(石油文明)が情報文明に転換している最中である。
4)破壊的イノベーションから「情報文明」の形成へ
2020年代は脱コロナから始まり、個々の情報技術が組み合わさって、情報文明が形成されようとしている。なぜ、情報文明と名付けるのか。文明の基盤をなす社会インフラの情報化されるからである。
一般的に文明の社会インフラは、4つ項目に定式化できる。すなわち、①エネルギー ②生産方式 ③移動方法 ④情報伝達である。
石油文明から情報文明への社会インフラの転換の場合は、④の情報伝達が驚異的に進化して、他の3つの社会インフラを創造しており、次のようになる。
- 石油から再生可能エネルギー転換。
- 機械制大工場生産から3Dプリンティング生産へ移行。
- 長距離高速輸送からオンデマンド流通輸送へ転換、「ドラえもん風」輸送革命。
- 個別情報伝達の発達から情報技術の革新的融合が破壊的イノベーションを起こし「文明社会の生き血」として循環する主役の地位になる。 そして、新たに、
- マインドセットの転換。マインドセット切り替えには、「思考様式と価値観の転換」、「競争排他から連携協同へ転換」「金欲心より遊び心の復興」等。
20年代に世界は「情報文明社会」が形成されていくが、情報文明の成熟は、2030年のSDGsイノベ―ションを経て、カタストロフィーとの戦いに勝利後の2050年。
5)人類社会の破局になりうる4つのカタストロフィー(2060年まで)
- AI技術カタストロフィー:AIが人間頭脳を超える年。2045年の予測。
- 資本主義終焉カタストロフィー:石油減耗が加速的に本格化する年。2050年までに。
- 地球環境カタストロフィー:アマゾン森林が消える年。2060年頃の予想。
- 核戦争カタストロフィー:国際秩序が崩壊し、核戦争が起こる年。いつ起こるかも。
6) 2010年代に生まれた個々の革新的情報技術
クラウド、IoT、5G、3Dプリンティング、AI、ロボット、
深層学習、データサイエンス、ブロックチェーン、
量子コンピュータ、P2Pネットワーク等
7)破滅的イノベーションが創造した「文明的な社会的価値」
- 生活様式 → IoTによる生活様式の転換
- 製造方法 → 3Dプリンティングによる製造方法の転換
- 交通システム → ライドシェアの革新による「ドラえもん風」の交通革命
- ビジネススタイル → Eコマースの革新によるオンデマンドビジネスへ転換
- エネルギー → 再生可能エネルギー利用へ転換
- 価値観 → マインドセットの転換
8)Webセミナーのテーマとして提案
先進的・革新的なテーマを分かり易く議論する。
- 5)、6)、7)のすべてがセミナーの対象
- 非在来型石油・ガス(シェールオイル・オイルサンド)は、石油文明を活性化する生き血ではない。欧州・中東・ロシア・中国には殆ど関係ない「お勉強」。
理由:
エネルギー収支比がエネルギークリフの10以下である。
生産地が米国中央部とカナダオイルサンド帯、オリノコデルタに限定的。
よって、石油文明社会を安定的に支えることができない「石油系資源」である。
9)6Rか7Rか。
五十嵐様からのWebセミナー向け資料をいただきました。ありがとうございます。まだ、すべてを見ていませんが、若干、困惑しています。何かというと、もともとの3Rは「ものを粗末にできない。もったいない」という日本の神代古来の慎ましい文化に由来し、さらに五穀豊穣と木質文化の日本の風土・祭祀に通じるものだと思います。ノーベル平和賞を受賞したケニアのマータイさんはそのことを深く理解して、3Rに「レスペクトのR」を追加して、mottainai =4Rの意味で国際的に通用させたいとのことでした。3Rを6Rにするのは、なかなか覚えきれないところがあり、個人的には3Rで事足りますが、それでもとあれば、レスペクトのRを加えて、7Rにするのが、日本人の誇りとしては文化的、情操的(精神文化的)な深い意味があるので良いと考えます。
なお、マイクロプラスチック、エチレン系プラスチックだけでなく、大型の製品である車の車体、家電・OA関連のプラスチックも、持続可能に森林資源をリサイクルする視点から、すなわち、より総合的な観点からプラスチックの事業化問題を取り上げることは本質的に肝要だと考えます。多くのドリーマーと協同し啓発して。
以上