いま、国難と言われる「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」の完全収束のための緊急事態宣言を、一刻も速く実効あるものにするには、政治による「PCR検査の徹底」こそが求められなければなりません

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ 政府による1都3県の緊急事態が宣言されましたが、その期限が一月後の2月7日とされました。菅首相は、それまでに、この「コロナ問題」を完全収束できると考えているのでしょうか?

⓶ 菅首相は、今回の緊急事態宣言は、ワクチンが利用できるようになるまでの繋ぎだとしているようですが、2 月末からワクチンの利用ができるとの政府の計画が実現できなければ、一年延期された東京オリンピック・パラリンピックも開催できなくなるかもしれません

⓷ いま日本は、何としても、一刻も早く、「コロナ問題」の完全収束を図らなければなりません。私どもが訴えてきた「PCR検査の徹底」が、確実に、「コロナ問題」を完全収束できる唯一の方法です

⓸ この「PCR検査の徹底」こそが、最も安価に「コロナ問題」を収束させ、全ての国に適用できますから、一年遅れの東京オリンピック・パラリンピックの開催を可能にします

 

(解説本文);

⓵ 政府による1都3県の緊急事態が宣言されましたが、その期限が一月後の2月7日とされました。菅首相は、それまでに、この「コロナ問題」を完全収束できると考えているのでしょうか?

いま、国難とも言われる「コロナ問題」で落ち込んだ日本経済を再生させるためにどうしても必要だとして、首相が菅義偉氏に代わっても続けられてきたGo toキャンペ-ンが、「コロナ問題」の第3波による感染者の増加が止まらなくなって、お正月の故郷への帰省期間中は一時停止すべきとの「コロナ対策分科会」の専門家の意見を入れて、12月28日から1 月11日までの間一時停止されました。にも拘わらず、この間の第3波の感染者数の増加が加速するなかで、地方自治体の知事などの強い要請で、菅首相は、1月7日から一月間、東京都とその周辺の埼玉、千葉、神奈川の1都3県に対し、「新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言」を発令しました。

朝日新聞(2021/1/8)によれば、この緊急事態宣言下での主な感染防止対策としては、

・外出自粛; 午後8時以降の不要不急の外出自粛を住民に徹底

・営業時間の短縮; 飲食店、バー・カラオケなどの営業時間は午後8時まで、酒類の販売は 午前11時~午後7時とすることを要請

・出勤・通学など;  出勤者数の7割削減を目指すことを含め、在宅勤務(テレワーク)や交代勤務などを推進する。中小高校・大学・幼稚園などは原則開く

・イベントの開催、施設利用の制限; 飲食を伴わず、5千人かつ会場の収容率50 % 以下での開催。午後9時までの営業時間短縮を働きかける

と記していました。

この政府による1 都3県の緊急事態宣言について、私どもがまず問題にしたいのは、この政府が掲げる感染防止対策の大部分が国民の行動に対するお願いになっていることです。この緊急事態宣言を発した1月7日に、菅首相が言ったと言われるように、この想像を絶するような感染拡大を、何とかして抑えるためには、上記した国民の協力が不可避でしょう。また、これも、菅首相の発言とされていますが、年明けの感染拡大の理由には、冬に入っての気温の低下も原因していることも考えられます。

しかし、より大きな原因と考えられるのは、コロナ問題による経済の落ち込みからの再生を図るための政府によるGo to トラベルやイートなどの菅首相がこだわるGo to キャンペーンの継続だったのではないでしょうか? さすがに、今回の緊急事態の宣言期間中は、観光業支援のGo to トラベルを全国一斉停止するとしていますが、感染防止対策に国民の協力を得るためにも、この感染防止に逆行するGo toキャンぺーンの全面廃止が決められるべきでした。

もう一つ私どもが問題にしたいのは、この緊急事態宣言の継続期間を一月後の2月7日としていることです。さらに西村経済再生担当大臣が、この緊急事態宣言解除の条件として、感染者数を人口10万人あたり1週間平均で25人、東京都で1日500人としていることです。しかし、感染者数がゼロにならないうちに宣言を解除したら、「コロナ問題」の第1 波の時と同じような感染者の再増加が起こることは間違いありません。

いま未だ、この1都3県に対する緊急事態宣言による感染防止効果が得られるかどうか明らかにならないなかで、大阪府、兵庫県、京都府、愛知県、さらには福岡県などが、緊急事態宣言の発令を政府に要請しています。しかし、これらの要請に対して、菅首相は積極的な対応を渋っているように見えます。これは、菅首相が、この緊急事態宣言による「コロナ問題」の完全収束に自信がないことを表すとともに、自己の首相の地位を守るための経済再生に与える緊急事態宣言のマイナス効果の出現を恐れているためではないでしょうか? 菅首相にとって、「コロナ問題」より怖いのは、この「コロナ問題による経済の落ち込みなのです。

 

⓶ 菅首相は、今回の緊急事態宣言は、ワクチンが利用できるようになるまでの繋ぎだとしているようですが、2 月末からワクチンの利用ができるとの政府の計画が実現できなければ、一年延期された東京オリンピック・パラリンピックも開催できなくなるかもしれません

戦後レジームの脱却により、日本を戦争のできる戦前に戻すためのアベノミクスのさらなる成長戦略を受け継いだ菅首相による経済成長を最優先したエネルギー政策の実行では、いま、人類の生存を脅かしている「コロナ問題」を収束することはできません。また、これでは、安倍晋三元首相が、過酷事故を起こした東電福島第一原発の汚染水が「完全にコントロールされている」として、その誘致に成功した東京オリンピック・パラリンピックが、「コロナ問題」で、1年遅れても開催できません。菅首相は、米国のファイザー社が開発したワクチンが、日本で、2月末には利用可能になると言っていますが、いまのところ、このワクチンが全国民に対して使用できるとの保証はありません。これでは、世界の全ての国が選手を派遣してくれるかどうか不明です。

世界の全ての国の選手が参加できたうえに、競技場の観客席の人数制限などを行わなくて済むようにするには、世界の全ての国が、日本国内の「コロナ問題」を、できれば完全に、少なくとも、ほぼ完全に収束したと認めて貰える状態ができることが必要です。その具体的な方法は、下記(⓷)するような、私どもが推奨する「PCR検査の徹底」の方法が、少なくとも日本国内で実行されなければなりません。

 

⓷ いま日本は、何としても、一刻も早く、「コロナ問題」の完全収束を図らなければなりません。私どもが訴えてきた「PCR検査の徹底」が、確実に「コロナ問題」を完全収束できる唯一の方法です

「コロナ問題」の完全収束の方法として、私どもは、「PCR検査の徹底」を挙げています。これは、コロナウイルスへの感染の有無を調べるPCR検査を、短期間に、ほぼ全国民に行って、コロナウイルスに感染したと判断された、すなわち陽性と認定された全ての人を、感染していない人、すなわち陰性と認定された人から隔離して治療を施し、陰性になってから隔離を解く方法です。この「PCR検査の徹底」によって、理論的には、短期間に「コロナ問題」の完全収束が図れるはずです。

この「PCR検査の徹底」の方法は、「コロナ問題」の第1波が、中国に次いで早く襲来した西欧諸国で用いられ、短期間の「コロナ問題」の収束に成功しました。しかし、「コロナ問題」による経済の落ち込みを防ぐためとして、完全な収束が得られない状態で、この方法の適用を停止したので、潜在的な感染者が第1波の時よりも増加しているために、西欧諸国でも、再び、ロックダウン(都市封鎖)を含む「PCR検査の徹底」の方法を適用せざるを得なくなっています。さらには、新たに、英国における変異株の発生などもあり、この第2波の収束に苦労しているようです。

一方、「コロナ問題」の第1波の収束のために、人口当たりのPCR検査の数が西欧諸国に較べて二桁以上も小さいなかで、その収束に成功した日本では、その後の第2波の収束においても、人口当たりのPCR検査数を、第1波の時と同じように少ないままで収束を図ろうとしています。しかし、第1波を完全に収束させないまま緊急事態宣言を解除したために、潜在的な感染者が増えた状態のままで、PCR検査数を第1 波と同様の人口当たりの検査数に止めているために、感染者数の増加に歯止めがかからない状態が継続し、未だに、第3波の襲来を招いているのです。したがって、いま、日本で、この「コロナ問題」の完全な収束を図るためには、政治は、緊急事態宣言を再び発令するとともに、人口当たりのPCR検査数を西欧諸国並みに増加する「PCR検査の徹底」の方法を用いる以外に方法が無いのです。

ところが、感染症の専門の先生方も推奨しておられる、この「PCR検査の徹底」の方法に対して、いますぐ日本で、人口当たりのPCR検査数を西欧諸国並みに増やしたのでは、一時的に感染者が増加して、医療崩壊が起こるとの反論があります。しかし、PCR検査数の少ない現状のままで、上記(⓵)した緊急事態宣言による感染防止対策を実施しても、「PCR検査の徹底」による陽性者の隔離措置が行われなければ、第1波の時と同様、潜在的な陽性者(感染者)は減りませんから、今回の2度目の緊急事態宣言を解除すると同時に、感染者の増加が再発することになります。

 

⓸ この「PCR検査の徹底」こそが、最も安価に「コロナ問題」を収束させ、全ての国に適用できますから。一年遅れの東京オリンピック・パラリンピックの開催を可能にします

このように見てくると、いま、国難とされる「コロナ問題」の一刻も早い完全収束のために必要な方法は、いま問題になっている緊急事態宣言が求める感染防止対策の順守ではなくて、西欧並みの「PGR検査の徹底」と考えることができます。したがって、いま、緊急事態宣言が求める感染防止対策を守らない国民に対して、「コロナ問題」に対する特別措置法を制定して、罰金刑などを科する法的根拠が無くなります。

これに対して、「PCR検査の徹底」では、その責任は、全て政府にあり、その対策に必要なお金は全て国費により賄われなければなりません。したがって、この金額が多額になることが「PCR検査の徹底」の方法が排除される原因のもう一つに挙げられています。

しかし、いま、このPCR検査は、民間でも行われるようになっており、その費用は1件当たり1万円程度になっています。この値段で、PCR検査を一人が3回行うとすると、日本の人口1.27 億に対する合計金額は、3.81兆円程度で済むことになります。これに対して、政府は、「コロナ問題」の第1波での緊急事態宣言時に、国民の消費の低下による経済の落ち込みを防ぐために、私どもには理解できない一人一律10万円を、野党の応援も得て支給しました。この総額は、上記のPCR検査の総額の3.3 倍に上ります。さらに、この「コロナ問題」による観光業や飲食業の経営損失を補償するためとして、今年度の財政予備費の10兆円を超す金額の国家財政の支出が予定されています。

すなわち、「コロナ問題」の完全収束のための最も安価な方法は、この「PCR検査の徹底」なのです。したがって、医療崩壊が起こるからと言って、政府が、「PCR検査の徹底」を退ける理由はないのです。また、この安価な「PCR検査の徹底」は、途上国を含めた世界の全ての国において適用が可能となりますから、ワクチンの供給が世界中に行き渡らなくとも、世界の「コロナ問題」が完全収束でき、一年遅れの東京オリンピック・パラリンピックの開催が可能になるのです。

なお、この本稿の「PCR検査の徹底」については、私どもの最近のシフトムコラムの論考(文献 1と文献 2 )とのダブりがあることをお許し下さい。

 

<引用文献>

  1. 久保田 宏、平田賢太郎;トランプ氏を米大統領職から追いやった世界の新型コロナウイルス問題収束への道は、私どもが提言する「PCR検査の徹底」によってのみ実行可能となります、シフトムコラム、2020,11,16
  2. 久保田 宏、平田賢太郎; 「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)より怖い選挙の票を重視した菅義偉首相は、あれだけこだわっていたGo toキャンペーンを、急転直下、一時停止しました。これで「コロナ問題」は収束し、日本経済は再生できるのでしょうか? シフトムコラム、2020,12,20

 

ABOUT  THE  AUTHOR

久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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