アベノミクスのさらなる成長戦略を継承した菅義偉新首相による「温室効果ガス2050年ゼロ」宣言は、地球温暖化対策にならないだけでなく、世界平和を脅かしている貧富の格差の解消に貢献しません (その3 )いま、日本が主張すべきことは、世界の貧富の格差を解消するための先進国における化石燃料消費の節減による世界平和の追求でなければなりません

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ 2050 年の化石燃料消費節減目標を達成するためには、わが国のエネルギーの基本計画を見直す必要があります。これが、アベノミクスのさらなる成長路線を脱却して、化石燃料枯渇後の地球上に、日本経済が生き残る道でなければなりません

⓶ 地球上に残された化石燃料を公平に分け合って大事に使うことが、人類が平和な世界に生き残る唯一の道です

⓷ 日本のエネルギー基本計画の見直しが求められています。それは、菅首相が求める地球温暖化対策としての「カーボンニュートラル」を目的としたエネルギー政策ではなく、世界の貧富の格差を解消し、平和な世界に人類が生き残る道を創るための世界のエネルギー政策でなければなりません

⓸ 補遺;私どもの「温暖化は起こらないから、CO2排出ゼロは不要」は、米トランプ大統領の温暖化対策のための「パリ協定」の離脱とは違います

 

(解説本文);

⓵ 2050 年の化石燃料消費節減目標を達成するためには、わが国のエネルギーの基本計画を見直す必要があります。これが、アベノミクスのさらなる成長路線を脱却して、化石燃料枯渇後の地球上に、日本経済が生き残る道でなければなりません

私ども(文献 1 、文献2 )は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)が示した、地球上の気候変動のデータを基にして、IPCCがつくった「温暖化のCO2原因の仮説」が正しかったとしても、世界の全ての国がCO2排出の原因となっている化石燃料消費量の年平均値を、今世紀いっぱい 2012年の値に抑えれば、IPCCが主張する温暖化の脅威は起こらないことを科学的に明らかにしました。

この私どもの主張は、アベノミクスのさらなる成長戦略を引き継いだ菅首相の「温室効果ガス2050年ゼロ」宣言の実行は、無駄に国民のお金を使うだけで、その目的としている地球温暖化の防止に役立たないだけでなく、いま、世界平和のために求められている国際的な貧富の格差の解消に役立たない無用なエネルギー政策に他ならないことも明らかにしています。

 

本稿(その3 )では、いま、世界経済を支えてきたエネルギー源の化石燃料の枯渇が迫るなかで、世界の全ての国が、残された化石燃料を公平に分け合って大事に使いながら、やがてやってくる、再生可能エネルギーのみに依存する貧富の格差を最小限に抑える、理想の社会を創るための世界の、そして日本のエネルギー基本計画の在り方を提言します。

 

⓶ 地球上に残された化石燃料を公平に分け合って大事に使うことが、人類が平和な世界に生き残る唯一の道です

いま、地球上に残された化石燃料を大事に使うためには、地球温暖化を防止するためとされて、トランプ米大統領以外の全ての国の合意で進められている「パリ協定」のCO2排出の削減目標を、私どもが主張する化石燃料消費の節減目標に換えればよいのです。

具体的には、2050 年の各国の一人当たりの化石燃料消費量(石油換算㌧/人)を、2012 年の世界平均の値にすればよいのです。ただし、各国の2050年の一人当たりの化石燃料消費の値は、それぞれの国の人口の対2012年の増減比率の予測値に応じた補正を行います。

日本エネルギー経済研究所編のエネルギー経済統計要覧(以下、エネ研データ(文献 3 )と略記)に記載のIEAデータをもとに、この私どもの提言案、すなわち、各国の「一人当たりの化石燃料消費量の年次変化と、私どもが提案する将来目標」を図 1 に示しました。

 

図 1 各国の一人当たりの化石燃料量の年次変化(2012年まで)と、私どもが提案する世界の化石燃料消費の節減目標値(200年と2100年) (エネ研データ(文献2)に記載のIEAデータをもとに作成)

 

この図1に見られるように、この私どもが提言する化石燃料消費の節減対策案では、現在、一人当たりの化石燃料消費量の大きい経済大国では、大きな化石燃料消費の節減が求められますから、経済のマイナス成長が強いられることになります。

一方で、現状の一人当たりの化石燃料消費が小さい途上国の多くでは、一人当たりの化石燃料消費の増加が、したがって、経済の成長が許されることになるのです。

したがって、これは、実行不可能な理想論と映るかと思われますが、いま、世界の流れになっている地球温暖化対策としての「パリ協定」のCO2排出削減目標を、化石燃料消費の節減目標に換えることで実行可能な対策となります。

 

⓷ 日本のエネルギー基本計画の見直しが求められています。それは、菅首相が求める地球温暖化対策としての「カーボンニュートラル」を目的としたエネルギー政策ではなく、世界の貧富の格差を解消し、平和な世界に人類が生き残る道を創るための世界のエネルギー政策でなければなりません

いま、菅首相が宣言した地球温暖化対策を目的とした「CO2排出ゼロ」が実現したとしても、そのための具体策として、CCS技術や、再生可能エネルギー(再エネ)電力の利用などのお金のかかる(国民に経済的な負担を強いる)方法の利用は、化石燃料枯渇後のエネルギー基本計画としては通用しません。これを言い換えれば、今後、地球温暖化が継続したとしても、あるいは停止したとしても、私どもが主張するように、「温暖化のCO2原因説」が「科学の仮説」である以上、国民に経済的な負担をかけてCO2の排出ゼロを実行する必要はありません。

もう一つ、菅首相が求めると言うよりは、トランプ米大統領以外世界の多数が求める「カーボンニュートラル」の実現のための「科学技術革新への期待」がありますが、これは、科学技術の限界を知らない人達の妄想に過ぎないことを指摘させて頂きたいと考えます。科学技術の実用化のためには、その経済性の確保が必要条件となります。例えば、本稿の(その 1)(文献 1 )の ⓶ に記したように、地球上の化石燃料資源の埋蔵量は、その採掘のための経済性を無視すれば無限に近い量が存在するのです。その経済性を考慮した「確認可採埋蔵量R」と「生産量P 」の値から求められる「可採年数 R/P」の値によって、化石燃料の枯渇までの年数が予測できるのです。

したがって、世界経済を支えてきた化石燃料が、やがて、確実に枯渇を迎えるなかで、世界の問題としての地球温暖化対策は、CO2の排出ゼロを実現しても解決しません。繰り返して主張しますが、いま、世界に求められているのは、化石燃料消費の配分の不均衡によって生じた貧富の格差の解消による世界平和の維持でなければなりません。そのためには、上記(⓶)したように、地球上に残された化石燃料を、全ての国が公平に分け合って大事に使うこと、具体的には、トランプ米大統領以外の殆ど全ての世界の合意の下で進められちる「パリ協定」のCO2排出削減目標を、私どもが訴える化石燃料消費の節減目標に換えることでなければならなりません。これが、日本の、そして世界のエネルギー政策の基本でなければなりません。

詳細は、私どもの近刊(文献 4 )をご参照ください。

 

⓸ 補遺;私どもの「温暖化は起こらないから、CO2排出ゼロは不要」は、米トランプ大統領の温暖化対策のための「パリ協定」の離脱とは違います

11月3日に行われたアメリカ大統領選挙で、両候補の「パリ協定」への対応が真っ向対立しています。トランプ米大統領が、「パリ協定」からの離脱を主張しているのは、アメリカ第一の一国主義を掲げるトランプ氏が、経済発展を続けなければならない米国の「CO2排出削減」のための途上国との間の「CO2排出権取り引き」のために多額のお金を供出することを嫌うからです。一方、対立候補のバイデン氏は、温暖化対策としての「パリ協定」が求める「CO2の排出削減」の必要性を信奉しており、私どもの主張と対立した立場をとっています。しかし、「CO2排出削減」の方法として、私どもが主張している(文献 4参照)「化石燃料の節減の方法」を用いれば、お金をかけないで、「温暖化対策」が実行できるとともに。世界平和の維持のために必要な「貧富の格差」が解消できるのです。

 

<引用文献>

  1. 久保田 宏 平田賢太郎; アベノミクスのさらなる成長戦略を継承した菅義偉新首相による「温室効果ガス2050年ゼロ」宣言は、地球温暖化対策にならないだけでなく、世界平和を脅かしている貧富の格差の解消に貢献しません (その 1 )地球温暖化が温室効果ガス(その主体は二酸化炭素(CO2))に起因するとしても、CO2の排出削減で、地球温暖化を防止することはできません
  2. 久保田 宏、平田賢太郎; アベノミクスのさらなる成長戦略を継承した菅義偉新首相による「温室効果ガス2050年ゼロ」宣言は、地球温暖化対策にならないだけでなく、世界平和を脅かしている貧富の格差の解消にも貢献しません (その 2 )地球温暖化防止のための「2050年までのCO2排出ゼロ」が世界の流れでだとしても、日本がこの流れに乗って「2050年CO2排出ゼロ」を実行しても、地球温暖化を防止することはできませんし、その必要もありません
  3. 日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;EDMCエネルギー経済統計要覧、省エネルギーセンター。2015年
  4. 久保田 宏、平田 賢太郎;温暖化物語が終焉します. いや終わらせなければなりませんー化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります、Amazon Kindle版電子出版。2019年11 月

 

ABOUT  THE  AUTHOR

久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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