「温暖化物語」は終焉します。 この「温暖化物語」の終焉後、世界の全ての国が化石燃料代替としての自国産の再エネ電力のみに依存する世界は、貧富の格差の無い平和が期待できる世界でなければなりません。残り少なくなった化石燃料を公平に分け合って大事に使いながら、この平和な世界を創り上げることが、日本が、そして人類が、化石燃料枯渇後の世界に生き残る唯一の道です

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のメンバーの杉山太志氏が修正すべしと主張する地球温暖化対策としての再生可能エネルギー(再エネ)の利用・拡大を求める「温暖化物語」は、やがて終焉の時を迎えます。再エネ電力は、現代文明社会を支えている有限の化石燃料の枯渇後の電力化社会を創るために、ゆっくりと用いられればよいのです

⓶ 化石燃料代替の再エネ電力の利用による社会的効用の指標となる一次エネルギー消費での電力の利用比率(電力化率)も、ゆっくりと上昇します。これは、いますぐの再エネの利用・拡大を求める「温暖化物語」が、やがて、終焉することを示しています

⓷ 「温暖化物語」を終焉させ、やがて確実に枯渇する化石燃料の代替としての再エネ電力のみに依存して、一国主義の経済成長のためのエネルギー資源を奪い合うことのない世界平和が期待できる電力化社会を実現することこそが、日本が、そして人類が化石燃料枯渇後の世界に生きのびる唯一の道です

 

(解説本文);

⓵ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のメンバーの杉山太志氏が修正すべしと主張する地球温暖化対策としての再生可能エネルギー(再エネ)の利用・拡大を求める「温暖化物語」は、やがて終焉の時を迎えます。再エネ電力は、現代文明社会を支えている有限の化石燃料の枯渇後の電力化社会を創るために、ゆっくりと用いられればよいのです

IPCCの評価報告書総括代表執筆者を務める杉山太志氏が、地球温暖化対策としてIPCCがつくり上げた、いますぐの再エネの利用・拡大を求める「地球温暖化物語」には科学的な根拠がないとして、下記のように、それを修正すべしと訴えています。

・杉山太志;「温暖化物語」を修正すべし、ieei  2019/07/01

いま、この「温暖化物語」として、政策的に、その利用が進められている再エネの利用形態の主体は、太陽光発電、風力、地熱などの電力です。かつては、余剰食糧としてのバイオマスからつくられるバイオ燃料がカーボンニュートラルの詭弁(バイオマスは、大気中から地球温暖化を促進する温室効果ガスの二酸化炭素(CO)を吸収して成長するから、そのエネルギー利用は、温暖化が防止できるとする科学的に誤った理論)を利用して脚光を浴びたこともありました。しかし、それは、あくまでも、「温暖化物語」が始まる以前の石油危機に触発された石油代替の液体燃料の開発・利用に、IPCCの主張を妄信する                                政策決定者が便乗した政治的なトリック(政府と科学の研究者が、予算を消化するためにつくられた政府と研究者の利権構造(上記の杉山氏の論考から))によるものでした(文献1、文献2 参照)。このIPCCがつくりあげた「温暖化物語」でのバイオマスのエネルギー利用としては林業生産廃棄物の熱利用もありますが、その利用可能量は、極めて僅かてす(文献3 参照)。

現代文明社会を支えている有限資源としての化石燃料の枯渇後、その代替となる再エネ電力の利用増による、エネルギー利用の電力化率の増加は、まだ先の話です。現在までの電力化社会の実現を目的とした電力化率の増加は、下記(⓶)するように、エネルギー源としての電力の利用上の利便性、安全性のためとして、ゆっくり進められてられてきました。

IPCCが訴える地球温暖化の防止にも貢献することのない「温暖化物語」の終焉後、その利用での単位発熱量当たりの発電コストが化石燃料のそれより安くなってからの、やがて枯渇する化石燃料の代替としての利用でよいのです。すなわち、エネルギー政策としての世界の電力化社会の創生は、今後もゆっくりと進められことになります。

 

⓶ 化石燃料代替の再エネ電力の利用による社会的効用の指標となる一次エネルギー消費での電力の利用比率(電力化率)も、ゆっくりと上昇します。これは、いますぐの再エネの利用・拡大を求める「温暖化物語」が、やがて、終焉することを示しています

いままで、エネルギー源としての利用での利便性、安全性から、その利用比率を拡大してきた電力ですが、その利用比率を表すための指標としては、熱量や電力量として比較的簡単に計測可能な最終エネルギー消費(合計)のなかの最終エネルギー消費(電力)の比率、すなわち、「最終エネルギーにおける電力化率」として与えられています。

日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;エネルギー・経済統計要覧(以下、エネ研データ(文献 4 )と略記)に記載のIEA(国際エネルギー機関)のエネルギー統計データから、世界および各国の最終エネルギー消費における電力化率の年次変化を図 1 に示しました。この図1 に見られるように、この最終エネルギー消費における電力化率の値が予想外に小さい値を示します。

図 1 世界および各国の最終エネルギーにおける電力化率の年次変化

(エネ研データ(文献 4 )に記載のIEAのエネルギー統計データをもとに作成)

 

この最終エネルギー消費に対して、エネルギー利用の社会的な効用を評価するにはエネルギーの消費量を化石燃料のなかで最も利用価値の大きい石油の消費量(トン)で表した「一次エネルギー換算量」の値が用いられています。例えば、火力発電電力について、発電量 (kWh)当たりに消費される化石燃料消費量としての石油のトン数で与えられるのが、一次エネルギー消費量です。エネ研データ(文献 4 )の2014年版までには2005年度以降の国内の火力発電の発電効率の平均値 40.88 % から、単位発電量(kWh)当たりの一次エネルギー消費量の値は、 (860 kcal/kWh)/0.4088 ) = 2,105 kcal/kWh とされています。なお、同2015年販以降では、2013年度の火力発電の平均発電効率を41.46 % として、一次エネルギー消費量は2,074 kcal/kWhとされています。この発電効率の値は火力発電に用いられる化石燃料の種類によっても違いますし、国際的な比較をする場合には、当然、国によっても違います。より問題になるのは、火力発電以外の原子力、水力、新エネルギーとよばれる再エネ電力についての一次エネルギー石油換算量の値をどう評価すべきかです。

エネ研データ(文献 4 )に記載の国内のエネルギー統計データでは、原子力、水力、地熱についても、上記した火力発電の一次エネルギー石油換算量の値を用いるとしています。しかし、これでは、火力発電以外の電力生産でも、単位発電量当たりの一次エネルギー消費量が火力発電での値と同じだとしていることになり、実態と大きく異なります。すなわち。火力発電以外の原子力、水力、再エネなどの電力は、その種類別に、発電コストに違いがあります。この発電コストの違いを考慮して、それを発電効率として定量化して、各発電方式別の一次エネルギー石油換算消費量で表す方式を用いたのが、エネ研データ(文献 4 )に記載のIEA統計データでの方式です。すなわち、原子力で0.26Mtoe/kWh(発電効率33%)、水力他は、0.086 Mtoe/kWh(発電効率100 %、ただし、エネ研データ(文献 4 )の2014年販以降では0.0286 Mtoe/kWhとありますが、これは明らかなミスプリントです。)地熱は実効率に基づいた値、または0.86Mtoe/kWh(発電効率10 %)が用いられていると記載されています。

しかし、この火力発電以外の電力の発電効率の値として、各発電方式別の発電コストの値には、科学的な根拠がありません。そこで、私どもは、この火力発電以外の発電効率の値を、それに影響する各発電方式別の発電コストの値を用いて補正した次式で推算することを提案しています。

(火力発電以外の発電方式別の発電効率の値)

=(火力発電の発電効率)×(火力発電以外の発電方式別の発電コスト)

/(火力発電のコスト)                         ( 1 )

ここで、

(火力発電の発電効率)

= (火力発電の発電量kWh)×(860 kcal/kWh)

/(火力発電用燃料消費の石油換算量toe×107kcal)                  ( 2 )

として求められます。

エネ研データ(文献 4 )に記載のIEA統計データか2016年の世界の化石燃料種類別の火力発電の発電効率の値を試算してみると、

石炭; 36.0 %  石油;  30.5 % 天然ガス; 42.6 %

となり、同じ2016年の日本の値(日本がIEAに報告している値)は。

石炭; 41.9 %    石油:;  42.2 %   天然ガス; 46.9 %

となります。

このように問題のある値ですが、エネ研データー(文献 4)に記載のIEA統計データの値をそのまま用いて、次のようにして、世界および日本の一次エネルギー消費における電力化率の値を近似的に求めてみました。

(世界の最終エネルギー消費(電力以外)

=(世界の最終エネルギー消費(合計))-(世界の最終エネルギー消費(電力)) ( 3 )

(世界の一次エネルギー消費(電力以外))=(世界の最終エネルギー(電力以外))

×(最終エネルギー消費の一次エネルギー消費への換算係数 1.1 )           ( 4 )

(世界の一次エネルギー消費(電力)

=(世界の一次エネルギー消費(合計)-(世界の一次エネルギー消費(電力以外))( 5 )

(世界の一次エネルギー消費における電力化率)

= (世界の一次エネルギー消費(電力))/ (世界の一次エネルギー消費(合計)  ( 6 )

このようにしてエネ研データ(文献 4 )に記載のIEA統計データから求めた世界および日本の一次エネルギー消費における電力化率の値を図2 に示しました。

図 2 世界および日本の一次エネルギー消費における電力化率の推定値の年次変化

(エネ研データ(文献 4 )に記載のIEA の統計データをもとに本文中の ( 3 ) ~ ( 6 )式を用いて推定した値)

 

この図2に見られるように、一次エネルギー消費における電力化率の値は、図1 に示す最終エネルギー消費における電力化率に較べて、その値は2 倍程度大きくなっていますが、再エネ電力が利用されるようになっても、その値の増加はゆるやかで、再エネ電力の増加によるCO2の排出削減で温暖化が防止できるとするとの「温暖化物語」の目的が達成できないことを示しています。

その原因は、この「温暖化物語」のためとして再エネ電力が用いられるようになった2005年以降の世界の電力種類別の一次エネルギー石油換算量の年次変化量を示した図 3 からも明らかです。すなわち、温暖化を防止するためとして、電力料金の値上げで、国民に経済的な負担を強いる、いますぐの「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)」の導入によって増加するようになった再エネ電力の一次エネルギー石油換算量の値は、現用の火力発電の一次エネルギー石油換算量の値に較べてごく僅かですから、世界の一次エネルギー消費における電力化率の値を小さくするには、火力発電の電力量を小さくする以外にありません。したがって、「温暖化物語」によるCO2排出削減のための再エネ電力のいますぐの利用には、影響されることなく、世界の一次エネルギー消費における電力化率の値は、化石燃料が枯渇に近づくにつれて、ゆっくりと 1 に近づいて行くことになるのです。

注; 重なって見える下の二本の線の上が、エネ研データ(文献4 )に記載のIEA統計データに、バイオマス・廃棄物、下が地熱・風力他とある再エネ電力の値です。

図 3 最近(2005年以降)の世界の一次エネルギー消費を値を用いた電源構成の年次変化

(エネ研データ(文献 4 )に記載のIEA 統計データの「世界の電源構成(投入ベース)」

の値をもとに作成)

 

⓷ 「温暖化物語」を終焉させ、やがて確実に枯渇する化石燃料の代替としての再エネ電力のみに依存して、一国主義の経済成長のためのエネルギー資源を奪い合うことのない世界平和が期待できる電力化社会を実現することこそが、日本が、そして人類が化石燃料枯渇後の世界に生きのびる唯一の道です。

現代文明を支えてきた化石燃料は、やがて、確実に枯渇します。ここで化石燃料の枯渇とは、その資源量が少なくなった結果、その(化石燃料の)国際市場価格が高騰して,それを使えない人や国がでてくることです。結果として、国内でも、国際的にも貧富の格差が現在以上に拡大し、国内政治の不安定が貧困国では内戦に発展し、国際的には、貧富の格差を受け入れない人々の宗教とも結び付いた国際的なテロ戦争による世界平和の侵害が現実のものになっているのです。これらの軍事的な紛争を、軍事力の増強で解決することはできないと考えるべきです。これらの軍事紛争を防ぐ唯一の方法は、いま、地球上に残された化石燃料をできるだけ均等に分配して、国内および国際的な貧富の格差を解消する以外にありません。

すなわち、地球上に存在する有限の化石燃料資源の枯渇が迫るなかでは、温暖化を防止する目的でのCOの排出削減対策のための、例えばCCS技術の実施のエネルギーとして化石燃料を使う余裕はないのです。このような科学の原理を無視して、経済成長の継続を前提とした「温暖化物語」は終焉させなければならないのです。

「温暖化物語」の科学の不条理を妄信する日本政府は、地球温暖化を防ぐために、日本は野心的なCO2排出削減目標を掲げて世界をリードすべきだとして、2050年のCO排出量を現状の80 % 減を、いや、できれば100 % 減にすべきだとの野心的なエネルギー政策目標を掲げています。そのためには、CO2を排出しないとされる原子力や自然エ年ルギー(国産の再エネ)を2030年に何%にする、そのための電源構成のベストミクスはこうあるべきだなどの非科学的な「温暖化物語」のたわごとを繰り返しています。

いま、化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、日本が、そして人類が、「温暖化物語」の終焉後の世界に生きのびるために実行しなければならないことは、地球上に残された化石燃料を可能な限り均等に配分しながら、化石燃料の代替として、各国が自国産の再エネ電力のみに依存する、エネルギー資源を奪い合うことのない、貧富の格差を最小限に抑えた平和が期待できる世界にゆっくりと移行することこそが求められるべきなのです。

その結果として、全ての国の協力で実現するのが、「一次エネルギー消費における電力化率」を100 %に近づける電力化社会です。これを実現させるためには、「温暖化物語」の終焉を前提とした、私ともが提案する「世界の化石燃料消費量の節減対策」を実行する以外ありません。具体的には、トランプ米大統領以外の全ての国の合意の下で進められている「パリ協定」の各国のCO2排出削減目標値を、私どもが提案する、今世紀いっぱいの各国の一人当たりの化石燃料の消費量を2012年の世界平均一人当たりの化石燃料書費の値に置き換える「世界の化石燃料消費の節減対策」の実行に切り替えることです。この方法が実行されれば、IPCCの温暖化のCO2原因説が正しかったとしても、そのIPCCが求める気温上昇幅2 ℃ 以下に必要なCO2の排出削減も実行可能となるのです。すなわち、「温暖化物語」の終焉をもたらすことができるのです。

詳細は私どもの近刊(文献 5 )をご参照下さい。

 

<引用文献>

  1. 久保田 宏、松田 智;幻想のバイオ燃料、科学技術的視点から地球環境保全対策を斬る、日刊工業新聞社、2009年
  2. 久保田 宏、松田 智;幻想のバイオマスエネルギー、科学技術の視点から森林バイオマス利用の在り方を探る
  3. 久保田 宏、中村 元、松田 智;林業の創生と震災からの復興、日本林業調査会、2013年
  4. 日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;エネルギー・経済統計要覧、省エネルギーセンター、2008 ~2019年
  5. 久保田 宏、平田賢太郎、松田 智;改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科 学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月

 

ABOUT THE AUTHER

久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他

平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。

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