日本のエネルギー政策の混迷を正す(補遺その8) IPCCの特別報告書は、「パリ協定」のCO2排出削減による地球気温の上昇幅を2 ℃から、1.5 ℃にしました。これが科学の警鐘でしょうか?

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 事務局長 平田 賢太郎

(要約);

① IPCCの特別報告書は、全世界の合意で進められている「パリ協定」が要請する温室効果ガス(CO2)の排出削減による地球気温の上昇幅を先の第5次評価報告書が要請した2℃から、より望ましいとされる1.5 ℃にしました

② IPCCの特別報告書では、第5次報告書で用いられた気温上昇幅の基準年が現在(2012年)から、産業革命以前に変更されたために、温暖化対策として、実行可能とは考えられないような厳しい条件が求められるようになりました

③ 特別報告書に記載の地上気温の1.5 ℃上昇での生態系への影響は、科学的に根拠のある数値とは言えません。当面は、何とか実現可能と考えられる2 ℃未満を目標に、お金をかけないでCO2排出削減のための化石燃料消費を節減することが、唯一、実行可能な地球温暖化対策としてのCO2の排出削減です

④ どう考えてもおかしいIPCCによる地球気温の上昇の基準年の変更です。この基準年を、第5次報告書の現在(2012年)に戻し、世界中の全ての国民が協力して、残された化石燃料消費を公平に分け合って大事に使うことが、化石燃料資源枯渇後の再エネ電力に依存して、経済成長が抑制される貧富の格差の無い平和な世界に生き残るための唯一の道と考えるべきです

 

(解説本文);

① IPCCの特別報告書は、全世界の合意で進められている「パリ協定」が要請する温室効果ガス(CO2)の排出削減による地球気温の上昇幅を先の第5次評価報告書が要請した2℃から、より望ましいとされる1.5 ℃にしました

IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)が、10月6日(2018年)まで韓国の仁川で開かれていた総会で、「2030年にも地球気温が1.5℃上昇する」との特別報告書を発表しました。この特別報告書は、今夏の猛暑に見られるような、地球大気温度の上昇が続いたときに、人類の生存に影響を与える生態系の深刻な変化と、この地球大気温度の上昇の関係を、世界の40ヶ国91人の専門家が科学的に分析して、纏めたものとされています。

このIPCCの特別報告書によれば、いま、地球温暖暖化対策として、米国のトランプ大統領を除く世界中の合意を集めて進められている「パリ協定」の地球大気温度の許容上昇幅を、同じIPCCが、先に纏めた第5次評価報告書(以下、第5次報告書)が要求していた2 ℃未満でなく、より望ましいとされる1.5 ℃未満にしないと、地球が大変なことになると訴えています。

この特別報告書に対して、朝日新聞(2018/10/11)は、社説で、「温暖化報告書 科学の警鐘だ」としています。本当に、これは、地球温暖化を防ぐための科学の警鐘と言えるのでしょうか?

 

② IPCCの特別報告書では、第5次報告書で用いられた気温上昇幅の基準年が現在(2012年)から、産業革命以前に変更されたために、温暖化対策として、実行可能とは考えられないような厳しい条件が求められるようになりました

私どもが理解できない具体的な不思議は、このIPCCの特別報告書で主張することが、2013年~2014年に発表された 第5次報告書の内容との科学的な整合性がとれていないことです。その第一が、地球温暖化をもたらすとされる累積CO2排出量の増加によって起こる地球大気温度の上昇幅が、何時からとされるその起点(以下、基準年)です。第5次報告書では、人類が、このまま、化石燃料の消費に伴うCO2の排出を継続すれば、今世紀末までに地球大気温度が4.8 ℃上昇するなどとありました。 私どもは、当然、これは、現在(2010年後頃)を基準年とした温度上昇幅だと考えていました。第5次報告書中に記載のある温暖化のシミュレーションモデル計算の際にIPCCが用いている、将来のCO2排出量予測のRCPモデルは、この第5次報告書から再録した 図1にみられるように、2010年頃を出発点にしています。また、第5次報告書にモデルシミュレーション計算結果として与えられる図2に示した累積CO2排出量と、それに対する温度上昇幅の値は、2012年を基準にした値であると明記されています。

注; シナリオ別に ①;RCP 2.6、②;RCP 4.5、③;RCP 6.0、④;RCP 8.5

図 1  第5 次報告書における地球温暖化将来予測に用いられたRCPシナリオ別の年間CO2排出量の年次変化 (第5次報告書のデータを用いて作成)

注;シナリオ別に ①;RCP 2.6、②;RCP 4.5、③;RCP 6.0、④;RCP 8.5

2 IPCCの第5 次報告書に記載のRCPシナリオ別の累積CO2排出量の予測値と今世紀末(2018 ~ 2100年)の気温上昇幅の予測値の関係(第5次報告書のデータを用いて作成)

 

驚いたことには、今回の特別報告書では、CO2の排出量の増加による気温上昇幅の予測値の基準年が、産業革命が起こる前とされています。その上で、産業革命が起こってから現在までに、地球気温が約1.0 ℃上昇しましたから、「パリ協定」で、温暖化の脅威を防ぐための目標の地球気温の上昇幅の1.5 ℃を守るには、現在(2012年)からの気温上昇幅は0.5 ℃以内に制限されるべきだとしています。

ところで、産業革命以降、地上気温が1 ℃上昇しているとの根拠になっているのは、第5 次報告書に記載されている図3 に示す世界の平均地上気温の推定値を含む観測データだと考えられます。ジグザグに下降と上昇を繰り返しながら、結果としては上昇を続けてきた観測結果ですが、産業革命が始まった1850年頃から、2000年頃までに、ほぼ、1 ℃の上昇を見てとることができます。

注;縦軸の値は、1960 ~ 1990年を基準として、10年毎の平均気温の偏差値を示しています。

世界の平均地上気温の年次変化(第5次報告書に記載の地上気温の観測データをもとに作成)

 

このジグザグの変化を無視して、この地上気温が、第5次報告書で、気候変動のモデルシミュレーション計算結果から、IPCCが予測計算結果として示している 図2に示す将来の累積CO2排出量と地上気温上昇幅の比例関係との一致が見られるかどうかを検証してみました。

日本エネルギー経済研究所編;EDMCエネルギー・経済統計要覧(以下エネ研データ(文獻1 )と略記)に記載されたIEA(国際エネルギー機関)のデータをもとに作成した世界のCO2 排出量の年次変化を図4に示します。この図4 から、産業革命以降、2012年までの累積CO2 排出量は、大凡2.4兆トンと推定されます。したがって、2012年以降の将来の累積CO2排出量と地上気温の上昇幅の関係を示す 図2から、このCO2 排出量の値に対応する気温上昇幅は 約1℃ と読み取ることができ、図3 に示す観測結果とほぼ一致します。では、図2に示したIPCCによる累積CO2排出量と気温上昇幅の比例関係が、IPCCが主張する、温暖化のCO2原因説の科学的根拠になるかと言えば、必ずしもそうはなりません。それは、図3に見られるようなジグザグの気温上昇の原因が説明されていないからです。

世界のCO2排出量の年次変化(エネ研データ(文獻1 )に記載のIEAデータをもとに作成)

 

今回の特別報告書では、気温上昇幅について、産業革命時を基準にした1.5 ℃以下に抑えるには、CO2の排出量を2050年に実質ゼロにする必要があるとしています。 と言うことは、2050 年以降はCO2排出ゼロを継続することになります。そこで、エネ研データ(文獻1 )に記載のIEAデータから世界のCO2排出量の年次変化の延長として、2050年のCO2排出量ゼロをつないだ 図5から、2012年~2050年の間のCO2排出量を予測してみると、約0.85兆トンと推算されます。第5次報告書に記載のCO2排出量と気温上昇幅の関係を示した図2から、この累積CO2排出量0.85兆トンに対する大気温度の上昇幅は0.6 ~1.3 ℃、平均値で1 ℃と読み取ることができます。この温度上昇幅は、2012年からの値ですから、これに、産業革命から2012年までの気温上昇幅の推定値1 ℃ を加えると2 ℃ となります。 したがって、今回の特別報告書が訴える産業革命からの気温上昇幅1.5 ℃ を守るには、もっと厳しいCO2排出量の削減を行わなければならないことになります。あくまでも概算ですが、2030年頃にはCO2排出をゼロにしなければなりませんが、これは、とても、実行可能な値とは考えられません。

注; 2020年、2030年の値は、2050年の値をゼロとした時、私どもが描いた曲線をスムースにするための推定値です

世界のCO2の年間排出量の年次変化と同将来予測値(エネ研データ(文獻1 )に記載のIEAデータにおける実績値(2015年まで)とIPCCの特別報告書にある2050年にCO2排出量をゼロとするとした時の私どもによる将来予測値)

 

いずれにしろ、第5次報告書に記載の累積CO2排出量と気温上昇幅の関係は、IPCCが、自分たちがつくった気候変動のシミュレーションモデルを用い、2012年を基準にして計算した値ですから、これを産業革命以降の気温上昇の予測に用いることは、科学的に疑問があると言わざるをえません。より、問題になるのは、今回の特別報告書で、IPCCが、いま、国際的な合意の下で進められている「パリ協定」のCO2排出削減目標の気温上昇幅を2 ℃から1.5 ℃に変えて、それに対応する各国のCO2排出削減目標を決めることを、各国に訴えていることです。

 

③ 特別報告書に記載の地上気温の1.5 ℃上昇での生態系への影響は、科学的に根拠のある数値とは言えません。当面は、何とか実現可能と考えられる2 ℃未満を目標に、お金をかけないでCO2排出削減のための化石燃料消費を節減することが、唯一、実行可能な地球温暖化対策としてのCO2の排出削減です

上記したように、今回の特別報告書の最大の問題点は、同じIPCCによる先の第5次報告書で、CO2排出の増加に起因する気温上昇の基準点としたと思われる現在(2012年)が、産業革命が起こる前とされたことです。これは、私どもの素朴な疑問なのですが、この特別報告書にある地球気温上昇の生態系への影響として記述されている“気温の1.5 ℃上昇でも、昆虫の6 %、脊椎動物の4 %、植物の8 %の種がその生息域の半分を失う。2℃上昇なら、脊椎動物や植物で、その2倍に、昆虫では3倍に影響が広がる。さらにサンゴの生息域も1.5℃上昇で70 ~ 90 %が消失、2℃上昇では、99 %以上が失われる(朝日新聞(2018/10/9)の記事から)”などは、この気温上昇の基準点を現在(2012年)とした場合の予測であって、基準点を150年も前の産業革命以前とした場合には成り立たないのではないでしょうか?

したがって、これらの人類の生存を脅かしかねない生態系の変化をもたらす気温上昇幅の値1.5℃、2℃の基準年を、産業革命以前ではなく、現在(2012年)とすれば、IPCCが主張する温暖化のCO2原因説が正しかったとしても、適正な地球温暖化対策としてのCO2排出削減を行えば、上記(②)したように、この気温上昇幅が 1.5 ℃、2 ℃となる時を今世紀末まで伸ばすことができるはずで、時間的な余裕があります。また、その間に、地球温暖化のCO2原因説を否定している人々が主張する現在の温暖化を否定するような気象現象が起こるかも知れません。

そのなかで、確実に起こるのが、世界の経済成長を支えているエネルギー源の化石燃料の枯渇です。ここで、化石燃料の枯渇とは、その資源量が少なくなり、その国際市場価格が高騰して、使えなくなる人や国が出て来て、貧富の格差が拡大する脅威が起こることです。この脅威を最小限に抑える方法として、私どもは、世界中の全ての国民の今世紀いっぱいの一人当たりの化石燃料の消費量(化石燃料の種類別消費量の石油換算トンの合計)を、2012年の一人当たりの世界平均の値以下に抑えることを提案しています。ただし、この各国における一人当たりの化石燃料消費量の値は、将来のそれぞれの国の人口の増減に応じた補正を行います。

一方、化石燃料は種類別にCO2排出原単位(化石燃料消費単位質量トン当たりのCO2排出質量トン)の値が違いますが、化石燃料種類別の消費量比率が今後変化しないと仮定すると、CO2排出量の将来予測値は、化石燃料消費量の予測値に比例して変化します。と言うことは、上記の私どもの化石燃料消費の節減案は、地球温暖化対策としてのCO2排出削減対策案に等しいとみなすことができます。これを言い換えれば、いま、IPCCが訴えている地球温暖化対策としてのCO2排出削減対策が、私どもが提案する化石燃料消費の節減によって実行可能となるのです。

この私どもが提案する化石燃料消費の節減をCO2の排出削減に直して、その年次変化を示してみたのが図6です。この 図6 には、2015年までの世界の主な国の一人当たりのCO2排出量の値の年次変化を示すとともに、2020年、2030年については、各国が国際的な合意の下で進めている「パリ協定」に向けて、各国が自主的に提案しているCO2の排出量削減比率の目標値から推定した一人当たりのCO2排出量の値も示しています。この図6に見られるように、各国の最近のCO2排出量の年次変化は、私どもが、2050年の一人当たりの化石燃料消費量の目標値をCO2排出量に換算した値、図中の十字印の値に向って、その削減努力が進んでいるように見えます。これを言い換えると、この私どもの化石燃料消費の節減案こそが、「パリ協定」の実行を可能にする唯一の方策であることが判って頂けると思います。

注; 十字印は2050年の世界の一人当たりの化石燃料消費量の値を2012年の値に等しいとした時の化石燃料の消費量をCO2排出量に換算した値

各国の一人当たりのCO2排出量の年次変化と、私どもが提案する今世紀末までの化石燃料消費の節減量のCO2排出量への換算値(エネ研データ(文獻1 )に記載のIEAデータをもとに作成)

 

この私どもの提案では、今世紀いっぱいの世界の年間平均の化石燃料消費量の値を2012年の値に等しくするとしていますが、これをCO2の排出量に直すと、32,920百万CO2トン/年となりますから、今世紀末までの累積CO2排出量は、(32.92十億トン/年)×(100-12 )年= 2.9 兆CO2トンとなり、上記(②)の 図2から、2012年を基準年とした気温上昇幅が約2 ℃となります。すなわち、先の第5次報告書で、IPCCが何とか温暖化の脅威を最小限に抑えられるとした値に等しくなります。

これを逆に言うと、今回の特別報告書でIPCCが主張するような産業革命以前を基準にした許容気温上昇幅の1.5 ℃、すなわち2012年を基準年とし他場合の0.5 ℃を目標としなければならないとしたら、現在の「パリ協定」の各国のCO2排出削減目標を、大幅に増加させなければならないことになります。これは、もはや実現不可能と考えざるを得ないのではないでしょうか?

 

④ どう考えてもおかしいIPCCによる地球気温の上昇の基準年の変更です。この基準年を、第5次報告書の現在(2012年)に戻し、世界中の全ての国民が協力して、残された化石燃料消費を公平に分け合って大事に使うことが、化石燃料資源枯渇後の再エネ電力に依存して、経済成長が抑制される貧富の格差の無い平和な世界に生き残るための唯一の道と考えるべきです

IPCCは、今回の特別報告書で、同じ自分たちがつくった第5次報告書での気温上昇幅の基準年を現在(2012年)から、150年程度も前の産業革命以前に変えたことが、どういう意味を持つかを理解しているのでしょうか?

現在(2012年)を産業革命以前(150年程度も前)に変えた上で、さらに、許容気温上昇幅を2 ℃から1.5 ℃に変えたことで、地球温暖化の脅威を避けるために許される温度上昇幅は0.5 ℃になりました。これでは、上記(②)したように、特別報告書で言う2050年にCO2排出ゼロではなく、私どもの試算では2030年頃にはゼロにしなければならないことになるのです。これには、現状の経済世界の延長線上では考えられないような世界の経済・社会構造の大変革が必要になります。

この変革の方法として、IPCCは、国連総長に、“森林破壊を止めて数十億本の植林を行う、化石燃料の使用を劇的に減らし、2050年まで石炭の利用を段階的に廃止し、風力や太陽光発電設備を増やし、気候に優しい持続可能な農業に投資するとともに、炭素の回収や貯留などの最新のテクノロジーを検討する”などと、空念仏を唱えさせています。これらの事業に必要な投資金額とその効用としてのCO2の排出量の削減との定量的な関係が科学的に明らかになっていない以上、この国連総長の訴えが、空念仏に過ぎないことを、これを訴える人も、黙って聞いている人も判っていないとしか言いようがありません。

世界の政治に大きな影響力を持つ国連総長が、このような地球温暖化対策を主体とする地球環境保全のための投資を訴えるのは、この地球温暖化対策のためにお金を使うことが、そのために現在、経済成長のエネルギー源になっている化石燃料を消費し、CO2を排出することになるとの科学の常識が判っていないためではないかと考えます。この科学の常識に従えば、いま、化石燃料の枯渇後に、その代替として用いられる太陽光や風力発電などは持続可能な再生エネルギーではないのです。もっとはっきり言えば、化石燃料資源の枯渇後、その代替としての再生可能エネルギーを用いなければならない社会では、経済成長ができないのです。さらに言えば、産業革命以降、化石燃料をエネルギーとした経済成長を前提として成立していた資本主義社会は終焉を迎えざるを得ないのです。これを、地球温暖化防止のためのCO2の排出削減の問題に話を移すと、CO2の排出削減は、私どもが提案する化石燃料消費の節減以外に無いのです。これが科学の原理(常識)です。

もし、IPCCが主張する温暖化のCO2原因説が正しくて、今回の特別報告書が訴えるように、今後(現在(2012年)から)の累積CO2の排出量の増加に起因する現在からの気温上昇が1.5 ℃以下でなければ、上記(③)に見たような、人類の生存にも影響するような大きな生態系の変化が起こるとしても、私どもは、何とか、これに対応して生き延びて行くほかないでしょう。それは、これも上記したように、現在の文明生活の延長線上で人類が経済活動を続けて行くためにはCO2排出量に起因する気温上昇幅の2 ℃ 程度の上昇は避けられないからです。幸い、IPCCの委員である杉山大志氏の著書「環境史から学ぶ地球温暖化(文獻2 )」には、人類の歴史の中では許される地球気温の変化幅は3 ℃ 程度だとあります。

本稿の初め(①)に記したように、今回のIPCCの温暖化の特別報告書に対して、朝日新聞(2018/10/11)は、その社説で、“温暖化報告書 これは科学の警鐘だ”として上で、“IPCCは「これから数年で何をなすべきかが歴史上で最も重要だ」と強調した。私たちに残された時間は、あまりない。”と結んで、この報告書が唱えるCO2排出削減対策の実行を訴えています。しかし、本稿で述べたように、IPCCは、大変だ、大変だと警鐘を鳴らしているだけで、この大変を解決できる科学的な根拠を持った対応策は一切示していないのです。いま、世界にとっての本当に大変なのは化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、その国際市場価格の高騰による貧富の格差に伴って生じている世界平和の侵害です。いま地球上に残された化石燃料資源を世界の全ての国民が協力して、今世紀いっぱい、公平に分け合って大事に使うとする私どもの提案の実行こそが、IPCCが訴えるCO2の排出量の増加による地球温暖化の脅威を、もし、それが、科学の真理であったとしても、それを免れることができる唯一の道だと私どもは信じています。なお、詳細については、私どもの近刊(文獻3 )をご参照頂ければ幸いです。

 

<引用文献>

1.日本エネルギー・経済研究所計量分析ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧、2018年版、省エネセンター、2018年

2.杉山 大志;環境史から学ぶ地球温暖化、エネルギーフォラム新書、2012年

3.久保田 宏、平田賢太郎、松田 智;改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉――科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する――電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月

ABOUT THE AUTHER
久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他

平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。

 

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