メタハイで日本のガス100年分まかなえるって本当?

★★ 石油鉱業連盟の情報誌「石油開発時報No.173(12.06)」のコラム【石油開発女子の給湯室】
の記事です。石井会長からの全会員向けメールの転載です。
メタンハイドレートで日本は資源国になれるという宣伝が、初等教育まで行き渡っていますが、
この記事から、その真相の一端が伺えます。


登場人物  アッキー:新入社員。天然。kawaii系ファッションに夢中。
ユーコ  :中堅女子。あわて者。だんな募集中。
サトミ  :面倒見のいいべてらんOL。姉御肌で後輩をびしびし鍛える。年齢不詳。

アッキー:ユーコ先輩~。今日はあたしメタハイなんですー。
ユーコ  :ええっ!あんたいつから炭化水素になったの?!
アッキー:先輩なにわけのわからないこと言ってるんですかー。メタハイったら「めっ ためたハイな気分」じ ゃないすかー。今朝、「嵐」のライブDVDを観て私メ タハイなんですよー。
サトミ  :ええい、わけのわからないのはアッキー、あんただー。
アッキー&ユーコ:きゃー、出たー!!
サトミ :あによ、人を怪獣みたいに!メタハイと言ったら「メタンハイドレート」の略
でしょ。天然ガスの主 成分メタンガスが海底とかの冷たくて圧力の高い場
所でシャーベットみたいな固形物になった状 態のことよ。圧力を下げた
り、温度を上げたりするとメタンガスに戻るのよ。火を点けると燃えるので
「燃える氷」とも呼ばれるの。石油開発業界ではジョーシキよ。ほらこの
新聞でも読みなさい!
アッキー:メタンハイドレートは日本近海に、我が国の天然ガス消費量の100年分
の資源量が埋まって いると言われるー。
ユーコ :天然ガスは火力発電の燃料とかに使われているんだよね。てことは、あ
と100年は日本は電気 に困らないってこと?
アッキー:ラッキー!じゃあもう節電とか考えずにじゃんじゃんシャワーとかドライヤ
ーとかテレビとかケー タイとか使っていんすねー!
サトミ :こらー、待てい。まだメタハイは生産されておらんわ。それどころか、開発
する技術すら未完成なのよ!国は2015年度までに海での産出テストを2
回する予定で、今年(2012年)の2月から南海トラフで井戸を掘り始めたば
かりよ。その後、データをいろいろ分析した上で、2018年までに、商売とし
て成り立つかどうかの目途を付ける予定なの。
ユーコ :2018年というと、あと6年も後かあ。
アッキー:いやーん。アッキー、28歳になっちゃう。信じらんなーい。あ、じゃあ、サト
ミお姉さまはーー。
サトミ :やかましいわ!!勘違いしちゃ駄目なのは、2018年に「商業化される」ん
じゃなくて、商業化さ れるかどうかの「目途を付ける」ということなので、最
悪の場合、やっぱり資源としては使えません でしたってこともあるってこ
と。
ユーコ :じゃあ、新聞なんかでは「日本が資源大国になるかも」って騒いでいるメ
タ ハイも、実はまだ本 当に資源と言えるかどうかわからないってことなの
ね?
サトミ :そうよ アッキー:でも、もしその、技術だか経済性だかがオッケーという こ
と になれば、日本が使う天然ガスの100年分はまかなえるんでしょ?やっ
ぱ り、6年後からはシャワーとかドライヤーとかテレビとかケータイとかじ
ゃん   じゃん使い放題・・・・。
サトミ :そこもあんまり鵜呑みにしちゃ駄目よ。
ユーコ :へ?何で?
サトミ :日本近海のメタハイ資源量の「100年分」という数字は、1996年に発表さ
れた論文の中で当時の限られたデータを基にいろいろな仮定を積み上げ
て、「大体の数字」として出てきたものなの。
ユーコ :1996年というと・・・・・
アッキー:今から16年も昔ですね。いやーん、アッキー小学1年生―。あ、サトミお
姉さまはもう会社にーーー。
サトミ :キー、むかつく子たちね。
ユーコ :でも、大雑把な数字としても、大体100年なんてすごいんじゃないです
か。
サトミ :「可採埋蔵量」ならね。でもここでいっているのは「資源量」なの。「資源
量」 とは、「原始埋蔵量」 とも呼ばれて、元々地球に存在するその資源の
全部 の量を言うの。でも、今の人間の力では、そ れを全部取り尽くすこと
は無 理。例えば、石油の場合は資源量の30%~40%、天然ガスの場合
は 60%~70%を取り出すのがせいぜいと言われているのよ。これが「可
採 埋蔵量」で、「資源量 ×回収可能率」で求められるわ。「石油があと何
年、ガ スがあと何年」と言っているのは、この「可 採埋蔵量」を、1年当たり
の消費量 で割って計算しているのよ。
アッキー:ていうと、メタハイの場合は・・・・
ユーコ :そもそも資源量のうち 何%ぐらいが回収可能なのかなあ。
アッキー:そこも分からないのよ。これから6年かけて、井戸を掘って、海底からの
生産テストをやって、さ らに回収率を高める様々な工夫をし憂なければ
ならないの。そうした後でないと、本当に何年 分の資源が眠っているか
なんて分からないわ。
ユーコ :なるほどー。いやーしかし、サトミお姉、さすが詳しい!
アッキー:お姉さま。尊敬しますでしゅー。
サトミ :いやー、そのー、なんていうの、石油開発女子としてはこれくらい当然―。 アッキー:あれ。お姉さまの後ろ手に隠しているの何ですかー。
ユーコ :あー、「独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 広報誌
『JOGMEC NEWS vol 28◎特集:海洋資源は日本を資源大国に変えら
れるか?!』2012.3 MAR」て書いてある。 あれー、サトミ姉のいっている
こと、大体ここに載ってるじゃん!
アッキー:お姉さま、参考資料や出典をちゃんと明記するのが大人のたしなみです
わよ。
サトミ :ひぇ~ん、ごめんなさ~い。こんな私たちですが、今後ともご贔屓に~。

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