シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料はやがて枯渇の時を迎えます(その3)化石燃料資源が枯渇する将来のその国際市場価格を予測します

東京工業大学 名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部・事務局長 平田 賢太郎

(その3)の要約;

3-① 化石燃料が枯渇する将来、世界の原油生産量を支配するのは、原油の国際市場価格ではありません。

3-② 今後、化石燃料(石油)が、その資源量の枯渇を先取りした金融市場での先物商品などとして、マネーゲームの対象となって2005~2014年におけるような異常な価格高騰を起こさない限り、その国際市場価格は、残された可採埋蔵量の値に反比例して、ゆるやかに上昇するものと予測されます。

 

(その3)の解説本文;

3-① 化石燃料が枯渇する将来、世界の原油生産量を支配するのは、原油の国際市場価格ではありません。

本稿(その1)の「はじめに」に述べたように、私どもが言う「化石燃料の枯渇」とは、経済成長のエネルギー源の化石燃料資源量が少なくなり、その国際市場価格が高騰して、それを使えない人や国が出てきて、それによる貧富の格差が拡大することです。この貧富の格差の拡大が、宗教と結びついて国際テロ戦争にまで発展しています。本稿、「現代文明社会を支えてきた化石燃料が枯渇の時を迎えています(その3 )」では、この貧富の格差を招いている化石燃料の国際価格の高騰の原因について考察するとともに、この原因を取り除いた場合の化石燃料の国際価格の高騰について予測を試みてみました。

現代文明社会では、化石燃料消費が世界の経済成長を支配しています。しかし、現状において、この化石燃料の消費、すなわち、化石燃料の生産量を左右するのは、その生産のための採掘コストではなく、その国際市場価格だと考えるべきです。

例えば、原油の国際市場価格は原油の生産コストとは、直接的な関係がありません。化石燃料(石油)について、その生産コストが最も安価だと言われる中東の原油の生産コスト(採掘コスト)は、いまでも、バレル10 ドル以下と言われています。しかし、この採掘量の安い原油でも、バレル60ドル以上で輸出・販売しないと、中東産油国の代表のサウジアラビヤの経済は成り立たなくなっているようです。

いま、原油の国際市場価格として、日本エネルギー経済研究所編;EDMCエネルギー経済統計要覧(以下エネ研データ(文献3 – 1 )と略記)に記載の日本における原油の輸入CIF価格(産地価格に運賃と保険料を上乗せした価格)を用いて、この値と世界の原油生産量(エネ研データ(文献3- 1 )に記載のIEA(国際エネルギー機関)のデータから)との相関を調べてみたのが図3 – 1 です。

3-1 原油の国際市場価格(日本の原油輸入CIF価格)と、世界の原油生産量(一次エネルギー消費(石油)の値)との関係

(エネ研データ(文献3 – 1 )に記載の国内およびIEAデータをもとに作成)

 

この図3 – 1に見られるように原油の国際市場価格(日本の原油輸入CIF価格で表わした)と、世界の石油の生産量(世界の一次エネルギー消費(石油)量で表わした)との関係は、1970年台後半から1980年台中頃までの石油危機時、および、2005年から2014年まで続いた原油価格の異常高騰時を除けば、その生産量の年次変化は、はほぼ一本の曲線で表わすこができると言ってよいでしょう。すなわち、原油の生産量は、原油の国際市場価格の上昇とともに、未だ、僅かずつですが増加を継続しています。これは、現在も石油需要の増加を続けている中国などの新興途上国を含む石油消費の多い国では、経済成長のためのエネルギー源としての原油を、多少高価になっても輸入・使用しなければならない状況が続いていたためではないかと考えられます。

一方、経済成長の指標として用いられている世界の実質GDP(2010年度の為替レート換算の米ドルの値)の値と、世界の石油生産量の代わりに石油の資源量換算値で表した世界の「一次エネルギー消費(石油)」の値との関係を図3 – 2 に示して見ました。

3-2 世界の実質GDPの値と原油生産量の関係(エネ研データ(文献3 – 1 )に記載のIEAデータをもとに作成)

 

この 図3 – 2に見られるように、世界の化石燃料の消費量(一次エネルギー消費(石油)で表す)は、経済成長の指標として用いられている世界の実質GDP(各国国内総生産GDPの合計、為替レートで補正した米㌦基準の値)に依存します。そこで、図3 – 1に戻ってみると、この図は、高い輸入CIF価格の原油を使うことのできる経済成長の潜在力が化石燃料消費のための購買力を生み出すことができることを表わしているからと考えられます。

ここで、私どもは、人類が、有限の化石燃料を消費して、経済成長を続けている現状では、地球上に残された化石燃料を経済成長の潜在力として、その残された資源の国際市場価格を予測する下記の方法を提案しました。

 

3-② 今後、化石燃料(石油)が、その資源量の枯渇を先取りした金融市場での先物商品などとして、マネーゲームの対象となって2005~2014年におけるような異常な価格高騰を起こさない限り、その国際市場価格は、残された可採埋蔵量の値に反比例して、ゆるやかに上昇するものと予測されます

その枯渇が迫るなかでの残された化石燃料資源量の値として、化石燃料の可採埋蔵量の値を用いることにします。すなわち、先ず、石油についてのこの「可採埋蔵量」の値は、2015年のBP社による推定値をもとにして、この時点以降、もはや「正味の可採埋蔵量の増加」はないと仮定し、1990 ~ 2015 年の15年間の石油の生産量の積算値を、この2015年の「可採埋蔵量」に加算した値を、1990年の「可採埋蔵量」の想定値としました。この想定値を基準にして、1990年以降の石油の消費量(=生産量)を差し引いた各年の「可採埋蔵量」を「残存可採埋蔵量」として、その対1990年の比率を「残存可採埋蔵量比率 a 」とします。次いで、上記したように、石油の国際市場価格がこの「残存可採埋蔵量比率a 」に反比例するとして、1 / a の値と、石油の1990年の消費量に対する比率 ( 1 – a ) の値の関係を示したのが図3 – 3です。

注; 本文中に記したように、aは、私どもによる1990年原油の可採埋蔵量の想定値(BP社による値とは異なる)を基準とした「残存可採埋蔵量比率」です。また、図中の2050年1/aの値(= 3.93)は、今後の世界の原油の年間消費量が、今世紀いっぱい2012年の値を保つと仮定した場合の推定値です。原油輸入CIF価格は、ドル建て(ドル/バレル)の値を用い、図中、年は年度の略です。

3-3 原油の国際市場価格と残存資源量比率の関係の想定図

(エネ研データ(文献3 -1 )に記載のBP社のデータもとに、本文中に記した方法を用いて計算、作成しました)

 

この図3 – 3には、同時に、1990年~2015年の原油の国際市場価格としての日本の原油の輸入CIF価格の1990年の値に対する比率の年次変化を示してあります。この図に見られるように、2005 ~ 2015年の原油の国際市場価格の異常高騰は、ちょうど、中国をはじめとする新興途上国の高度経済成長に伴う世界の石油消費量の増加の継続のなかで、石油資源の供給がタイトになり、その市場価格が上昇するためとして、金融市場の投機マネーが原油を先物市場商品とした結果起こったものでした。バレル百ドル以上の高値を付けた原油バブルが崩壊しようとした時に世界第一の産油国のサウジアラビヤが、他のOPEC諸国の反対を押し切って、生産量の削減を行わなかったので、2014年の後半から原油価格の暴落がおこりました。この図3 – 3 に見られますように、その落ち着いた先(2015年の値)が1990年頃から続いていた緩やかな上昇線上、すなわち、上記の私どもが想定した1/a対( 1 – a )の曲線上にあると見てよいと思います。

したがって、今後、世界各国が協力して石油の消費量を現在の値以上に増加させなければ、また、世界の原油資源をマネーゲームの対象とするようなことをしなければ、これからの原油の国際市場価格は図3 – 3に示す私どもの想定した曲線1/a上の値をとると考えてよいでしょう。

この原油の国際市場価格の上昇と同様のことは、同じ化石燃料の天然ガスと石炭についても起こると考えました。原油の場合と同様の方法を用いて、石炭(輸入一般炭)についての国際市場価格と残存資源量比率の関係を想定した計算結果を図3 – 4に示しました。ただし、石炭の場合は、原油の場合と異なり、その輸入CIF価格が、金融市場の先物取引商品となることで異常高騰することはなく、原油価格の異常高騰に釣られた高騰と見てよいでしょう。したがって、この図3 – 4 に見られるように、石炭の対輸入CIF価格の対1990年度比率の値は原油に較べ小さく、その異常高騰もやや短期に終わっています。

注; 本文中に記したように、aは、私どもによる1990年の石炭の可採埋蔵量の想定値(BP社による値とは異なる)を基準とした「残存可採埋蔵量比率」です。また、図中の2050年1/aの値(= 1.47) は、今後の世界の石炭の年間消費量が、今世紀いっぱい2012年の値を保つと仮定した場合の推定値です。石炭(一般炭)輸入CIF価格は、ドル建て(ドル/トン)の値を用い、図中、年は年度の略です。

3-4 石炭の国際市場価格と残存可採埋蔵量比率の値との関係の想定図

(エネ研データ(文献3 -1 )に記載のBP社のデータもとに、本文中に記した原油の場合と同様の方法を用いて計算、作成しました)

 

<引用文献>

3-1. 日本エネルギー経済研究所計量ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧、2009 ~2017版、省エネセンター、2009  ~ 2017年

 

ABOUT THE AUTHER
久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他

平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。

 

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