世界各国が残された化石燃料を大事に使い、再エネ電力に依存する社会へ移行するエネルギー政策の具体案――人類が世界平和を取り戻し、生き残る唯一の道

東京工業大学 名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部・副本部長 平田 賢太郎

――要約――

経済成長のエネルギー源である化石燃料の枯渇が近づくなか、世界の各国が、地球上に残された化石燃料を、公平に、大事に分け合って使いながら、やがてやって来る再生可能エネルギー(再エネ)に依存する社会へ移行するための世界のエネルギー政策を提言する。それは、2050年を目標にして、世界の全ての国の一人当たりの化石燃料消費の合計量の値を、現在(2012年)の値、1.52石油換算トンにすることである。そのためには、いま、地球温暖化対策として国際的な合意が得られている各国のCO2の排出削減目標値を、本文、図5に示す、私どもが提言する化石燃料消費の節減目標に変えることである。これは、人類が、成長のために必要なエネルギー供給の不均衡からくる現状の貧富の格差を校正することであり、人類が世界平和を取り戻し、地球上に生き残る唯一の道である。

図 5 世界および各国の一人当たりの化石燃料消費の実績値と節減目標の年次変化

 


―― 以下解説本文――

残された化石燃料を分け合って大事に使うことが、人類が世界平和を取り戻し、生き残る唯一の途である
産業革命以降、世界の経済成長を支えてきたエネルギー源の化石燃料が、その枯渇を迎えようとしている。特に、この化石燃料の主体である石油の生産地の中東地域で、この石油の消費量の配分の不均衡による貧富の格差が、タリバンに始まり、ISにいたる国際テロ戦争を誘発して、世界の平和を大きく侵害している。
この厳しい現状を解消して、世界に平和を取り戻すためには、地球上に残された経済的に採掘可能な化石燃料を、全ての国、全ての人が公平に分け合って大事に使うことで、貧富の格差を解消するとの私どもの提言案、具体的には、2050年を目標に世界の全ての国の一人当たりの化石燃料消費を等しくするとの世界のエネルギー政策の実行が求められなければならない。
この方策こそが、世界に平和を取りもどすとともに、化石燃料の枯渇後、その代替としての再エネに依存しなければならない厳しい世界に、全ての国が協力して生き残る唯一の道である。そのためには、化石燃料エネルギーの枯渇によりもたらされる経済成長の終焉を、世界中が素直に受け入れなければならない。
化石燃料のほとんどを輸入に依存する日本経済は、すでに、このマイナス成長に追い込まれている。日本は、いま、このマイナス成長を受け入れるとともに、この厳しい現実を世界に知らせ、世界の全ての国の協力を得て、人類の生き残りのための私どもの提言案の実行を世界に訴えなければならない。

 

残された化石燃料を今世紀いっぱい大事に分け合って使う私どもの提言案
私どもの提案が実現した時の世界の化石燃料消費量の年次変化の推定値を図1に示した。ここで、2013年までは、IEA(国際エネルギー機関)のデータ(日本エネルギー経済研究所データ(エネ研データ(文献 1 )に記載)に示された実績値である。ただし、一次エネルギー消費(再エネ)の値は、IEAデータの一次エネルギー消費の値から、同(石炭)、同(石油)、同(天然ガス)の値の合計を同(化石燃料)として、差し引いた値である。
なお、2030年、2050年の値は、下記するように、図2に示す、それぞれの年の世界人口の推定値に、図4に示す私どもの提言案で目標とした世界平均の一人当たりの化石燃料消費量の推定値を乗じて求めた。
この図 1 に示す私どもの化石燃料の消費の節減提案では、現在(2012年)から今世紀末(2100年)までに消費される化石燃料の総量(図1の一次エネルギー消費(化石燃料)の曲線の2013 ~ 2100年の88年間の積分値)は約 7,000億石油換算トンと推算される。この値は、エネ研データ(文献1 )に記載されているBP(British Petroleum)社により推定されている2014年末の地球上の化石燃料の確認可採埋蔵量の値9,434 石油換算億トン(石炭 5,191、石油 2,365、天然ガス1877それぞれ石油換算億トンの合計)を下回る。すなわち、この図1は、残された採掘可能な化石燃料を今世紀いっぱい使い続けられることが示している。

注1; 2013年までが実績値、2030年以降は私どもの提言案が実行された時の推定値
注2; 一次エネルギー(再生可能)は、一次エネルギー(合計)から、同(化石燃料)を差し引いて求めた。したがって、一次エネルギー(原子力)も含まれれる。
図 1 私どもが提案する世界のエネルギー政策(残された化石燃料を分け合って大事に使う具体案 (実績データはIEAデータ(エネ研データ、文献1に記載)から)

 

私どもが提案する世界のエネルギー政策で想定した2030年および2050年の世界人口の推算の方法
図1に示す私どもが提案する、地球上に残された化石燃料を世界各国が分け合って大事に使うための世界のエネルギー政策の作成の基本となる、今後の世界の人口問題の推移については、次のような方法を用いた。
IEAのデータ(エネ研データ、文献 1 に記載)から、世界人口の 今後2050年までの変化は、1980年から2010年までの30年間の10年ごとに、下記のような世界人口の変化が継続されると仮定して、
1980 ~ 1990年の変化率(1990年の値の1980年の値に対する比率);1.190
1990 ~ 2000年の変化率(2000年の値の1990年の値に対する比率);1.158
2000 ~ 2010年の変化率(2010年の値の2000年の値に対する比率);1.133
の値を用いて、1980 ~1990年の人口増加比率 1.190に対する1990 ~ 2000年のそれ1.158に対する比率0.973 ( = 1.158 / 1.190 )と、1990 ~ 2000年と2000 ~ 2010 年に対する同様の比率 0.978 ( = 1.133 / 1.158 ) との算術平均値0.975が2010年以降も2050年まで継続すると仮定して計算した年次変化の推定値から、2030年の人口の2010年の人口69.14 億人に対する比率を
1.104 ( = 1.133×0.975)(2010 ~ 2020年)×1.076 ( =1.104 ×0.975 )(2020 ~ 2030年)
=1.19倍
として、82.1 ( = 69.14×1.19) 億人と推定した。
さらに、この変化率が2050年まで継続すると仮定して、2050年の人口は、2030年の人口の
1.049 ( = 1.076×0.975 )(2030 ~ 2040年)×1.02 ( = 1.049 ×0.975 )(2040 ~2050年)
= 1.072 倍
の88.8 ( = 82.1×1.04 ) 億人と推定した。
先進諸国(OECD34)および途上国(非OECD)についても同様にして2030年、2050年の人口を推定した。
さらに、2050年以降は、世界各国が協力して世界人口が増えないようにできるとして、2100年の人口を2050年と同じと仮定した。 ただし、この2050年以降の将来の推定は、2050年の私どもの提言目標が達成できることを前提とした、希望的な推定で、科学的な根拠のない値と考えて頂きたい。
IEAデータ(エネ研データ(文献1 )に記載)から1971年から2013年までの人口の実績値と、2030年と2050年の上記の方法による推定値を図2に示した。

注 2013年までは実績値、2030年、2050年、2100年の値は推定値
図2 世界、先進国(OECD34) と、途上国(非OECD)の人口の年次変化の実績値
と推定値 (実績値はIEAデータ(エネ研データ、文献1に記載)から)

また、中国、米国、日本、ドイツについてのIEAデータからの人口の実績値と上記同様の推定値を図3に示した。

図 3 中国、米国、日本、ドイツの人口の年次変化の実績値と推定値
(実績値はIEAデータ(エネ研データに記載)から)

 

世界の一人当たりの一次エネルギー消費の値の年次変化
次いで、世界の一人当たりの一次エネルギー消費、同(化石燃料)、同(再エネ)の実績値の年次変化と推定値を図4に示した。

注 2013年までは事績値、2030,2050,2100年は私どもの推定値
図 4 世界の一人当たりの一次エネルギー消費、同(化石燃料)、同(再エネ)の年次変化(IEAデータ(エネ研データ、文献1に記載)の実績値と私どもの推定値を用いて作成)

ただし、一次エネルギー(再エネ)は、IEAデータ(エネ研データ(文献1)に記載)の一次エネルギー(合計)から、一次エネルギー(化石燃料)の値を差し引いて求めた。したがって、図1の下部の注2に示したように、一次エネルギー(原子力)の値も含まれるが、その値は2013年で、一次エネルギー(合計)の値の4.8 %と余り大きくない。日本における3.11 福島の影響もあり、今後も大きな比率を占めることにならないと推定されると言うよりも、そうなることを私どもは願っている。
また、2050年の一次エネルギー(合計)と同(化石燃料)の値は、それぞれの現在(2012年)の値に、IEAデータの2012年の人口と上記の私どもの2050年の推定人口の比率を考慮して、( 1 ) 式を用いて補正した提言目標値である。
(2050年の提言目標値)= (2012年の値) / {(2012年の人口)/ (2050年の推定人口))
( 1 )
なお、一次エネルギー(合計)、および一次エネルギー(化石燃料)の2030 年の値は2013年までの実績値と2050年の目標値を曲線でスムースに結んだ推定値とした。
さらに、2100年の値は、この2050年の値が2100年まで続くと仮定した。
この図4の世界の一人当たりの化石燃料消費の値に、図2の世界の人口を乗じた結果が図1の世界の化石燃料消費の年次変化の曲線である。この値と、世界の一次エネルギー消費の実績値および今後の想定値の差として与えられるのが、世界各国が現代文明を維持して行くために必要な化石燃料代替の再エネ量の値である。

 

私どもの提言案を可能にする世界および各国の一人当たりの化石燃料消費量の年次変化の目標値
以上は、世界全体が、やがて枯渇する化石燃料の残された量を今世紀いっぱい大事に使いながら、現代文明社会を維持するために必要なエネルギーを再エネの生産で賄おうとする私どもの提言案を具体的に定量化して示したものである。
しかし、この私どもの提言案を実行可能とするためには、各国の現状の一人当たりの化石燃料消費量の値に、先進諸国(DECD 34)と途上国(非OECD)の値に余りにも大きな違いがあることに留意する必要がある。
このOECD 34 と非OECDおよび、日本、米国、中国、ドイツにつて、一人当たりの化石燃料消費量の実績値および私どもの提言案の目標値を図5に示した。ただし、私どもの提言案の2050年の値は、2012年の世界平均の値1.52石油換算トン/人に各国の2012年と2050年の人口の比率(図5の付表に記す値)で、 ( 1 ) 式に示す補正を行った値である。
この図5に見られるように、この私どもの提言案に示す、2050年の化石燃料消費の目標値の達成は、米国をはじめ先進諸国にとっては、大幅な化石燃料消費の節減が求められる。一方で、すでに一人当たりの化石燃料消費の値で世界平均を上回っている中国を除く途上国(非OECD)では、2050年頃までは、当分、化石燃料消費の増加が許されることになる。

付表;2050年の一人当たりの化石燃料消費の目標値の人口変化を考慮した補正値

注 *1;2012年の人口、単位百万人、*2;2050年の人口の推定値、単位万人、推定方法 本文参照、*3; 2050年人口(*1)と2012年人口(注:*2)の比、*4;一人当たりの化石燃料消費の目標値、単位 石油換算トン/人、1.52石油換算トン/人.
図 5 世界および各国の一人当たりの化石燃料消費の実績値と節減目標値の年次変化
(IEAデータ(エネ研データ、文献1に記載)の実績値と私どもの提言案の推定目標値)

 

 この私どもの提言案が地球温暖化防止のためのCO2排出削減対策として、国際的合意のもとで進められている
この私どもの提言案の実行は、実行不可能な理想論に過ぎないとの指摘があるかと思う。特に、現在、化石燃料を大量に消費している先進諸国は、とても、こんな大幅な化石燃料消費の削減は実行不可能と訴えるかもしれない。
しかし、いま、世界は、先に述べたように、IPCCの主導で、CO2排出量増加が原因とされている地球温暖化が防止できるとして、この私どもの提言案とほぼ、同じことを実行しようとしている。すなわち、昨年締結されたパリ協定では、化石燃料消費の代わりにCO2の排出の削減の国際的な合意ができている。
単位CO2排出量当たりの化石燃料消費量の値は、図6に示すように、化石燃料の種類別使用比率によって国別に多少の違いがあるが、ほぼ一定とみることができるから、私どもの提言目標の化石燃料消費の値は、図5に示す地球温暖化対策としてのCO2排出削減目標に置き換えることができる。

図6 国別の化石燃料消費量当たりのCO2排出量の値、2012年の値
(IEAデータ(エネ研データ(文献1 )に記載)をもとに計算して作成)

ところが、このパリ協定でのCO2排出削減量は、各国の自主的な申告に任されていて、これが実行された時に、目的とするCO2排出が削減され、地球温暖化が防止できるとの科学的な保証は与えられていない。しかも、このCO2排出削減の対策として、化石燃料消費量の年次増加の現状を認めたうえで、化石燃料の燃焼排ガス中からCO2を抽出、分離、埋め立てるCCS技術とよばれるお金のかかる方法が、IPCCの推奨で用いられようとしている。結果として、経済力のない途上国が、このために必要なお金を先進諸国に求める先進国・途上国間の金銭取引額が、このパリ協定での協議の主体になっている。
これに対して、私どもの提言案では、成長の抑制を基本とした省エネの徹底で、化石燃料消費量を節減するとしているから、お金をかけないで、地球温暖化対策としてのCO2の排出削減が実行できる。したがって、この私どもの化石燃料消費の節減案こそが、いま、国際的な合意が得られているパリ協定を使って、世界の化石燃料資源の今世紀いっぱいの保全の目的達成が実現することになる。
すなわち、上記したように、現在(2012年)の化石燃料の年間消費量を今世紀いっぱい続けるとする図1に示した私どもの提言案の実行で排出されるCO2の総量は、現在(2014年末)の化石燃料の確認可採埋蔵量を下回って、2.8兆トン-CO2となるから、IPCCが主張する地球気温の上昇幅は1.7 ℃程度で、人類の歴史上で、人類が何とか耐えることのできる温度上昇幅2 ℃以内に止まる。

 

この私どもの提言案こそが世界各国が平和的に共存して、現代文明を何とかキープできる唯一の途である
この私どもの提言目標は、今世紀中の一人当たりの化石燃料消費量を世界の全ての国が公平に同じ値にするとしている。したがって、いま、世界におけるこの化石燃料の配分の不均衡による貧富の格差が、世界平和を大きく侵害する最大の要因になっている。
米国におけるトランプ大統領の出現に見られる貧富の格差の拡大に伴う一国主義が世界に広がろうとしているなかで、この私どもの提言案こそが、世界が協力して平和を回復し、人類を滅亡の危機から救う唯一の方策であると信じる。
先進国の一員として、いままで、安価な化石燃料のエネルギーを使って経済成長を続けてきた日本が、世界の平和の回復のためにとるべき途は、自国のさらなる成長を目的としたアベノミクスの経済政策を廃棄して、成長の抑制を基本としたこの私ども化石燃料消費の節減案への世界各国の協力を訴えるとともに、その実行モデルを世界に示すことでなければならない。
この私どもの化石燃料消費の節減案の実行モデルこそが、いま、地球上に残された化石燃料のほぼ全量を輸入に依存している日本経済を破綻の淵から救い、やがてやって来る化石燃料の枯渇後の世界に人類が生き延びる唯一の途でなければならない。

 

<引用文献>
1.日本エネルギー経済研究所 計量分析ユニット 編;EDMCエネルギー・経済統計要覧2016, 省エネルギーセンター、2016年
2.久保田 宏、平田賢太郎、松田 智;改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉――科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する――
電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月5日:
https://kdp.amazon.co.jp/bookshelf?ref_=kdp_RP_PUB_savepub

 

 ABOUT THE AUTHER
久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他

平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。

Add a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です