世界はすでに石油供給減耗時代?(3)それでもやるべきこと

1章・2章と悲観的なことばかり書きましたが、それでもこの社会を悲劇に落とさないためにもできるだけのことをしなければという思いがあります。

それは、可能な限り正確な見通しを情報として流し、多くの人に取るべき道を示していくことだと思います。共感を覚えてくれる人が増えれば必ず社会の変革の力になるはずです。

 

一般の人々を対象に今後のエネルギー事情を説明し、実は「エネルギー浪費時代」は終わらざるを得ないのだという事実を納得させるためには、以下のような点について、できるだけ事実に基づき正確な見通しを述べる必要があると思っています。

 

ただ、私(筆者)にとっては残念ながら素人の悲しさで正確な情報に触れるということ自体がむずかしく、他の人達にオイルピークなどの説明をしようとしてもほとんどの資料は本会の石井会長の御著書などから引用するしかないのが実情です。そのため、例えばつい先日のシェールガス報道などのように、ちょっと目新しい話題が出ると戸惑ってしまい、ガス製造のコストが安いとあるのに対し、「そんなバカな」とは思っても効果的に否定できる根拠がなかなか見つからずに困ってしまいました。

「もったいない学会」に共鳴し、注視しておられる方々の中にはこの分野の専門知識をお持ちの方も多いと思います。そういった方にはここで述べる点についての助言を頂ければと思います。実は、今回このような素人の駄文を恥ずかしさをこらえてここ(ShiftM)に出したのも、目的はそこにありました。

 

 

(1)現代文明はエネルギー依存文明であるということの認識

  人類の文明はすべてエネルギーを使ってきましたが、産業革命まではそれはほとんどのところで薪炭でした。そしてそのために森林をすべて破壊しつくしそこの文明が衰退していくということも共通していました。

  しかし、石炭・石油を使うということに気付いた人間は大量のエネルギーを使うということで文明の質を大きく変えてしまいました。それを進歩と見なすことに疑問を持つ人はほとんどいません。

  いつまでもそれで行ければ良かったのかもしれませんが、石炭・石油・天然ガスといった化石燃料の供給は無限ではなく、ちょうどこの時に翳りが出てくるのに遭遇してしまいました。

  この点については直観的に納得できる部分も多いのですが、「経済成長は必ずエネルギー消費拡大を伴うかどうか」といった点には確信が持てないところです。

 

(2)エネルギー供給の本当の見通し

  石油ひとつを取ってみてもその埋蔵量・可採年数等、さまざまなデータが出され、結局のところ論者それぞれが都合のよい数字ばかりを拾ってきて、危ないとか大丈夫とか勝手なことを言う人ばかりです。

  単純に現在の可採埋蔵量は何兆バレルと決める事は不可能ということは分かりますが、かと言って何も見通しが言えなければ誰にも意味が伝わりません。

  おそらく、乱暴に言ってしまえば現在の価格の2倍程度までで供給できる原油が数千億バレル、現在の5倍までの価格で供給できる分が同程度、合わせて1兆バレル、そのあとは一桁以上高価になるというイメージでしょうか。

  こういった見通しというものは専門家であればあるほど簡単には言えないという事情は分かりますが、それでも言わざるを得ない時は今かも知れません。

 

  石炭・ガスについても同様の見通しを何らかの形で明らかにしなければ、楽観論者の目は覚めないでしょう。しかしおそらく石炭の埋蔵量などという数字は石油以上に千差万別のものが出回っているのではないでしょうか。どこまでを可採資源と考えるかで数字が大きく異なるのも当然かもしれませんが、これもなんらかの目安が欲しいところです。

 

(3)代替エネルギーの可能性

  特に日本の科学者には「自分の専門外のことには口を出さない」という美風?がはびこっているようです。そのためいくら他の研究者がおかしな研究をしていても批判はしないというのが普通のようです。

  しかし、その態度の結果、まったく将来性の無い代替エネルギー研究にも多額の研究費が国家財政から支払われるという事態になってしまっています。また、そこで少しでも研究成果が出れば大喜びで記者発表ということになり、それを鵜呑みにしたマスコミ記事が出回ることになります。

 

  公式に理論的に否定されており特許出願からも見放されているのは永久運動機関だけという話を聞いたことがあります。しかし、実質的には永久運動並みの「代替エネルギー候補」もいくつもあるのではないでしょうか。

  これもいつかは誰かが手をつけなければいけない問題です。バカな政治家や官僚に任せておける問題ではありません。

 

  まあ、すべての代替エネルギーには未来は無いという結論かもしれませんが。

 

  また、核融合にも素人には分かりにくい状況のまま大金が投入されています。

  核分裂ですら、その燃料であるウランにも埋蔵量に限りがありやがて終わりが来るということです。この意味で究極のエネルギー源は核融合だけという話ですが、これも本当かどうか判断できません。

  開発研究は延々と進められていますが、相も変わらず初歩段階で足踏み状態ということです。

  これにもいい加減に引導を渡してやらなければいけないのではないでしょうか。

 

 

(4)エネルギー供給が減少し価格が高騰すると社会はどうなるか。

  石油が1バレル10ドルや20ドルといった価格だった頃というのもさほど昔ではありません。

現在がどのような時代であるか、安価な石油で社会が回っていた当時と比べてどう変化したかというところは専門家が詳しく見れば明らかであるはずです。

  それでは、このあとエネルギー価格が現在の2倍、そして5倍、10倍と高騰していった場合にどのような変化が起こるのかということが想像はできないでしょうか。それを提示できればいくら鈍感な人でも将来の自分たちの生活というところから考えていくことになるでしょう。

 

  考えやすいように、石油価格が現在の2510倍となった場合を考えましょう。もちろんその他のエネルギーへの移行なども考慮しだすととても難しい推測になりますが、どうやらその道はなさそうだということで、とりあえず棚上げにしておくことにします。

  そうなると、ガソリンや重油などの石油製品もそれに応じて高騰することでしょう。また、効果的な代替発電の手段が無ければ電力料金もそうなることになるでしょう。

 

  食品産業を考えて見ましょう。まあ、ちょっとだけですが、私自身が係わりあった業界でした。

  石油が現在の2倍の価格になった段階でも、食品の原料である農産物・水産物・畜産物の生産の段階ですでに燃料費高騰のあおりを大きく受けていることでしょう。価格高騰だけですむならまだ良い?のですが、生産量減少につながると大変なことになります。とはいっても、高騰した食品を買うための収入が得られなければ社会不安が非常に増大することになります。

  食品加工の段階でも機械化が進んでいるためにかえってエネルギー高騰の影響を受けやすくなっています。また、他の産業と比べ人手をかける段階が多い傾向が強いので、食品価格高騰の影響が人件費の高騰の影響も受けやすく、さらに製品価格の上昇につながっていきます。デフレ脱却などとまだ言っている連中に聞かせたい未来予想です。

  流通・販売でもこれまでのようにタダ同然の運送費では運べませんので現在のような大企業の独占といった方向とは逆に動くのではないかと思います。

  2倍の価格の段階でもこのようなものですが、510倍となればまず水産業から崩壊し、ついで畜産業もやっていけなくなるでしょう。農業でも温室などの施設園芸は不可能となるでしょう。

  意外かもしれませんが、アメリカなどの機械化農業の方が日本の農業よりも生産量あたりの単位エネルギー利用率が低いそうです。日本農業がエネルギー高騰で壊滅しても大規模農業地帯から現在よりははるかに高価格であってもその時点では比較的安い値段で輸入できる可能性はあるかも知れません。

 

  他の産業はどうでしょう。自動車産業などは燃料価格が高騰してどの程度車を使っていけるかという問題の方が大きそうですが、生産へのエネルギー高騰の影響も各段階で大きくなるでしょう。

  興味深いのはIT産業です。一見エネルギー多使用には見えませんがそれでも使っているのは確かなので影響は受けるでしょう。しかし、交通や運送、製造といった各段階の産業が打撃を受けている中で情報だけが飛び交うという必要が本当にあるのでしょうか。

 

  そもそも一番大きな問題はエネルギー供給減少時代には資本主義自体がどうなるかということかも知れません。資本主義というものの持つ危険性や問題点が相次いで噴出しているかのような現代ですが、これもエネルギー使用と密接に関わっているものと考えられます。そうすれば、エネルギーが絶たれたらどうなるのか。もはや成り立たない可能性もありますが、そう簡単には終わらないのが資本主義でしょう。なんとかしぶとく儲かるような仕組みを考え出すということもあり得そうです。

 

(5)結語

長々とあれこれ書いてしまいましたが、このような見通しあれこれをできるだけ具体的にまとめ、それを人々に説明し、納得させ、来るべきエネルギー減少社会への対応を考えさせなければならないということが一番必要なことと考えます。

その対応というのは、社会の仕組みを大きく変えなければならないかもしれず、人々の仕事や暮らしなども大変動が襲うかもしれません。

それでもその変革をやらなければならないのは、このまま行くと悲劇的な文明の終末に至る可能性が大きいと考えるからです。

ぜひ、専門的な見通しをお聞かせください。

 

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