コロナウイルスへの感染問題が、感染者の自己責任とされ、感染者の自宅療養への依存が強制され、結果として、この感染の拡大が終結を見ないなかで、政府の責任が放棄されています。この自宅療養への依存の廃棄が、「コロナウイルス問題」の完全解決の唯一の道です

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

 川崎市内に在住するわたしどもの近親者が、コロナウイルスに感染者した結果、自宅療養を強いられ、苦い体験を強いられました。この体験を、本人からの聞き取りをもとに記します。

 同様の例が感染者の最も多い東京都でも起こっています。この自宅療養に依存する限り、変異株の発生が第4波、第5波を発生するコロナウイルス感染問題の完全解決はできません。

⓷ コロナウイルスの感染問題を完全解決するための医療崩壊を防ぐ科学的な方法は、政府の責任で、感染者の自宅療養への依存を廃棄して、政府の責任で、「コロナウイルス問題」を完全に解決するための科学的な方法を創り出す以外にありません。

 

(解説本文);

 川崎市内に在住するわたしどもの近親者が、コロナウイルスに感染者した結果、自宅療養を強いられ、苦い体験を強いられました。この体験を、本人からの聞き取りをもとに記します。

勤務先でコロナウイルス患者が発生したことを聞いた翌日、夜間に熱が上がり、水分を取っても吐いてしまう、激しい頭痛、という熱中症症状が出ました。熱中症のなかでも医療機関にかかるべき状態になったと考え、医療機関に診療を申し出たところ、コロナウイルス感染の疑いがあるという理由で、診療を拒否され、「朝になってからPCR検査を受けられる病院に行ってください」の一点張りで、点滴すら打ってもらえませんでした。なんとか持ち直しましたが、熱中症が酷くなったら、死に至ることもあるのにと憤慨しました。

その後、保健所からの指示で神奈川県療養サポートにLINE 登録をしましたが、センターからは、毎朝質問は来るが、息苦しさ、今の体温、パルスオキシメーターの有無、酸素飽和度を聞くのみでした。朝は体温が低いことが多いし、前夜高熱が出ても、頭痛がひどくても、吐き気がしても、答える項目はありませんでした。県から送られてくるはずのパルスオキシメーターがないと答え続けても、県からの問い合わせはありませんでした。(回復後に、個別の症状が相談できるパーソナルサポートがLINEで提供されることを県のHPで知りましたが、全く案内などはなく、闘病中にたどり着くことはありませんでした。)
 その他、自宅療養時のサポート体制について、県のHPに出ているには出ていますが、闘病中の患者に、「~しなければならない」的な記述が多く、困り事を解決するような記載ではありません。また、対症療法の解熱鎮痛剤、去痰剤などの薬をPCR検査可能な医院に電話すれば出してもらえる事を誰からも知らされませんでした。コロナウイルス感染体験者の友人からの情報で知り、医院に電話しても、朝の電話で折り返しは夕方、薬の到着は夜でした。

健康観察の連絡は陽性判定後1週間全くなく、神奈川療養サポートの、サポートダイヤル・コロナ119番は、いずれも、常に話し中。1度夜中に吐き気がしてきて、コロナ119に電話し、オペレーターに繋がるも、「折り返し看護師から連絡しますが、2日待ちの人もいるので、何時になるか判りません」との返事で、「何のための119番なのかわかりませんね?」と聞くと、「そうですね、機能していませんね。」との返事でした。また、そのときに、私は患者登録をされていなかったことも判明しました。それで、パルスオキシメーターも来なかったし、健康観察の電話も1度もなかったのでは、と思われます。濃厚接触者としての家族のPCR検査の実施も、療養期間終了の間際になってからでした。

神奈川に関して言えば、横浜・川崎という大都市を抱えていながら、全て県が行っているので、電話も繋がらないし、ミスも出るのではないのでしょうか。このように支援体制が破綻しているのに、さも支援しています的な案内、登録もされていない患者が毎日LINEで返信をしているのに、ノーチェックで自動的に送ってくるシステムに、腹立ちを覚えました。

PCR検査可能な医院がお盆休みになり、胃腸症状が改善しないので、かかりつけ医に相談できないか電話しました。しかし、電話で話を聞いて処方箋を書くことすらできないと断られ、保健所で受診可能な医院を紹介してもらうように言われました。さらに保健所に電話すると、サポートは神奈川県がやっているので川崎の保健所では紹介できない、神奈川のサポートダイヤルなら、オンライン診療もしている、と言われました。そこが常に話し中であることを、患者の方から教えるという状況でした。

コロナウィルス感染症は死に至る可能性もある病気です。それなのに、患者は、その疑いがあるというだけでも自宅近くの医院、夜間救急の医療が受けられません。公的支援はまともに機能していないので、利用することもままならず、東京都や神奈川県などが公的機関での支援に加え提携した「ファストドクター」という機関(勿論、闘病中には案内はありませんでした)も患者の激増で、受付を停止したり、診察を何時間も待たせたりしています。患者は、これまでに経験のない疾患に不安を募らせ、自分でインターネットや知人らというつてを利用して、調べ、判断をしています。ただでさえつらい症状を抱え、不安の中で、患者自身が症状に対して自己判断を強いられるという状況が、医療先進国といわれる日本で日常的に行われています。

これが、いま、「コロナウイルス問題」で、政府が進めている自宅療養の実態なのです。

 

⓶ 同様の例が感染者の最も多い東京都でも起こっています。この自宅療養に依存する限り、変異株の発生が第4波、第5波を発生するコロナウイルス感染問題の完全解決はできません。

朝日日新聞92日夕刊に、上記(⓵)した川崎市におけると全く同じの「コロナウイルス感染問題」における「感染者の自己責任による自宅療養の実態を示す体験例が報道されました。この新聞の夕刊の第1面のほぼ全面を占める記事の内容は、下記するその「見出し」に、

“ 都内の女性 不安つぶやく「日記」” とあり、” 自宅に10日間 これって療養?”そして、” 3日目「保険所からやっと連絡来た!!“ “6日目に食料到着 現実は自宅放置 “

とあります。詳細については、原記事を参照して頂ければ幸いですが、いま、政府主導で行われている「コロナウイルス感染者に対する「自宅療養」の実態は、上記(⓵)した神奈川県におけるコロナウイルス感染者に対する「自宅療養」の実態とほぼ同じと考えて差し支えないでしょう。いま、第4波、第5波の感染者増により、この神奈川県や東京都と、ほぼ同じ「自宅療養」に依存する医療崩壊が国内の全ての地域で起こっている状況だと考えられます。変異株が次々と発生するなか、政府が「新型コロナウイルスの感染防止」を政治の最優先課題に掲げながらそれが果たせないで、国内では、菅首相が退陣せざるを得ない事態を招いています。

 

 コロナウイルスの感染問題を完全解決するための医療崩壊を防ぐ科学的な方法は、政府の責任で、感染者の自宅療養への依存を廃棄して、政府の責任で、「コロナウイルス問題」を完全に解決するための科学的な方法を創り出す以外にありません。

 「コロナウイルス問題」を完全に解決することは、人類の生存にとっての重要な命題です。したがってこの命題の解決には、世界の政治の協力が必要です。具体的な方法として、最も基本的なことは、PCR検査などにより、感染者を非感染者から科学的な方法により隔離して、現状の最高水準の医療技術を用いて治療して、その重症化を防止することです。そのためには、感染者を隔離し、治療するため臨時の野戦病院のような設備、およびそこでの医療体制の整備を政府の責任で行うことです。いま、日本政府は、コロナウイルスに対するワクチン接種を国民の全てに行う方策を最優先させるとしています。確かに、これは科学的にも認められる感染防止に有効な方法ですが、ウイルスを先進国から輸入しなければならない国では、その効果を得るまでには、時間がかかる方法で、この方法の使用の間に新しく発生した変異株による感染の第4波、第5波が起こっているのです。現在、変異株の発生による感染の再増加を招いていますが、PCR検査を国民に強制実施したことで、第1波の感染防止に成功して、感染防止の優等生と言われたベトナムなどの国の例があります。確かにPCR検査を国民の全てに実施するのは、ベトナムなど共産国でなければ実施できないと言われますが。

コロナウイルス感染問題が人類にとっての避けることのできない命題である以上、日本においても、ワクチン接種とともに、初心にもどって、PCR検査による感染者の隔離を政府の責任で実施すべきと私どもは考えます。

このような科学的な方法による「コロナウイルス問題」の完全な解決を成功に導くためには、現在、政府によって実施されているコロナウイルス感染者に対する「自宅療養」という名の「放置」に見られる政府の責任回避の実態が厳しく指摘されなければなりません。これを言い換えれば、この自宅療養の体制の改革こそが、「コロナウイルス問題」を完全解決に導く唯一の道であることを厳しく指摘させて頂きたいと願います。

もう一つ、この「コロナウイルス問題」の解決を妨げるのではないかとして、その開催への強い反対のあった、一年遅れの東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京オリパラ)の政府による無観客方式による強行開催の問題があります。幸い、この東京オリパラは、良識のある国民の協力により、世界平和の象徴として、世界中の人々に人間の運動能力の大きな可能性を示す多くの感動的な実績を示して、無事終了しました。多くの人々が懸念を示した今回のオリパラですが、その意味では、特にパラリンピックの開催は結果的に有意義であったと私どもは考えます。

さらに、これは、東京オリパラが、無事終了した現在における私どもの希望ですが、この東京オリパラに使われた設備や組織が、今後、「コロナウイルス問題」の完全な解決のために有効に活用されることを強く訴えたいと考えます。

 

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久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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