アベノミクスのさらなる成長戦略を継承した菅義偉新首相による「温室効果ガス2050年ゼロ」宣言は、地球温暖化対策にならないだけでなく、世界平和を脅かしている貧富の格差の解消に貢献しません (その 1 )地球温暖化が温室効果ガス(その主体は二酸化炭素(CO2))に起因するとしても、CO2の排出削減で、地球温暖化を防止することはできません

東京工業大学名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎

(要約);

⓵ 菅首相が「温室効果ガス2050年ゼロ」を宣言しました。しかし、温室効果ガス(CO2)の排出ゼロを実行しても、いま進行している地球温暖化を防止できるとの科学的な保証はありません

⓶ 有限の化石燃料資源量の制約から、IPCCが主張する地球温暖化を起こすようなCO2の排出量が与えられません。したがって、地球温暖化が起こることはありません

⓷ CO2 の排出削減にはお金がかかります。「CO2排出ゼロ」を実行しても温暖化を防止できないのであれば、人類の生き残りのための世界経済の維持には、「CO2排出ゼロ」でなく、世界経済を支えてきた化石燃料の代替としてのお金のかからない再生可能エネルギーの利用でなければなりません

 

(解説本文);

⓵ 菅首相が「温室効果ガス2050年ゼロ」を宣言しました。しかし、温室効果ガス(CO2)の排出ゼロを実行しても、いま進行している地球温暖化を防止できるとの科学的な保証はありません

安倍前首相の突然の退陣で思いがけなく首相の座に就いた菅義偉首相が、就任後40日も経った10月26日の所信表明演説で、カーボンニュートラルを目的とした「温室効果ガス2050年ゼロ」を宣言しました。

この「2050年までのCO2排出の実質ゼロ」は、現在、進行中とされている地球温暖化が、大気中のCO2濃度の増加によるとする、いわゆる「地球温暖化のCO2原因説」を主張しているIPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部組織)が、世界の政治に求めている、国連主導の地球温暖化対策の国際的な達成目標です。

しかし、この「地球温暖化のCO2原因説」は、IPCCに所属する気象学者によってつくられた気候変動のシミュレーションモデル解析の結果から導かれた「科学の仮説」です。いま、この「科学の仮説」が、メデイアの多くに、さらには、このメデイアに洗脳された世界の政治に、科学の真理だと認められ、トランプ大統領の米国以外の世界の大多数の国の合意の下で進められている温暖化対策の国際ルールとしての「パリ協定」でのIPCCによる「2050 年までのCO2排出の実質ゼロ」の科学的根拠とされています。

しかし、この地球温暖化のCO2原因説が「科学の仮説」である以上、この仮説に基づいた菅首相による「2050年までのCO2排出の実質ゼロ」が実行されても、地球温暖化を防止できるとの科学的な保証は得られません。

では、何故、私どもが、このIPCCが主張する温暖化のCO2原因説を「科学の仮説」だとするのかと言うと、それは、地球大気中のCO2濃度の増加が大気温度の上昇、すなわち、地球温暖化をもたらしていることを実証する実際の観測データの裏付けがないからです。

IPCCの第5次評価報告書(2014 ~ 2015年)に記載の20世紀後半の観測データをもとに、科学的根拠もったCO2の累積排出量Ctと大気温度の上昇幅 t の関係を求めてみると、

t (℃)= 0.48 Ct (兆㌧)  ( 1 )

と与えられます。

実際の観測データをもとに、この私どもが求めた地球上のCO2の累積排出量の値と地球大気温度上昇幅の値との関係は、下記(⓶)に示すように、IPCCが主張する人類の生存に大きな脅威を与えるような値にはならないのです。すなわち、IPCCによる気候変動のシミュレションモデルに基づく「地球温暖化のCO2原因説」は科学的な根拠のない「科学の仮説」と言わざるを得ないのです。

 

⓶ 有限の化石燃料資源量の制約から、IPCCが主張する地球温暖化を起こすようなCO2の排出量が与えられません。したがって、地球温暖化が起こることはありません

IPCCの第5次評価報告書では、私どもが「科学の仮説」とするIPCCによる「温暖化のCO2原因説」に基づく気候変動のシミュレ-ションモデル解析の結果から、世界各国が、経済成長のためのエネルギー源としての化石燃料の消費を現状のまま継続して、CO2を排出すれは、地球の大気温度が最大4.8 ℃ 上昇し、また、この大気温度の上昇に伴う氷河の溶解で、海水面水位が60 cm 上昇するとされています。これに対して、私どもが科学的な根拠を持つと考える上記(⓵)の ( 1 ) 式を用いて、IPCCが訴えるような温暖化の脅威が起こるかどうかを検証してみました。

ところで、この気温上昇をもたらすとされるCO2は、世界経済の成長のためのエネルギー源として使われてきた化石燃料の消費に伴って、地球大気中に排出されます。しかし、この地球上の有限のエネルギー資源としての化石燃料は、やがて確実に枯渇します。この枯渇する化石燃料資源について、現状の科学技術の力によって経済的に採掘可能な資源量は、「確認可採埋蔵量」とよばれています。この「確認可採埋蔵量」の値R を、この化石燃料の年間消費量 P の値で割った R/P 年の値が、化石燃料がこれから何年使えるかを表す「可採年数」とよばれています。この「確認可採埋蔵量R」の値は、科学技術力の進歩と世界の経済力の変化により年次変化しますが、化石燃料の枯渇が迫っている現状では、今後、余り変化しないと仮定すると、化石燃料の枯渇までに排出されるCO2の総量は、日本エネルギー経済研究所編のEDMCエネルギー経済統計要覧(以下エネ研データ(文献 1 )と略記)に記載の2012年の化石燃料の種類別の「確認可採埋蔵量」の値から計算した表1に示すように3.19 兆㌧となります。このCO2の排出総量を、CO2排出総量と地球大気温度の関係を示す私どもの ( 1 ) 式に代入すると、大気温度上昇幅は1.53 ℃となり、IPCCの国内委員の一人の杉山太志氏の著書(文献2 )にある、地球上の気候変動の歴史から、人類が地球大気温度の上昇に耐え得るとされる大気温度の上昇幅2 ℃ 以内に収まります。

また、将来、科学技術の進歩により、可採埋蔵量が増加することがあっても、下記(⓷)するように、世界各国が協力して今世紀末までの88(= 2100-2012)年間の化石燃料消費量の平均年間消費量を2012年の値328.6億CO2㌧に抑えるような化石燃料消費の節減努力を行えば、CO2の排出総量は、2.89兆㌧(=328.6億×88)に止まりますから、大気温度上昇幅は1.39 (= 0.48 ×2.89) ℃ となり、温暖化の脅威を起こす2 ℃ 以内に収まります。

 

表 1 化石燃料の種類別確認可採埋蔵量(2012年末)の値から計算したCO2の排出総量の試算値 (エネ研データ(文献 1 )に記載のBP (British Petroleum) 社のデータから)

では、何故、トランプ米大統領以外の世界の政治が、IPCCが主張する「温暖化のCO2原因説」を信じて、何としても、CO2の排出削減をしなければならないとしているのでしょうか? その主な理由は、この「温暖化のCO2原因説」が、IPCCに所属する世界中の気象学の専門家が言うことだから間違いがないとして、IPCCにノーベル賞が授与されて、温暖化対策としてのCO2の排出削減が、国連主導の下で、国際政治を動かしているからだと考えてよいでしょう。しかし、IPCCに授与されたのは。ノーベル平和賞であって、科学的な発明・発見に対して贈られる物理学賞ではないのです。すなわち、「温暖化のCO2原因説」には、それが科学的に正しいとする保証はないのです。

もし、世界の政治に「CO2排出ゼロ」を実行しなければならない理由があるとしたら、それは、下記(⓷)するように、世界経済成長のエネル―源として重要な役割を果たしてきた化石燃料資源の枯渇が迫るいま、世界中が協力して、残された化石燃料資源を公平に分け合って大事に使い、その配分の不均衡に伴う貧富の格差を解消して、世界平和の維持に貢献することでなければなりません。

 

⓷ CO2 の排出削減にはお金がかかります。「CO2排出ゼロ」を実行しても温暖化を防止できないのであれば、人類の生き残りのための世界経済の維持には、「CO2排出ゼロ」でなく、世界経済を支えてきた化石燃料の代替としてのお金のかからない再生可能エネルギーの利用でなければなりません

地球温暖化対策としてのCO2の排出削減は、いま、IPCCによる脱炭素社会創造の訴えとして、世界の政治を動かしています。その具体的な方法として、IPCCは、CCS 技術の適用を推奨しています。このCCS 技術とは、CO2を多量に排出する化石燃料としての石炭の燃焼排ガス中から、CO2を吸着材に吸着・分離して、地中に埋立てる方法です。確かに、この方法は、確実にCO2の排出を削減します。しかし、このCCS技術の適用では、枯渇する化石燃料(石炭)の消費量を節減できないだけでなく、CO2の排出削減のためにお金が必要になります。

いま、世界で、「CO2の排出ゼロ」を実現する方法として、主に使用されているのは、その使用によりCO2を排出する化石燃料の代替としての太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーです。日本の菅首相の「2050年までのCO2の排出ゼロ」でも、太陽光発電を利用するとしています。

しかし、この再エネ電力の利用でも、現用の石炭火力発電に較べて、発電コストが高くなるために、その利用に、「再エネ電力固定価格買取制度(FIT制度)」の適用で、世界一高い市販電力料金を、さらに高くして、国民に経済的な負担をかけています。これに対して、石炭火力電力を用いても、その使用量を節減すれば、IPCCが訴える温暖化が起こりませんから、当分は、その使用量の節減のうえでの石炭火力電力を使用し、やがて、化石燃料資源としての石炭の枯渇が迫り、その国際市場価格が高くなり、再エネ電力の使用が経済的に有利になってからの利用でよいのです。

また、化石燃料枯渇後のエネルギーとして、原発電力を使えないとしたら、再エネ電力が、その中で発電コストが最も安価なものを種類を選んで用いられるべきです。それは、菅首相が言う太陽光発電でなく、日本でも、利用可能量も考慮して、現在、世界で発電量が最も大きい風力発電であると考えます。詳細は、私どもの既刊(文献3 )をご参照下さい。

 

<引用文献>

  1. 日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編;EDMCエネルギー経済統計要覧、省エネルギーセンター、2015年
  2. 杉山太志「環境史から学ぶ地球温暖化、エネルギーフォーラム新書、2012年
  3. 久保田 宏、平田賢太郎; 改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉 ― 科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言するー、アマゾン電子出版 Kindle 版、2017年、2月

 

ABOUT  THE  AUTHOR

久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。

著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail:biokubota@nifty.com

 

平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。

E-mail: kentaro.hirata@processint.com

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