「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」による世界経済の落ち込みを防ぐ道は、「PCR検査の徹底」による「コロナ問題」の速やかな収束以外にありません。この「PCR検査の徹底」による「コロナ問題の」の収束は、世界の貧富の格差を解消し、世界の平和を守り、人類の生存を保証します
|東京工業大学名誉教授 久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎
(要約);
⓵ いま、日本において、アベノミクスを継承する菅新内閣の最重要課題は、「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」を解決することだとされています
⓶ 「コロナ問題」を速やかに収束させる方法としては、「PCR検査の徹底」が実施されなければなりません
⓷ 「PCR検査の徹底」は、「コロナ問題」で落ち込んだ世界経済を再生できる最も安価な方法ですから、国際的な貧富の格差を解消し、世界平和の維持に貢献するとともに、一年間延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催を可能にする唯一の方法です
(解説本文);
⓵ いま、日本において、アベノミクスを継承する菅新内閣の最重要課題は、「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」を解決することだとされています
いま、日本において、明治維新以降の歴代最長の記録を達成して退陣した安倍晋三元首相の経済成長戦略、アベノミクスを継承し、それを推進するためには、エネルギーが必要です。いままで、そのエネルギーの主体は、有限の地球資源の化石燃料で賄われてきました。この化石燃料資源に枯渇の時が迫っていて、そのエネルギー価格が年次高騰しています。このエネルギー価格の高騰に伴い、日本だけでなく、世界の経済成長がマイナスに転じています。
すなわち、いま、日本を含む世界の経済先進諸国は、見かけの経済成長のためのエネルギーを供給しようとして、競って、超低金利政策を採用することで、赤字国債に裏付けられた実体のない紙幣を中央銀行に発行させています。結果として、国家財政の赤字がどんどん積み増されています。すなわち、掘削すれば地中から自噴する、水より安いと言われた中東石油に代表される化石燃料をエネルギー源として高度の成長を続けてきた資本主義社会は終焉の時を迎えようとしているのです。
この現実のなかで、突然、訪れたのが、「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」です。この「コロナ問題」によるコロナウイルスへの感染者の増加が、世界経済の落ち込みを大幅に加速しています。
日本経済の現状について見れば、この「コロナ問題で経済的に困っているのは、飲食業や観光事業などの接客業に従事する人々です。これらの人々のなかには、失業や廃業に追い込まれて、今日・明日の生活にも困る人々も出てきています。安倍政権は、これらの人々を救済するために、国民から徴収される税金により支えられているはずの国家財政のなかから一時的な給付金などを支給しようとして、今年度の補正予算として50兆円を超える金額を計上しました。
しかし、上記したように、日本の国家財政は、すでに赤字に転じていますから、この「コロナ問題」による経済の落ち込みを再生するためのお金は、赤字国債の発行による財政赤字の積み増しで賄われざるを得ない状況になっています。今回の安倍首相の退陣後も、アベノミクスのさらなる成長戦略を引き継いで推進しようとして菅新内閣で再任された麻生財務相は、この財政赤字は2025 年には解消できると公言していました。しかし、かつての高度経済成長の時と違い、貿易収支の赤字に苦しむようになった日本経済には、この財政赤字の積み増しを短期間に解消できる経済的な余裕はありません。それどころか、「コロナ問題」が収束しなければ、この財政赤字の積み増しは、来年度以降も続きますから、日本経済が破綻の淵に沈む大きなリスクを背負っています。このリスクを避ける唯一の方法は、「コロナ問題」を速やかに収束する以外にありません。
⓶ 「コロナ問題」を速やかに収束させる方法としては、「PCR検査の徹底」が実施されなければなりません
安倍政権を継承する菅義偉新政権は、この「コロナ問題」の収束の方法をワクチンの開発・利用に求めようとしています。アメリカやイギリスの医薬品事業者が開発したワクチンの提供を受けるとの契約を結んでいます。しかし、これらのワクチンの利用では、安全性の確認のための臨床試験に一定の期間を必要としますから、いますぐの「コロナ問題」の収束には間に合いません。したがって、上記(⓵)したように、今回の「コロナ問題」による経済の落ち込みを防止するための給付金の支給などで財政赤字の大幅な積み増しが必要となります。
これに対して、この「コロナ問題」を速やかに収束することができれば、このような財政赤字の積み増しによる日本経済の破綻のリスクは避けることができるのです。これが私どもが主張してきた「PCR検査の徹底」です。コロナウイルスへの感染の有無を調べる「PCR検査」を、できるだけ短期間に全国民に対して実施して、感染者を非感染者から隔離することで、感染者の増加を防ぐとともに、隔離された感染者に、速やかに医療を施すことにより、その重症化を防ぐのです。
この「PCR検査の徹底」の方法は、中国からのコロナウイルスの感染者の流入で、大規模な感染者数の増加を招いたEU諸国で、少なくとも一時的な感染防止に成功しました。しかし、この「PCR検査の徹底」の方法では、「PCR検査」による感染者の発見の精度が70 % 程度なため、「PCR検査」で陰性と判定された感染者が、新たな感染源となって、感染者数の再増加を招くことになります。これが、いま、「コロナ問題」の第一波の収束後に、経済の再生を目的として、3密回避のためのロックダウン(都市封鎖)の規制緩和を行ったEU諸国などで、感染者数の再増加を招いた「コロナ問題」の第二波の発生の原因になっていると考えられます。
一方、この「PCR検査の徹底」を行わずに、政府による緊急事態宣言の発令下で、全国一斉の3密回避のための「外出の8割自粛要請」で、都市封鎖を行わないで、「コロナ問題」の第一波を比較的早い収束に成功した日本では、緊急事態宣言の解除で「外出自粛要請」などを緩和した途端に、東京都を主体に「コロナ問題の第二波と見られるキャバクラ(接客を伴う飲食業)等でのクラスター(集団感染)が発生しました。その対応策として、キャバクラなどの休業や営業時間の短縮要請などともに、東京都などでは、「PCR検査数」の増加を行っていますが、現状では、感染者数の増加に歯止めがかからない状態が続いています。その原因としては、人口当たりの「PCR検査」の数がEU諸国などに較べて、2 桁も3桁も小さい現状が容易には解消できないためと考えられます。
このような状況のなかで、菅氏を官房長官とした安倍政権は、経済再生を優先するとして、Go to トラベルや、Go to イートなどのGo to キャンペーンを行うことで、国家財政の赤字をさらに積み増そうとしていました。いま、菅新首相の下でも、当然、このGo toキャンペーンは、引き続き行われようとしています。しかし、「PCR検査の徹底」による「コロナ問題」の収束が実行できれば、「コロナ問題」による経済の落ち込みを防ぐためとしての給付金の支給のために財政赤字の積み増しを行う必要が無くなり、日本経済を破滅に導くリスクを避けることができます。すなわち、現状では、コロナバラマキ対策だとして反対の多いGo toキャンペーンを実行する必要が無くなります。いや、即時、廃止すべきです。
なお、最近の報道(朝日新聞 (020/9/24))によれば、スペインやフランスでは、いま、「コロナ問題」で、第一波の時を上回る第二波での感染者数の増加が起こっており、再度の3密回避措置(EUの場合は、強制的なロックダウン)行っても、感染者数が減少しない感染爆発(パンデミック)の状況が続いています。これは、第一波の「コロナ問題」が完全に収束しない状況下で、ロックダウンを解除したためと考えられます。また、「PCR検査の徹底」も十分でなかったようです。したがって、この感染爆発に入った第二波での「コロナ問題」を収束させるためには、集団感染(クラスター)が発生した地域を中心に、第一波の発生の時と同様に、ロックダウンの実施とともに、再度、辛抱強く「PCR検査の徹底」を実行すれば、何とか、「コロナ問題」を収束できるはずです。いや、「コロナ問題」を速やかに収束させる方法は、この「PCR検査の徹底」しかないのです。
⓷ 「PCR検査の徹底」は、「コロナ問題」で落ち込んだ世界経済を再生できる最も安価な方法ですから、国際的な貧富の格差を解消し、世界平和の維持に貢献するとともに、一年間延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催を可能にする唯一の方法です
この「PCR検査の徹底」を阻む二つの要因があります。その一つは、この「PCR検査の徹底」を「コロナ問題」が進行して感染者数が増加してから実行する場合、隔離して治療を施さなければならない感染者の数に医療設備能力がついていけなくなる医療崩壊が起こることです。しかし、この医療崩壊の問題は、日本を含む先進諸国では、行政がその気になって対応すれば、何とか解決できるはずですし、解決しなければなりません。一方で、インドやブラジルなど、貧困な途上国の多くでは、この「PCR検査の徹底」の実行が、この医療崩壊を防ぐことができないとの理由から難しいとして、感染防止対策が行われずに、感染者数の増加が放置されています。「コロナ問題」の場合、感染者の死亡率が低いからとして、このような非人道的な対応が許されていると考えられます。
途上国だけでなく、先進国においても、この「PCR検査の徹底」を阻んでいる、もう一つの要因があります。それは、短期間に「PCR検査」を実施するために必要な「PCR検査設備」を整備するのに必要な費用の問題です。しかし、「PCR検査」の費用を1件当たり3万円とすると、日本の人口1.25億の全てに、この「PCR検査」を2回実施するための費用の総額は、(3万円)×2×(1.25億)=7.5 兆円 程度になります。この「PCR検査」の費用をニューヨーク市におけるように、全額、公費で負担するとしても、日本の場合、今回の「コロナ問題」の発生時に、3 密の回避に国民に苦労を掛けるとして、国民の全てに一律10 万円の配布を行った総額 ( 10 万円)×(1.22 億)= 12.5兆円の6割程度にしかなりません。また、上記(⓵)したように、「コロナ問題」が収束しなければ、経済成長の落ち込みを補償するための給付金として、今年度だけで50兆円を超えるお金が財政赤字として積み増されるのです。しかも、この赤字財政の積み増しは、「コロナ問題」が収束するまで継続するのです。これに対しで、「PCR検査の徹底」で「コロナ問題」を収束するためには、上記したように、約7.5 兆円の財政支出で済むのです。さらに、この「PCR検査」の設備能力を整備できるかどうかの問題もありますが、いま、全国民(1.25憶)に、2 ヶ月間(60日)で2回の「PCR検査」を行おうとすると、必要なPCR検査の設備能力は、(1.25 億)×2 /(60日)= 417 万件/日が準備されなければなりません。果たしてそれが可能かどうかという問題がありますが、政府が、その気になり、PCR検査の費用を全部負担する方針を決めさえすれば、この問題も、十分解決可能と考えてよいでしょう。
なお、この「コロナ問題」は、世界の問題です。この安価な「PCR検査の徹底」が、先進諸国の経済的支援で、途上国でも実施されれば、世界の「コロナ問題」が解決できます。すなわち、世界の全ての国が協力して、「PCR検査の徹底」により、速やかな「コロナ問題」の収束が図られれば、いま、世界で大きな問題になっている国際的な貧富の格差が解消され、世界平和の維持に貢献します。さらには、この世界の「コロナ問題」の収束により、一年間延期された平和の祭典、東京オリンピック・パラリンピックの開催可能となり、世界中のアスリートの熱い願いが報われることになるのです。
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久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。
著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
E-mail:biokubota@nifty.com
平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
E-mail: kentaro.hirata@processint.com