化石燃料の枯渇が迫り、「新型コロナウイルス問題(以下「コロナ問題」と略記)」により経済が落ち込んだ世界で、経済活動を再生させるには、「PCR検査の徹底」で、一日も速く「コロナ問題」を収束させる必要があります。この「PCR検査の徹底」で「コロナ問題」を収束させることは、全ての国が協力して、残された化石燃料を大事に使って、国際的な貧富の格差を解消し、平和な世界に人類が生き延びる道に通じます
|東京工業大学名誉教授 久保田 宏
日本技術士会中部本部 本部長 平田 賢太郎
(要約);
⓵化石燃料の枯渇が迫る世界で、「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」による世界経済の落ち込みが、世界経済のマイナス成長を加速しています
⓶「PCR検査の徹底」で、速やかに「コロナ問題」を収束させることが、世界経済のマイナス成長を最小化させる唯一の道です
⓷化石燃料の枯渇が迫り、経済成長がマイナス成長が要請される世界で、この「PCR検査の徹底」で「コロナ問題」を収束させることは、全ての国が協力して、残された化石燃料を大事に使うことで国際間の貧富の格差を解消し、平和な世界に人類が生き延びる道に通じます
(解説本文);
⓵化石燃料の枯渇が迫る世界で、「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」による世界経済の落ち込みが、世界経済のマイナス成長を加速しています
現代文明生活を支えてきたエネルギー源の化石燃料資源がやがて枯渇の時を迎えます。いま、世界では、この枯渇する化石燃料資源の代替として、自然エネルギー(太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーともよばれる)の利用を増やすべきされています。しかし、この再生可能エネルギー(再エネ)電力の利用では、単位供給エネルギー当たりのエネルギー生産コスト(再エネ電力の発電コスト)が、化石燃料(石炭)を用いる火力発電の場合より大きくなるので、単位エネルギー(化石燃料消費換算の一次エネルギー消費)当たりの国内総生産(GDP)の値(一次エネルギー消費当たりのGDP)で表される経済成長指標の値が、現状(化石燃料(石炭)を用いる火力発電の場合)に較べて小さくならざるを得ません。
さらに、いま、この現状のGDPのマイナスを決定的にしたのが、「新型コロナウイルス問題(以下、「コロナ問題」と略記)」の発生です。この「コロナ問題」での感染の拡大防止のために、日本では、3密の回避のための国民に対する「外出自粛要請」により、日本以外では、強制的なロックダウン(都市封鎖)により、GDPの値で表される経済成長のマイナスを決定的にしました。
しかし、経済成長の継続を必要としているブラジルやインドなどの発展途上国の多くでは、このような、「コロナ問題」での感染防止対策の適用では、必要な人的交流が妨げられ、経済活動が阻害されるとして、特別の対策が採られずに、感染が拡大するに任されています。すなわち、コロナウイルスの感染の拡大により、国民にこのコロナウイルスの抗体ができることで、自然の収束が期待できるとされているようです。今回の「コロナ問題」では、感染者が重症化する比率が少なく、死者数が少ないことも、このような経済成長優先の対策が採用される理由になっているとも考えられます。これを逆の立場から言うと、経済成長を妨げない感染防止の方法があれば、この方法を用いて、「コロナ問題」を収束させれば、「コロナ問題」に影響を与えないで、経済成長を継続することができることになるのです。
⓶「PCR検査の徹底」で、速やかに「コロナ問題」を収束させることが、世界経済のマイナス成長を最小化させる唯一の道です
いま、世界の経済成長の落ち込みをもたらしている「コロナ問題」を最終的に収束させるには、コロナウイルスの感染防止のワクチンと治療薬の開発と、その使用の実用化が必要です。今回の「コロナ問題」でも、その発生と同時に、「コロナ問題」の発生地の中国を含む先進諸国を中心に、このワクチンと治療薬の開発が進められています。しかし、このワクチンと治療薬の使用では、安全性の確認に一定の期間が必要で、その実用化には、2、3年かかるとされています。
したがって、この間の「コロナ問題」による経済の落ち込みを防ぐために、できるだけ速やかに「コロナ問題」を収束させようとして、中国やEU諸国が始めたのが「PCR検査の徹底」の方法です。すなわち、上記(⓵)したように、感染の直接的な原因となる3密を避けるためのロックダウン(都市封鎖)の適用と同時に、未感染者を含む全国民に「PCR検査」を行い、全ての感染者を非感染者から隔離して治療を施すことで、感染者数の増加を防ぐとともに、感染者の重症化を防ごうとするものです。私どもが「PCR検査の徹底」と呼んでいるこの方法は、「コロナ問題」での感染の初期の段階で実施することで、速やかに「コロナ問題」の収束を図ることができるはずでした。しかし、「PCR検査」での感染の有無の検出精度が70 % 程度とされているので、無症状の感染者が陰性と判断される可能性があります。したがって、この「PCR検査の徹底」の適用でも、「コロナ問題」の完全な収束はできていません。
一方、「コロナ問題」発生の比較的初期の段階で、政府による緊急事態宣言発令の下での3 密回避のための「外出自粛80 % 要請」を、国民が忠実に守ってくれた日本では、この「PCR検査の徹底」なしで、「コロナ問題」の第一波の収束に成功したように見えました。したがって、その段階で、「コロナ問題で落ち込んだ経済活動を再生させるためとして、緊急事態宣言を解除して、飲食業などに対する休業や営業時間の短縮要請などの感染防止対策を緩和する方策が打ち出されました。ところが、その途端に、感染者数が再び急増し、それが止まらなくなりました。すなわち、いま、「コロナ問題」の第二波の襲来を予測させるパンデミック(感染爆発)を起こしかねないとする深刻な状態が起こっているのです。
このような状況のなかで、健康上の理由から、急遽の退陣を決めた安倍晋三首相も、感染防止対策のための「緊急事態宣言」は必要がないとしながらも、インフルエンザとともに、このコロナウイルスの「PCR検査の徹底」を主体として、「コロナ問題」の収束を図るべきとしています。具体的には、いままで、「PCR検査」の目標値を一日2万件にすると言っていたのを、「PCR検査」に較べて、「検査」結果が速やかに判定できるとされる「抗体検査」を含めた感染有無の「検査」能力を、一日20万件に引き上げると言い出しました。「コロナ問題」を速やかに収束する方法としては、この「PCR検査の徹底」以外にないことをやっと認めたためと言ってよいでしょう。ちなみに、日本の人口1.25億人の全てに2 月(60日)で「PCR検査」を終了させるためには、約200 万件/日( 1.25×108/60 = 208×104 )の検査能力が必要になります。
いま、安倍政権は、今回の「コロナ問題」は、容易に収束しないだろうとして、この「コロナ問題」により、事業収益が大幅に落ち込んでいる飲食店や、観光事業などを救済するための資金を国が支出するとして、国家財政の赤字を積み増す国債を日銀に発行させています。結果として、「コロナ問題」の救済金として支出される補正予算の50兆円超を含めて、今年度の赤字国債の発行額は90兆円以上になるとされます。「コロナ問題」が収束しなければ、このような赤字国債の発行を次年度も続けなければならず、日本経済は破綻することになります。このリスクを防ぐためにも、一刻も速い「コロナ問題」の収束が求められるのですが、それを唯一可能にするのが「PCR検査の徹底」です。
「コロナ問題」は世界の問題です。上記(⓵)したように、いま、貧困な途上国の多くでは、「コロナ問題」を収束させるためにお金を使うことができないので、感染の拡大が放置されています。お金をかけないで、この現状を防ぐことができる唯一の方法は、この「PCR検査の拡大」による「コロナ問題」の一刻も速い収束でなければなりません。
⓷化石燃料の枯渇が迫り、経済成長がマイナス成長が要請される世界で、「PCR検査の徹底」で「コロナ問題」を収束させることは、全ての国が協力して、残された化石燃料を大事に使うことで国際間の貧富の格差を解消し、平和な世界に人類が生き延びる道に通じます
「コロナ問題」が世界の問題である以上、貧困な途上国を含む、世界の全ての国で、その速やかな収束が図られなければなりません。これらの途上国でも、「コロナ問題」を収束させるには、先進国の経済的な援助を受けながら、「PCR検査の徹底」を図る以外にありません。それ(「PCR検査の徹底」)が、最もお金をかけないで「コロナ問題」を収束させ得る唯一の方法だからです。
すなわち、世界の問題としてのこの「コロナ問題」の収束を実行する際に必要なことは、世界の全ての国の協力です。そういう意味で、いま、世界の全ての国の協力が求められている、地球温暖化問題での温室効果ガス(その主体は二酸化炭素(CO2))の排出削減の要請と一致するように見えます。しかし、私どもの近刊(文献2 )で主張しているように、CO2の排出削減により、地球温暖化を防止できるとの科学的な証拠は存在しません。いま、世界の全ての国の協力が求められているのは、現代文明社会を支えているエネルギー源の化石燃料資源の枯渇が迫るなかで、その配分の不均衡から生じる国際間の貧富の格差が、国際的なテロ戦争につながり、世界の平和を脅かしている現実への対応なのです。
したがって、いま、世界の全ての国の協力が求められるのは、現存するこの国際間の貧富の格差の解消でなければなりません。具体的には、私どもが主張しているように、地球上に残された化石燃料を、世界の全ての国が分け合って大事に使うことです。さらに言えば、それは、いま、トランプ米国大統領以外の全ての国の協力の下で進められている「パリ協定」での各国のCO2排出削減目標値を、化石燃料(石油)換算の一次エネルギー消費量に置き換えて、それを実現することになります。その実現可能な方法として、私どもは、2050年の各国の一人当たり化石燃料消費量を2012年の世界平均に等しくすべきことを提案しています。この実行では、豊かな先進諸国では、経済成長のマイナスが求められますが、貧国な途上国では、当分の間、経済の成長が継続できます(詳細については、私どもの近刊(文献2 )をご参照下さい)。
このように、「PCR検査の徹底」で「コロナ問題」を収束させることは、世界の全ての国が協力して、残された化石燃料を大事に使うことで、国際間の貧富の格差を解消して、平和な世界に人類が生き延びる道に通じるのです。
<引用文献>
- 久保田 宏、平田賢太郎; 「PCR検査の徹底」による「新型コロナウイルス問題(以下「コロナ問題」と略記)」の速やかな収束こそが、この「コロナ問題」で、経済活動の再生を優先させて、財政赤字を積み増している日本経済を破滅の淵から救う唯一の道です、 シフトムコラム 2020/8/27
- 久保田宏、平田賢太郎;2019/11/25 温暖化物語が終焉します いや終わらせなければなりません。化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります Amazon 電子出版、2020年11月
ABOUT THE AUTHOR
久保田 宏(くぼた ひろし)
1928年生まれ、北海道出身。1950年、北海道大学工学部応用化学科卒業、工学博士、
東京工業大学資源化学研究所 教授、同研究所資源循環研究施設長を経て、1988年退官、
東京工業大学 名誉教授、専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会 会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして、海外技術協力事業に従事。中国同済大学、ハルビン工業大学 顧問教授他、日中科学技術交流により中国友誼奨賞授与。
著書に『解説反応操作設計』『反応工学概論』『選択のエネルギー』『幻想のバイオ燃料』
『幻想のバイオマスエネルギー』『原発に依存しないエネルギー政策を創る』(以上、日刊工業新聞社)、『重合反応工学演習』『廃棄物工学』(培風館)、『ルブランの末裔』(東海大出版会)、『脱化石燃料社会』(化学工業日報社)、『林業の創生と震災からの復興』(日本林業調査会)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
E-mail:biokubota@nifty.com
平田 賢太郎(ひらた けんたろう)
1949年生まれ、群馬県出身。東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年、三菱化学株式会社退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。現在、Process Integration Ltd. 日本事務所および平田技術士・労働安全コンサルタント事務所代表。公益社団法人日本技術士会 中部本部 本部長。著書に、『化学工学の進歩36”環境調和型エネルギーシステム3.3 石油化学産業におけるシナリオ”』(槇書店)、『改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉—科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月』、『シェール革命は幻想に終わり現代文明社会を支えてきた化石燃料は枯渇の時を迎えます-科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―、電子出版 Amazon Kindle版 2019年10月』、『温暖化物語が終焉しますいや終わらせなければなりません-化石燃料の枯渇後に、日本が、そして人類が、平和な世界に生き残る道を探ります-電子出版 Amazon Kindle版 2019年11月 』他。
E-mail: kentaro.hirata@processint.com