(第2章) 文明を測る科学的ツール            (要約)現代石油文明の次はどんな文明か

(要約)現代石油文明の次はどんな文明か        (第2章) 文明を測る科学的ツール

石油文明が黄昏期の今日、石油文明は継続可能なのか、必然的に終焉していくのか、次の文明のエネルギー、社会のシステムはどうなのか。このような文明の盛衰を測る科学的ツールとして、エントロピー増大原理および、エネルギー収支比(
EPR)が有効だと考えます。EPR生産されるエネルギー(出力)÷生産するのに必要なエネルギー(入力)で定義されます。余剰エネルギー=出力―入力=入力×(EPR-1)です。

 

1.自然と社会を規定するエントロピー増大原理 

 文明のエネルギー史観にはエントロピーの法則が根本的です。その要点を列記しますと、

  物質、エネルギーが変化すると、エントロピーが発生する。

  エントロピーは物質と熱エネルギーに付随して移動する。

  物質、エネルギーは、自然にエントロピーが増大する方向に変化する。例えば、熱が高温のモノから低温のモノに流れる、物が拡散する。

④物質、エネルギーを、エントロピーの低い方向へ変化させるためには、エントロピーの低いエネルギーの助けが必要である。 

「モノを製造する」とは、エントロピーの高い原料資源に対して、低エントロピーのエネルギーを投入して、エントロピーが低い製品を造ることです。副産物として、エントロピーの高い廃棄物が必ず生じます。

モノの製造による廃物・廃熱は、適切な量を適切な方法で大気と水、生態に排出すると、循環的に処理されます。そうでないと自然、社会に蓄積されて、それらを劣化します。社会の状態が秩序から無秩序に変化すると、社会のエントロピー増大です。日本は1980年代の一億総中流のころと比べて、社会エントロピーが非常に増大しています。

 

2.一次エネルギーは自然の恵み

「資源とは、濃集していること、大量にあること、経済的な場所にあること」。これは石井吉徳東京大学名誉教授が、資源の本質を的確、明快に表現したフレーズです。「地球は有限、エネルギーは質がすべて」という、全く明快なショートフレーズも同じです。

一次エネルギー資源は地球環境の中に賦存している「自然の恵み」です。その恵みを人間が知恵でもって取り出して「文明の力」として利用しています。一次エネルギーを人工的に創り出すことはできません。原子力発電も必ず一次エネルギーを消費します。 
 一次エネルギーには、石油、石炭、天然ガス、非在来型石油、非在来型天然ガス、ウラン、太陽、風、地熱、地中熱、バイオマス等があります。石油は、エネルギー濃集度が高く、生活温度で液体の最も優秀なエネルギー資源です。

3.文明を差配するエネルギー収支比

近代文明では、化石燃料のもつ余剰エネルギー=(出力)―(入力)が多いほど、文明の発展につながります。余剰エネルギーの大きさを示す指標として、「エネルギー収支比」を本章の初めに定義したとおりです。EPR=1だと、余剰エネルギーはゼロです。EPR100だと、余剰エネルギーは入力エネルギーの99倍になります。勢いよく自噴する石油の余剰エネルギーの大きさに相当します。EPR<1だと、エネルギー損失になります。

化石燃料の一次エネルギーのEPRの良し悪しは、その産状、存在場所、さらに生産の進み具合で大勢が決まります。自噴能力ある石油・天然ガスのEPRはシェールオイル・ガスよりも格段に高いです。採掘が進んで枯渇に近づくとEPRが1に近づきます。

自由市場では、EPRとそのエネルギー単価が反比例関係にあり、消費市場に供給される余剰エネルギー量が減少し、そのエネルギー単価が指数関数的に高騰します。文明を駆動しているエネルギーのEPRが文明の存続にとって非常に重要なであることが分かります。

 

4.EPR10の世界

シェル石油の地球物理家M.K.ハバートは、石油生産の予測モデルを研究し、米国の石油生産量のピークを予測しました。その予測通り1971年にピークを迎ました。石油ピークモデルは油井から油田、地域、国に至るまでの、石油生産におけるピークと減退を表します。ハバート・ピークオイルモデルは標準のベル型です。

ハバート・ピークオイル曲線はグロスの石油生産量の推移を表しています。しかし、余剰エネルギーがあっての文明ですから、剰余石油生産量(ネット石油生産量)がどのように推移するかが本質的に重要です。ネット石油生産量はEPRで表すと、

ネット石油生産量=グロス石油生産量×(EPR-1)/EPR  です。

EPRの値が大きいと、EPRの変化が余剰エネルギー量に変化に与える影響は小さいです。 例えば、EPR30の場合で余剰エネルギー量96.7%、EPR15の場合で93.3%と、あまり変わりません。ところが、EPR10を切ると余剰エネルギー量が急激に減少します。EPR10で余剰が90%ですが、EPRが7で85.7%、EPRが5で80%、EPR366.7%と、急落下の様相です。EPRの変動で余剰エネルギー量が大きく変動します。それでは文明の構造と機能が安定しません。これが、EPR10以下の世界です。

ではどうすればよいでしょうか。エネルギー使用を節約すること、化石エネルギー、自然エネルギー、そしてヒトの身体と精神のエネルギーを組み合わせて使うことです。それが低エネルギー社会です。

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