日本版FITの問題点(4)

 最初に指摘したように、本来、電力会社と発電事業者は、Win-Win の関係が成立するはずであり、お互い協力して速やかにドイツのような負荷曲線が実現されるよう制度設計を考えるべきである。それには現在のルールをどのように変えたら、自然エネルギーの普及が進むだろうか? 私なりに考えるポイントを以下に列挙する。


アクセスラインは電力が建設、保守すべきである

2MW以上のメガソーラーや、風力発電で問題になってくるが、現状では特高配電線等のアクセスラインを設計、構築、保守運用していく技術や人材が、電力会社にしかないからである。不良設備を次の世代に残さないためにも、電力会社が線路構築に協力すべきである。
ただし電気料金の上昇を抑制するためには、発電所容量とアクセスラインの建設費用を勘案し、投資効率の高いものを優先すべきである。また建設に伴う工事負担金については、受電と売電で統一基準を適用し、負担金を巡る不透明な仕組み(系統整備費用を発電事業者に負わせる等)を改善すべきである。

受電と売電に統一基準を適用するのは、予定される「発送電分離」に伴い、電力会社は、電力の需要(消費者)と供給(発電所)を仲介する役割に限定され、インターネットと同じく、容量に応じた「接続料」として徴収すれば良いからである。 現状では、取りあえず受電契約をして、後から売電契約を追加する事で負担金の削減が可能となり不公平である。


2MW未満の高圧連系の場合は、電力会社(配電部門)がアクセスラインを建設、保守する事となっているが、受電と売電で統一基準を適用する事で、負担金の透明性を改善し、過大な負担金を防止する効果が期待できる。

また発電事業者を、変電設備や配電設備から解放して、発電設備の建設、運用に集中させる事により、設備保安の向上とともに、発電事業の透明性や安全性が向上し、投資の促進が期待できる。

FITに電力会社の系統整備費用を組み入れるべきである

電力会社は分散型電源の普及に伴って、配電用変電所を増強したり、アクセスラインを設計、工事、保守運用しなければならない訳であるから、それに見合ったコストをFITに組み入れるべきである。電力会社にとっても、FITからの分配収入が得られれば、発電事業者との Win-Win 関係が成立し、自然エネルギーの開発が加速されるだろう。

また電力自身が、もっと積極的にメガソーラーや風力発電に取り組むべきである。投資資金が確実に自然エネルギー開発に回るよう、分社化等で会計の透明性をあげる必要がある。

特高配電技術を有効活用すべきである

昭和から平成に変わる頃、関西の某電力では「20kV級配電」というのが盛んに言われていた。現在、高圧配電線は6600Vが標準となっているが、元々は3300Vが標準であった。昭和40年前後の高度成長期に供給力増強を目的として、全面的な昇圧工事を実施したのである。

さらに将来の供給力増強に備えて電柱を使って、22kVや、33kVの特別高圧で送配電する技術を開発し、普及させる計画であった。その後バブルが崩壊して電力需要が伸び悩んだ事、変圧器や電気機器の全面的入れ替えが必要となり、コスト的な問題もあって計画はごく一部を除いて頓挫した(1)。

しかしながら、この技術は大型メガソーラーや、風力発電所のアクセスラインとして極めて有効であり、1基1億円とも言われる鉄塔方式と比べ、一桁低いコストと、短い工期でアクセスラインが実現できる。

また10~20MWまで(高圧連系と同じく)配電部門のみで連系検討やアクセスライン建設が可能となるため、今後のメガソーラーや風力発電普及の鍵となると思われるが、配電用変電所に22kV級用の変圧器を整備する等の設備投資も必要である。


(1) これを推進していたのが、当時、配電部門を指導しておられた東松孝臣氏である。世界に先駆けて高圧絶縁電線を採用するなど、日本の配電技術は世界をリードしており、これが世界一といわれる電力品質をもたらした。

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