人類史のエネルギー革命における科学技術と資本の役割(1)

田村八洲夫(もったいない学会理事)

1. 人類史における科学技術の源流
2. 人類文明の曙と資本の形成
3. 階級社会と資本の創造:生産の三要素

 

1. 人類史における科学技術の源流
人類は未開の時代から、自然に働きかけて生活資源を、いかに合理的に、安全に、効率的に得るかという「労動の工夫」に対して知恵が働き、そのための道具や手法を改善してきました。換言すれば、「楽して大量の資源を得る工夫」、少量の労働エネルギー、あるいは少量の消費エネルギーでもって大量のエネルギー資源を獲得する工夫、すなわち、高いエネルギー収支比(EPR)を追求するのが人類の知恵、科学技術の基本的な動機ということができます。
未開の時代においては、経済学的に「生産要素は資源と労働」の二要素の関係であり、「資本」という概念はありません。そして、「労働の工夫」の中に現代にいたる科学技術
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およそ700万年前に、類人猿から進化したとされる「猿人」は、狩猟・採集に、払い枝(棒)や投石、落とし穴という道具が、合理的で、安全で、効率的であると見出しました。猿人の大脳の容量は500cc程度です。
そして100万年前からの「原人」は、燃え盛る火のかたちのエネルギーを利用し、生活スタイルの改革を図ったと考えます。野火で焼けた動物の肉や硬皮果の実がおいしいことは分かっていたにしても、家族で、寒い日に小さな火で温まることや、動物の肉や硬い木の実を焼いて食べることを覚えたのでしょう。猛獣から家族の身を護ることも比較的簡単になったと思います。

 

2.人類文明の曙と資本の形成
20万年前、人類は「新人」に進化しました。ホモ・サピエンスです。我々モンゴロイドもその1種です。大脳の容積は1,500ccになり、発達した頭脳のもたらす知恵で道具を技術革新していきます。矢じりやナイフなど、様々な目的の石器を作りました。はじめは粗製でしたが、約10,000年前になると磨製の精巧な石器を作ります。新石器時代の始まりです。縄文遺跡の中に、硬度7のヒスイに、現代技術でも難しいとされる精巧な円筒孔が空いたものもあります。
粘土の化学反応を知って土器を手作りしたのも、約10,000年前とされていますが、「新人」が農業生産で定住生活に移行したのと同時期です。磨製石器によって労動生産性が向上し、余剰の生産物が生み出されました。土器のツボは人々の生活に計り知れない革命を起こしました。獲物、植物の煮炊き、酒を含む発酵食品ができるようになり、食生活が格段に豊かになり、体格が強靭になりました。余剰農産物、食品の貯えができました。さらに縄文人は宗教観の表現として、土器に模様を施し、土偶をとりいれました。
新石器制作と土器発明の技術革新が、人類史に特筆の農業革命をもたらし、人類社会を未開から文明へ押し上げました。すなわち、自然に対して受身的な未開から、集落社会の意思でもって自然に働きかける文明への飛躍です。人類の知恵による自然への働きかけは失敗の方が多かったでしょうが、失敗に学ぶ数少ない成功が人類を成長させてきたと思います。自然に対する理解を深め、安定的に余剰生産物を獲るに至り、拡大再生産ができるようになりました。そして集落社会は人口が増え、都市構造が整備され、拡充されました。他の集落との通商活動は、扱う品物の種類が増え、日本海を渡るほど広域的に広がりました。
こうして物流が多様化すると、物々交換では間に合わなくなり、交換を仲立ちする通貨が創造されました。美しい貝殻、宝石、そして金属(金・銀・銅)が選ばれていきます。
通貨が社会に流通すると、単に交換を仲立ちする道具の域から、物資の流通を支配しうる地位、さらに経済を動かす資本機能を持つようになっていきます。人類社会が文明へ離陸したことによりもたらされた最大の経済革命といえます。
ここに、人間社会は、経済的な生産要素が、次節に示すように、二要素から三要素に進化し、文明を支える基本的な力になりました。

 

3. 階級社会と資本の創造:生産の三要素
人類が文明へと離陸し、さらに階級社会に至ると、科学技術が発達し、経済活動が豊かになっていきます。合わせて通貨は、資本機能を持つようになり、その結果、経済活動の三要素、資源(土地)、労動、資本が成立し、機能するに至りました。

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科学技術の源流は労働、とりわけ、人智による労働方法の工夫にあります。そして科学技術により進歩した労働の質が、余剰生産性と資本を生み出しました。さらに、科学技術と資本は、労働から独立して自律運動する要素に進化しました。
しかし、科学技術は、進歩するにつれてコストがかかり、資本に支配されるようになります。そして、資本は資源、労働を支配していくようになります。こうして人類社会は、資本が労動、資源、科学技術を支配するシステムの社会、大きくみて古代奴隷制社会、中世農奴制社会、そして近代資本主義制社会が続いて現代に至っています(図2参照)。

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