何のために今すぐの再生可能エネルギーの利用・普及が行われなければならないのでしょうか?――日本学術会議主催の公開シンポジウム「分散型再生可能エネルギーの可能性と現実」に参加して

東京工業大学名誉教授 久保田 宏

2月24日、日本学術会議講堂で開かれた表記シンポジウムを傍聴させて頂きました。その時の個々の講演内容についてのコメントは致しません。ただ、いま、いわば、国策として進められている再生可能エネルギー(再エネ)の利用の拡大が、一体、何のために、国民に大きな経済的負担をかける「再エネ固定価格買取制度(FIT制度)」の適用によって、今すぐ推進されなければならないのか、との私が以前から疑問に思っていたことを、研究者の皆さんは、あまり考えないで、この国策事業の可能性を追求して居られるように思えました。
以下、当日、総合討論の最後に、私がコメントした内容について、時間が無くて、話せなかったことを加えて、述べさせて頂きます。

 

何のために今すぐの再エネの利用拡大が進められなければならないのでしょうか?
現代文明社会を支えてきたエネルギー源としての化石燃料は、やがて枯渇します。ここで、私の言う枯渇とは、経済性を考えて技術的に採掘可能な地球上の資源量が不足してきて、その国際市場価格が高騰し、それを使えない国や人が出て来ることです。これが、国際間、国内でも貧富の格差を拡大させています。すでに、いま、それが現実のものになっています。
いま、世界に現存する貧富の格差を解消する唯一の方法は、私どもが提言するように、世界中の人が残された化石燃料を公平に分け合って大事に使うこと、そのための化石燃料代替の再エネの利用・拡大でなければなりません。
本来、再エネが必要とされるのは、化石燃料の枯渇が迫ってきて、化石燃料エネルギー(化石エネ)の国際市場価格が高くなり、その代替として、国産の再エネを利用する方が、それぞれの国にとって、経済的に有利になってからでよいはずです。
それが、今すぐの再エネの利用が必要とされているのは、1990年代以降、IPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)が主張する地球温暖化防止対策としての低炭素化(CO2の排出削減)が求められるようになってからです。

 

地球温暖化の脅威を防ぐためにCO2の排出を削減すべきだとするIPCCの主張には、科学的な根拠は認められません
IPCCが主張する産業革命以降のCO2の排出の増加に起因する地球気温の上昇は、IPCCに所属する気象学の研究者がつくった地球気候変動のシミュレ-ションモデルをスーパーコンピューターを用いて解いた結果によるものです。しかし、このコンピュータシミュレーションモデル計算の結果は、実際の観測結果と照合して、その一致が確かめられた時に初めて科学的な予測方法として認められなければなりません。地球温暖化についてのIPCCの主張には、それがなされていませんから、現段階では、IPCCの主張は、あくまでも科学の仮説に止まっています。地球気温の変化に影響を与える要因には、大気中のCO2濃度の増加の他にも種々あるとの研究結果が多数報告されています。IPCCの訴える温暖化のCO2原因の仮説は、それら多くの仮説のなかの一つに過ぎません。
では、何故、このCO2原因の仮説が国際政治を動かして、地球温暖化対策としてのCO2の排出削減のパリ協定の形で国際的合意を得ている(トランプ米新大統領は、米国のパリ協定からの脱退を表明しましたが)かと言うと、それはIPCCがこの地球温暖化問題でノーベル賞を得ているからではないでしょうか? ただし、このノーベル賞は、政治色の濃い平和賞で、科学(物理あるいは化学)賞ではありません。

 

世界中が協力して化石燃料消費を節減すれば、IPCCが訴える温暖化の脅威は起こりません
地球温暖化の脅威を訴えるIPCCの第5次報告書(2014 ~ 2015年)では、人類が、このまま、化石燃料消費の増加を継続すれば、今世紀末には、CO2の排出総量は7兆トンに達し、気温上昇が4.8 ℃、海面水位が48 cm上昇するなど、地球上の生態系に取り返しのつかない脅威が起こるとしています。これを読んだ私は、いま、化石燃料の枯渇が言われているなかで、果たして、地球上にこのような量のCO2を発生するに足る化石燃料が存在するだろうかとの素朴な疑問を抱きました。そこで、現状の技術で採掘可能な化石燃料の埋蔵量(確認可採埋蔵量)の値を、その信頼性が高いとされているBP(British Petroleum)社の2012年末のデータ(日本エネルギー経済研究所のデータ(以下エネ研データ)に記載)から、それを全て燃焼した際に排出されるCO2の総量を計算してみたところ、3.23兆トンにしかなりませんでした。ただし、このような計算をやっている人は世界中で誰もいないと思います。もちろん、経済力のある大国(米国)が、この計算で用いた確認可採埋蔵量を無視して、化石燃料の消費の増大を継続することは考えられます。しかし、そんなことをすれば、化石燃料の国際市場価格が高騰し、それを使えない人や国が出てきますから、地球上のCO2排出量はそんなに増えることはないでしょう。
さらには、現代文明生活の維持にとって大事な化石燃料資源量を保全するために、世界中が協力して、今後、今世紀いっぱいの一人当たりの年間平均の化石燃料消費量を、現在(2012年)の値1.52石油換算トン/年(エネ研データ、に記載のIEA(国際エネルギー機関)データから)以下に抑える(ただし、各国が国別の総量が変わらないように、人口の増減に応じて、この値を補正する)ことができたとして計算される、今世紀末までのCO2の排出総量は、2.9兆トン程度に止まります(このような計算も、誰もやっていないようです)。したがって、温暖化が、IPCCが主張するように、CO2のせいであったとしても、今世紀末の地球気温の上昇幅は、IPCCが人類の歴史のなかで、何とか耐えることができるとされる2 ℃ 以内に抑えることができます。

 

人類にとって、温暖化より怖いのは、一人当たりの化石燃料消費量の配分の不均衡がもたらす貧富の格差による世界平和の侵害です。
化石燃料消費量の配分の不均衡に基づく貧富の格差が、宗教と結びついて、産油国の人々によるタリバンに始まりイスラム国(IS)に至る国際テロ戦争が、世界に拡散しようとしています。
いま、世界の平和を回復するためには、パリ協定による地球温暖化防止のためのCO2排出削減の国際的な合意を、上記した、私どもが提言する「世界の全ての国が、地球上に残された化石燃料を大事に分け合って使う方法」すなわち、「化石燃料消費量を現在(2012年)の値に抑える」ことに変える以外に方法がないと考えています。すなわち、地球温暖化の防止のためではなく、化石燃料の枯渇後のその代替の再エネの利用・拡大が、化石燃料消費の節減のために行われるべきことになります。この方法ならば、CO2の排出削減のためのパリ協定に反対しているトランプ米大統領にも賛成して貰えるのではないでしょうか? 化石燃料消費の節減であっても、CO2の排出削減であっても、米国の参加が無ければ地球の問題は解決不可能と考えるべきです。

 

化石燃料代替の再エネ電力に依存する社会では、エネルギー消費構造の大幅な変革が求められます
いま、現代文明社会を支えるエネルギー源の主体を担っている化石燃料消費換算量で表される一次エネルギー消費量として、その約半分弱が電力で、残りの半分強が自動車用液体燃料(石油)などの電力以外のエネルギーで賄われています。
これに対して、化石燃料の代替として開発・利用される再エネの大部分は電力として供給されます。したがって、化石燃料代替の再エネ電力に依存しなければならない社会では、現状のエネルギー消費構造の大幅な変革が要求されることになります。例えば、液体燃料(石油)で走る自動車は電動自動車に置き換わることになるでしょう。
このように、現代資本主義社会を支えてきた化石エネを、今すぐ、高価な再エネ電力に変えるためには、市販電力料金の値上げで国民に経済的な負担をかけるFIT制度を適用せざるを得ません。しかし、日本経済の現状を考えると、いまの日本にはそんなことをする経済的な余裕はないと考えます。したがって、再エネ電力に依存せざるを得ない社会への移転は、化石燃料が枯渇に近づき、その国際市場価格が高くなって、再エネ電力を使う方が国民にとって有利になってから、最も安価な再エネ電力の種類を選んで、FIT制度の適用無しの再エネ電力社会へと、ゆっくり移転すればよいことになります。

 

再エネのみに依存しなければならない社会では経済成長の大幅な抑制が強いられます
もう一つ注意しなければならない大事なことがあります。それは、現状では、再エネ電力の生産には、そのエネルギー源として、大きな割合で、化石燃料が使われていることです。したがって、再エネ電力の生産に用いられる電力が全て再エネ電力で賄われなければなくなる“再エネ電力社会”での再エネ電力の生産コストは、現状で最も安価な石炭火力発電のコストに較べて、大幅に高くなると考えなければなりません。
その時の発電コストの値は、現状で、再エネ電力の利用・拡大に適用されているFIT制度での買取価格によって大凡の推定ができます。したがって、特に問題になるのが、FIT制度の導入時の買取価格が42円/kWhと、石炭火力発電の何倍もしていた家庭用以外の太陽光発電(メガソーラ)が、現在、優先的に利用されていることです。FIT制度が導入されてから2、3年経った頃から、認定を受けただけで、発電設備を設置しない事業者が多数居るなどのメガソーラ事業化の問題点が明らかになり、いま、FIT制度の部分改正が行われ、その電力買取価格の低減が順次行われています。
しかし、こんなことは、初めから判っていたことなのです。上記したように、化石燃料代替の再エネの導入であれば、FIT制度を適用しないでも導入できる再エネ電力の種類を選んで、順次、導入すべきであって、その際、発電コストの最も高いメガソーラは導入の対象にはならなかったはずです。ただし、同じ太陽光発電でも、その需要端への送電線無しでの供給が可能な家庭用の太陽光発電は、その発電コストが家庭用の電力料金を下まわれば、FIT制度の適用無しで、その利用・拡大が図られることになります。

 

分散型にこだわらない科学技術的に合理性のある再エネの利用が進められるべきです
本シンポジウムのテーマは「分散型再エネの利用可能性と現実」とありました。
いま、化石燃料の代替として利用されようとしている再エネは、自然エネルギーとして広く地域に分散しています。この地域分散型の自然エネルギーの地産・地消によって、地域経済を活性化しようとするのが分散型再エネの利用の目的とされています。
ところが、この地域経済の活性化を目的とした分散型再エネ電力の利用・拡大では、国がFIT制度の適用による市販電力料金の値上げで、再エネ電力の生産に必要なお金を、広く国民から徴収しています。しかし、このFIT制度の適用による再エネ電力の固定価格による売上で利益を上げているのは、再エネ電力の生産設備の製造、設置の事業に投資できる中央の企業が主体ですから、地域経済の活性化にはあまり役立っていないとの指摘があります。
さらに問題になるのは、単位エネルギー生産量当たりに広い敷地面積を必要とするメガソーラが、上記したように、国が決めた最も高いFIT制度の買取価格を使って多用されていることです。結果として、中央から進出してきた資本力のある事業者が、地方の貴重な財産である森林を伐採してメガソーラを設置し、地域環境を破壊するとして、いま、各地で地域住民による反対運動が起こっています。問題の多いFIT制度を廃止すれば、この最も買取価格の高いメガソーラは淘汰されることになります。

 

地方の活性化のためには林業の再生を基本とした地域エネルギーの利用が求められます
いま、地方活性化の事業として求められるのは、林業の再生でなければなりません。地方には、現在の国内の建設用材や製紙用のパルプ用材などの国内需要を100 % 自給できる森林があります。しかし、国内の人件費が高いとの理由で、国内の木材需要の約70 % が輸入品に依存しています。しかも、この現状のなかで、地方再生のためのエネルギーとして、木材を燃料としたバイオマス発電が、再エネ電力の売上げによる地域経済の活性化に繋がるとして、FIT制度の適用を受けて進められています。結果として、本来、輸入材の代替となるべき国産材が煙として消え去るだけでなく、国産材で不足する原料木材が輸入されています。
さらに、信じられないことですが、このバイオマス発電事業を、2020年までに、木材の自給率50 %を目標として、林業の再生を訴える林野庁が支援しています。このFIT制度を適用したバイオマス発電の電力の売上金額は、全国民が負担していますから、国としての利益は確実にマイナスになるはずです。にもかかわらず、このバイオマス発電を、「里山資本主義」のエネルギー生産だなどとメデイアが騒ぎたてています。もはや、科学の良識を超えたおかしな話としか言いようがありません。
木質バイオマスのエネルギー利用であれば、それは、先ず木材の自給率の100 %を可能にする林業の再生を実現して、関連の製材業などを振興し、そこで生産される林地残材や製材工場廃棄物等の未利用材をエネルギー利用すべきです。そのエネルギー利用の形態は、現状で安価な石炭火力発電用の代替燃料としてではなく、家庭暖房用や給湯用の高価な灯油の代替の熱エネルギーとしての利用による石油の輸入金額の節減でなければなりません。

導入可能量が無視されて、化石燃料代替として役に立たない太陽光発電の利用・拡大がFIT 制度の対象として進められています
単位敷地面積当たりのエネルギー需要量は人口に比例しますから、化石燃料代替の再エネ電力は、本来、地産のエネルギーを持たない都市にも供給されなければならないはずです。単位国土面積当たりの人口が際立って多い日本での再エネ電力の主体は、表1に示すように、再エネ電力の導入可能(ポテンシャル)量が、洋上も含めると、現状(2010年度)の国内発電量の約4.6倍と推定される上に、FIT制度の電力買取価格から推定される生産コストが太陽光発電に較べてはるかに低い風力発電のFIT制度の適用無しの利用でなければならないはずです。現在、世界でも、最も発電量の多い再エネ電力(ただし新エネとよばれる再エネ)は風力発電です。それが、最も発電コストが安いからです。
一方、日本では、上記したように、最も発電コストが高くて、その利用にFIT制度を用いると、国民に大きな経済的に負担を強いる太陽光発電(家庭用と家庭用以外の合計)が、表1に見られるように、その導入ポテンシャルの推定値が現在の国内発電量の13 % 程度と少ないにもかかわらず、FIT制度の施行後、優先的に、その利用・拡大が進められています。しかし、この環境省の報告書では、経済性を考えると、太陽光発電の投入ポテンシャルはゼロであるとされていることを付記します。
ところで、この表1 の再エネ電力導入ポテンシャルのデータのもとになった環境省の再エネ導入ポテンシャル調査報告書は、3.11 福島原発事故の発生の直後に発表されましたが、その存在が、一般には余り知られていないようです。FIT制度の施行後、資源エネルギー庁のFIT制度の担当官の方に尋ねても、その存在を知りませんでした。と言うことは、政府は、この導入ポテンシャルを全く考慮しないで、国民に経済的な負担を強いるFIT制度を適用して、やみくもに、地球温暖化対策としての再エネ電力の利用・拡大を進めていることになります。

表 1 再エネ電力種類別の導入ポテンシャルの推定値
(環境省委託事業;「平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査
報告書、平成23年3月」のデータをもとに計算して作成)

太陽光
(住宅)
太陽光
(非住宅)
風力
(陸上)
風力
(洋上)
中小水力 地熱
(バイオマス) 
導入ポテンシャル*1
百万kWh
31,536 117,700 713,824 4,876,758 82,221 87,074
( 9,280 )*2
同対国内発電量比率
*3 %
2.7 10.2 60.1 411 7.1 ( 0.8 )

注 *1 ;原報の再エネ電力種類別の導入可能設備容量に、年間平均設備稼働率の推定値を乗じて計算した発電量 *2;環境省調査報告書には記載がない。国内の人工林が100 % 利用されたと仮定し、用材の生産、使用の残りの廃棄物を全量発電用に利用した場合の推算値 *3 ;各再エネ電力種類別の導入ポテンシャル(発電量)の値の国内合計発電量(2010 年)1,156,888百万kWhに対する比率

 

EUで見直しが行われているFIT制度は、この制度が役割を終えたからではなく、もともと不要だったのです
政府にとっての再エネ電力としての太陽光発電の利用・拡大は、いま、かつての輸出産業のエースであった電機産業の不況を救うための補助金の役割をFIT制度が果たしていることになります。しかし、実際に、メガソーラとして利用されている発電設備は安価な中国製が主体と聞いています。これでは、日本の電機産業を救うことになりません。
あるいは、その利用・拡大のためのFIT制度の施行を担当してきた経産省が、原発事故の発生によって、原発電力の代替として、生産の過剰で安価になった市販の設備を持って来れば、今すぐの利用が可能となる太陽光発電が、その導入ポテンシャルが小さいとの、自分たちにとって都合の悪いこの報告書の存在が、意図的に隠ぺいされているのではないか? あるいは、単に、縦割り行政の結果として、環境省から知らされていなかったためではないかとも考えられます。
いずれにしろ、日本では、少なくとも、このFIT制度の導入の当時、地球温暖化対策のための今すぐの再エネ電力の導入が必要で、その主体は、家庭用も含めた太陽光発電だとされていて、メデイアを含めて、これに異を唱える人は、私以外にはほとんど居ません。それどころか、この地球温暖化対策を口実としたFIT制度無しには成立し得ない太陽光発電を主体とした再エネ電力の産業を環境ビジネスとして輸出産業に育てるべきだと訴える環境経済学ご専門の先生方も居られました。
地球温暖化対策として、EU主導で進められてきたFIT制度は、大分前から、ドイツをはじめEU各国内で、その見直しと称して、買取価格の引き下げが行われており、日本も遅ればせながら、これに追従しています。EUにおけるFIT制度の見直しは、今すぐの再エネの導入の役目が終わったからではありません。化石燃料の代替としても、また地球温暖化対策としても、もともと、今すぐの再エネ電力導入のためのFIT制度は不要だったのです。再エネ電力の利用は、その発電コストが、現状の石炭火力発電のコストより安価になってからの国民に経済的な負担をかけないFIT制度の適用無しの利用でなければなりません。

さらなる経済成長を訴えるアベノミクスに乗っ取られた日本のエネルギー政策は、日本経済を破綻の淵に陥れます
どうして、日本のエネルギー政策において、このような科学の原理に反する不条理がまかり通るのでしょうか? それは、いま、日本では、エネルギーの問題が完全に政治に支配されて、科学の仮説に過ぎない地球温暖化対策としての低炭素化のための再エネの利用・拡大を国策事業として、国民のお金を使って進められているからです。少なくともエネルギー政策についての政治は、国民のための政治になっていません。
いま、日本の政治は、アベノミクスのさらなる成長戦略に見られるように、政治権力を維持する目的での選挙の票を獲得するための経済成長の継続による景気回復対策としての財政出動政策などが優先的に進められています。しかし、化石燃料資源の枯渇が迫っているなかで、経済成長を支えてきた化石エネの供給が限界にきていることを、このアベノミクスを支えている経済の専門家は判っていないようです。
その典型例が、3.11福島の事故で、その安全性のリスクの大きさを思い知らされた地球温暖化対策としての原子力エネルギーの利用を口実にした原発の再稼働です。FIT制度の適用による再エネの今すぐの利用の拡大とともに、こんなことをしていたら、日本経済は、やがて、世界一と言われる財政赤字を積み上げて破綻することは間違いありません。
本来であれば、このような 誤ったこの国のエネルギー政策を正すのが、国のエネルギー政策の諮問に預かっておられる エネルギーの専門家と称する有識者の先生方の役割なはずです。しかし、この国策研究に預かることで、ご自身の科学技術者としての公的な地位を確保しておられる先生方は、政治に従属して、このようなご自分の重要な役割を放棄して居られます。

不条理なFIT制度の廃止のためには、エネルギーの専門家と称する先生方の良識に期待する以外にありません
私は、2010年の暮れの政府によるFIT制度施行の是非を問うパブリックコメントに応募して、その不条理を訴えるとともに、この制度を検討する小委員会の委員長の先生に、この制度の不成立を私信でお願いしました。しかし、何の返事も頂けないままに、FIT制度が成立して、その施行(2012年7月)が決まると、件の先生が、NHKのテレビで、“FIT制度による再エネの利用・拡大のための電力料金の値上げ額は、一世帯当たりにすれば、僅かな額に過ぎないから、地球温暖化の防止のために協力をお願いします”と国民に訴えておられました。確かに、お金持ちのこの先生には僅かな金額かも知れませんが、それを支払うのに苦労する一般庶民が多数居ることが無視されています。
何よりも問題なのは、上記したように、FIT制度を使って今すぐの再エネの利用・拡大を図ってみても、その目的とする地球温暖化を防止できるとの科学的な保証はないのです。さらには、日本経済の現状を考えると、この全くの無駄としか言いようのないFIT制度の適用によって国民に経済的な負担を強いる今すぐの再エネの導入の余裕も無いはずです。
いま、苦境にある日本経済を救済するためにも、国民に経済的な負担を強いる、この不条理に歯止めをかけること、すなわち、FIT制度の即時廃止を決めて頂くことを、国のエネルギー政策の諮問に預かっておられるエネルギーの専門家と称される先生方に切にお願い致します。

以上、私の訴えの詳細については、私どもの下記の新著を参照して頂ければ幸いです。
「久保田宏、平田賢太郎、松田智;化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉――科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する―― 改訂・増補版、電子出版、Kindle、2017年 2月」

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