JICA 専門家の悲しい犠牲で問われるべきは、 安保法制を強行採決した安倍首相の責任である

東京工業大学名誉教授 久保田 宏

 7月1日、バングラデイッシュの首都ダッカでの7名のJICA専門家の皆さんのご逝去に心からお悔やみを申し上げます。

かつて、JICAの専門家として、途上国への技術協力に何度か携わったことのある私にとっても、今回の事件は、余りにも大きなショックでした。

今回の事件で、メデイアは、いまや、海外技術援助に携わる日本人も、IS テロの標的とされるようになった。日本政府としても、このような事件が起こらないような安全対策に万全を期すようにと訴えています。かつては、イスラム過激派にとって、日本人は、敵とはみなされていなかったと思います。それが、いま、公然と敵国人として、テロの対象とされてしまいました。

何故、こんなことになってしまったのでしょうか? 本来、イスラム原理主義が主導するイスラム国(IS)にとっての敵は、メジャーが持つ中東の石油利権を守るために、イスラム教宗派間の対立に便乗して、フセイン政権が大量破壊兵器を保有するとの捏造された情報を基に、イラク戦争を引き起こし、10万人を超える一般市民を殺戮した覇権国、米国であったはずです。この軍事大国に対する唯一の対抗手段が、ISによる自爆テロを含む国際テロなのです。

いま、日本が世界に誇るべき平和憲法に対する歴代内閣の解釈を変更して、この覇権国、米国との軍事協力を約束した集団的自衛権を行使するためとして自衛隊の海外派兵を可能にする安保法制を、多くの国民の反対を押し切って強行採決した安倍政権は、全ての日本国民をISテロの標的として差し出してしてしまったと言ってよいでしょう。 すなわち、ダッカで7名の尊い日本人の生命を奪ったのは、安倍政権、敢えて言えば安倍晋三首相なのです。もちろん、彼は、そんな自覚など、ほんのかけらも持ち合わせてていません。ただ、国際テロは絶対許せないと声高に叫ぶだけです。

昨年暮れ(2016年11月)のパリの同時多発テロの時も、シリア国内のイスラム国(IS)を標的とした覇権国の有志連合による空爆を支持するとの声明を真っ先に発表しました。すなわち、ISによる国際テロを防止するには、IS自体を抹殺する以外にないとの覇権国の戦略に、単純に迎合しています。もともと、ISの発生の原因は、米国のブッシュ政権が始めたイラク戦争の結果です。シリアに2年間滞在し、中東情勢に詳しい清泉大学山本達也教授は、このイラク戦争時のサモアへの自衛隊の派遣が、中東の人々の日本を見る目を変えたと指摘しておられます。それまでは、日本人はイスラム教を信じる中東の人々からは、敵とはみなされていなかったのです。それが、この中東の軍事紛争にも密接に関連している安保法制による覇権国に対する日本の支援を巡る安倍首相の不用意な発言から、遂には、中東以外のイスラム国の過激派までが日本人を敵とみなすようになって起こったのが今回のバングラデイッシュのテロ事件と考えるべきです。したがって、これから先、日本人がISテロの標的とならないようにするためには、国民は、何としても、この安保法制の速やかな撤廃と安倍首相の退陣を訴え続けなければなりません。

日本が戦後の荒廃から立ち直って、中国にその地位を譲るまで、世界第2 の経済大国にのし上がることができたのは、戦後の安価な中東の石油の恩恵によるものでした。いま、その価格が高くなったとは言え、原油の輸入量の83 % を中東に依存している日本は、これからも、この中東石油の恩恵に背を向けることのできない状況は続くはずです。

戦後、戦争放棄の憲法9条を掲げて、イスラム国を含む世界の全ての国との平和友好関係を結ぶことで、現代文明を享受してきた日本は、本来であれば、IS と覇権国との平和友好関係の回復を取り持つ仲介役を行使する資格を持つ唯一の国であったはずです。その資格を自ら放棄することになった安保法制の速やかな廃棄こそが、ダッカで亡くなられた尊い7名の霊に報いる唯一の道でなければならないと私は考えます。

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