石油ピークは 菅政権の新経済政策に 何を求めるか

菅直人は首相就任にあたって、新経済政策として、従来の成長戦略の失敗を概括し、第3の道として、環境、健康、観光などに「新たな需要の創造」を求め、新たな雇用の確保と国民生活向上に主眼を置いた。ときは、石油ピークが到来中である。その政策が、早急に石油ピークの認識と結びついた場合のみ、国民生活向上に有効であると考える。
第1の道と第2の道
第1の道、公共事業による成長戦略は、列島改造の流れで20世紀末期まで続けられてきた。政府支出によりGDPは当然増加したが、公共工事の経済効果の乏しさが露呈し、多くの無駄なコンクリート構造物、不採算な施設、そして自然破壊を国土に残した。
第2の道は、グロバリゼーションの最中でバブル崩壊後の平成不況を克服するため、供給サイドの生産性向上による成長戦略であった。基幹企業等が構造改革(企業再編成、リストラ)により成長したが、国民全体の所得は向上せず、労働の不安定化と所得格差拡大、将来生活への不安が深刻に広がった。その影響は、家族の分解と無縁社会化、凶悪犯罪と病気患者の増加、子供社会の消滅と教育の低下等を招き、社会の分解と荒廃が進んだ。
1997年から2007年間で、日本のGDP成長は僅か0.4%増加、雇用者報酬は5.2%減少(平成20年国民計算確報)で、為政者、経済学者の意図と反して先進国の中でも最も特異な「成長の止まった国」、「一人負けの国」になってしまった。いくら財政政策、金融政策でテコ入れしても、GDP成長できなかった。現在、国際成長力は27位に後退している。就職は超氷河期、海外留学者も激減、日本の人材、企業や土地が、韓国や中国に買収され始めている。「失われた10年」が20年に延び、2008年の金融危機からの回復も一番遅れのままで、外国からみても日本社会の弱体化が読み取れよう。GDP成長はこれからも出来ないと思った方が良い。

 日本弱体化の主な原因は・・・・
日本社会の弱体化の主たる原因は、脱工業社会化への切り替え、即ち、自動車、鉄鋼、電気等の製造業中心から、情報産業・金融業・サービス業中心の産業構造へ転換ができていないこと、輸出依存型経済から脱却できていないためと思料する。この点、米国は変わり身が早かったと思う。
大規模なモノつくりには、原材料の資源やエネルギーの制限や高騰が敏感に影響するが、2005年頃からその影響が現れだした。その上で、国際競争激しい製造業分野の国内存続のために、従業員コストの低減・差別化、目先を変えた製品回転率の向上や、欲望を限りなく駆り立てて無駄遣いさせる類の「需要創出」、子供までターゲットにした消費者層の細分化による客数拡大等がなされてきた。その結果、製造業のガラパゴス化に加えて、先進国中で食料自給率が極端に低いことを含めて、日本社会全体のガラパゴス化が進行との報道は、そのとおりの観である。

 新経済政策は低エネルギー政策になりうるか
では、菅政権のいう新経済政策はどうであろうか。これまでの製造業およびコンクリート産業依存、貿易依存の産業構造は、換言すると大量生産・大量輸送で大量の資源・エネルギーを過剰消費する中央集中型であった。しかし、新経済政策における環境、健康(医療、介護、子育てを含む)、観光分野は、これに農林水産を加えて、地域やコミュニティで産業創成できる分野が多い。そして人による労働が多く、定置動力、移動動力を少なくできる低エネルギー消費型の産業ということができる。
農林水産業は、高齢化、離農化がこれ以上進むと共同作業ができなくなり、農業が成立しない集落が増えてこよう。自給力向上のため農業を育成するには、デフレによる大都市での余剰能力の地方移動が必要である。さらに農業生産性向上には、農地の荒廃を抑止するため農地の秩序化政策が早急に必要である。
菅政権の政策は石油ピークを認識した上での政策と認められない。せっかくの環境産業も、大規模な製造業中心の太陽光パネル、原子力発電、二酸化炭素排出枠取引などが注視され、依然、国際競争激化の輸出型政策が重視されているようであり、持続可能な環境政策とは成りえない。
菅直人民主党政権の基本的な政策の中に「緑の分権改革」、「農業の6次産業化」がある。「緑の分権改革」とは、地域資産を活用して地域産業を起こし、地域の自給力と創富力の高い「地域主権型社会」を構築ことにある。また農業の6次産業化とは、農業や水産業などの第一次産業が食品加工・流通販売に経営を多角化して地域社会を再生させようとするものである。
環境、健康、観光分野を軸とした新経済政策が、これらの地域政策の骨組みの中で実行された場合、地域で食料の生産に従事、あるいは調達しながら就労するスタイルが広がろう。そして、石油ピーク後の低エネルギー社会への転換に通じる「地域からの成長戦略」を起こすことが可能になろうと思う。
経済政策「第3の道」は、第1の道と第2の道と比べて、よりマシな政策と思う。しかし、地域産業再生と結びつかないで放置しておくと、第2の道と変わらなくなろう。「第3の道」政策を低エネルギー化政策への道に誘導する思想と方策の開発が必要である。

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