アベノミクスは日本経済を破滅の淵に導く(その1)経済成長ができないアベノミクスは、まもなく崩壊する

朝日新聞 2016/6/21掲載の「参院選 9 党の公約(要約)」のなかで、自民党は「アベノミクスさらに加速」として、私たちの子や孫に平和で豊かな日本を引き渡すために、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかすことで、デフレからの脱出速度をさらに上げていく」と訴えている。いま、安倍政権は、株価の引き上げなどで国民のごく一部の金持ちに利益をもたらしているアベノミクスの成果を強調することで、選挙の票を集めて、念願の憲法改正を実現して、日本を軍事大国に再生しようと図っている。これが、果たして、日本経済の将来にとって利益をもたらすのであろうか。

 

(海外投資家に見放されたアベノミクス)

ところで、この同じ日の朝日新聞が、オピニオン&フォーラム欄で「アベノミクス考、外からの視点」として、米国生まれの著名な投資家ジム・ロジャースの下記に要約するような厳しいアベノミクス批判の意見を掲載していた。

「安倍首相は、経済を再興させ、海外と競える環境を作りだすと公言していたのに、結局、何もやらなかったと思います。やったことは増税、そして税金で道路や橋を造り続け、お札をじゃぶじゃぶ刷り続けることぐらいでした」・・・「私は11年の東日本大震災後に日本株をいくつか買い、12年末の安倍首相の就任時に、彼の手腕に期待して買い増していました。しかし、構造改革は進まなかった。安倍さんは、かつての日本の指導者と同じ間違いを犯しています。この先良いことは何一つ起きないとあきらめ、昨年夏に日本株を全部売り払いました」

「アベノミクスは常軌を逸したようにお金を刷り続け、円の価値はわずか数年で、一時、3割も落ちました。短期的に輸出企業は助かるのでしょうが、輸入コストが上がって物価の上昇を招き国民生活は苦しくなります。・・・自国通貨の価値を下げたり、インフレを起こそうとする手法で成功した国は過去にどこにもありません」

――日本銀行が導入したマイナス金利政策をどうみますかの質問に対し、

「マイナス金利政策で経済を良くすることはできないと断言できます。・・・マイナス金利で財布の中身まで寂しくなって、日本はどうやって生き残るつもりですか」

――日本が投資先としてもう魅力は無いのでしょうかとの質問に対し、

「よい兆候が見つかるまでは手をださないつもりです」

――良い兆候とは、

「安倍首相が辞任するか、彼自身が変わるかです。・・・」。・・・「政権が安定していても、政治家は何をしていますか。日本に必要なのは変化です。・・・」

「新興国がどんどん力をつけています。・・・(日本が)昔と同じやり方を続けていたら通用しなくなります」

――日本が勢いを取り戻すためには何が必要でしょうかとの質問に対しては、

「・・・難しいことでしょうが、日本人全体が過去の延長線上で思考せず、もっと過去に抗うことが必要だと思います」

 

(経済成長のためにはエネルギーが必要だとする科学技術の原則が国民には知らされていない)

世界経済の不況が言われるなかで、いま、日本のアベノミクスは、経済成長を錦の御旗に掲げ、GDP 600兆円、1億総活躍などを訴えることで、国民の歓心を買って、政治権力を伸長している。さらに、この権力を使って、国家安全保障を確保するために軍事的にも強い日本をつくるとして、戦後の日本経済を支えてきた平和憲法の改正を行おうとしている。

日本が、戦後の荒廃の中から高度の経済成長を遂げることができたのは、中東の石油に代表される安価な化石燃料と、高い技術力を用いた輸出産業の振興があったからである。同時に、平和憲法を武器として軍事力に使うお金を最小限に止めてきた。いま、中国にその席を譲るまで、世界第2の経済大国であった日本が、世界の軍事大国と競合出来る軍事予算を使うためには、さらなる経済成長が求められなければならない。これが、アベノミクスが求める経済成長である。

しかし、経済成長のためにはエネルギーが必要である。いまそのエネルギー源の主体の化石燃料が枯渇を迎えようとしている。ここで、枯渇とは、地球上でのその資源量の制約から、その価格が高騰して使えない国や人々が出てくることである。実は、このエネルギー資源としての化石燃料消費量の不均衡な配分に伴う貧富の格差の拡大が、世界の石油の供給源の中東を震源地とした国際テロ戦争を引き起こし、大量の難民を生み出し、世界の平和を脅かしている。

成長の継続を前提として成り立っていた資本主義経済が終焉を迎えようとしている(文献1 )いま、化石燃料資源のほぼ全量を輸入に依存している日本が、かつての安価な中東の石油に支えられた高度成長時と同じ手法のアベノミクスの第3の矢、公共投資などの財政出動による経済成長を図ってみても、上記のジム・ロジャースが指摘するように、それが幻に終わるどころか、逆に真っ先に破綻の危機を迎えるのが日本経済である。

いま、民主主義国家の日本にとって大事なことは、投機によって築いた巨額の富を守るために、出生の地アメリカを離れて、タックス・ヘイブンの国、シンガポールに移り住んでいるジム・ロジャースのような投機家にとっての魅力のある経済成長可能な国家をつくることではないはずである。

政治権力を保持するために、経済成長の終焉のなかで、不可能な成長を訴えているアベノミクス政治からの離脱を図ることこそが、日本経済の生き残りの道である。

 

(英国のEU離脱が日本でのアベノミクスの崩壊を早めた)

本稿の執筆のまさにそのなかで、いま(2016/6/24の正午過ぎ)、国民投票による、英国のEU離脱の票が過半数を占めたことが発表され、世界中が大騒ぎしている。国内でも、株価が暴落し、円高が進行し、財政出動による経済成長を求めるアベノミクスにとっても大きな打撃となった。

英国には、1,000 社もの日本企業が進出しており、EU圏内の生産基地になっているとのことで、今回の英国のEU離脱は、日本経済にとっても大きなマイナス影響を与えることは間違いない。しかし、今回の円高、株安は、世界経済の先行きが見えなくなった結果であって、世界の、特に日本の金融市場の反応は、一時的な過剰反応と考えるべきである。また、英国のEU離脱の手続きが完了するまでには2 年ぐらいかかるとされているから、今回の影響が、EUの、そして世界の経済に影響が及ぶとしても、時間的な余裕がある。

先ず、円高の問題について考えて見る。上記したように、世界経済を支えてきたエネルギー源の化石燃料が枯渇を迎え、世界経済が後退期に入ったいま、日本経済だけが成長できるはずがない。したがって、今回の円高は、英国の離脱により予想されるEU経済の不安定要因に較べて、相対的に、日本経済が過大評価されているためと見ることができる。アベノミクスが始まって(12年末の政権交代後)からの異常金融緩和策による円安誘導は、日本の輸出産業の振興には余り効果がなく、逆に、輸入金額が増加して、貿易収支は改善されなかった。日本経済の実態からの対ドル為替レートがどのような値を採るべきか私には判らないが、今までの円安は一時的なもので、次第に円高に戻りつつあるなかでの今回の英国のEU離脱による円高シフトである。この円高が、今後どうなるかは不明であるが、怖いのは、政府がこの円高に過剰に反応して、一層の金融緩和政策を進めることによって、世界一の財政赤字がさらに積み増されることである。元大蔵相主税局主税官の故志賀櫻氏(ごく最近、逝去された)は、その著書(文献 1 )のなかで、現状の日本の深刻な財政赤字は、消費税を25 %まで上げても解消できない危機的な状況にあり、これを解決するには、政府は、庶民から購買力を強制的に奪うハイパーインフレーションを引き起こす以外にないのではないかと心配しておられた(本稿(その3 )参照)。

 

(アベノミクスからの離脱こそが資本主義の終焉のなかで日本経済が生き残る道である)

もう一つの問題は世界的な株安の進行である。これは、水野和夫氏の主張する資本主義の終焉(文献 2 )によって起こる自然の流れと考えるべきである。この資本主義の終焉論については、異論も多いが、私どもが主張するように、成長のためのエネルギー源が枯渇に近づくなかでの避けることのできない科学の原理である(文献 3 )。これを、日本の株式市場の動向について見ると、一時、アベノミクスの円安誘導が、海外の投資を呼んで、日本株を高騰させたが、上記したように、いま、海外投資家が手を引き始めて、次第に値下がりしていた。そこで起こった今回の英国のEU離脱による世界の株安が拍車をかけたと見るべきである。

もともと、最近の日本の株高は、ごく一部の金持ちが、さらに豊かになるための投機に

よるマネーゲームの結果であった。資本主義の終焉後のマイナス経済成長の時代においても、当分の間、企業経営の安定化のために株式が必要だとしても、それは、現在とは違った、マネーゲームに利用されない形で運営される株式システムへの変換が必要とされるのではなかろうか。これが、先の伊勢志摩G7サミットで、世界経済の成長のための財政出動を促す安倍首相の主張に反対して、ドイツのメルケル首相らが訴えた構造改革ではなかろうか。

さらに、EU統合は、第2次大戦の苦い経験から、ヨーロッパで再び戦争を起こすことがないようにとのドイツとフランスを中心にヨーロッパの経済統合による世界平和の構築を目的としてできたものである。かつての東欧圏を含め、現在の加盟国は28 にも及んでいる。ところが、各国の経済的な利害の対立から、金融政策についての統合が図られていないなかで、各国の財政状況に格差が生じている。この問題に対して、例えば、ギリシャの財政破綻の際のEU政府による緊縮財政の要請に対する感情的な反発に見られるように、統合政策に対して不満を持つ人々がも増えているようである。また、いま、大きな問題になっているのが、米国のイラク進攻に端を発した中東の国際テロ戦争の結果生じた大量難民をEUが積極的に引き受けた結果、治安上の問題から、民族主義的な運動が勢いを増している。さらに、今回の英国のEU離脱では、EU圏内からの安く働く労働移民の流入による雇用の喪失が問題になり、これに、かつての大英帝国の夢を追いかけ、主権回復のための独立を図りたいとする人の数が、経済的な統合のメリットを冷静に判断する人の数を僅かに上回った。しかし、今回の結果には、英国内で離脱に一票を投じた人々の間でも、これは困ったことになったとほぞをかんでいる人が多くいるとも報じられている。したがって、今後の世界平和を大きく左右するかもしれないEU経済統合の先行きが、ますます不透明になってきている。

理念先行と言われるEUの経済統合に対する多くの人々の反発に対して、EU政府が的確な対応がとれていなかったことはあるかも知れない。しかしながら、今回の英国の離脱が引き金になって、EUの統合が崩壊するようなことになれば、世界平和のためにも憂慮すべき重大事となることが懸念される。本稿、(その2 )で述べるように、いま、世界経済には全体として成長を継続できるエネルルギーが無くなってきている。このエネルギーの枯渇がもたらす経済成長の終焉こそが、地球上に貧富の格差をもたらし、国際テロ戦争と、その結果として生じた大量難民の問題を引き起こしている。これが、英国のEU離脱につながり、皮肉にも、安全保障を守るための軍事力を増強するための経済成長を追求して日本経済を破滅の淵に陥れようとしているアベノミクスの崩壊を早めることになった。

いま、日本経済を破綻の淵から救い出すためには、アベノミクスからの離脱以外に道はないとの厳しい認識が、すべての国民に要求されている。

 

<引用文献>

1.志賀 櫻;タックス・イーター――消えていく税金、岩波新書、2015年、

2.水野和夫;資本主義の終焉と歴史の危機、集英社新書、2013年

3.久保田 宏、平田 賢太郎、松田 智;化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉―科学技術の視点から日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する、私費出版、2016年

 

 

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