世界はすでに石油供給減耗時代?(2)実際どうなるか

1章ですぐにでも石油非依存の社会への移行をしなければと書きましたが、実際にそれが実現できるとは夢にも思っていません。万に一つもないでしょう。

まだはっきりと目に見えてもいない石油供給減耗に対応して、今の豊かなエネルギー消費生活を捨てて極端な窮乏生活に向かわなければならないなどということは一般人には到底受け入れることはできないでしょう。

そのような主張をする政党を立ち上げたところで選挙で勝てるはずもありませんし、議員一人すら出すことも難しいでしょう。また既存政党にこのような事実を納得させることも不可能でしょう。

説得をするにも、本当に化石エネルギーの使用可能量が限られているのか、そしてその限界がごく近くに迫っているのか、代替エネルギーと呼ばれるものは本当に使い物にならないのか、原子力には頼ることはできないのか、等々のどれをとっても現時点では不明確であることばかりを説明していかなければなりません。

そのようなわけで、今いくら石油が減っていくということを主張してもすぐにはその対応策を取ろうという動きにはつながらないはずです。

やることと言えば、あいも変わらず石油が値上がりしたと愚痴をいうばかりで、イラクやエルサレムが治まれば元へ戻るかもと期待するばかり、そしてやはり原子力発電をしなければという声が強まり、一方、目先の金儲け志向だけの代替エネルギー業者への金の流れは続き、研究費が欲しいだけのエネルギー開発研究者へも多額の金が回っていくでしょう。
目前に崩壊が見えなければ何も変わらないのは間違いないところです。

これは日本人が先が見えないというだけではなく、世界のどこでも似たようなものでしょう。石油や天然ガスが減ったとしてもとにかく電気だけは欲しいということから、原子力発電の増加も目に見えています。事故が起きたとしてもせいぜい1000km四方を空けてしまえばまあ大丈夫だろうというのは為政者が誰でも考えそうなことです。電気も無くなったら経済は破滅だという声が大きくなりそうです。

しかし、石油でなければほとんど代わりの効かない運輸交通や石油化学工業などでは残された石油の確保が大きな紛争の種になりそうです。
より効率を求めていく経済のグローバル化というものが実は安価な運輸交通に支えられているということは紛れも無い事実ですが、その事ははっきりと認識されていないようです。その費用がどんどんと上昇していくということは、もはやグローバル経済が存続できないということなのですが、それに気付かずにさらに経済競争が激化していくのかも知れません。いずれは極めて狭い範囲の地域経済社会に戻っていくのでしょうが、それまでの混乱で世界が無事に残るかどうかの問題です。

特に怖ろしいのは現状では軍事用としては石油由来の液体燃料が最適であるということです。航空機燃料、戦車や装甲車、輸送車の燃料等、石油以外は当面は考えられません。そこで石油供給に翳りがでたらどうなるか、無理をしても確保するということになるのは明らかです。
石油不足が産業に影響を与えるという事態以前に、軍事に支障が出かねないというだけで石油をめぐる衝突が起きる可能性があるということです。「石油の一滴は血の一滴」という言葉が世界中で、英語で、中国語で、ロシア語で語られることでしょう。
「石油戦争」はすでに何度も起こっているというのは周知の事実でしょうが、これからはさらに頻繁に、しかも世界中のあちこちで起きる可能性が増しているということです。

このように危険極まりない未来が待っているとしても何もできないのでしょうか。やがて来る日本が戦争に巻き込まれる日に(”起こす”のかもしれません)「こうなることは前から分かっていたんだ」とうそぶくだけしかできないのでしょうか。

そうではないことを信じたい。そのためにはできるだけ確かな根拠を示して、この「エネルギー依存文明」はいずれは終わるということ、そしてできるだけ早くそこから脱却することが悲劇的結末から逃れる方法だということを説明して賛同者を増やしていくしかないのでしょう。

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