低エネルギー社会シフトのイメージ

石油ピークが認識できない日本

「石油は現代文明の生き血」とは石井吉徳会長の名言。石油のもつ燃料、動力、化学原料としての高い能力が現代社会を運転する主役であり、その能力が自然の支配、農業の工業化に及んでしまったのが石油文明である。

その石油が生産ピークを迎え、文明が必要とする量を賄えなくなろうとしている。それが2015年~2010年の間、早ければ2013年といわれている。石油ピークを超えると、EPRの高い良質な石油から急速になくなっていく。しかも価格は高騰する。

良質な生き血が流れなければ文明は機能しない。石油の減耗に遅れないように、石油に頼らない社会に改革されねばならない。改革が遅れたり、失敗すると、短期間のうちに文明の崩壊に至るといわれている。

J.Diamondの著書『文明崩壊』中の表現を借りると、石油文明の改革に社会が失敗しうる4つのカテゴリーがある。

①石油ピークを予見できない
②到来している石油ピークを認識できない
③石油ピークを認識できても解決法がわからない
④解決を試みても失敗する。

日本の支配層は石油ピークを予見できなかった。未だ認識していない。したがって解決法のコンセプトもない。これでは日本は危ない。

文明のかたちを変えない経済成長では国民は幸福から遠のくばかり

最近の日本の石油使用比率%は、自動車34.9、航空機1.6、船舶3.0、鉄工14.6、都市ガス1.4、電力7.7、農林水産3.2、家庭・業務15.3、化学原料18.3である(石油連盟資料)。

運輸と工業での使用を見れば文明のかたちが分かる。これを変えないまま脱石油・脱炭素の環境ビジネスで経済成長を期する動きが大勢だが、無茶な話。明らかにGDP経済成長と石油消費量増には相関がある。

天然ガス、石炭、原子力、太陽光、風力などが束になっても、石油の能力は勝てない、石油代替にはならない。そもそも原子力も太陽光も、石油が頼りの二次エネルギーである。

石油ピーク後の社会は、必然的に低エネルギー社会である。 文明のかたちを支えている経済使命「グローバル競争に勝つ」を変えないで「脱石油で経済成長」の招く無理によって、その歪みが日本社会に深く広がってきた。

コスト削減の切り口は低賃金と労働条件の改悪、社会保障の質の低下である。それが老後生活・子育て・雇用の不安、貧困率の増加による階層分裂、人の絆の破断を招き、さらにウツ・孤独・虐待・自殺等、人間らしさを失う者が増えてきた。働く場、生きる場、生きる規範が失われてきている社会で、国民はどこに幸福の道を求めたら良いのだろうか。

低エネルギー文明のかたちは・・・

米国統合軍報告の予想では、2015年に日需要量約8500万バレルのうち、1000万バレル不足するという。そのとき日本は日需要量約400万バレルのうち、いくら得られるだろうか。

熾烈に展開する世界石油争奪戦を見れば、先ずは半分とみてはどうか。 石油使用を半減させるには、自動車の石油消費の過半を占める乗用車使用の大幅抑制、ビル建設の縮減、原料の有機化促進であり、さらに家庭・業務部門の新エネルギー化、そして何よりも不経済な自動車長距離輸送の抑制し、脅威とされている外国の土壌養分と水を奪うフードマイレージの大幅縮小、すなわち食料自給率大幅向上が根幹だと考える。

では、低エネルギー社会の文明のかたちはどのようなものか。一言でいえば、輸送コスト相応規模のローカリゼーションである。地域コミュニティで食料、経済が基本的に回る地産地消へ回帰する。

経済の地域化の基本は、①多様な自然エネルギーの有効利用、②自然保護による養分の生態循環の再生、③換金目的の生産性向上でなく豊かな自給目的の消費性向上の立体農業再生の3つの要素である。

では、自然と生きる地域はどのようなかたちが良いのか。日本国土は海岸線が長く、ほぼ平行に脊梁分水嶺が走っており、その間に急な河川流域が発達している。脊梁~丘陵~扇状地~沖積平野~海岸・前浜がワンセットだと、地域化の3つの要素に打ってつけではなかろうか。

江戸時代の藩・支藩の境界は概ねこのセットで、地域の経済的自立にかなったものと思う。 低エネルギー文明はもったいない文明 低エネルギー文明へのシフトをできるだけ平和的に進める必要がある。それには新たな文明のかたちに適した価値観の共有が必要である。それが「もったいない思想」であり、石油文明期に許された「無駄遣い思想」とは正反対である。

もったいない思想は、限り有る自然資源、および隣人との共生を大切にし、その生活の中で自ずと幸福を見出せるからくりがある、日本に土着の文明観であり、つい50年前まで強く息づいていた。 幸福を求めて行動する低エネルギー文明へのシフトは、ShiftM、すなわち、「シフトもったいない」と同義である。

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