土壌細菌研究ノート

     主旨 ミクロ的視点ではなくマクロ的視点で微生物を見る

当研究は、全体を見ることに重点を置いている。歴史の場合でも一つの事象を見ても方向性は解らない。一つの事象は結果であり、必ず原因がある。その原因を結果ととらえれば、またその原因がある。その流れ全体を俯瞰で見れば、方向性が見えるのである。

土壌微生物の研究は飛躍的に進展しているとは言え、土壌中の10%程の微生物しか同定ができていないと言われる。1種類の微生物を分離培養し、その微生物の特徴を見つけ出して行くという方法は培地の特定や環境の設定の難しさもあり、未だ土壌微生物の全体像を見るに至っていない。そこで、微生物を1種類単位で見るのではなく、環境や動植物全体の営みの歴史において、いかに微生物が関わっているかを見ることで土壌微生物全体の特徴を特定する研究である。

地球と微生物と環境の歴史

地球が冷えて固まり、太古の大気と太古の海と岩の陸地、太古の海は波で岩を砕き、小惑星の衝突や浸食や風化で砂ができる。もし生命が生まれなければ、月や火星をみればわかるとおり、砂のままの荒涼とした世界である。しかし、地球は土がある。土に植物が生え美しい星となる。土は微生物たちが作った。  海の中で様々な微生物が生まれ、その中のシアノバクテリアは酸素を作り、様々な微生物たちとともに太古の大気から、現在の大気に作り替えていく。また様々な微生物は太古の海から今の海に作り変えてきた。様々な微生物たちが現在の地球に近い環境を作っていくのである。
そして、ある微生物が、突然変異で多細胞生物になる。この新しく生まれた多細胞生物は。微生物たちが作った環境でしか生きていけない生物で、微生物たちと共存できるものである。そして、その環境を壊さない生物でなければならない。なぜなら、微生物たちの作った環境を壊してしまったら、その環境でしか生きていけない生物には命取りになるからである。現に人間が文明を築くまでは、それまでの動植物は微生物達の作った環境を壊さなかった。
その多細胞生物が進化した姿が現在の動植物だ。環境は微生物たちしか作ることができない。動物や植物は微生物たちの作った環境中でうまく立ち回っている(循環している)だけなのである。

大気の歴史グラフを見ると、38億年前に太陽風の放射線や波長の短い生命にとって有毒な紫外線の届かない海の奥底の火山地帯で、地底から吹き出す無機化合物からエネルギーを得る独立栄養生物の微生物が出現する。彼らは無機化合物の吹き出す場所から離れるか無機化合物が出てこなくなれば、生きていくことはできない。死んで海を漂う有機物になる。次に現れるのがこの海を漂う有機物からエネルギーと炭素得て生きる従属栄養生物の微生物だ。この微生物の餌は海に漂っているので、どこかにへばりついている必要は無く、海の中を自由に漂っていても餌にありつくことができる。ここで、独立栄養生物、従属栄養生物を含めた微生物の中で循環が始まるが、微生物の循環には大事な掟がある。それは、生きているうちは分解しないという掟だ。なぜなら生きているうちに分解がはじまったら、その集団は消滅に向かう。その循環に多細胞生物は出現と同時に加わることになる。多細胞生物同士の殺し合いは認められているが、基本的に微生物は多細胞生物が元気に生きている間は分解しない。免疫力が落ちて次の生命の材料にしたほうが良いとなれば、分解にかかる。  地球内部のマントルの動きが落ち着いてくると地場ができその影響で太陽風を防ぐバンアレン帯が形成される。地球に生命を脅かす放射線が降り注ぐことがなくなったお陰で海の表面近くまで微生物が生息できるようになる。そこで現れるのが、太陽の光をエネルギーとして大量にある二酸化炭素から炭素を利用し、酸素を放出するシアノバクテリアだ。海の中の酸素が飽和状態になると大気中に酸素が放出される。植物はシアノバクテリアを細胞内に取り込み葉緑素を形成し、動物は酸素をエネルギーとする微生物のミトコンドリアを細胞内に取り込みエネルギー効率を増して、動物の世界が栄えるようになる。およそ6億年前に動植物が大繁殖をしたカンブリア大爆発が起こる。4億5千万年前にようやくシアノバクテリアの生成する酸素のおかげでオゾン層が形成され、危険な波長の短い紫外線は遮られ、海から出ても危険はなくなった。4億年前に植物が上陸を果たし、3億5千万年前に動物が上陸を果たす。グラフを見ても分かる通り、動植物が自分たちの生きられる環境を作ったわけではない。動植物は微生物が作った環境の中で自分たちの過ごしやすいレベルを維持しているだけである。これは何を意味するか、環境が破壊されたので、草木を植えましょうという話はナンセンスなのだ、環境が悪くなったイコール微生物のバランスが崩れたということで、環境を戻すためには、まず微生物のことを考えなくてはいけないということだ。それを教えてくれるのがこの大気の歴史のグラフだ。

地球を遠くから眺めると地表の近くに青い幕(成層圏)がある。この幕は微生物たちが作った最終のバイオフィルムだ。この膜の中では微生物たちが安定して暮らせるし、そこで生まれた多細胞生物たちも健康で気持ちよく暮らすことができる。そして人もこの青い膜の中で生まれたので、この中でしか生きていけない。様々な微生物達が作った、この青い膜の中は臭いもなく、気持ちがよく、健康で生きていけるのである。もし、宇宙人がこの青い膜のなかに入ったら、非常に臭く感じるかもしれない。また、酸素が猛毒となり生きていけないかもしれない。  この環境は地球を取り巻く様々な微生物が作り、環境の保全は地球を取り巻く様々な微生物なしにできないのである。

地球を取り巻く微生物とは

まだ生物が陸上に進出していなかった頃、陸上は岩と砂である。

4億5千万年前にオゾン層が形成されると、微生物も波打ち際に上陸することができる。波打ち際に打ち上げられていた海の中の有機物が、微生物に分解され。波打ち際植物の栄養ができ、苔のような下等な植物が上陸する。

続いて高等な植物も上陸を果たす。

その植物を求めて、動物が這い上がり、

その動物を求めて、動物が上がってくる(3億6千万年前)。

微生物や植物、動物たちの行動範囲が陸地の奥へと広がっていく。
砂だった場所は、植物や動物たちであふれ、植物は枯れ、動物は死に砂の上で微生物たちに分解される。微生物たちは砂粒の周りに、微生物たちが作り出す、有機物膜をつけ、そこに分解され細かくなった栄養素やミネラルをつける。それが土の正体である。
土の上で分解される物は植物か動物だ。動物と植物が分解され植物の栄養になる。微生物の餌は動物と植物しかない。裏を返せば動物と植物を分解する微生物であふれているのだ。  土の上で分解される物は植物か動物だ。土壌で動物や植物をミネラルまで分解するには、一種類の微生物ではなく、様々な微生物の集合体である微生物群(コロニー)でないとできない。

土壌中にあるコロニー

有機物を分解する主だったコロニーには、タンパク質分解菌群、セルロース分解菌群、油脂分解菌群、デンプン分解菌群であり、それらが有機物を分解するとアミノ酸やビタミンができ、さらに分解が進むとミネラルになる。微生物は作り出した栄養素やミネラルを有機物膜とともに砂粒に付ける(キレート化)。キレート化された栄養やミネラルは植物の根や動物の腸が吸収することができる。土壌では動物と植物が微生物群に分解され、植物の栄養になり、植物は成長し動物のえさや枯れて植物の栄養になるのである。

地球の表面上には、これらの微生物達があふれている。風が吹けば舞い、雨が降れば流れ、川に入り、海をさまよい、地球上を駆け巡っている。日本には中国から黄砂が飛んでくる、当然黄砂の中には、ゴビ砂漠にいた微生物が一緒に飛んでくる。ある特定の微生物が一定の所にとどまることの方が難しいように思われる。
日本で土をすくって、活動している微生物、休眠している微生物、死んでいる微生物を調べ、アフリカの奥地にある土をすくって、動いている微生物、休眠している微生物、死んでいる微生物を調べれば、ほとんど変わらない微生物たちがいるはずである。ただし、気候風土で活躍する微生物が違うのだが、やっていることは有機物の分解である。地球の表面上にはタンパク質分解菌群、セルロース分解菌群、油脂分解菌群、デンプン分解菌群などを構成する微生物たちであふれているのである。

化学肥料の功罪

田畑に主要な栄養素である窒素、リン酸、カリウムの化学肥料を投入すると、最初は土壌に多くの微量元素が存在するため、いとも簡単に収量が増える。土壌微生物は有機物を分解しアミノ酸やビタミン、その他の栄養素、微量元素を作り出すが、化学肥料は土壌微生物の餌ではないので、化学肥料を投入し続けると微生物たちは、休眠し活動を停止する。植物は土壌中の微量元素を使い果たし、味の低下、栄養素の低下、抗酸化作用の低下、病気や害虫などに対する抵抗力の低下を招き、ミネラルの偏りによる連作障害が起きる。
アメリカの穀倉地帯では、化学肥料のみが投入され、輸出された穀物は輸出先で消費され残渣や排泄物となり、焼却されるので、穀倉地帯には何も戻ってこない。有機物が循環しないため、土壌微生物は休眠し、雨で地下水に流れ、土粒の周りから有機物膜がはがれ栄養素がなくなり、動植物のいなかった4億年以上前の大地に近づきつつある。砂漠化である。
化学肥料と数種類のミネラルだけでは、植物は健全に育たない。植物も海から這い上がってきたものであるから、海にある80種類以上のミネラルが必要とされる。タンパク質分解菌群、セルロース分解菌群、油脂分解菌群、デンプン分解菌群だけが、この海に含まれるミネラルを適切に植物へ供給することができるのである。なぜなら海も同じように主だった4つの分解菌群が有機物を分解する循環で成り立っているからである。

循環とは

ブラジルの森林地帯はパルプの原料として切り出されている。切り出された分、苗木を植えれば、元に戻るのだろうか。  樹木は大きく枝を伸ばし、足下に葉や実を落とし土壌の栄養とし、また動物や昆虫たちを育みその見返りとして、様々な形で栄養を受け取っている。そこには必ず土壌微生物の分解があって循環が成り立つ。切り出された跡地は、虫や動物はいなくなり、切り出された木は日本にやって来てコピー用紙になり、お役ご免になれば、ゴミ箱から焼却場へ行き燃やされる。燃やされたら、微生物が関与することのできにくい無機物となる、いつブラジルに植物の栄養として戻るのか。足下に落とした葉は、土壌微生物の活躍で確実に来年の栄養になる。燃やしたらいつ土に帰るのか。
すべての有機物は、直ちに土に帰らなければ、植物が減ることになる。植物が減ると言うことは、動物が減ると言うことである。

環境を破壊する殺菌、微生物の偏り

実際に畑などで、作物の病気予防といって消毒をするが、餌のある微生物は必ず耐性菌になる。病原菌もその植物を餌にしているので、耐性菌になる。そこに消毒をすると、他の微生物は死にその病原菌が我が物顔で増えるのである。薬剤メーカーは、消毒剤を次から次へと開発し投入するが、追いつかないのが現状である。この現象は、畑だけでおこるのではない。消毒するところ全てで起こる。
また、様々な微生物がいるところでは、私たちは悪臭を感じることはないが、消毒で微生物が偏ると悪臭を放つようになる。悪臭、腐敗臭は偏った微生物による発酵である。

実証実験

上記の資材Fは鶏糞を土壌微生物(タンパク質分解筋群、デンプン分解菌群、油脂分解菌群、セルロース分解菌群)で発酵させたもので、窒素4、カリウム3、リン酸3の有機肥料を帯広畜産大学でジャガイモの畑に投入し連作障害の実験を行った。5年間連作障害が出なかっただけでなく、近くの畑で病気が出ても、感染することがなかった。また土壌が凍り、根切れが起きても毛根が凄まじく、主根のかわりをし、成長を妨げることがなく、うまみ成分も増し、抗酸化作用の高いものになった。 このことから、様々な微生物がバランスよくいると、多種多数の微生物で拮抗状態になり、病原菌が増えることができず感染しないことと、また土壌で有機物の分解が進み栄養豊富になり根が著しく成長したため、植物の病気に対する免疫力も上がり、病気になることがなかったと考えられる。よって十分なミネラルを吸収し、おいしい長持ちするジャガイモになったと考えられる。

化学肥料と資材Fとの根の違い。白菜

化学肥料は施肥のムラで白菜に大小が出る。有機肥料は全体的に大きく粒ぞろい。

化学肥料と資材Fとの根の違い。稲

根の違いだけでなく、分蘖(ぶんけつ)の本数、穂の実の数も違う。

塩害の改善 石川県七尾市 長ネギ

塩害で、土壌が硬くなり、葉先がすぐに枯れ、太さもそろわない。

資材E、Fを投入、翌年香り、味、甘みも増し、太さが揃う。

様々な農法と自然との比較

一種類もしくは数種類の微生物を入れる農法があるが、これはやがて土壌微生物の偏りを起こす。特に乳酸菌は、非常に強い微生物で、多く投入すると他の微生物を殺し始めるので、乳酸菌を投入する農法は田畑をだめにする。  自然農法は、雑草を刈らない、肥料をやらないという農法であるが、人の手にかかれば必ず土壌微生物は偏る。そこを十分気をつけて、大自然の中で手をかけずに自らの食い扶持だけを確保し、収量を気にしないと言うのであれば問題はないが、日本の食料自給率を上げなければならないと言う話であれば、実情にそぐわない農法である。
不耕起栽培は、人が耕さない農法で土壌微生物に土壌の団粒化を行わせ、機械作業による耕盤形成を防ぐものである。自然の植物を見ると根の浅いもの、根の深いものなどがあることを考えると、土壌中では深さに応じて微生物叢が異なり、できる栄養素やミネラルの違いがあると考えられる。耕すと言うことは土壌をひっくり返してしまうことになるので、微生物叢をかき混ぜることで植物の根が必要な栄養素やミネラルを吸収することが難しくなる恐れがある。不耕起栽培は、土壌微生物が偏らずにいれば、理にかなった農法と言えるが、人が手を入れれば、土壌微生物は必ずバランスを崩すので、微生物のバランスのケアは必要になる。

まとめ 環境を保全し循環社会を築くには

生物の多様性は微生物の多様性が支えている。一種類の微生物が活躍するのは発酵食品を作る場合か、病気の原因菌である。
土壌を栄養豊かにするのも、海を浄化するのも、川を浄化するのも有機物を分解する、タンパク質分解菌群、セルロース分解菌群、油脂分解菌群、デンプン分解菌群などの様々な微生物である。病原性の微生物も含めて、自然の循環に必要な物であり、地球の環境にとって必要のない微生物はないと考える。なぜならすべての微生物がいて、動植物の住める環境が作られたからである。
様々な微生物がいるところは、様々な草が生え、様々な虫いて、様々な木が生え、様々な動物のいる所で、それは大自然である。だから大自然の空気がおいしいのだ。
人が関わると微生物のバランスが崩れる。畑をみても同じところに同じものを植える。それだけで、その植物の好きな微生物が集まり、微生物が偏ることで、ミネラルが偏り病気が発生する。畜産においても同じことが言える。放し飼いの鶏の卵は本当においしいか疑問である。なぜなら柵で囲った中で鶏しかいない環境が自然界にはないからである。そこもやがて、微生物が偏り、不健康な鶏になっていくのである。
人が関わるところ微生物のバランスが崩れ環境がおかしくなるなら、実証実験で行った資材の投入は有効である。化学肥料と農薬を使っている農家の割合は90%以上と言われ、化学肥料の資源(リン酸、カリウム)は枯渇寸前である。原産国は輸出を制限している。日本は自給率を上げることが急務である。そのためには、すべての残渣を燃やさず有機肥料に変えなければ、生きる道はない。今後、バランスのとれた土壌微生物を含む有機肥料の製造と普及が必要である。
有機農法は人がいなかった時代の微生物を仲立ちとした食物連鎖から学ばなければならない。微生物たちを使った農業は太陽エネルギーを最大限利用した化石燃料に頼ることのない持続可能な未来の農業の可能性を示している。

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