国家政策を科学的に行え! ~財源が無いから増税は正しいのか?~

現在、世界の政策とその運営は大きな転換期にある。
我が国のこれまでの政策は、従来の積み上げ的な発想と作業で、国家予算を組みあげ、それでも何とかなった。しかし、今や、大震災復興、エネルギー問題、高齢化問題、少子化問題、資源限界問題、人口問題、グローバルな企業競争での国内空洞化問題、累積する国債問題、社会負担の拡大、税収入の減少と不安定化、膨大なデリバティブ等投機金融問題等根本的な問題解決を抜きにしては国家そのものが成立しない状況にある。我が国は、2010年末から2012年初頭に掛け、消費税等税制改革や増税の構造へと進みつつある。その根底には、社会保障や経済成長を図るために、財源不足を補うため、消費税等の増税路線は不可欠との合意がなされつつある。
それは本当なのであろうか。問題は、増税することで根本的な解決にはならない。
 
1.一般的に国家財政は、既存の組織が、関係する部門等を含めて将来構造を検討しつつ、現状を勘案しながら数値を積み上げる。全体構想や長期的な視点での構造改革や環境変化を見込むと言うことは脆弱なまま、必要な内容を検討してその結果を数値として計上している。また我が国の官僚組織は極めて分化され、縦割り組織のまま、単年度予算が基本となっている。
さらに組織自身の責任者の評価は、政策実現と予算獲得の比重が高い。勿論積み上げる中で、経費の削減等は行うとしても、その正当性はあまり国民には見えない。したがって、一つ一つの政策がどのような社会課題を解決するのか、また優先順位も明確でなく、結果として予算規模は大きくなり、財源不足の結果になる。
そして増税の必然性が正当化されるのである。
 
2.しかし企業等での予算編成を例にとれば、当然戦略が先行し、その施策のために経費を積み上げた結果、収益がでなければ、売上高(収入)見合いで、費用の削減のための施策を検討し、実際に可能な額まで削減することになる。
この方法を国家財政策定に適用すれば、まづ国家のあるべき姿が論じられ、それを描き、その課題解決のための幾つかの重要施策とその優先順位が決定されなくてはならない。
そこには長期的な視点や将来構造が目標として設定され、経費の削減目標や方法も突き合わせて設定されることになる。省庁にまたがる重複事項は、相互関係を見据えて、調整を行うことが必要になる。こうしてまづガイドラインが提示され、各政策の経費が決定される。単なる経費の積み上げではなく、価値分析(バリュー・アナリシス)等を加味して、効率や業務方法の改善努力を盛り込むことになる。そこでは十分な分析とともに、業務の課題解決方法が模索されなければならないのである。
例えば、国民医療費に関しても、高齢者医療における検査の重複を避けることや医療データの相互のネットワークでの利用や自己管理を主体とする家庭医療の改善や健康維持の改善方法、早期がんの発見のために、韓国のようにクーポン券発行による低価格の早期検査、病院内の健康教育や健康管理方法の普及、地域の相互支援を可能にする仕組み(医療地域通貨等)等政策への盛り込みを明確化して、医療費削減の目標を明確にし、この課題解決に向けて、前述のVA(バリュー・アナリシス)等の手法を駆使することや、さらに各官庁が予算を使い切るのではなく、業務ごとの標準原価の設定や予算削減の結果を業績評価に盛り込むことや重複作業を調整した場合には、調整結果を評価する等いろいろな改善の方法がある。
当然こうした幾つかの段階で、業務それ自体の削減や仕組みの変革が起こるのである。勿論そこでの人員削減への抵抗には、行政の新たなサービス業務の創造や民間への移行を行いながら、適切な人的な配置も変革すると言うことが必要になる。また同時に新産業等の創造での人材の受け皿やキャリア形成支援を強化する等の施策は重要である。
我が国は、これまであまりにも短期的な視点での政策が多い。この間、国際的には、IT等の科学技術の導入や新たな視点が展開されて有効な財政の使い方が検討されている。
例えば、地域の自立を促す政策や環境対策等社会インフラの大きな変革を伴った業務が行われ、IT技術の導入等においても、生産性の向上や効率効果を重点的に活かして、政策が行われる。また、教育問題、自給率向上問題、環境変化への対応等一つとして単独で解決することはできない。
 
3.今我が国は、マイナス志向と悪循環に陥っている。このまま対応を放置すれば、致命的な結果となる危険性がある。
したがって、早急に政策の体系化と優先順位と将来の社会構造変化を視野に入れて検討し、予算策定を行なければならない。長期的にみれば、我が国のポテンシャルはまだまだ大きい。しかし、この潜在力を活かすことが出来なければ、今後も混迷したままである。
では現在の危機的な状態を脱するためには、どのような打ち手や施策を先行させて予算等の策定をし、財政構造の健全化を行うべきなのか。
 まず、国家戦略として、長中期の視点で戦略を描き、持続可能な産業基盤を獲得することが重要である。
 現在の世界的な潮流は、グローバルな高齢化・少子化(先進国の高齢化と人口減少)、エネルギー等の資源制約と国家間競争激化、グローバリゼーションによる世界経済の一体的な展開、共産主義なき新たな地勢学ともいうべき米国と中国の2極の優位性等の軸の中で、日本の将来像を具体的に描かなくてはならない。我が国の予算は、これらへの対応をどうするのかと言う中で、短期的な対応を策定しているにすぎない。健康保険制度維持や年金維持、経済成長への歯止めとしての経済成長、低生産性や投資不足による格差の拡大と通貨下落、その結果としての増税対策、さらなる需要構造の低下傾向と低成長への悪循環は断ち切れない予算策定になる。
 この悪循環を断ち切るには、従来の積み上げ的な予算策定から、長期視点に立つ目標設定型の総合政策としての予算の策定である。底流としては資源限界の克服・低エネルギー社会と高付加価値の知識産業への転換を優先させ、この産業モデルや社会インフラを整備することが重点である。この目的に向けて、科学技術強化、人材育成・教育の変革、社会インフラ事業強化や地域産業強化での内需拡大、新サービス産業モデルの強化を前提として、重要施策を決める。その上で、税収をどう拡大できるのか、またその実現のための社会保障の構造を変革する仕組みの上での総合的な政策と重要施策を設定して、その経費としての計上を行うことである。そこでは、課題を設定し、その課題解決策の盛り込みとしての予算計上と言うことになるのである。
こうした目標となる課題の解決策、生産性の向上、仕組みの変革、業務の変革、ICT化や科学技術の知見の盛り込み、ネットワークやクラウドコンピューティングの応用等を盛り込んだ予算策定を可能にしなければならない。そこにはまた、経費削減での成果達成を評価する仕組みや政策間の連携を評価する仕組みを導入することも必要になる。
4.特にグローバルな意味で、世界各国の財政に大きな影響を持つのが、エネルギー転換と高齢化社会対応である。
エネルギー政策は、2011年以降世界各国の政策がそれぞれ特色を持った動きになっている。原発依存国、脱原発国、自然エネルギー源強化国、非従来型資源開発国、太陽光/熱発電強化国、風力等への傾斜強化国等である。また徐々に化石燃料の価格上昇や質の低下にも対応し、また多様なエネンルギー源の開発が急激に行われる結果に対応し、バランスある選択をどうとるのか重要な時期である。この選択に、EPRを評価尺度として、国際的なガイドラインを設定することが急がれる。
さらに、高齢化社会は、避けられない問題である。高齢化は、年金給付の増大、医療費の負担増加、高齢者雇用延長の高コスト構造、生産性の効率低下、生産年齢の低下、消費構造の変化、高齢者と若者の対立、資本移動の流動化等グローバルな財政危機を招く危険性を含むものである。大国の経済危機は、人類の運命を変える可能性を持つ。
(参考:「老いてゆく未来」Gray Dawn(2001年刊 ピーター・G・ピーターソン)
5.我が国の予算策定の未熟さが、目標も明確性を欠く原因でもあり、結果としての増税を正当化するならば、悪循環を克服することも、新たな未来を開拓して、希望に満ちた社会を実現することもできず、世界的な存在感を失したままの、国家存亡の危機的な時代を迎えることになるのである。
今我が国が生き残る道は、すべての課題を俯瞰し、課題の相互関係を明確化し、
未来の日本への目標を設定し、何を優先すべきなのか政策の優先順位を決め、現状延長ではない、課題解決とその実現をするための施策が重要であり、そこにイノベーションの本質が存在し、着々と布石を打てる成果をフォローできるような仕組みを実現させることであり、こうした目標設定と課題解決型の予算策定は十分可能である。
2012年は、世界の大きな変化が見える年になるのではないか。
 

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