シェール革命は幻想に終わり、現代文明社会を支えてきた化石燃料はやがて枯渇の時を迎えます (その1) 石油が何時までも使えるとする幻想は終わりを迎えました

東京工業大学 名誉教授  久保田 宏
日本技術士会中部本部・事務局長 平田 賢太郎

(その1)の要約;

はじめに;やがて、日本経済を破綻の淵に陥れる原因をつくりだそうとしている化石燃料資源の枯渇が迫っているとの厳しい現実を率直に認める必要があります

1-① いま、シェール革命が言われるなかで、化石燃料資源の枯渇を表わす指標として用いられている「可採年数」(化石燃料の「確認可採埋蔵量」の値を「生産量」の値で割って得られる)の値からだけでは、化石燃料が何時使えなくなるかを具体的に知ることはできません。

1-② BP社が発表している化石燃料資源種類別の「確認可採埋蔵量」の値と、「生産量」の値から、シェール革命が言われるようになった最近の化石燃料の「正味の年間可採埋蔵量の増加量」の値を計算してみました。その結果、この「正味の年間可採埋蔵量の増加」は、一時的なもので、今後、継続的に増加することはないと考えるべきことが明らかにされました。すなわち、現代文明社会の成長のエネルギー源となっている石油をはじめとする化石燃料の枯渇は確実にやってきます。

 

((その1)の解説本文);

はじめに;やがて、日本経済を破綻の淵に陥れる原因をつくりだそうとしている化石燃料資源の枯渇が迫っているとの厳しい現実を率直に認める必要があります

私どもが言う化石燃料の枯渇とは、現代資本主義社会の経済成長を支えてきたエネルギー源としての化石燃料の資源量が少なくなり、その国際市場価格が高くなって、それを使えない人や国が出て来ることです。結果として、この経済成長のために必要な、化石燃料を、お金を出して買える人や国は、ますます金持ちになります。これに対して、最近、高くなってきた化石燃料を買えなくなった人や国はますます貧乏になって行きます。 いま、この貧富の格差の拡大が宗教と結びついて起こっているのが、アルカイダに始まり、IS(イスラム国)に至る国際テロ戦争ではないでしょうか? この国際テロ戦争を防ぐ唯一の方法は、化石燃料の再配分による貧富の格差の拡大の解消です。

しかし、私どもが、この化石燃料資源の枯渇による経済成長の終焉を訴えても(下記の私どもの近刊、文献1 – 1 参照)、そんなことを心配する必要はない、化石燃料資源はいくらでもあると考えている人が大勢居るようです。いや、化石燃料資源の枯渇なんかとは無関係に、バブル崩壊後の失われた20年を取り戻すための物価上昇2 %の目標を達成するとして、さらなる成長を訴えるアベノミクスの経済政策は、株価の上昇を指標とする景気を回復するために、赤字国債に支えられた財政出動を続けています。政府や、これを支えている人々は、今まで通り経済が成長すれば、税収の増加で、財政赤字が解消できると思っているようですが、成長のエネルギー源の化石燃料が枯渇に向かう現状では、それは、幻想に過ぎません。やがて、国家財政は破綻して、庶民生活は大きな苦悩のなかに沈むことになるでしょう(志賀 櫻氏の著書、文献1-2 参照)。

いま、化石燃料のほぼ全量を輸入に依存している日本の厳しい現実に備え、対処すべき課題について、私どもは、昨年、「改訂増補版;化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉――科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する――」(文献1 – 1 )を発表しましたが、本稿では、この「化石燃料の枯渇」の問題について、補遺的な解説・考察を加えます。

以下、本稿では、(その1)石油は何時までも使えるとする幻想は終わりを迎えました

について記述しますが、さらに、

(その2)2010年前後に起こった石油の「確認可採埋蔵量」の異常な増加は、金融資本主義におけるマネーゲームがもたらした結果でした

(その3)化石燃料資源が枯渇する将来の化石燃料の国際市場価格を予測します

(その4)国別の可採年数の値から化石燃料資源の枯渇の危機を考えます

の記述を予定しています。

 

1-① いま、シェール革命が言われるなかで、化石燃料資源の枯渇を表わす指標として用いられている「可採年数」(化石燃料の「確認可採埋蔵量」の値を「生産量」の値で割って得られる)の値からだけでは、化石燃料が何時使えなくなるかを具体的に知ることはできません

現在の科学技術の力で経済的に採掘可能な化石燃料の種類別の資源量は、確認可採埋蔵量とよばれ、日本エネルギー経済研究所編;EDMCエネルギー・経済統計要覧(以下、エネ研データ(文献1 – 3 )と略記)に記載のBP(British Petroleum)社のデータをもとに、最近の各年末の値を図1- 1に示ししました。

1-1 化石燃料種類別の確認可採埋蔵量の値(天然ガス、石炭についても、石油換算量で表わした各年末の値)の年次変化

(エネ研データ(文献1- 3 )に記載のBP社のデータもとに作成)

 

一方、同じBP社により発表されている化石燃料種類別の生産量の年次変化を表1 – 2に示しました。

1-2 化石燃料種類別の生産量の年次変化(天然ガス、石炭についても石油換算量で表わした)の年次変化

(エネ研データ(文献1 – 3 )に記載のBP社のデータをもとに作成)

 

図1 – 1の化石燃料種類別の確認可採埋蔵量の値Rを、図1 – 2に示すそれぞれの生産量の値Pで割って与えられるのが可採年数R/Pの値で、その年次変化を図1 – 3に示します。

1-3 化石燃料種類別の可採年数R/P(化石燃料種類別化石燃料がの「確認可採埋蔵量R」の値をそれぞれの「生産量P」で割って求められる値)の年次変化

(エネ研データ(文献1 – 3 )に記載のBP社のデータをもとに作成)

 

この図 1 -3 に示す可採年数R/Pの値は、上記したように、あくまでも、BP社による図1- 1に示す化石燃料種類別の「確認可採埋蔵量R」を、図 1 – 2に示す、それぞれの化石燃料についてのその年の年末の「生産量P」で割って与えられる値です。すなわち、化石燃料の種類別にBP社が想定した「確認可採埋蔵量」の値が、今後増加しないと仮定した上で、その生産量(=年間消費量)が、今後も変わらないと仮定して計算される年数です。

したがって、いま、エネルギー資源の問題で大きな話題になっているシェール革命が実現すれば、今後の石油や天然ガスの「可採年数」は、当然、増加することになります。とは言っても、現在、盛んに言われているシェール革命によって、本稿の「はじめに」に書いたように、化石燃料の枯渇は心配することはないと言うほどに、化石燃料資源の確認可採埋蔵量の値が増加するかどうかを知るためには、今回のシェール革命のブームが、確認可採埋蔵量の増加量として、定量的に明らかにされなければなりません。そこで、私どもは、図 1 – 1と図 1 – 2のデータを用いて、下記に示す方法で、このシェール革命が言われているなかでの最近の石油についての「正味の可採埋蔵量の増加量」の値を求めてみました。

 

1-② BP社が発表している化石燃料資源種類別の「確認可採埋蔵量」の値と、「生産量」の値から、シェール革命が言われるようになった最近の化石燃料の「正味の年間可採埋蔵量の増加量」の値を計算してみました。その結果、この「正味の年間可採埋蔵量の増加」は、一時的なもので、今後、継続的に増加することはないと考えるべきことが明らかにされました。すなわち、現代文明社会の成長のエネルギー源となっている石油をはじめとする化石燃料の枯渇は確実にやってきます。

ここで、私どもが定義する化石燃料種類別の「正味の年間可採埋蔵増加量」は、図1 – 1 に示したBP社による化石燃料の種類別の「確認可採埋蔵量」の年次変化の値と、図1 – 2の「生産量」の値から、次式を用いて求めることができます。

「正味の年間可採埋蔵増加量」

=(見かけの年間可採埋蔵増加量)+(当年の生産量の値)        ( 1 – 1 )

ただし、

(見かけの年間可採埋蔵増加量)

=(当年の可採埋蔵量の値)-(前年の可採埋蔵量の値)               ( 1 – 2 )

この ( 1 – 1 ) および ( 1 – 2 ) 式を用いて私どもが計算した「正味の年間可採埋蔵量の増加量」の値を図1 – 4に示します。

1-4 化石燃料種類別の正味の年間可採埋蔵増加量の年次変化 (エネ研データ

(文献 1 – 3 )を用いて、本文中 ( 1 – 1 ) および( 1 – 2 ) 式を用いて計算し、作成)

 

この図1 – 4 の「正味の年間可採埋蔵増加量」の値には、2007年と2008年の石炭の値および2012年の天然ガスの値にマイナスが見られますが、それ以外はプラスの値になっています。この石炭についての顕著なマイナスは、図 1 – 1 に示される2008年以前の確認可採埋蔵量の値の年次減少がその原因と考えられますが、その理由は明らかではありません。しかし、化石燃料全体として、この「正味の可採埋蔵増加量」の値の年次プラスの値が続く理由としては、資本主義社会の世界経済の成長のためのエネルギー源として化石燃料資源の消費量の増加の継続が求められているからです。

この 図1 – 4 に示す、石油や天然ガスの「正味の年間可採埋蔵量の増加量」の値の年次変化に見られるように、その増加は、特に石油について、2011年に限られているように見えます。2012年以降の正味の増加量は、辛うじてプラスの値を保っているとは言え、それは、後述の本稿(その2 )で述べるように、主として米国におけるシェールオイルの生産によるもので、世界全体で見れば、この 図1 – 4 に示すように年次減少しており、やがて、ゼロになると考えるべきでしょう。さらに、この化石燃料エネルギーが支えてきた世界の経済成長がマイナスに転じれば、「正味の可採埋蔵増加量」は、年次減少するようになります。と言うことは、将来の世界の経済成長のエネルギーの供給に大きな期待を集めたシェール革命は、どうやら幻想に終わるとの厳しい現実を示していると言ってよいと思います。

これは、天然ガスについても言えることです。すなわち、このシェール革命の幻想が終わった後の地球上の石油と天然ガスの可採埋蔵量の増加が期待できない将来は、世界全体の経済成長を抑制して、化石燃料の消費を節減することが厳しく求められなければならないことになります。

もちろん、この化石燃料資源の枯渇の指標として用いられている「可採年数」を計算するために必要なBP社による「確認可採埋蔵量」の値には、エネルギー資源の供給事業者としてのBP社の思惑、例えば、原油の市場価格を高値に維持して事業利益の増加を図りたいとする意図があるはずだとの指摘もあります。確かに、このBP社の「可採埋蔵量」の値には、それを求める場合の前提となる化石燃料の国際市場価格の設定値が示されていません。

しかし、現状において、このBP社のデータに代るデータがありませんので、以下、本稿の(その2 )~ (その4 ) の科学技術的な解析・考察においても、このBP社の「可採埋蔵量」のデータを用いて、「化石燃料の枯渇の実態」を明らかにしたいと考えます。

 

<引用文献>

1-1.久保田 宏、平田賢太郎、松田智;「改訂・増補版」化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉――科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する――、Amazon 電子出版、Kindle、2017年

1-2.志賀 櫻;タックスイーター、消えゆく税金、岩波新書、2013年

1-3.日本エネルギー経済研究所計量ユニット編;EDMCエネルギー・経済統計要覧、2017、省エネセンター、2017年

 

ABOUT THE AUTHER
久保田 宏;東京工業大学名誉教授、1928 年、北海道生まれ、北海道大学工学部応用化学科卒、東京工業大学資源科学研究所教授、資源循環研究施設長を経て、1988年退職、名誉教授。専門は化学工学、化学環境工学。日本水環境学会会長を経て名誉会員。JICA専門家などとして海外技術協力事業に従事、上海同洒大学、哈爾濱工業大学顧問教授他、日中科学技術交流による中国友誼奨章授与。著書(一般技術書)に、「ルブランの末裔」、「選択のエネルギー」、「幻想のバイオ燃料」、「幻想のバイオマスエネルギー」、「脱化石燃料社会」、「原発に依存しないエネルギー政策を創る」、「林業の創生と震災からの復興」他

平田 賢太郎;日本技術士会 中部本部 副本部長、1949年生まれ、群馬県出身。1973年、東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修士課程修了。三菱油化(現在、三菱化学)株式会社入社、化学反応装置・蒸留塔はじめ単位操作の解析、省資源・省エネルギー解析、プロセス災害防止対応に従事し2011年退職。2003年 技術士(化学部門-化学装置及び設備)登録。

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