社会インフラの総合的視点と評価の確立を!

東北・関東大震災そして今後の連鎖地震が危惧される現在、新たな時代の変化に対応して、新しい社会インフラの整備と確立が重要である。
 社会インフラは、新しい局面に入りつつあった。従来の工業化社会における経済発展の基盤であり、社会基盤であり、生活基盤であった社会資本は、ハード中心のインフラであり、生活の豊かさや利用者の付加価値や機能を重視したソフトの視点が欠如している。この見直しとともに、今後の知能情報社会等新しい社会構築のための社会インフラの構築が重要になっている。
 1970年代、1980年代の工業化社会における我が国の展開は、極めて良好に社会インフラを整備してきたといえる。しかし1980年代後半から1990年代のバブル崩壊を境にして、従来の社会インフラの課題解決に遅れるとともに、新しい社会インフラ転換にも、齟齬をきたしているのが現状である。
そこに、大震災や原発事故であり、また今後の連動した災害の危惧と古いインフラの朽ちる危機もある。
 資本主義の限界、近代科学の限界、経済学の限界等その本質的な課題は、従来の手法による小手先の変革では乗り切れないものである。つまり世界的に、予想を越える状況やいわゆる神話が崩壊し、新しい理論や政策や仕組みが模索されている。
 我が国はこの間、評価の不在による問題解決能力の脆弱性等本質的な問題の理解とスピードのある解決に遅れた。特に1990年代の変革の戦略転換時期に、リーダーシップ不在のまま、官民一体となってイノベーション戦略の実行がなされないまま、リストラや経費削減等後ろ向きの戦略に終始した結果、戦後最大のストックの減価をもたらしている。
 日本の強さであった経営システムやコスト競争や品質管理及び技術開発力は、積極的な打ち手を欠き、危機意識の欠如や中国、韓国の競争力に追い上げられ、総崩れの観を呈している。
また現在も変革に対する既存勢力や官民一体の護送船団体質は打破されず、危機意識、リーダーシップの欠如から、イノベーションが力にならない状況が続いている。
 この状況を突破するためには、時代の課題を認識し、明確な国家ビジョンを確立し、国民の合意の中で、新しい政策と社会インフラの確立を強化していく必要がある。
特に社会インフラは、今後長期に亘り、我が国の基盤をなすものであり、政治、経済、文化、生活の基本である。
 米国等では、社会インフラに限らず、「競争と評価」が社会創造の基本として、戦略的に機能していることは、事実であるが、米国等も今後の国家的な課題に向けての解決能力が低下傾向にある。
我が国は、政治、経済、社会、教育等国際競争や新しい社会創造の基本である、知的インフラを支える評価の機能が欠如し、今後の知的インフラの蓄積の重要な時代に、大きく立ち遅れている。
 今こそ社会インフラのあり方をこうしたプロセスの中で把握し、新しい総合的視点と評価を確立し、21世紀の基盤を構築する必要がある。
21世紀の社会インフラは、世界の潮流を踏まえながら、これまでの課題を解決し、新たな枠組みで未来に向けての持続可能な社会開発の基盤を早急に整備することが重要である。
特にその枠組みは、従来の視点を脱却し、国家目標及び国家ビジョンへの新しい視点とイノベーション戦略に基づく、新しい視点で構成される必要がある。
 今後の社会インフラは、社会インフラの基本的な方針とそのコンセンサス(国民合意)を経て、公正で効率的な効果のある投資プロセスを持ち、投資結果について効果や内容の評価を中立的な立場で行いうるシステムを構築することが重要である。
社会インフラは、多面的な視点や俯瞰的総合的な観点がますます重要であり、投資前や投資後の評価に、こうした考え方や見方が違和感のない形で確立される必要がある。
しかしながら、学問体系は専門化、分化の傾向が強く、それによって発展してきたという面も否めない。工業化社会の展開過程で、モジュール化や細分化によって、高度にまた深い知識を科学として確立したことで、技術レベルの高い社会インフラを蓄積したのも事実である。
この流れは、今大きく変換しなければならない。
 バイオ技術や環境技術やナノ技術等の新たな発展は、当然新しい技術開発と産業を展開させ、それのともなう社会概念や学問体系を必要とする。20世紀の限界は21世紀には、総合的な俯瞰的な観点を必要とし、その統合的なアーキテクチャーによって再整理され、未来課題を異なる局面から解決する方向が模索されようとしている。
 こうした見方は現在緒についたばかりであろうが、人間的な生存の観点や地球的な観点が確立され、人類や生命の尊厳を第一義とする世界観がやがては主流を占めることになろう。
本来の社会インフラは、こうした観点や学問の発展を取り入れ、「想定外」を克服し長期観点によるあるべき目標に向かっての生活開発である。
 我々はこの重大な時期に、時代の転換や変化に対応するイノベーションの重要性を認識しながら、総合的視点や評価方法の実現を開始しなくてはならない。
 またこうした社会インフラの評価を有意義に実行するためには、中立的な評価能力と評価できる人材の育成が不可欠である。適確に評価できる人材の育成は、社会インフラの本質的な課題を深めるだけでなく、課題解決のための新たな方法を創造することも可能になるのである。
教育機関や研究機関、また官公庁、企業を通して、プロ集団が知恵を結集できるシステム及び仕組みを持つことが緊急である。これによって、長期的な観点でのいろいろな角度からの評価が可能になり、
国民の合意形成を推進する事が出来るのである。
評価体系を確立するためには、それに伴う研究やノウハウの蓄積や評価を通した切磋琢磨できる環境が重要でもある。
今後の社会インフラのあり方を目指しながら、社会インフラ評価の推進策強化が望まれる。
*「社会インフラのあり方と評価研究会」や「日本の未来課題解決シナリオ研究会」を開始したい。
 
 

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