現代文明の血液:石油の基礎知識(2)

4.油田の分布
油田、天然ガス田は、堆積盆地の中や縁に形成されます。堆積盆地とは地質時代のある期間に地殻が沈降し、その間に相当な量の堆積物が累積した地域のことです。堆積盆地の大きさはさまざまで、500近い数の堆積盆地で油田、天然ガス田が分布している(IHSE DB)とのことです。しかし、世界の石油の可採埋蔵量の半分以上は、たった5つの堆積盆地(中央アラビア、ルブアルハリ、ザクロス、西シベリア、東ベネズエラ)に偏在、天然ガスの約半分は5つの堆積盆地(中央アラビア、ルブアルハリ、ザクロス、西シベリア、アムダリア)に偏在しています。
油田・天然ガス田のある場所は、陸域では平地から山岳地まで、海域では浅海から水深が3,000mを超す大水深まで、緯度では熱帯から極地まで、気象環境では熱帯雨林、砂漠、永久凍土まで、油田の深さでは地表下数百メートルから5,000mまで、地球上のさまざまな場所にあります。 中でも超巨大油田が集中して成立している場所は、ペルシャ湾とその周辺陸域です。地質時代のジュラ紀、白亜紀にテーチス海であったところで、現在より気温が10℃も高い温暖期であったため、石油の根源となる有機物が大量に繁殖し埋積しました。

5.石油の可採埋蔵量
さまざまな機関や石油会社が石油の埋蔵量を推定していますが、IEA(2010年報告)によると、既に1兆1280億バーレル生産し、残りの可採埋蔵量:1兆2,410億バーレル、それに今後の新発見期待量を含めて、究極的な回収可能資源量は2兆4,490億バーレルとされています。しかし、生産中の油田の残存可採埋蔵量すら正確だとはいえません。OPEC年次レポート2006年によると、主要6か国は1980年代中葉にいきなり埋蔵量を次のように増やしました。その後も、各国は増やしていますが、埋蔵量を増やした科学的、技術的根拠は示されていません。少なくとも、OPECが生産量の各国割り当てする場合、埋蔵量が多い方が、割当量が大きくなります。  したがって将来予測する場合、埋蔵量でみるよりも、石油ピークがいつ頃なのか、減耗率がいくらかで観る方がわかりやすいと思います。

6.油田の大きさと埋蔵量シェア  
 世界に50,000以上の油田があります。そのうち可採埋蔵量が5千万バーレル以上の油田約2600で世界の石油埋蔵量のほとんどを占めています。油田規模別の可採埋蔵量分布は、50億バーレル以上の超巨大油田46で約45%、50億~5億バーレルの巨大油田約380で約32%、5億~5千万の大型油田約2200で約22%です。数少ない超巨大油田の埋蔵量シェアが大きく、さらに生産に伴う減退率も小さいのが特徴です。
超巨大油田は1980年以降、ほとんど発見されていません。そして世界の石油消費量/年の伸びが、減少する発見量/年を1984年に超えてしまいました。 米国のRoscoe Bartlett下院議員は、2005年にこの図を用いて、近い将来に石油ピークが到来することを証言しました。

7.石油の従来型分類:在来型石油、非在来型石油≫  
従来から、在来型石油、非在来型石油という区分けがあります。天然ガスも同様です。在来型石油/ガスとは、孔隙率の高い貯留岩のなかに流体の 状態で存在している石油で、油田の若い時期に自噴能力のある油田です。非在来型石油はそれ以外の形態で地下に存在している石油を指します。 非在来型石油/ガスにはいくつかのタイプがありますが、どれも自噴能力のないことが共通点です。
在来型石油/ガスは根源岩から孔隙率の大きな貯留岩へ移動・集積して濃集した流動性ある石油/ガスをいいます。 一方、シェールオイル/ガスは石油・ガスが生成される頁岩層の中に分散して付着残存している石油/ガスです。 在来型の石油/ガスは貯留岩のなかで地層圧に押されて力学的エネルギーのポテンシャルが高い状態にあります。それに対して、シェールオイル/ガスは石油根源岩の頁岩に付着して化学的に安定しており、エントロピーが高い状態です。  エントロピーの低い在来型ガス層に生産井を掘削すると、地層圧と大気圧の差で自噴するので、生産のためのエネルギーは少なくて済みます。すなわち、EPRが大きい。
タイトサンドオイル/ガスは孔隙率の低く浸透能力の低い(浸透率がミリダルシー以下)の砂岩に貯留しているもので、地下深くまで埋没して圧密を受けて孔隙率が小さくなったものです。自噴生産できず、水圧破砕によって石油/ガスの排出を改善せねばなりません。
オイルサンド/シェールは、油田あるいは石油根源岩の中の石油から揮発性成分がなくなり、超重質油の固体で存在する鉱床です。地表に露出していると石炭のように露天掘します。露出していない浅層の鉱床では、大量の天然ガスと水を使って水蒸気を鉱床の内部に送って熱融解させて採油しています。オイルサンド/シェールの殆どがカナダとベネズエラに大量にあります。
炭田の石炭層にメタンガスが吸着しています。これが石炭層メタンといわれるものです。 (続く)

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