改めて石油ピークの怖さを知ろう


石油減耗前に、世界経済がすでに激変
 米国の経済減速、格下げ、それがわずかな下げであっても、世界経済は神経質に反応し、ドル・ユーロ安、円の相対高になり、対米の最大債権国中国をして、米国に軍事費と社会保障費の削減を要求している。世界経済は、国際化によって、ロバーストさを失い、非常に脆くなったと思う。石油ピークがまだ減耗ステージに至らないのにこれだから、先が思いやられる。石油ピークについて、掘り下げて勉強することが重要である。

世界の石油発見量の推移(特徴)
  世界には50,000~70,000の油田があると言われているが、可採埋蔵量50億バレルの油田を超巨大油田​、5億~50億バレルを巨大油田という。これで世界の石​油生産量の50%以上を、50個ほどの超巨大油田で25%を賄っている。
 世界の油田発見・可採埋蔵量の推移をみると、1920年から60年にかけておよそ1
​0年間毎に、新発見量を1000億バレルずつ上乗せしてきた。すなわち、20年代に1000億バレル、30年-40年代に2000億バレル、50年代に3000億バレル、そして60年代に最高の4000億バレ​ルの可採埋蔵量を発見した。その後、発見は技術進歩にも関わらず発見量は急落し、70年代が2000億バレル余り、80年​代の発見量は1000億バレル、2000年代の発見量は200-300億バレルにまでに減少し、往年の見る影もない。

石油の生産量曲線
 個々の油田の生産量生涯曲線は、概ね釣鐘状のピーク曲線を描く。世界の、あるいは地域の石油生産量生涯曲線は、埋蔵量の大きさと発見年の異なる油田の個々の曲線の足し合わせによる複合曲線になる。この曲線は、ピーク上でなく、一定の年数が台形状(プラトー)になる。また、この複合曲線が、60年代の抜群の最大発見量に支配されることは、容易に予想される。したがって、60年代にクリフを有する発見埋蔵量の歴史曲線に類似​した曲線勾配で、30-40年後から石油生産が急速に減耗すると考えられる。

 世界の石​油生産量は、2004年からプラトーになり、すでに7年になる。最近の予測にみられるように、2012年辺りから減耗が​始まると、減耗カーブはが急速であろうと思うと恐ろしい。石油は運輸・産業​・農業に亘って、現代日本の生き血である。政府、財界、国民総出で​対応準備せねば間に合わない。

石油減耗突入の先延しは望み薄
 世界一のガワール油​田の可採埋蔵量は700億~900億バーレルといわれている。油田の大きさとと最大生産量の標準的な​関係は、100億バレル油田のピーク生産量は100万バ​レル/日を目安としてよい。石油減耗率を年5%と小さめ​に見ても、日産量の減少は430万バレルで、日本の石油輸入量/日に相当する。この分を新​規発見430億バレル油田発見で補充し続けることは不可​能。2000年代の新規発見量は10年かかってその半分程度である。2010年代の予想発見量はさらに激減する。石油資源は有限である。
 新発見による石油減耗時期の先延ばしは不可能である。

 ヨーロッパの油田は1996年より6年間、720万バレ
​ル/日の生産プラトーを続けてきた。2002年より減耗​率6%の局面に入り、現在の生産量は500万余バレル/​日である。急速な下落である。

石油文明社会で石油減耗とGDP成長は両立しない
 石油生産曲線は2004年まで増加傾向、その後プラトーであるが、細かく見ると、数%の範囲で増減しつつ推移している。1986年~2006年の統計によると、石油生産の年毎の増減量は世界のGDPの年増減量と、高い相関を示している。そして、GDPの年増減量の変化幅は、GDPの年増減変化幅の約2倍で推移している。

 これよりまず、言えることは、早ければ2012年に石油が減耗ステージになると、GDP成長はない、GDPは減退する!である。そして石油が手に入らなくなる。海外の石油利権がほとんどない日本はなおさらである。運輸、農業、産業が打撃を受け、これまで通りに行かなくなる。石油減耗が、石油文明社会から低エネルギー社会への転換を強制する。犠牲を最小限に抑えなければならない。
 石油減耗ステージ突入の先手を打って、その影響を受けない低エネルギー社会へ移行するべきである。そしてGDP成長、否、GPI(真の社会成長指数)またはGDH(国内総幸福度)の成長の道を進むべきである。


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